共栄セキュリティーサービス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

共栄セキュリティーサービス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の警備会社。施設警備、交通誘導警備、イベント警備などの人的警備サービスを全国で展開しています。直近の業績は、積極的なM&Aや料金改定により売上高が100億円を突破し増収となりましたが、のれん減損損失等の計上により最終損益は赤字となりました。


※本記事は、共栄セキュリティーサービス株式会社 の有価証券報告書(第41期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 共栄セキュリティーサービスってどんな会社?

交通誘導警備から始まり、現在は施設警備やボディーガードも手がける総合警備会社です。積極的なM&Aで全国展開を進めています。

(1) 会社概要

1985年に交通誘導警備業務を目的として設立され、その後、施設警備やボディーガード業務へ参入しました。2019年に東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)へ上場し、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。近年は北海道や関西、関東各地の警備会社を相次いで子会社化し、全国的な事業拡大を推進しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は750名、単体従業員数は525名です。筆頭株主は創業者の資産管理会社である合同会社あっとプラニングで、第2位は株式会社ケイ・エス・エス、第3位はマックスコーポレーション株式会社となっています。資本業務提携先のセコム株式会社も株主に名を連ねています。

氏名 持株比率
合同会社あっとプラニング 44.38%
ケイ・エス・エス 8.41%
マックスコーポレーション 7.60%

(2) 経営陣

同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は我妻文男氏が務めています。監査等委員を含む取締役6名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
我妻文男 代表取締役社長 1985年5月同社設立とともに代表取締役に就任。2012年6月代表取締役会長を経て、2017年6月より現職。
我妻和文 専務取締役 1993年4月同社入社。1998年7月取締役、2012年6月代表取締役社長などを歴任し、2017年6月より現職。
松林篤樹 常務取締役 1993年4月大倉商事入社。あずさ監査法人、エルテス取締役、ペガサス・テック・ホールディングスCFOを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、小崎教仁(ビガー・コーポレーション代表取締役社長)、渡辺真一(福星運輸代表取締役)、三宅伸幸(ファインフードシステムズ代表取締役CEO)です。

2. 事業内容

同社グループは、「警備事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 施設警備関連

契約先施設に警備員が常駐し、警戒、出入管理、巡回などを行う施設警備や、オフィスビル等での受付・案内を行うレセプション・コンシェルジュ業務を提供しています。また、商業施設等の駐車場での誘導・料金収受を行う駐車場警備や、空港における消防業務も手がけています。顧客は民間企業や官公庁など多岐にわたります。

収益は、顧客との警備請負契約に基づき、提供した警備サービスの実績時間等に応じて受け取る対価によって構成されています。運営は、施設警備については共栄セキュリティーサービスおよびグループ会社(KSS管財を除く)が行い、レセプション業務等は共栄セキュリティーサービスおよび合建警備保障が行っています。

(2) 交通誘導警備関連

道路工事や建築現場等において、車両や歩行者の誘導を行う交通誘導警備を提供しています。また、スポーツ大会やコンサート等のイベント会場における雑踏整理や手荷物検査などのイベント警備も実施しています。高速道路等でのトラブル対応を行うハイウェイ・セキュリティー業務も含まれます。

収益は、工事会社やイベント主催者等の顧客から、警備員の配置実績等に応じた料金を受け取ることで発生します。運営は、交通誘導警備およびイベント警備については共栄セキュリティーサービスおよびグループ会社(KSS管財を除く)が担い、ハイウェイ・セキュリティーは共栄セキュリティーサービスが行っています。

(3) その他

国内外の要人の身辺警護を行うボディーガード業務や、コインパーキングの障害対応・管理を行う駐車場運営管理業務を展開しています。また、マンション管理人の代行業務や、オフィスビル等の設備管理業務も行っています。

収益は、各サービスの提供対価として顧客から受け取る料金等です。ボディーガードや駐車場運営管理は共栄セキュリティーサービスが、マンション代行管理はKSS管財が、建物・設備管理は共栄セキュリティーサービスおよびネオ・アメニティーサービスが運営を行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高は5期連続で増加しており、直近では100億円を突破しました。M&Aや料金改定が奏功し事業規模は拡大していますが、利益面では変動が見られます。特に当期は、買収した子会社等ののれん減損損失を計上した影響で、最終損益が赤字に転落しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 62億円 80億円 80億円 94億円 101億円
経常利益 4.2億円 10.5億円 5.3億円 3.9億円 5.4億円
利益率(%) 6.8% 13.2% 6.6% 4.1% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 2.2億円 7.1億円 4.8億円 2.3億円 -0.8億円

(2) 損益計算書

前期と比較して売上高は増加し、営業利益および営業利益率も改善しました。これはM&Aによる規模拡大や料金改定による原価率低減の効果です。一方で、特別損失として減損損失等を計上したため、最終的な当期純損益はマイナスとなりました。本業の収益力は向上しているものの、会計上の処理が最終利益を押し下げています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 94億円 101億円
売上総利益 21億円 24億円
売上総利益率(%) 22.3% 23.2%
営業利益 3億円 5億円
営業利益率(%) 3.3% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.3億円(構成比23%)、支払手数料が2.1億円(同11%)を占めています。また、売上原価においては労務費等の人件費が大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益

同社グループは警備事業の単一セグメントですが、売上高全体としては前期比で増収となりました。これは主に、前期以降に連結子会社となった企業の売上が寄与したことや、常駐警備における料金改定が進んだことによるものです。営業利益も増益となっており、本業ベースでは収益性が改善しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
警備事業 94億円 101億円 3億円 5億円 4.8%
連結(合計) 94億円 101億円 3億円 5億円 4.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、本業で稼いだ現金を元手に借入金の返済を進めつつ、投資活動を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2.5億円 4.0億円
投資CF 1.2億円 -1.5億円
財務CF -2.4億円 -5.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-0.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は、警備業を通じて社会の安全に寄与するため事業活動を行っています。「『誠実』かつ『確実』」を経営理念として掲げ、持続的成長を志向するとともに、社会的責任と使命を深く認識し、社会から信頼される企業となることを目指しています。

(2) 企業文化

社員の成長こそが重要な経営基盤であると考え、「教育のレベルは、会社のレベルである。」という教育スローガンを掲げています。階層別の社員教育や資格取得のサポートに力を入れ、警備品質の向上と従業員の体験価値向上に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標

長期視点での規模拡大による交渉力強化や人員確保を目指し、経営指標として「売上高」および「警備員等の人員数」をモニタリングしています。また、利益成長のモニタリング指標として「営業利益」をKPIとして設定しています。

(4) 成長戦略と重点施策

「積極的なM&A」と「グループ経営の加速」を成長戦略の中核としています。47都道府県のプラットフォーム構築を目指し、エリア補完と人員拡大を進めるとともに、グループ横断的な再編や品質戦略の定義・実行により全体最適化を図ります。また、セコムとの資本業務提携を活かした営業力強化にも取り組んでいます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

社員を最も重要な財産と位置づけ、教育と資格取得支援に注力しています。ジェンダー平等を目指し、女性の役員・管理職登用や働きやすい勤務シフトへの組み替えを推進するほか、若手採用と並行してアクティブシニアが働きやすい職場づくりにも取り組んでいます。また、M&Aにより多様な経験を持つ人材を取り入れ、組織の成長につなげる方針です。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 35.9歳 7.5年 3,619,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.8%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 91.9%
男女賃金差異(正規雇用) 83.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 74.1%


※男性育児休業取得率については、有報の記載において算出対象期間中の取得実績がないため「-」と表示されています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、資格保有者の割合(63.4%)、管理職に占める女性労働者の割合(19.6%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材確保について

警備事業は労働集約型であり人的リソースに依存していますが、保安職業従事者の有効求人倍率が高止まりするなど採用環境は厳しさを増しています。必要な人員を確保できない場合や、人材流出が生じた場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(2) 価格競争について

国内には約1万社の警備業者が存在し、競争が激化しています。競合との価格競争による料金低下圧力が強まる中、労務費の上昇等を適切に価格転嫁できなければ利益率が低下し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法規制の適用について

警備業法や労働基準法などの規制対象となっており、法令遵守にはコスト負担が伴います。将来的な法改正により資格者配置基準等が強化された場合、対応コストの増加やサービス提供の制約につながる可能性があります。また、法令違反が生じた場合は社会的信用の失墜を招く恐れがあります。

(4) 買収、第三者との合弁について

市場シェア拡大のためにM&A等を推進していますが、多額の統合費用発生やシナジー効果の未達、想定外の債務引き受けなどが生じる可能性があります。これらが計画通りに進まない場合、業績に悪影響が及ぶリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。