※本記事は、ポート株式会社 の有価証券報告書(第14期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. ポートってどんな会社?
同社は「社会的負債を、次世代の可能性に。」を掲げ、人材やエネルギー領域で成約支援を行う企業です。
■(1) 会社概要
2011年にソーシャルリクルーティングとして設立され、2014年に「キャリアパーク!」の運用を開始しました。2015年に現社名へ変更し、2018年に東証マザーズおよび福証Q-Boardへ上場を果たしています。2022年にはINEを子会社化し、エネルギー領域の事業を本格化させました。
連結従業員数は677名、単体では584名です。筆頭株主は代表取締役社長の春日博文氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は取締役副社長の丸山侑佑氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 春日 博文 | 31.19% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 6.93% |
| 丸山 侑佑 | 4.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は春日博文氏です。取締役会構成員5名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は60.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 春日 博文 | 代表取締役社長 | 2011年4月ソーシャルリクルーティング(現同社)設立、代表取締役社長就任。グループ各社の取締役を兼任し、2024年4月みん就取締役、同年12月HRteam取締役就任。 |
| 丸山 侑佑 | 取締役副社長 | 2009年トライアンフ入社。2012年KLab入社。2013年1月同社入社、同年3月より現職。 |
社外取締役は、大森愛久美(弁護士)、冨岡大悟(公認会計士)、馬渕邦美(元オグルヴィ・ワン・ジャパン代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「人材領域」「エネルギー領域」および「新規・その他領域」事業を展開しています。
■人材領域
就活生向け企業口コミ情報サイト「就活会議」や就活ノウハウ情報サイト「キャリアパーク!」、コミュニティサイト「みん就」等を運営しています。主に就職活動を行う学生や未就業・未経験の若手人材を対象に、情報の提供や就職支援を行っています。
収益は、人材会社向け送客ビジネス「アライアンスサービス」による送客手数料や、求人企業へ直接人材を紹介する「人材紹介サービス」による成約報酬等から得ています。運営は、同社、就活会議、みん就等が担っています。
■エネルギー領域
電力・ガス事業者向けに、WEB集客から成約までを一気通貫で支援するサービスを提供しています。電気代・ガス代の見直しニーズのあるユーザーと事業者をマッチングする「エネチョイス」や「引越手続き.com」等を運営しています。
収益は、電力・ガス事業者への成約支援に対する成果報酬等から得ています。運営は主にINE、Five Lineが行っています。
■新規・その他領域
新規事業として、カードローン情報サイト「マネット」などのメディア運営や、これまでのノウハウを活かした事業開発を行っています。また、オンライン診療等の領域での事業開発も進めています。
収益は、提携する金融機関等への送客による成果報酬や広告掲載料等から得ています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は毎期順調に拡大しており、特に直近では大幅な増収を記録しています。利益面でも、税引前利益および当期利益ともに増加基調にあり、高い利益率を維持しながら成長を続けています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 47億円 | 70億円 | 114億円 | 156億円 | 220億円 |
| 税引前利益 | 2億円 | 6億円 | 17億円 | 21億円 | 29億円 |
| 利益率(%) | 3.4% | 8.1% | 14.6% | 13.8% | 13.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 3億円 | 11億円 | 15億円 | 19億円 |
■(2) 損益計算書
売上収益の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しています。営業利益率は前年からやや上昇し、収益性が向上していることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 156億円 | 220億円 |
| 売上総利益 | 66億円 | 70億円 |
| 売上総利益率(%) | 42.7% | 31.8% |
| 営業利益 | 22億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | 14.2% | 13.6% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が75億円(構成比46.4%)、給料及び手当が21億円(同13.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
成約支援事業単一セグメントですが、内訳としてはエネルギー領域が大きく伸長し、売上全体の約半分を占めるまでに成長しました。人材領域も堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| Total | 156億円 | 220億円 | 22億円 | 30億円 | 13.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローはプラスです。これは、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | 21億円 |
| 投資CF | -21億円 | -51億円 |
| 財務CF | 10億円 | 17億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は24.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「社会的負債を、次世代の可能性に。」をパーパスとして掲げています。労働人口減少などの社会課題に対し、ROIが明確な成果報酬型の成約支援事業を通じて、企業の採用・販促活動のリスクを最小化し、企業および社会全体の生産性向上に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、リスクとリターンのバランスを考慮した積極的かつ適正なリスクテイクを重視しています。透明性のあるディスクロージャーを心がけるとともに、コンプライアンス意識の向上や内部統制の強化を通じて、公正かつ透明性の高い企業風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
2030年3月期を最終年度とする5カ年中期経営計画を掲げています。フリーキャッシュフローの最大化を長期方針とし、以下の目標達成に向けてCAGR(年平均成長率)30%以上の成長を目指しています。
* 売上収益:800億円
* EBITDA:130億円
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業である人材・エネルギー領域での圧倒的地位確立と、新規領域への参入を目指したM&Aを推進します。また、収益モデルのポートフォリオ化を進め、ストック型収益の比率を高めることで、継続的な成長の確実性を向上させる方針です。
* ストック利益比率:2030年3月期までに40%へ引き上げ
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人的資本マネジメント方針」を策定し、優秀な人材の確保と育成を最重要課題としています。新卒・中途採用を積極的に行うとともに、管理職候補の育成講座「PORT DOJO」などを通じてリーダー人材を育成し、組織拡大に対応できる体制を構築しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 28.5歳 | 2.9年 | 4,784,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.2% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 77.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 158.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 買収・投資活動等に伴うリスク
事業拡大のためにM&Aや資本提携を積極的に行っていますが、PMI(統合プロセス)が計画通りに進まない場合や、偶発的な事象の発生により、期待したシナジー効果が得られず、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新等のリスク
生成AIをはじめとする急速な技術革新が進む中で、同社が適時かつ十分な対応を取れない場合、Webマーケティングや成約支援組織の競争優位性が低下し、事業機会の逸失や業績悪化につながる可能性があります。
■(3) 人材の確保及び育成のリスク
事業成長には優秀な人材の確保と育成が不可欠ですが、必要な人材を確保できない場合や育成が計画通りに進まない場合、組織力の低下や事業計画の遅延を招き、競争力や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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