インフォネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

インフォネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するインフォネットは、自社開発のCMSプロダクトを主軸としたWebサイト構築や運用保守、AIを利用した検索システム等を提供する企業です。直近の業績トレンドは、売上高が堅調に拡大している一方で、積極的な事業投資や減損損失の計上により減益および最終赤字となっています。


※本記事は、インフォネットの有価証券報告書(第24期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. インフォネットってどんな会社?


自社開発のCMSを用いたWebサイト構築や、AIプロダクトを活用した業務効率化支援を展開しています。

(1) 会社概要


2002年に設立され、Webサイトの受託開発事業を開始しました。2011年に自社開発システム「infoCMS」の販売を本格化し、2019年に新興市場へ上場を果たしました。その後、M&A等を通じてアイアクトなどの企業を子会社化し、2024年には次世代ノーコードCMS「LENSAhub」の提供を開始しています。

現在の従業員数は連結で141名、単体で121名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は同社役員が代表を務めるフォーカスキャピタルで、第2位も同社役員が代表を務めるパスファインダーとなっており、経営陣に関連する法人が高い持株比率を占めています。

氏名 持株比率
フォーカスキャピタル 43.06%
パスファインダー 3.80%
佐野史和 3.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は古宿智氏が務めており、社外取締役は1名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
古宿智 代表取締役社長 リリカラ等を経て、日本ワムネットでマネージャーを経験。2020年に同社執行役員に就任。複数の役職を経て2025年より現職。
江村真人 取締役会長 中央監査法人を経て、フォーカスキャピタルマネジメント代表取締役などを歴任。2017年に同社取締役に就任し、2025年より現職。
南嶋将人 取締役 現代広告社などを経て、2011年に同社入社。デザイン部長や執行役員制作開発本部長などを経て、2018年より現職。
西原中也 取締役 毎日コミュニケーションズ等を経て、2001年にアイアクト入社。同社CTOなどを経て、2023年より現職。
山田篤 取締役 a2mediaを経て、2021年に同社入社。執行役員メディアプロデュース部ゼネラルマネージャー等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、宇都宮賢二(UGOH取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Web受託開発・ASPサービス事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) CMS・Webインテグレーション事業


同社は、企業や官公庁向けに自社開発の「infoCMS」や次世代ノーコードCMS「LENSAhub」を活用したWebサイトの構築から運用保守までをワンストップで提供しています。専門知識がなくても容易に更新でき、高いセキュリティを備えている点が特徴です。

主な収益源は、新規導入時のWebサイト構築代金および、納品後に継続して発生するCMSプログラムやサーバ環境の運用保守にかかる月額利用料です。本事業は主にインフォネットが運営しています。

(2) AIプロダクト・周辺サービス事業


アクセス分析ツール「MEGLASS finder」やAIライティングサービス「LENSAwriter」のほか、IBM watsonxを利用したサイト内検索システム「Cogmo Search」など、業務効率化やDXを推進するサービスを提供しています。

システムの導入費用や月額利用料などを顧客企業から受け取る収益モデルとなっています。周辺商品の開発やAIプロダクトの提供は、インフォネットおよび子会社のアイアクトが中心となって運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は増加傾向にあり、20億円規模まで安定して拡大しています。利益面では経常利益が長らく黒字基調で推移していましたが、直近の2026年3月期は新規事業等への先行投資や減損損失の計上などが影響して大幅な減益となり、最終赤字を計上する結果となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 17.4億円 17.0億円 17.7億円 20.1億円 20.9億円
経常利益 -0.6億円 1.4億円 1.7億円 1.6億円 0.5億円
利益率(%) -3.3% 8.2% 9.5% 8.2% 2.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.9億円 0.8億円 1.0億円 1.0億円 -0.3億円

(2) 損益計算書


売上高は前年を上回って成長したものの、開発体制強化や本社移転に伴う費用の増加、減損損失の計上などが重なり、営業利益および営業利益率は低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 20.1億円 20.9億円
売上総利益 8.6億円 8.3億円
売上総利益率(%) 42.9% 39.6%
営業利益 1.7億円 0.6億円
営業利益率(%) 8.4% 2.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が2.0億円(構成比26%)、役員報酬が1.0億円(同13%)を占めています。売上原価の主な内訳は、経費が5.7億円(構成比53%)、労務費が4.7億円(同43%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントであるため、主要サービス別の売上高推移を比較します。主力の受託開発サービスとAIサービスが前年から大きく伸びており、事業全体の売上拡大を力強く牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
受託開発サービス 8.7億円 9.3億円
月額利用料サービス 8.5億円 7.8億円
AIサービス 2.5億円 3.5億円
SES・その他 0.4億円 0.2億円
連結(合計) 20.1億円 20.9億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2.2億円 0.9億円
投資CF -4.3億円 -1.8億円
財務CF 2.9億円 -1.3億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


PURPOSEとして「Change to Value, Chain the Value(価値をつくり、その価値は、社会全体へ連鎖する。)」を掲げ、MISSIONに「技術と創造力で企業のコミュニケーションに進化をもたらし、成長を加速させる。」を定めて経営を行っています。

(2) 企業文化


VALUEとして「Do Fast(スピード・プロフェッショナル)」「Be First(挑戦・リーダーシップ)」「In Humor(遊び心・創造性)」の3つを大切にし、新しい技術を素早く取り入れながら、当事者意識と誠実さを持って顧客を笑顔にする文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


より高い成長性と収益性を確保する観点から、売上高成長率、営業利益率、および月額利用料サービスに係る売上高成長率を重要な経営指標と捉え、企業価値の持続的な向上を目指して事業を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


自社CMSを基盤とした「コーポレートコミュニケーションの総合支援」へ事業領域を拡大し、アイアクトを中核とするAI事業の成長を加速させることを重点戦略としています。さらにアライアンスを交えた顧客基盤の強化や、安定的な収益構造の構築を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


柔軟な思考力や論理的分析力、実行力を備えた多様な人材の採用と育成を重視しています。制作プロセスへのAI導入によって効率化を進め、高付加価値な成長事業への人員シフトや、処遇・評価制度の刷新を伴う教育プログラムの構築を強力に推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.5歳 4.6年 5,024,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 78.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) -

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気動向及び業界動向の変動
企業のIT投資需要は拡大傾向にありますが、インバウンド需要や金利・為替の変動等により先行きが不透明な状況が続いた場合、新規需要の減少を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術革新への対応
AI関連技術など革新的な技術が日々開発される市場において、常に市場動向を正確に把握して新製品を適時に開発できない場合、競争優位性が失われ、成長戦略に支障をきたす可能性があります。

(3) 特定の製品への高い依存
事業の多くが主力製品である「infoCMS」に依存しており、競合会社の新規参入や競争激化によって同製品の優位性が失われた場合、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。