ポート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ポート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所グロース市場および福岡証券取引所Q-Boardに上場しています。主要事業として、人材領域やエネルギー領域における成果報酬型の成約支援事業を展開しています。業績面では、各領域での成約件数の増加や単価上昇により、直近の業績は大幅な増収増益を達成しており、順調に成長を続けています。


※本記事は、ポートの有価証券報告書(第15期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. ポートってどんな会社?


成約時に報酬が発生する成果報酬型モデルにより、人材やエネルギー領域での成約支援を展開しています。

(1) 会社概要


2011年にソーシャルメディアを利用した人材採用支援事業を目的として設立されました。2014年にキャリア領域メディアを開始後、2018年に上場を果たしました。2022年にはINEを子会社化してエネルギー領域へ参入し、近年もM&Aや資本業務提携を通じて成長を加速させています。

従業員数は連結で1,032名、単体で754名です。筆頭株主は創業者の春日博文氏で、第2位は資産管理業務を行う日本カストディ銀行(信託口)、第3位はBNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE-AC)となっています。

氏名 持株比率
春日 博文 31.63%
日本カストディ銀行(信託口) 4.66%
BNY GCM CLIENT ACCOUNT JPRD AC ISG (FE-AC) 4.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性3名、女性2名の計5名で構成され、女性役員比率は40.0%です。代表取締役社長は春日博文氏が務めており、社外取締役の比率は60.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
春日 博文 代表取締役社長 2011年同社を設立し代表取締役社長に就任。ドアーズ、就活会議、みん就の取締役等を歴任し、2024年12月HRteam取締役より現職。
丸山 侑佑 取締役副社長 トライアンフ、KLabを経て、2013年同社に入社し取締役副社長に就任。ドアーズ、就活会議の取締役等を経て、2024年10月八ヶ岳農業大学校専務理事より現職。


社外取締役は、大森 愛久美(法律事務所ZeLo・外国法共同事業入所)、冨岡 大悟(M&A Bank代表取締役)、木村 由美(日本産業推進機構入社)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エネルギー領域」「人材領域」「新規・その他」事業を展開しています。

エネルギー領域
電気・ガス代の見直しニーズがあるユーザーと電力・ガス事業者をつなぐマッチングサイト「エネチョイス」や「引越手続き.com」などの販促支援サービスを提供しています。
電気・ガス事業者から、ユーザーの送客や契約切り替え等の成果条件を満たした際に報酬を受け取る成果報酬型モデルです。運営はINEやFive Lineなどの子会社が主体となって行っています。

人材領域
就活生向けの企業口コミ情報サイト「就活会議」や就活ノウハウ情報サイト「キャリアパーク!」等を運営し、未就業・未経験の若手人材に特化した採用支援を行っています。
人材会社への送客や求人企業への直接紹介を行い、企業から成果報酬を受け取ります。運営は同社および就活会議、みん就、HRteamなどのグループ会社が行っています。

新規・その他
カードローンに関する解説や口コミが集まる情報サイト「マネット」など、新たな柱となる成果支援事業の開発と運営を行っています。
広告掲載や送客による成果条件の達成に応じて、金融機関等の顧客から成果報酬を受け取ります。これまで培ったWEBマーケティングとセールスのノウハウを活用し、同社が中心となって運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績を見ると、積極的なマーケティング投資やM&Aによるシナジー効果により、売上収益と利益ともに力強い成長を継続しています。特に当期はストック利益の積み上げ等も寄与し、大幅な増収増益を達成して利益率も改善傾向にあります。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 114億円 156億円 220億円 291億円
税引前利益 17億円 21億円 29億円 40億円
利益率(%) 14.6% 13.8% 13.3% 13.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 15億円 19億円 27億円

(2) 損益計算書


売上収益の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに順調に拡大しています。売上総利益率は30%台前半で推移しており、営業利益率も13%から14%へと改善を見せるなど、安定した収益性を確保していることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 220億円 291億円
売上総利益 70億円 92億円
売上総利益率(%) 31.8% 31.5%
営業利益 30億円 41億円
営業利益率(%) 13.6% 14.0%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が54億円(構成比31.3%)、給与及び手当が21億円(同12.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は「成約支援事業」の単一セグメントであるため、領域別の売上収益の傾向を分析します。エネルギー領域および人材領域ともに、成約件数の増加や単価上昇等により前年同期から大きく売上を伸ばしており、業績拡大を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
エネルギー領域 107億円 139億円
人材領域 73億円 106億円
新規・その他 39億円 47億円
連結(合計) 220億円 291億円


同社は営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出しつつ、借入等によって積極的な投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状況と言えます。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は28.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は31.8%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 21億円 57億円
投資CF -51億円 -45億円
財務CF 17億円 34億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「社会的負債を、次世代の可能性に。」をパーパスとして掲げています。社会が今を優先した結果として残された負債を次世代に引き継ぐのではなく、自らが解決すべき社会課題を特定し、テクノロジーとリアルの融合によってその解決を推進していくことを社会的な存在意義としています。

(2) 企業文化


同社は、持続的な成長と社会課題解決の実現に向けて「規律ある挑戦」を重視する文化を持っています。リスクとリターンのバランスを見極めながら積極的な事業投資やM&Aを行う一方、透明性の高いガバナンスやリスク管理体制の構築に注力し、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を支える組織風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年3月期を最終年度とする5カ年の中期経営計画「ODYSSEY800」を策定しており、持続的な高成長を目指しています。年平均成長率(CAGR)30%以上を維持し、収益モデルのポートフォリオ化を通じてストック利益の比率を40%まで引き上げることを目標としています。

* 売上収益:800億円
* EBITDA:130億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、フリーキャッシュフローの最大化と中長期のEBITDA最大化に向け、オーガニック成長とインオーガニック成長(M&A等)の両輪による戦略を推進しています。人材・エネルギー領域での圧倒的な地位確立を目指すとともに、M&Aを通じた集客チャネルの強化や新規領域への参入にも積極的に投資しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」を最重要経営資源と位置づけ、「競争力の核となる人材の拡大と強化」を人的資本マネジメントの柱としています。社員が企業内で経験する従業員エクスペリエンス(仕事、報酬、人間関係、理念等)の量と質を向上させ、多様な人材が能力を最大限に発揮できる柔軟な労働環境の整備と適材適所の配置を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 28.9歳 3.1年 4,837,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.7%
男性育児休業取得率 116.6%
男女賃金差異(全労働者) 79.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 141.7%


また、同社は「人的資本に関する戦略並びに指標及び目標」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における女性比率(46%)、年間平均昇給率(8.2%)、新卒初任給(30万円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報セキュリティと個人情報管理


同社グループは成約支援事業において個人情報を含む重要な情報資産を多数保有しています。サイバー攻撃の高度化や関係者による不正行為などで情報が漏洩した場合、損害賠償や行政指導、社会的信用の失墜により事業継続や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) マクロ環境と景気変動


同社の人材・エネルギー領域の事業は、景気動向や外部環境の変動に影響を受けやすい特性があります。インフレや金利上昇、企業の採用意欲減退、原油高による電力会社の顧客獲得停止などが生じた場合、グループの事業基盤や収益性に多大な影響を与えるリスクがあります。

(3) M&A・投資活動とのれんの減損


事業領域拡大のために積極的なM&A等を行っているため、財政状態におけるのれん及び無形資産の割合が高くなっています。買収した事業の収益性が計画を下回った場合や、金利上昇等が生じた場合には多額の減損損失を計上するリスクがあり、財務状況に甚大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 事業関連の法的許認可と規制


有料職業紹介事業や宅地建物取引事業など、許認可を要する事業範囲が拡大しています。予期せぬ法令の新設・改正や、役職員等による法令違反が発生して許認可の取消しや事業停止命令を受けた場合、対象事業の継続が困難となり、経営に甚大な悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。