※本記事は、株式会社ジーネクスト の有価証券報告書(第24期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ジーネクストってどんな会社?
顧客対応窓口の情報共有を効率化するプラットフォーム「Discoveriez」を開発・提供する企業です。
■(1) 会社概要
2001年に有限会社ジーネクストとして設立され、2003年にお客様相談室向けサービス「CRMotion」を開始しました。2019年に全部門での情報共有を可能にする「Discoveriez」へリニューアルし、2021年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2023年には顧客価値共創を目指す「SRM Design Lab」を開設しています。
同社(単体)の従業員数は22名です。筆頭株主は2024年に資本提携契約を締結した経営コンサルティング会社の株式会社舞花で、第2位は創業者の横治祐介氏です。第3位には金融商品取引業者の株式会社SBI証券が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 舞花 | 22.40% |
| 横治 祐介 | 21.08% |
| SBI証券 | 2.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役は村田実氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村田 実 | 代表取締役兼管理管掌 | 博報堂DYデジタル等を経て2018年同社入社。執行役員営業部長、新規事業室長等を歴任し2024年9月より現職。 |
| 小林 潤一 | 取締役事業開発管掌 | トヨタ自動車を経て2021年ヤマモリ商事(現Y&K VENTURE PARTNERS)入社。2024年9月同社入社。 |
| 小沼 忠國 | 取締役 | ヴィンキュラムジャパンを経てUK Holdings設立代表取締役、NYX設立代表取締役。2024年9月より現職。 |
社外取締役は、江頭敬太(ANON代表取締役)、高橋智(アクロスザシー代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ステークホルダーDXプラットフォーム事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) クラウド事業
顧客対応情報を一元管理するプラットフォーム「Discoveriez」をクラウド形式で提供しています。電話・メール・チャットなど多様なチャネルからの声を共有・活用したい企業が主な顧客です。業界ごとのテンプレートやAIオプション機能により、短期間での導入と業務効率化を支援しています。
収益は、主に導入時の環境設定料等の初期費用と、継続的な利用に伴う月額ライセンス利用料(サブスクリプション)から構成されています。運営は同社が行っています。
■(2) オンプレ事業
「Discoveriez」を顧客企業の自社サーバー環境に構築して提供するサービスです。高度なセキュリティ要件や独自のBCP対策を求める企業、あるいは業務フローに合わせた大幅なカスタマイズを必要とする企業が主な顧客となります。
収益は、システム構築に伴う導入料と、導入後のメンテナンス・保守費用から構成されています。クラウド型と同様に、運営は同社が行っています。
■(3) その他
上記プロダクト以外の周辺サービスとして、企業のIT戦略を支援する課題解決プログラム「SRM Design Lab」などを展開しています。顧客企業やパートナー企業と連携し、生活者の声を活用した分析基盤の提案やマーケティング支援などを行っています。
収益は、コンサルティング業務、ラボ型開発、物販などから得ています。パートナーとの共創による課題解決支援を通じ、新たな収益源の確立を目指しており、運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年3月期をピークに一度減少しましたが、その後は6億円台で推移し、直近では増加傾向にあります。一方、利益面では2022年3月期以降、経常損失および当期純損失が続いており、赤字からの脱却が課題となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8.6億円 | 4.9億円 | 6.5億円 | 6.1億円 | 6.9億円 |
| 経常利益 | 1.9億円 | -3.9億円 | -2.4億円 | -1.5億円 | -1.9億円 |
| 利益率(%) | 21.2% | -78.5% | -37.5% | -24.7% | -27.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.8億円 | -4.2億円 | -3.0億円 | -1.5億円 | -2.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価の増加率がそれを上回ったため、売上総利益率は低下しました。また、営業損失および経常損失は前期よりも拡大しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6.1億円 | 6.9億円 |
| 売上総利益 | 2.0億円 | 2.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.0% | 29.5% |
| 営業利益 | -1.5億円 | -1.7億円 |
| 営業利益率(%) | -24.3% | -25.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が1.0億円(構成比25%)、役員報酬が0.5億円(同14%)、研究開発費が0.5億円(同13%)を占めています。売上原価においては、経費(外注費・通信費等)が2.3億円(構成比45%)、材料費が2.2億円(同43%)を占めています。
■(3) セグメント収益
クラウド事業は微減となりましたが、その他事業(SRM Design Lab等)が大きく伸長し、全社の増収を牽引しました。オンプレ事業も堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| クラウド事業 | 4.6億円 | 4.4億円 |
| オンプレ事業 | 0.9億円 | 1.0億円 |
| その他 | 0.6億円 | 1.6億円 |
| 連結(合計) | 6.1億円 | 6.9億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「救済型」のキャッシュ・フロー状態です。本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなっており、これを第三者割当増資などの財務活動による資金調達で補っている状況です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.6億円 | -2.3億円 |
| 投資CF | 0.0億円 | 0.0億円 |
| 財務CF | -0.4億円 | 3.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できず市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ビジネス現場に革命的な「楽」をつくる」というミッションを掲げています。ステークホルダーDXプラットフォームを通じて情報の分断を解消し、無駄な作業を減らして人が本来やるべき創造的な業務に集中できる、楽しく持続可能なビジネス現場の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、経営・従業員・取引先など多様なステークホルダーとの関係性を可視化し、収益拡大と企業価値向上を目指す「SRM(ステークホルダーリレーションシップマネジメント)」という新たな経営戦略・手法を提唱しています。顧客の声(VOC)を社内外で循環させ、現場と経営が同時にイノベーションを起こすことを重視する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は持続的な成長と企業価値向上を目指し、特に「ストック売上高」と「月次解約率(チャーンレート)」を重要な経営指標として位置づけています。
* ストック売上高:408百万円(2025年3月期実績)
* 月次解約率:0.36%(2025年3月期実績)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、主力サービス「Discoveriez」の収益化と新規事業の拡大を柱とした再成長を目指しています。具体的には、AIを活用した新機能「Discoveriez AI」の展開によるアップセル、パートナー企業との共創プログラム「SRM Design Lab」の拡大、およびM&Aを活用した開発体制の内製化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な成長のために優秀な人材の確保と育成を重要課題としています。特にエンジニアの採用・育成に注力するとともに、多様な働き方の推進による採用力の強化や、教育・研修体制の充実を図ることで、既存社員の能力向上を目指しています。また、高い専門性を持つコア人材の採用により内部管理体制の強化も進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.6歳 | 3.0年 | 6,261,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(約30%)、女性役員比率(約33%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 継続企業の前提に関する注記
同社は営業損失と営業キャッシュ・フローのマイナスが継続しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。これに対し、第三者割当増資による資金調達や、収益力強化施策(プラン見直し、AI機能の拡販、赤字サービスの撤退等)を実施し、経営再建に取り組んでいます。
■(2) 情報の流出に係るリスク
事業活動において取引先企業の機密情報や個人情報を保有しているため、サイバー攻撃や人為的ミスによる情報漏洩が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜を招く可能性があります。同社はセキュリティ対策を講じていますが、万一の場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) システムトラブルについて
サービスがインターネット経由で提供されているため、自然災害、事故、サイバー攻撃等によるシステム障害やネットワーク切断が発生した場合、サービスの停止や復旧遅延が生じる可能性があります。これにより、信頼性の低下やクレームが発生し、経営成績に悪影響を与えるリスクがあります。



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