※本記事は、株式会社JMDC の有価証券報告書(第12期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. JMDCってどんな会社?
医療ビッグデータの構築・利活用と遠隔画像診断サービスを軸に、持続可能なヘルスケアシステムの実現を目指す企業です。
■(1) 会社概要
2002年に前身会社が設立され、医療データの収集・提供を開始しました。2013年に現法人を設立し前身会社を吸収合併。2018年にドクターネットを子会社化し遠隔医療へ参入しました。2019年に東証マザーズへ上場し、2022年に東証プライムへ移行。2023年にはオムロンが親会社となりました。
連結従業員数は2,187名、単体では488名です。筆頭株主は親会社でヘルスケア機器大手のオムロン、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業時の親会社であったノーリツ鋼機です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| オムロン | 54.24% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.96% |
| ノーリツ鋼機 | 5.81% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長兼CEOは野口亮氏が務めています。取締役会における社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 野口 亮 | 代表取締役社長 兼 CEO | ボストンコンサルティンググループ等を経て、2020年に執行役員就任。製薬本部や保険者支援事業本部等を管掌し、2023年6月より現職。 |
| 松島 陽介 | 取締役会長 | マッキンゼー等を経てノーリツ鋼機副社長等を歴任。2013年より代表取締役社長を務め、2024年6月より現職。 |
| 山元 雄太 | 取締役 | ボストンコンサルティンググループ等を経て、2013年取締役就任。弁護士としても活動し、2020年取締役副社長等を歴任。 |
| 竹田 誠治 | 取締役 | オムロン執行役員専務CFO兼グローバル戦略本部長。オムロンヘルスケア等での海外事業経験を有し、2023年より現職。 |
社外取締役は、李智賢(レイズパートナーズ代表取締役)、霜田恒夫(元協和発酵ケミカル取締役)、林南平(NHパートナーズ代表)、藤岡大祐(ESネクスト有限責任監査法人理事)、渡邊多永子(筑波大学特任准教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ヘルスビッグデータ」および「遠隔医療」事業を展開しています。
■(1) ヘルスビッグデータ
健康保険組合等から受領したレセプト・健診データを匿名加工し、製薬企業や保険会社、アカデミア向けに提供するほか、加入者向けのPHRサービス「Pep Up」や医療機関向けの経営支援サービスを提供しています。
収益源は、製薬企業等からのデータ販売料や分析料、保険者からの保健事業支援料などです。運営は主に同社が行うほか、メディカルデータベースなどの子会社も担っています。
■(2) 遠隔医療
医療機関から送られるCTやMRIなどの医用画像の診断依頼に対し、契約読影医による診断レポートを提供する遠隔読影マッチングサービスを展開しています。
収益源は、医療機関から受領する読影依頼料やシステム利用料です。運営は主に子会社のドクターネットが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間において、売上収益は継続的に増加しており、力強い成長トレンドを示しています。利益面でも、税引前利益は概ね増加基調にあり、特に直近の2025年3月期は高い利益率を維持しながら大幅な増益を達成しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 168億円 | 218億円 | 278億円 | 306億円 | 417億円 |
| 税引前利益 | 36億円 | 48億円 | 59億円 | 54億円 | 85億円 |
| 利益率(%) | 21.7% | 21.9% | 21.1% | 17.6% | 20.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 25億円 | 32億円 | 43億円 | 46億円 | 73億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に伸長しています。営業利益率も前期と比較して上昇しており、収益性が向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 306億円 | 417億円 |
| 売上総利益 | 182億円 | 238億円 |
| 売上総利益率(%) | 59.4% | 57.2% |
| 営業利益 | 55億円 | 87億円 |
| 営業利益率(%) | 17.9% | 20.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が102億円(構成比65%)、減価償却費及び償却費が14億円(同9%)を占めています。売上原価においては、従業員給付費用が69億円(構成比38%)、外注費が43億円(同24%)となっています。
■(3) セグメント収益
ヘルスビッグデータは、製薬企業等との取引拡大やPHRサービスの伸長により大幅な増収増益となりました。遠隔医療も契約医療機関数の増加等により堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ヘルスビッグデータ | 251億円 | 356億円 | 79億円 | 96億円 | 26.8% |
| 遠隔医療 | 56億円 | 61億円 | 21億円 | 22億円 | 36.6% |
| 調整額 | -0.6億円 | -0.4億円 | -7億円 | -9億円 | - |
| 連結(合計) | 306億円 | 417億円 | 92億円 | 109億円 | 26.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、親会社所有者帰属当期利益の計上等により利益剰余金が増加し、資本が拡大しました。
営業活動では、継続・非継続事業からの利益や、債権の減少等により資金が増加しました。
投資活動では、子会社株式の売却や貸付金の回収等により資金が増加した一方、子会社株式の取得や固定資産・無形資産の取得等により資金が使用されました。
財務活動では、長期借入れにより資金が得られましたが、短期・長期借入金の返済により資金が使用されました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.2億円 | 147億円 |
| 投資CF | -249億円 | -35億円 |
| 財務CF | 166億円 | 65億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「健康で豊かな人生をすべての人に」を企業理念として掲げています。データとICTの力で医療費増大や地域格差などの社会課題解決に取り組み、持続可能なヘルスケアシステムの実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「健康経営」を推進しており、活動指針として「社長自ら健康経営を牽引し、会社をあげて健康になることをコミットする」「社員の健康に資する活動を計画し、経営会議にて進捗確認や見直しを行う」「健康経営活動については、従業員と共有し、健康への取組改善へと繋げていく」ことを定めています。
■(3) 経営計画・目標
同社では、経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、EBITDAによる評価を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「高付加価値化(アップセル)」と「データ種類の拡充(クロスセル)」を通じたデータ利活用サービスの取引額最大化を目指しています。また、データ利活用による医療における価値創出や、PHRサービスの普及による医療費適正化ソリューションの提供にも注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営方針の達成に向け、多様な人材の採用、起用を積極的かつ継続的に行いつつ、それぞれの特性や能力を最大限活かせる社内環境の整備や管理職層の教育を進めています。また、従業員の心身の健康維持のため、長時間労働の抑制や有給休暇取得の促進、健康セミナー開催等の取り組みを行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.8歳 | 4.1年 | 8,075,189円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 15.0% |
| 男性育児休業取得率 | 69.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.5% |
| 男女賃金差異(正規) | 69.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 296.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(23%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境について
中長期的な経営戦略を策定する中で、産業動向、新規取引先数、取引額、コスト変動等の様々な前提を置いています。このような前提は必ずしも正しいという保証はなく、前提が誤っていたことによる影響に対応して経営戦略又は事業運営を適時に変更することができない可能性があります。
■(2) 個人情報等の漏洩リスクについて
個人情報取扱事業者として個人情報にかかる義務等の遵守を求められています。人為的過誤や不正アクセス等により、個人情報その他の顧客情報や機密情報が漏洩した場合、損害賠償等が発生する可能性があります。さらに顧客情報の漏洩等が信用低下や企業イメージの悪化につながることで、財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 情報システムへの依存について
レセプトデータの分析や遠隔読影マッチングサービスは、コンピュータシステム及びネットワークに多くを依存しています。セキュリティ強化等の対策を講じていますが、人為的過誤、自然災害、不正アクセス等によりシステムトラブルが発生した場合には、直接損害が生じサービスの低下を招く等の影響を及ぼす他、財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。



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