ミンカブ・ジ・インフォノイド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミンカブ・ジ・インフォノイド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ミンカブ・ジ・インフォノイドは東証グロース市場に上場し、メディア事業とソリューション事業を展開する企業です。直近の業績では、不採算事業からの撤退など「選択と集中」の構造改革を進めた結果、売上高は前期比で減収となったものの、経常利益は黒字転換を果たし、当期純利益は過去最高益を更新しました。


※本記事は、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドの有価証券報告書(第20期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. ミンカブ・ジ・インフォノイドってどんな会社?


同社は「情報の価値を具現化する仕組みを提供する」を理念に、メディア事業とソリューション事業を展開しています。

(1) 会社概要


2006年に設立され、2007年に投資家向けソーシャルメディア型株式情報サイト「みんなの株式」のサービスを開始しました。2018年に現在の社名に変更し、2019年に株式上場を果たしています。2022年にライブドアを完全子会社化した後、2023年には持株会社体制へ移行し、直近ではグループ再編の一環として子会社の吸収合併等を行っています。

現在の従業員数は連結、単体ともに236名です。大株主については、筆頭株主が創業者の瓜生憲氏で、第2位が事業会社であるSBIホールディングス、第3位が事業会社であるソニーネットワークコミュニケーションズとなっています。

氏名 持株比率
瓜生 憲 10.59%
SBIホールディングス 8.02%
ソニーネットワークコミュニケーションズ 6.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は伴将行氏が務めています。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
伴 将行 代表取締役社長 SCSK等を経て2015年に同社子会社代表取締役に就任。2017年に同社取締役、ミンカブソリューションサービシーズ代表取締役社長等を経て2025年2月より現職。
矢口 順子 取締役 富士通、シティグループ証券、BNPパリバ証券等を経て2013年に入社。2020年上級執行役員等を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、吉村貞彦(元EY新日本有限責任監査法人副理事長)、石橋省三(一般財団法人石橋湛山記念財団代表理事)、尾﨑恒康(元検事・尾崎経営法律事務所開設)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディア事業」および「ソリューション事業」を展開しています。

メディア事業


「ライブドアブログ」を中心としたUGCメディアや「ライブドアニュース」を中心としたPGCメディアに加え、スポーツ情報メディア、資産形成情報メディア「MINKABU(みんかぶ)」、その他専門メディアなど、月間平均利用者数1億人規模の総合インターネットメディア事業を展開しています。

主な収益源は、メディアサイトの運営を通じて得られる広告収入(純広告、ネットワーク広告、成果報酬型広告)と、有料サービスからの課金収入(月額利用料)です。事業の運営は主にライブドアが行っています。

ソリューション事業


株式情報専門メディア「Kabutan(株探)」の運営のほか、金融機関向けに各種金融情報コンテンツやアプリケーションをカスタマイズして提供する情報ソリューションサービス、およびシステム受託開発や保守等を行うSI・パッケージソリューションサービスを展開しています。

収益源は、有料サービスからの課金収入や広告収入、クラウド型ASP提供に係る初期導入費およびサブスクリプション収入、システムの受託開発によるスポット収入と保守・運用によるストック収入です。事業の運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高はこれまで拡大傾向にありましたが、当期は不採算事業からの撤退など「選択と集中」を進めた結果、減収となりました。一方、利益面では先行投資等による赤字が続いていましたが、当期は構造改革によるコスト削減等が奏功し、各段階利益において黒字転換を果たしています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 55億円 68億円 99億円 105億円 88億円
経常利益 8億円 -2億円 -8億円 -20億円 4億円
利益率(%) 15.1% -3.0% -8.0% -18.9% 4.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 8億円 -1億円 -55億円 7億円

(2) 損益計算書


前年度から当年度にかけて、事業の選択と集中の影響により売上高は減少したものの、売上原価および販売費及び一般管理費の削減を大幅に進めた結果、売上総利益と営業利益が大きく改善し、営業黒字を達成しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 105億円 88億円
売上総利益 29億円 39億円
売上総利益率(%) 27.4% 44.7%
営業利益 -19億円 5億円
営業利益率(%) -18.1% 6.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が12億円(構成比36%)、業務委託費が6億円(同18%)、支払手数料が4億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


メディア事業は、赤字事業からの撤退や既存事業のコスト削減を進めたことで売上は減少しました。ソリューション事業は、月額利用料などのストック収入が堅調に推移したことで、安定した収益を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
メディア事業 68億円 51億円
ソリューション事業 37億円 37億円
連結(合計) 105億円 88億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなっています。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業のパターン(健全型)です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -7億円 11億円
投資CF -12億円 -0.7億円
財務CF 3億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は84.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は14.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「情報の価値を具現化する仕組みを提供する」を企業理念に掲げています。持続可能な社会・経済環境構築に関する関心や社会的多様性を尊重する意識の高まりなどの社会環境の変化とテクノロジーの進化が加速するなか、情報提供のリーチ拡大とテクノロジーを活用した情報の付加価値拡大を追求し、社会的課題に対する役割を進化させていくことを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は健全な組織文化の形成と組織の活性化を図ることを重視しています。企業理念に共感し、高い意欲と自律的成長が可能な人材を確保・育成することを目指し、コミュニケーションの活性化や人事制度の整備・充実を通じて、従業員が高いモチベーションを持って自律的に働くことのできる環境の整備を推進しています。

(3) 経営計画・目標


高い売上成長率を重視した方針から「選択と集中」へ転換し、成長ドライバーと安定収益エンジンの2つに経営資源を集中させる体制を構築しています。経営計画として以下の数値目標を掲げています。

* 営業利益率の年率30%成長
* 3年以内の過去最高益の更新

(4) 成長戦略と重点施策


メディア事業においては、クリエイターズエコノミー関連の拡大など非トラフィック型収益の強化と、AIを活用したストック型コンテンツの蓄積によるトラフィック拡大策を同時に推進し、安定的な利益創出を図ります。ソリューション事業においては、多言語展開等による海外市場への展開や、金融情報資産と生成AIを融合した高付加価値SaaS型サービスの本格展開により、増収を加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的かつ自律的な成長のため、性別や国籍、価値観にとらわれず、一人ひとりの個性を生かすダイバーシティ&インクルージョンを重視しています。ジェンダーや年齢などによらず働きやすい環境整備や多様な働き方の制度化、福利厚生の充実を図るとともに、教育体制の充実を進め、自律的かつ挑戦する組織文化の醸成と組織能力の向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.2歳 7.3年 6,283,963円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 30.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 89.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 120.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の産休・育休後復帰率(100%)、e-learning 受講時間数(1時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 広告市場の動向への依存


同社グループのメディア事業は月間利用者数1億人規模を誇りますが、売上に占める広告売上割合が高く、広告市況の影響を受けやすい環境にあります。大幅な景気の減速やアドネットワーク広告市況の低迷の長期化、広告単価の下落等が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 金融市場の動向と金融機関の投資減退


ソリューション事業は主に金融・経済情報を商材として金融機関等に提供しています。急激な市況変動や景気減速により、金融機関の広告出稿やソリューションプロダクトへの投資が減少した場合、個人投資家の口座開設数や課金サービスの利用が落ち込み、同社の業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 検索エンジンの仕様変更とプライバシー規制


メディア事業ではウェブ検索エンジンからのユーザー獲得が主要なルートの1つとなっています。生成AIの活用を含む検索エンジンの大幅な仕様変更に適切に対応できない場合、集客が低迷する恐れがあります。また、サードパーティークッキー規制などプライバシー重視の傾向が広告配信や単価に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。