ワシントンホテル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ワシントンホテル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ワシントンホテルは東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所メイン市場に上場し、ワシントンホテルプラザやワシントンR&Bホテルなどの事業を展開する企業です。直近の業績では、宿泊需要の堅調な推移やリニューアルによる客室単価上昇が寄与し、大幅な増収増益を達成して成長を続けています。


※本記事は、ワシントンホテル株式会社の有価証券報告書(第65期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ワシントンホテルってどんな会社?


同社は全国でビジネスホテルを展開し、リーズナブルな価格で快適な宿泊サービスを提供しています。

(1) 会社概要


1961年5月に名古屋国際ホテルとして設立され、1964年に名古屋国際ホテルを開業しました。1969年にワシントンホテル1号店を開業して以降、全国へ出店を拡大しています。1998年にR&Bホテル1号店を開業し、2019年に東京証券取引所および名古屋証券取引所の市場第二部へ上場を果たしました。

筆頭株主は事業会社の興和ファシリティズで、第2位は業務提携先である藤田観光です。現在の従業員数は単体で428名となっています。

氏名 持株比率
興和ファシリティズ 11.81%
藤田観光 7.10%
THE CHASE MANHATTAN BANK, N.A. LONDON SPECIAL ACCOUNT NO.1 (常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 4.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は長谷川太氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
長谷川太 代表取締役社長社長執行役員 1987年11月同社入社。企画開発部東京開発事務所所長、奈良ワシントンホテルプラザ総支配人等を経て、2021年6月より取締役常務執行役員。2024年6月より現職。
内田和男 代表取締役会長 1968年3月同社入社。鳥取ワシントンホテル総支配人、R&B事業部事業部長等を経て、2009年6月より代表取締役社長。2024年6月より現職。
井戸川学 取締役常務執行役員営業本部本部長 1990年3月同社入社。名古屋錦ワシントンホテルプラザ総支配人、総務人事部部長等を経て、2020年6月より取締役執行役員。2024年12月より現職。
田中良佐 取締役執行役員事業開発部部長 1992年4月同社入社。R&B事業部室長、R&Bホテル事業部事業部長等を経て、2020年6月より取締役執行役員。2025年9月より現職。
布目浩 取締役執行役員経営企画部部長 1998年3月同社入社。経営企画室室長を経て、2021年6月より執行役員経営企画部部長。2024年6月より現職。
山口正樹 取締役(監査等委員) 1988年8月同社入社。監査室室長等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、小島浩司(監査法人東海会計社代表社員)、名越陽子(グランツ法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ホテル事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) ワシントンホテルプラザ


主要駅や繁華街に近い立地に展開し、ビジネスパーソンを中心に低料金で安全・快適な宿泊サービスを提供しています。シングルからダブルまで多様な客室を保有し、朝食では地元食材を活かした郷土料理を提供しています。

顧客からの宿泊料金や飲食代金を主な収益源としています。直営ホテルに加えて飲食店や宴会場を併設した施設も展開しており、さまざまな用途での利用ニーズに対応しています。運営は主に同社が行っています。

(2) ワシントンR&Bホテル


大都市圏を中心に展開する宿泊特化型ホテルとして、ビジネスや観光など幅広い顧客にサービスを提供しています。少人数オペレーションによる業務効率化を徹底し、リーズナブルな価格での提供を実現しています。

顧客からの宿泊料金を主な収益源としています。近年はツインルームやコネクティングルームなどを新設し、複数名での利用ニーズにも対応しています。運営は主に同社が行っています。

(3) その他事業


ゴルフ場クラブハウス内レストランの運営受託を行っており、ゴルフ場を訪れる利用客向けに飲食サービスを提供しています。

運営受託に伴う委託者からの手数料や飲食代金などを収益源としています。ただし、同社の収益全体に占める割合はごくわずかとなっています。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、新型コロナウイルス感染症の影響による落ち込みから着実に回復を遂げています。直近では国内外の旅行需要の増加やレベニューマネジメントの高度化が奏功し、売上高および各段階利益ともに順調に拡大を続けており、力強い成長軌道に乗っています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 85.5億円 175.3億円 182.9億円 213.5億円 241.9億円
経常利益 -31.1億円 28.2億円 9.4億円 17.6億円 32.8億円
利益率(%) -36.4% 16.1% 5.1% 8.2% 13.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -32.6億円 32.2億円 8.4億円 20.2億円 30.3億円

(2) 損益計算書


宿泊単価の上昇と客室稼働率の改善により売上高が大きく伸びています。増収効果に加えて各種コストの適正化も進んでおり、売上総利益率および営業利益率ともに前年から大きく改善し、高収益体質へと移行しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 213.5億円 241.9億円
売上総利益 29.8億円 46.6億円
売上総利益率(%) 14.0% 19.3%
営業利益 22.4億円 38.2億円
営業利益率(%) 10.5% 15.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が2.5億円(構成比29.2%)、支払報酬が1.1億円(同13.6%)を占めています。また、売上原価のうち、賃借料が50.8億円(構成比26.0%)、建物管理費が21.6億円(同11.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


各事業部門の業績を見ると、ワシントンホテルプラザ事業とワシントンR&Bホテル事業の双方が堅調に推移しています。リニューアル完了施設の収益性向上やレベニューマネジメントの高度化が寄与し、両事業ともに前年から大幅な増収増益を達成して全体の成長を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ワシントンホテルプラザ事業 106.1億円 118.2億円 8.2億円 13.3億円 11.2%
ワシントンR&Bホテル事業 105.2億円 121.7億円 14.5億円 25.1億円 20.6%
その他 2.1億円 2.0億円 -0.3億円 -0.2億円 -10.9%
連結(合計) 213.5億円 241.9億円 22.4億円 38.2億円 15.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を用いて投資と借入金の返済を行う健全型となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 34.2億円 45.7億円
投資CF -15.5億円 -15.9億円
財務CF -23.7億円 -25.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は28.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「リーズナブルなホテル事業を通じて、『よかった、また来るよ』を実現し、お客様と働く人を幸せにする。」を経営理念として掲げています。ホスピタリティ溢れる事業活動を展開しつつ、環境保全や地域発展といった社会的課題の解決にも取り組み、持続可能な社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、法令を遵守し社会倫理に基づいた公正な事業活動を実践する「正直で誠実な企業」を目指しています。また、国籍や性別などで差別を受けない健全な職場環境を確保し、仕事を通じた資質の向上と人間としての成長を重視する文化が根付いています。地域社会の習慣・文化・風土を尊重した事業運営も大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、高い収益性を維持して企業価値を向上させていくため、「売上高営業利益率」を重要な経営指標として掲げています。新規出店やリニューアルによる収入増加とコスト管理の徹底により、2027年3月期の業績予想として以下の数値目標を設定しています。

* 売上高:259億円
* 営業利益:41億円
* 売上高営業利益率:15.8%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、国内外の旅行代理店や法人への営業活動強化とデジタルマーケティングの進化により収益性の向上を図ります。また、全館リニューアルやコネクティングルームの新設を通じて商品価値を高めつつ、藤田観光との会員プログラム相互利用により顧客基盤を強化し、着実な拠点拡大を推進していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、若年層を中心とした採用強化と多様な人材の登用を推進しています。働き方の創出により外国人やシニア層の活躍機会を広げるとともに、ライフステージに合わせた柔軟な働き方の導入を検討しています。また、動画研修や接遇専門研修を通じた全社的な接遇力向上と、従業員のスキルアップ支援に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.4歳 9.1年 4,902,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 40.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 81.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 94.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員退職率(8.3%)、外国人社員数(43人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済・金融動向による影響


景気減退による企業活動の縮小や給与水準の低下により、ビジネスおよび観光の宿泊需要が減少する可能性があります。また、金利上昇による調達コストの増加や、国際情勢の変動に伴うエネルギー価格の高騰が収益に影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 市場の競争激化と価格競争


既存のホテルチェーンに加えて異業種からの市場参入が相次いだ場合、競争の激化により客室稼働率が低下する可能性があります。さらに、過当競争による価格下落が引き起こされた場合、売上高の減少につながる恐れがあります。

(3) 人的サービスへの依存と人材確保


ホテル事業は人的サービスに依存する面が大きいため、採用難による人材不足や他社への人材流出が事業運営に支障をきたす可能性があります。加えて、最低賃金や社会保険料率の引き上げによる人件費の上昇が、経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 賃借不動産の継続利用に関するリスク


同社はホテルや飲食店舗の不動産を長期賃借しているケースがあり、不動産所有者が破綻した場合などは当該事業所の継続が困難になる可能性があります。また、自社の都合で契約を中途解約する際には、未経過賃料の負担が発生するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。