※本記事は、ランサーズ株式会社の有価証券報告書(第18期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ランサーズってどんな会社?
企業向けAI・DX支援とフリーランス向けプラットフォームを統合的に展開する企業です。
■(1) 会社概要
2008年に個のエンパワーメントを目的として設立され、クラウドソーシングサービスをリリースしました。2019年にマザーズ市場(現グロース市場)へ上場を果たしています。近年は生成AIの普及等に対応するため、2025年にランサーズ・ストラテジック・コンサルティング等の子会社を設立・買収し、AIトランスフォーメーション(AX)を支援する体制を強化しています。
当期末時点の従業員数は連結で150名、単体で126名体制となっています。筆頭株主は創業者の秋好陽介氏で、第2位は事業提携を行うパーソルホールディングス、第3位は資本業務提携先の丸井グループが名を連ねており、強力な事業パートナーとの連携関係がうかがえます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 秋好 陽介 | 45.96% |
| パーソルホールディングス | 4.66% |
| 丸井グループ | 2.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長 CEOは秋好陽介氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 秋好 陽介 | 代表取締役社長 CEO | 2005年ニフティ入社。2008年リート(現同社)設立、代表取締役社長。2023年より現職。 |
| 後藤 信彦 | 取締役 兼 執行役員 | 1996年富士フイルム入社。2001年ニフティ入社。2018年同社入社。2024年より現職。 |
| 上野 諒一 | 取締役 兼 執行役員 | 2014年同社入社。2020年オンラインマッチング事業部部長兼執行役員。2024年より現職。 |
社外取締役は、加藤丈幸(Temp Innovation Fund合同会社代表パートナー)、村上臣(Shin&Co.代表取締役)、村上未来(somebuddy代表取締役)、永沢徹(永沢総合法律事務所代表弁護士)、古川徳厚(グロースパートナーズ代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「プラットフォーム事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) マッチングプラットフォーム
オンライン上で企業が直接利用し、フリーランス(ランサー)に対して仕事を発注するサービスを提供しています。依頼方式には、見積もりから1名を決定するプロジェクト方式や、多数の提案から選ぶコンペ方式、個人のスキルを購入するパッケージ方式などがあります。
依頼金額に伴うシステム手数料やオプション利用料を収益の源泉としています。サービスの運営は主に同社が行い、サイトの安全性や健全性を確保するための24時間監視体制も構築しています。
■(2) エージェント
同社グループが企業とフリーランスの間に介在し、要件定義を行った上でプロフェッショナル人材を紹介するサービスです。IT人材を紹介するテックエージェントや、経営課題に応じてフリーコンサルタントを紹介するプロフェッショナルエージェントを展開しています。
企業から受け取る業務委託料とシステム手数料の総額を売上として計上する収益モデルです。運営は同社が行い、精度の高いマッチングを通じて企業の採用課題やDX推進を支援しています。
■(3) コンサルティング&ソリューション
大企業を中心としたクライアントに対して、AI戦略の策定から開発・実装までを一気通貫で支援するサービスです。社員コンサルタントやエンジニアがプロジェクトに直接従事し、外部のフリーランスとハイブリッドチームを編成して対応します。
プロジェクトの受注金額を収益とするモデルです。運営は同社のほか、子会社であるランサーズ・ストラテジック・コンサルティングやランサーズ・ワンズソリューションなどが連携して推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、初期に損失を計上していたものの、事業構造の転換や生産性の改善が進んだことで黒字転換を果たしています。直近では売上高が順調に拡大し、利益水準も着実に向上している傾向が確認できます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 41億円 | 48億円 | 46億円 | 46億円 | 54億円 |
| 経常利益 | -3.6億円 | -2.4億円 | 0.8億円 | 1.2億円 | 2.1億円 |
| 利益率(%) | -8.8% | -5.1% | 1.8% | 2.5% | 3.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -6.5億円 | -2.0億円 | 1.8億円 | 1.8億円 | 0.9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益も順調に増加しています。販管費を一定水準にコントロールしているため、営業利益が大きく伸びており、収益性の改善が進んでいることが読み取れます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 46億円 | 54億円 |
| 売上総利益 | 21億円 | 21億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.8% | 39.1% |
| 営業利益 | 1.1億円 | 2.0億円 |
| 営業利益率(%) | 2.4% | 3.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が6.7億円(構成比35%)、外注費が1.3億円(同7%)、広告宣伝費が0.9億円(同5%)を占めています。売上原価の主な内訳は外注費等の経費が中心となっています。
■(3) セグメント収益
プラットフォーム事業のみの単一セグメントですが、AIコンサルティング機能の強化や子会社のグループ化等の重点施策が奏功し、売上・利益ともに前期を上回る実績を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 連結(合計) | 46億円 | 54億円 | 1.1億円 | 2.0億円 | 3.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動で安定したキャッシュを生み出し、借入等による資金調達も活用しながら、事業拡大のための投資(M&Aやシステム開発等)を積極的に進める「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.4億円 | 3.7億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | -1.2億円 |
| 財務CF | -0.7億円 | 1.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「個のエンパワーメント」をミッションに、「人と経済の可能性をテクノロジーで解き放つ」をビジョンに掲げています。社会の環境変化を受け、従来のフリーランス人材プラットフォームから、企業のAX(AIトランスフォーメーション)を支援する「ハイブリッド型AXカンパニー」へと転換を図っています。
■(2) 企業文化
「すべてはユーザーのために」「101をやり切る」「あるべきで考え、大胆に行動する」「アクション・アジャイル」「チームクリエイター」という行動指針を定めています。これらの指針に基づくユニークな企業文化をグループ全体で浸透・発展させ、時代に沿った人事制度の構築も進めています。
■(3) 経営計画・目標
経営戦略の軸として、330万人の人材ネットワークを有するプラットフォームを中心とした生産性の高い事業構造の確立を目指しています。人材の多様性確保の観点からは、女性管理職比率について2030年3月までに30%以上とする明確な目標を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「AX人材基盤の強化」「AIプロダクトの強化」「AXコンサル機能の強化」の3つを重点方針としています。希少性の高いAIエキスパートの獲得を最重要施策とし、大手企業等の経営課題をAIで解決する実行力のある変革パートナーとしての価値強化を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
ミッションやビジョンに共感し、事業を牽引できる優秀な人材の確保・育成に注力しています。社内にAI活用専門部署を設け、全社的なAIリテラシー向上と業務変革を推進することで、人員規模に依存しない生産性向上と持続的な利益成長を目指す方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 36.0歳 | 4.2年 | 5,414,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、男女の賃金差異については有報に記載がありません。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 20.0% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(73.0%)、所定外労働時間(15.79時間)、AIエキスパート数(13651人)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 労働関連法規制・市場動向の変化
フリーランス新法の成立等により市場の拡大が見込まれる一方、労働力人口の減少や副業の浸透遅れ、関連法令の予期せぬ改正等が発生した場合、プラットフォーム事業の成長が鈍化し業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新への対応と競争激化
労働分野のプラットフォーム市場は競争が激しく、また生成AI等の急速な技術革新が進行しています。新技術への対応遅れや、それに伴う開発費・人件費の想定以上の増加が生じた場合、競争力低下や収益圧迫のリスクがあります。
■(3) サイトの安全性・健全性の確保
企業と個人が直接やり取りする特性上、不適切な書き込みや取引トラブルが発生するリスクがあります。監視チームによる確認やセキュリティ体制の強化を行っていますが、万が一信用が低下した場合は利用者の離反を招く恐れがあります。



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