ワシントンホテル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ワシントンホテル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード、名証メイン市場に上場するホテル運営会社です。「ワシントンホテルプラザ」および「ワシントンR&Bホテル」ブランドで全国にホテルを展開しています。2025年3月期は、宿泊需要の回復や客室単価の上昇により、大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、ワシントンホテル株式会社 の有価証券報告書(第64期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ワシントンホテルってどんな会社?


ビジネスホテルチェーンを全国展開する企業です。2つのホテルブランドとゴルフ場内レストラン運営を行っています。

(1) 会社概要


同社は1961年に名古屋国際ホテルとして設立され、1964年にホテルを開業しました。1969年にはビジネスホテルの先駆けとなる「ワシントンホテル」1号店を開業し、全国展開を開始。1998年には宿泊特化型の「R&Bホテル」1号店を開業しました。2019年に東証・名証の市場第二部に上場し、現在はスタンダード・メイン市場へ移行しています。

同社(単体)の従業員数は383名です。筆頭株主は同社取締役が社長を務める株式会社丸栄で、第2位は「ワシントンホテル」ブランドを共同で展開する藤田観光株式会社です。第3位はカストディ業務を行う金融機関となっています。

氏名 持株比率
丸栄 11.82%
藤田観光 7.10%
BNP PARIBAS SINGAPORE/2S/JASDEC/MBBC LIENT ASSETS 2 4.95%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長は内田和男氏、代表取締役社長社長執行役員は長谷川太氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
内田 和男 代表取締役会長 1968年同社入社。総務人事部部長、R&B事業部事業部長などを経て2009年代表取締役社長に就任。2024年6月より現職。
長谷川 太 代表取締役社長社長執行役員 1987年同社入社。企画開発部、事業改革部などを経て2014年取締役。営業本部本部長などを歴任し2024年6月より現職。
井戸川 学 取締役常務執行役員営業本部本部長 1990年同社入社。総務人事部部長、新大阪ワシントンホテルプラザ総支配人などを経て2024年12月より現職。
田中 良佐 取締役執行役員営業本部副本部長 1992年同社入社。R&Bホテル事業部事業部長などを経て2020年取締役。2024年12月より現職。
布目 浩 取締役執行役員経営企画部部長 1998年同社入社。経営企画室室長、執行役員経営企画部部長を経て2024年6月より現職。
山口 正樹 取締役(監査等委員) 1988年同社入社。監査室室長を経て2024年6月より現職。


社外取締役は、小県昌彦(丸栄代表取締役社長)、小島浩司(監査法人東海会計社代表社員)、名越陽子(グランツ法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ホテル事業」の単一セグメントで事業を展開しており、ブランド別に「ワシントンホテルプラザ」「ワシントンR&Bホテル」等を運営しています。

(1) ワシントンホテルプラザ


主要駅や繁華街に近い立地で展開するビジネスホテルブランドです。シングルから多様な客室タイプを備え、飲食店や宴会場を併設する施設もあります。朝食では地元食材を活かした郷土料理を提供し、ビジネスパーソンを中心に支持されています。

収益は、宿泊客からの室料、およびレストラン・宴会場の利用者からの飲食代金等が主な源泉です。運営は同社が行っています。

(2) ワシントンR&Bホテル


大都市圏を中心に展開する宿泊特化型ホテルブランドです。機能的な客室と焼きたてパンの朝食サービスが特徴で、少人数運営による効率化でリーズナブルな価格を実現しています。2025年4月よりブランド名称を変更し、ツインルームの新設など幅広い客層への対応を進めています。

収益は、主に宿泊客からの室料収入です。運営は同社が行っています。

(3) その他


上記ホテルブランド以外の事業として、ゴルフ場のクラブハウス内レストランの運営受託などを行っています。

収益は、ゴルフ場利用者への飲食提供による代金や運営受託料です。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期にかけての推移を見ると、コロナ禍の影響を受けた時期から回復基調にあります。特に直近では黒字転換を果たし、利益水準も向上しています。なお、同社は2022年3月期より連結財務諸表を作成しておらず、単体での開示となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益(または売上高) 48億円 - - - -
経常利益 -73億円 - - - -
利益率(%) -152.3% - - - -
当期利益(親会社所有者帰属) -75億円 -33億円 32億円 8億円 20億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、利益面で大幅な改善が見られます。売上総利益、営業利益ともに増加しており、営業利益率は2桁台に達しています。コストコントロールと売上の回復が利益率の向上に寄与していることが伺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 - -
売上総利益 22億円 30億円
売上総利益率(%) - -
営業利益 15億円 22億円
営業利益率(%) - -


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が2.2億円(構成比30.2%)、支払報酬が0.9億円(同11.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


両事業ともに売上高が増加しており、特にワシントンホテルプラザ事業の利益の伸びが顕著です。R&Bホテル事業も増収増益を達成しており、宿泊需要の回復や単価上昇の取り組みが奏功しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ワシントンホテルプラザ事業 93億円 106億円 4億円 8億円 7.7%
R&Bホテル事業 87億円 105億円 11億円 15億円 13.8%
その他 3億円 2億円 - -0億円 -
連結(合計) 183億円 213億円 15億円 22億円 10.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同セクションのデータはありません。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「安全・清潔・親切心あふれる、リーズナブルなホテル事業を通じて、旅する人と働く人を幸せにする。」を経営理念として掲げています。この理念のもと、ホスピタリティあふれる事業活動と環境保全・地域発展の課題に取り組むことで、持続可能な社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「自主行動基準」などを定め、法令や社会規範・倫理の遵守を重視しています。また、地域社会との連帯と協調を図り、地域の習慣・文化・風土を尊重した事業運営を心がける姿勢を持っています。お客様、株主、取引先、地域社会、働く人に信頼される「正直で誠実な企業」を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、高い収益性を維持し企業価値を向上させるため、売上高営業利益率を重要な経営指標として掲げています。具体的には、新規出店やリニューアルによる収入増とコスト管理に努めています。

* 2026年3月期:売上高22,900百万円
* 2026年3月期:営業利益2,640百万円
* 2026年3月期:売上高営業利益率11.5%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、商品力の向上、販売促進の強化、収益力の向上を重点施策としています。具体的には、ワシントンR&Bホテルの大規模リニューアルによるツインルーム新設や、訪日客向けメニューの強化を進めます。また、名称変更したブランドの訴求やデジタルマーケティングの強化、レベニューマネジメントの高度化による単価向上に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様性を含めた人材確保と育成を最重要課題と捉えています。新卒採用の再開や第二新卒の強化に加え、外国人、シニア層、障害者の積極活用を進めています。育成面ではOJTを基本としつつ、動画研修や選抜・階層別研修の体系化を図っています。また、マルチジョブの推進により、効率的な人員配置とスキルアップを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.5歳 10.0年 4,623,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 40.3%
男性育児休業取得率 25.0%
男女賃金差異(全労働者) 75.6%
男女賃金差異(正規) 80.5%
男女賃金差異(非正規) 94.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員退職率(11.2%)、外国人社員数(39人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済、金融動向に伴うリスク


宿泊需要は景気動向や給与水準の影響を受けやすく、景気減退により需要が減少する可能性があります。また、有利子負債には金利変動の影響を受けるものが含まれており、金利上昇によるコスト増加のリスクがあります。国際情勢の変化による燃料価格の高騰もリスク要因です。

(2) 競合他社の出店、競争過熱に伴うリスク


既存の競合に加え、異業種からの参入による競争激化で稼働率が低下する可能性があります。また、過当競争による価格下落が売上減少につながるリスクがあります。

(3) レピュテーションリスク


同社と藤田観光株式会社は独立した会社ですが、「ワシントンホテル」という商標を共同出願しチェーン展開しているため、一般消費者等が経営母体を誤認する可能性があります。そのため、同ブランドで問題が発生した場合、同社の評判にも影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。