※本記事は、バルテス・ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第21期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. バルテス・ホールディングスってどんな会社?
ソフトウェアの品質向上を支援するトータルサポート企業です。テスト専門会社として独自のノウハウを有します。
■(1) 会社概要
2004年に設立され、ソフトウェアテストサービスを開始しました。2019年に東証マザーズ(現グロース)へ上場し、2023年には持株会社体制へ移行して現社名となりました。事業拡大のためM&Aを積極的に行っており、2020年にアール・エス・アール、2024年にタビュラを完全子会社化するなど、グループ規模を拡大しています。
連結従業員数は817名、単体では89名です。筆頭株主は創業者で会長兼社長の田中真史氏で、第2位は社員持株会、第3位は田中氏の資産管理会社であるポリアフです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 田中 真史 | 42.68% |
| バルテス・ホールディングス社員持株会 | 6.60% |
| 株式会社ポリアフ | 5.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役会長兼社長は田中真史氏です。社外取締役比率は71.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田中 真史 | 代表取締役会長兼社長 | 1990年ウィズソフト設立代表取締役、1995年アーティスト設立代表取締役などを経て、2004年同社設立代表取締役社長。2023年10月より現職。 |
| 西村 祐一 | 取締役 | 1997年新阪急ホテル入社、2004年アデコ入社を経て、2006年同社入社。ソフトウェアテスト部長、管理本部長などを歴任し、2010年10月より現職。 |
社外取締役は、赤井祐記(Nauto Japan合同会社代表執行役員社長)、高野誠司(高野誠司特許事務所所長)、安中利彦(トクヤマ海陸運送社長)、舟串信寛(創・佐藤法律事務所弁護士)、吉川和美(吉川和美公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ソフトウェアテスト事業」「開発事業」「セキュリティ事業」を展開しています。
■ソフトウェアテスト事業
製造業やソフトウェアベンダーに対し、ソフトウェアの不具合リスクを回避するための品質計画、テスト設計、実行、レポート作成などを提供しています。エンタープライズ系やWeb・スマホ系など幅広い領域が対象です。独自のテストツールや教育サービスも提供しています。
収益は、顧客からのテストサービス料やコンサルティング料、教育受講料などから得ています。運営は主にバルテス、VALTES Advanced Technology, Inc.、ミントが行っています。
■開発事業
ソフトウェア・システムの開発請負および開発要員派遣サービスを提供しています。企画から開発、デザイン、運用までワンストップで対応可能です。メタバース分野のxR技術習得も進めています。
収益は、顧客からの開発請負金や派遣料などから得ています。運営は主にバルテス・イノベーションズ、アール・エス・アール、シンフォー、タビュラなどが行っています。
■セキュリティ事業
Webシステムやモバイルアプリ、IoT機器に対するセキュリティ診断(脆弱性診断)サービスを提供しています。外部からの侵入やハッキングの隙がないかを調査します。
収益は、顧客からの診断サービス料などから得ています。運営は主にバルテス・イノベーションズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な右肩上がりを続けており、53億円から108億円へと倍増しました。経常利益も3億円台から9億円台へと拡大傾向にあります。利益率は8〜10%程度で推移しており、安定した収益性を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 53億円 | 67億円 | 91億円 | 104億円 | 108億円 |
| 経常利益 | 4億円 | 6億円 | 10億円 | 8億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 6.6% | 8.6% | 10.9% | 8.2% | 8.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 4億円 | 6億円 | 3億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高は前期の104億円から108億円へ増加し、売上総利益も30億円から32億円へ伸長しました。営業利益率は8%台を維持しており、安定した利益構造が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 104億円 | 108億円 |
| 売上総利益 | 30億円 | 32億円 |
| 売上総利益率(%) | 28.9% | 29.7% |
| 営業利益 | 8億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 8.1% | 8.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が6億円(構成比25%)、支払手数料が3億円(同13%)、採用費が3億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のソフトウェアテスト事業は、エンタープライズ系領域を中心に堅調に推移し増収増益となりました。開発事業はM&A効果で大幅増収となったものの、不採算案件の影響等で損失を計上しました。セキュリティ事業は売上横ばいですが、費用増により減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ソフトウェアテスト事業 | 90億円 | 91億円 | 9億円 | 11億円 | 11.8% |
| 開発事業 | 11億円 | 15億円 | 0.1億円 | -0.6億円 | -4.2% |
| セキュリティ事業 | 2億円 | 2.2億円 | 0.3億円 | 0.1億円 | 5.4% |
| 連結(合計) | 104億円 | 108億円 | 8億円 | 9億円 | 8.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「私たちは品質にコミットし、安心・安全なICT社会の実現に貢献します」「私たちはICT社会に貢献する人材を育成します」「私たちは多くの価値を創り、お客様と共に歓びを分かち合います」を企業理念として掲げています。提供サービスを通じて、豊かで安全なICT社会の実現へ貢献することを目指しています。
■(2) 経営戦略等
同社グループは「品質向上のトータルサポート企業」として、ソフトウェア開発の全工程で品質向上支援サービスを展開しています。10年ビジョンとして「ソフトウェアテスト市場の社会的価値を高めるバリューアッププラットフォーマーへ」を掲げ、ナレッジの普及や、テストツール・教育事業など人に依存しないビジネスモデルの拡充により、生産性向上に注力しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画において、AI技術拡大による事業機会の活用とリスク排除を目的に、「生成AIテスト設計ツール」の開発へ積極投資を行う方針へ転換しました。経営上の目標達成状況を判断する指標としては、売上高増加率、売上総利益率、および人材確保の観点から営業利益率を重視しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「生成AIテストツール開発への積極投資」を基本方針とし、ツールや教育サービスの拡大を通じて業界全体の技術力向上を目指します。また、人的資本への投資拡大、エンタープライズ領域の開拓、M&Aによる事業ポートフォリオの拡大と組織強化を重要課題として掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本への効率的投資を最重要課題とし、特にPM層やハイレイヤー人材の拡充のため、リファラル採用や社内研修メソッドの充実、外部人材の活用を展開しています。独自の教育制度により、未経験者でもエンジニアに育成できる体制を強みとしています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.3歳 | 4.9年 | 6,023,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.8% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 55.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 58.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 60.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(78.9%)、バルゼミ受講者数(2,306人)、無償系セミナー受講者数(4,855人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ソフトウェアテスト業務のアウトソーシングについて
現在、ソフトウェアテストのアウトソーシング需要は拡大していますが、経済状況の変化や顧客の方針転換により、テスト業務の内製化が進んだ場合、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材の確保について
事業拡大に伴い優秀な人材の確保と育成が重要課題です。ソフトウェアテスト市場やIT市場の拡大により人材獲得競争が激化し、人材の流出や確保困難な状況が生じた場合、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 法的規制に関するリスク
労働者派遣事業の許可を取得して事業を行っていますが、労働者派遣法などの関係法令の改正により事業が制約されたり、経済的負担が増加したりする場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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