バルテス・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バルテス・ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

バルテス・ホールディングスは、東京証券取引所グロース市場に上場し、ソフトウェアテスト事業を主力とする企業です。開発事業やセキュリティ事業も展開し、品質向上をサポートしています。直近の業績では、テスト事業における案件数増加により増収となる一方、投資の影響等で減益となっています。


※本記事は、バルテス・ホールディングス株式会社の有価証券報告書(第22期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. バルテス・ホールディングスってどんな会社?

ソフトウェアテストサービスの提供や品質コンサルティングを主力とし、開発の全工程を支援しています。

(1) 会社概要

同社は2004年4月にソフトウェアテストサービスの提供を目的として設立されました。2019年5月に上場し、2023年10月に持株会社体制へ移行して現在の商号に変更しています。近年はM&Aを積極的に推進しており、2020年から2024年にかけて複数の開発会社をグループ化し事業を拡大しています。

同社の従業員数は連結で864名、単体で104名です。筆頭株主は創業者の田中真史氏で、第2位は同氏の資産管理会社であるポリアフとなっています。第3位には同社の社員持株会が入っています。

氏名 持株比率
田中 真史 40.76%
ポリアフ 8.48%
バルテス・ホールディングス社員持株会 6.63%

(2) 経営陣

同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役会長兼社長の田中真史氏が経営を牽引しており、社外取締役比率は71%となっています。

氏名 役職 主な経歴
田中 真史 代表取締役会長兼社長 1980年ワールドビジネスセンター入社等を経て、2004年4月同社設立、代表取締役社長。2023年10月より現職。
西村 祐一 取締役 1997年新阪急ホテル入社、アデコを経て2006年2月同社入社。管理本部長などを経て2010年10月より現職。


社外取締役は、赤井祐記(Nauto Japan代表執行役員社長)、高野誠司(高野誠司特許事務所開設)、安中利彦(元トクヤマ海陸運送代表取締役会長)、舟串信寛(創・佐藤法律事務所入所)、吉川和美(吉川和美公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「ソフトウェアテスト事業」「開発事業」「セキュリティ事業」を展開しています。

ソフトウェアテスト事業

製造業やソフトウェアベンダーを顧客に、テスト計画、設計、実行等のソフトウェアテストサービスや品質コンサルティング、テスト自動化ツールなどを提供しています。
主に準委任契約や請負契約により、役務提供や成果物納品に対する対価を受け取ります。運営はバルテスやミントなどが中心となって行っています。

開発事業

Webサイトやモバイルアプリ開発、システムの開発請負、リバースエンジニアリングなどをワンストップで提供しています。
開発業務の請負や準委任契約による役務提供の対価を受け取ります。運営はバルテス・イノベーションズ、アール・エス・アール、シンフォー、タビュラが行っています。

セキュリティ事業

Webシステムやモバイルアプリ、IoT機器に対する外部からの侵入リスクを調査するセキュリティ診断サービスを提供しています。
請負契約を中心とした脆弱性診断等の対価を受け取ります。運営はバルテス・イノベーションズが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間において、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けており、119億円に到達しています。一方、経常利益はM&AやAI関連の開発投資負担などにより増減を繰り返しており、直近では利益率が低下傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 67億円 91億円 104億円 108億円 119億円
経常利益 6億円 10億円 8億円 9億円 9億円
利益率(%) 8.6% 10.9% 8.2% 8.6% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 6億円 3億円 4億円 1億円

(2) 損益計算書

売上高は前年比で増収となり、開発事業の利益率改善などにより売上総利益率も向上しています。一方で、AIツール開発などへの投資強化により営業利益率は低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 108億円 119億円
売上総利益 32億円 37億円
売上総利益率(%) 29.7% 30.7%
営業利益 9億円 9億円
営業利益率(%) 8.6% 7.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が6億円(構成比21%)、支払手数料が4億円(同14%)、採用費が3億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益

ソフトウェアテスト事業は、案件の大型化や営業体制整備により増収となりました。開発事業はグループ内取引が増加したものの外部売上は前年並みとなり、セキュリティ事業は順調に拡大し増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ソフトウェアテスト事業 91億円 102億円
開発事業 15億円 15億円
セキュリティ事業 2億円 3億円
連結(合計) 108億円 119億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動で得た資金で借入の返済と投資を賄う、健全なキャッシュ・フロー状況となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 6億円 9億円
投資CF -9億円 -2億円
財務CF 4億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.7%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は企業理念として、「品質にコミットし、安心・安全なICT社会の実現に貢献します」「ICT社会に貢献する人材を育成します」「多くの価値を創り、お客様と共に歓びを分かち合います」を掲げています。提供サービスを通じて、豊かで安全な情報通信技術社会の維持・発展を目指しています。

(2) 企業文化

同社は従業員のウェルビーイング向上を重視し、「環境」「報酬」「制度」の充実と「機会の創出」を図っています。「バルテスいいね!プロジェクト」を通じた働きやすい職場づくりや、自社ツールを活用した業務効率化を推進し、人材で価値を創り、デジタル技術で価値を拡張する文化が形成されています。

(3) 経営計画・目標

同社は「ソフトウェアテスト市場の社会的価値を高めるバリューアッププラットフォーマーへ」という10年ビジョンを掲げています。また、新中期経営計画において、AI拡大による事業機会の活用とリスク排除を目的に、以下のような投資目標を設定しています。
- 生成AIテストツールへの開発投資(3か年累計):12億円
- M&A等のBS投資(3か年累計):25億円

(4) 成長戦略と重点施策

同社は持続的な成長に向けた重点課題として、人的資本への投資拡大や、参入障壁の高いエンタープライズ領域の開拓を推進しています。また、生成AIを活用したテスト設計ツールなど知的財産への投資を強化し、人に依存しないビジネスモデルの拡大によって生産性向上を図るほか、M&Aによる事業多角化を進めています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

独自の教育制度により、未経験者をエンジニアに育成する体制を整えています。新卒・未経験者には2カ月間(320時間)の研修期間を設け、技術習得に専念させています。また、生成AIを活用して付加価値創出を担う「AI-テストデザインコンサルタント」の育成を推進する一方、外部からの専門人材の採用も強化しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.7歳 4.5年 6,246,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 52.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 53.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 47.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(78.2%)、バルゼミ受講者数(2,191人)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) テスト業務の内製化リスク

ソフトウェアテストのアウトソーシング需要は拡大していますが、経済状況の変化や顧客の経営方針によりテスト業務の内製化が進んだ場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合他社との価格競争

同社はエンタープライズ領域の開拓等で差別化を図っていますが、シンプルなアプリのテストなどでは低価格を強みとする他社が発注先に選ばれることがあり、価格競争による収益低下リスクがあります。

(3) IT人材の獲得競争激化

事業拡大には優秀なエンジニアの確保が不可欠ですが、ソフトウェアテストおよびIT市場全体の拡大に伴い、競合他社との人材獲得競争が激化し、必要な人材を確保できないリスクがあります。

(4) 技術革新による代替リスク

IT業界では急速なAI技術の進展などにより、中長期的には企業の内製化加速や労働集約型ビジネスが代替されるデジタルディスラプションが発生する可能性があり、適応が遅れた場合は競争力が低下する恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。