ランサーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ランサーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するランサーズは、企業とフリーランスを繋ぐプラットフォーム事業を展開しています。2025年3月期は、AI関連の需要増加やエージェントサービスの拡大により、売上高は微増ながらも営業利益等の各利益項目は前期比で大幅な増益となり、黒字化を定着させています。


※本記事は、ランサーズ株式会社の有価証券報告書(第17期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ランサーズってどんな会社?

インターネット上で個人と企業をマッチングするプラットフォームを運営し、企業のAX支援へ転換を図る会社です。

(1) 会社概要

2008年4月に株式会社リートとして設立され、同年12月にクラウドソーシングサービス「Lancers」をリリースしました。2012年5月に現社名へ変更し、2019年12月に東京証券取引所マザーズへ上場しました。2025年5月にはコンサルティングを行う子会社を設立し、事業領域を拡大しています。

連結従業員数は141名、単体従業員数は141名です。筆頭株主は創業者の秋好陽介氏で、第2位はネット証券大手のSBI証券、第3位は人材サービス大手のパーソルホールディングスです。

氏名 持株比率
秋好 陽介 45.43%
SBI証券 6.15%
パーソルホールディングス 4.60%

(2) 経営陣

同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表者は代表取締役社長 CEOの秋好陽介氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
秋好 陽介 代表取締役社長 CEO 2005年4月ニフティ入社。2008年4月同社設立、代表取締役社長。2023年3月より現職。
後藤 信彦 取締役 兼執行役員 1996年4月富士フイルム入社。2001年ニフティ入社、取締役執行役員を経て、2018年4月同社入社。2024年6月より現職。
上野 諒一 取締役 兼執行役員 2014年1月同社入社。オンラインマッチング事業部部長、MENTA取締役、マーケットプレイス事業本部長を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、加藤丈幸(パーソルベンチャーパートナーズ代表パートナー)、村上臣(Shin&Co.代表取締役)、村上未来(somebuddy代表取締役)、永沢徹(永沢総合法律事務所代表弁護士)、古川徳厚(グロースパートナーズ代表取締役)です。

2. 事業内容

同社グループは、「プラットフォーム事業」および「その他」事業を展開しています。

プラットフォーム事業(セルフマッチング)

オンラインで企業が直接利用するサービスで、主力サービスは「ランサーズ」です。クライアントからの依頼に対してフリーランスが見積提案を行うプロジェクト方式や、多数の提案から選ぶコンペ・タスク方式、スキルを出品するパッケージ方式などの依頼形式があります。

収益源は、依頼金額に伴うシステム手数料およびオプション利用料です。運営は主にランサーズが行っています。

プラットフォーム事業(エージェントマッチング)

同社グループが介在し、プロフェッショナル人材を紹介する事業です。IT人材を紹介する「ランサーズ テックエージェント」や、経営課題に応じたフリーコンサルタントを紹介する「ランサーズ プロフェッショナルエージェント」を展開し、精度の高いマッチングを行っています。

収益源は、業務委託料とシステム手数料の総額を売上として計上しています。運営は主にランサーズが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高は第15期にピークを迎えた後、横ばいで推移していますが、利益面では第14期、15期の赤字から回復し、第16期以降は黒字化を達成しています。当期は増益基調を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 39億円 41億円 48億円 46億円 46億円
経常利益 0.5億円 -3.6億円 -2.4億円 0.8億円 1.2億円
利益率(%) 1.3% -8.8% -5.1% 1.8% 2.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.1億円 -6.5億円 -2.0億円 1.8億円 1.8億円

(2) 損益計算書

売上高は前期比微増となりましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。一方で、販売費及び一般管理費の削減が進んだことで、営業利益は前期比で増加し、利益率も改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 46億円 46億円
売上総利益 22億円 21億円
売上総利益率(%) 48.0% 44.8%
営業利益 0.8億円 1.1億円
営業利益率(%) 1.7% 2.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が7億円(構成比35%)、広告宣伝費が2億円(同9%)を占めています。売上原価のうち、外注費が25億円(構成比99%)を占めています。

(3) セグメント収益

※同社グループはプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、本項目の記載はありません。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業CF・投資CF・財務CFがいずれもマイナスであり、本業・投資・財務のキャッシュ・フローが流出している「末期型」を示しています。ただし、営業CFのマイナスは主に預り金(営業債務)の減少によるものであり、税金等調整前当期純利益はプラスを確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3.2億円 -0.4億円
投資CF -0.9億円 -0.5億円
財務CF 3.5億円 -0.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「個のエンパワーメント」をミッションに掲げています。また、ビジョンとして「すべてのビジネスを『ランサーの力』で前進させる」、「誰もが自分らしく才能を発揮し、『誰かのプロ』になれる社会をつくる」を掲げ、企業には優秀な人材を、個人には時間と場所にとらわれない働き方を提供するプラットフォームを展開しています。

(2) 企業文化

同社グループは、行動指針として「すべてはユーザーのために」「101をやり切る」「あるべきで考え、大胆に行動する」「アクション・アジャイル」「チームクリエイター」を掲げています。ユニークな企業文化をグループ全体で更に浸透・発展させるべく、時代に沿った新たな人事制度の構築を行っています。

(3) 経営計画・目標

同社グループは、「日本の産業をAX(AIトランスフォーメーション)でアップデートする」を経営コンセプトに掲げ、従来の「フリーランス人材のマッチングプラットフォーム」から、企業のAX戦略策定から実装までを支援する「ハイブリッド型AXカンパニー」への転換を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策

AIの普及による環境変化を受け、人材供給に留まらない包括的なAXサービスの提供を推進します。具体的には、職種ごとのAI活用スキルの体系化によるAX人材基盤の強化、AIエージェント開発によるAIプロダクトの強化、企業のAX戦略策定から実装までを支援するAXコンサル機能の強化に注力し、持続可能な成長基盤を構築します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

事業の継続的な成長のため、ミッション・ビジョン・行動指針に共感した優秀な人材の採用と、強い企業文化の醸成を重視しています。また、AI時代に付加価値の高いスキルを有するプロフェッショナル人材の確保に向け、「MENTA」や「ランサーズAI大学」などの個人向けサービスを強化し、人材の集客と定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 34.0歳 3.4年 5,125,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.6%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) -%
男女賃金差異(正規雇用) -%
男女賃金差異(非正規) -%


※男女の賃金の差異については有価証券報告書に記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(連結従業員)(38.6%)、女性労働者の産休・育休取得率(100.0%)、年次有給休暇取得率(79%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競争環境の変化

インターネットを活用した労働分野には多くの企業が参入しており、同業他社との競争が激化しています。十分な差別化が図れない場合や、事業領域の構造自体に革新的な変化が発生した場合には、事業や業績に影響を与える可能性があります。同社はユーザビリティの追求や安全性の確保により競争力の向上を図っています。

(2) 新規事業の不確実性

事業規模の拡大と高収益化を目指し、新規事業開発に積極的に取り組む方針ですが、新規事業の立ち上げには既存事業より高いリスクがあります。入念な市場分析等を行っても計画通りに進まない場合、投資資金を回収できず業績に影響を与える可能性があります。同社はモニタリング体制を強化し、影響を最小限に留めるよう努めています。

(3) 特定人物への依存

代表取締役社長 CEOの秋好陽介氏は創業者であり、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を果たしています。何らかの理由で同氏の業務継続が困難になった場合、事業や業績に影響を与える可能性があります。同社は役員及び幹部社員の情報共有や経営組織の強化を図り、過度に依存しない体制整備を進めています。

(4) 情報セキュリティ

プラットフォーム事業において個人情報や機密情報を保有しており、外部漏洩や不正利用、改ざんのリスクがあります。これらが発生し社会的信用が失墜した場合、業績に影響を与える可能性があります。同社は情報セキュリティポリシーの制定やプライバシーマークの取得、社員教育等を通じて情報管理を徹底する体制を構築しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。