※本記事は、WDBココ株式会社の有価証券報告書(第43期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. WDBココってどんな会社?
同社は、医薬品・医療機器の開発から製造販売後の各段階における業務支援サービスを提供しています。
■(1) 会社概要
1984年に翻訳サービスを目的に設立され、1994年からCRO業務を拡大しました。2011年にWDB(現WDBホールディングス)の完全子会社となり、2019年に現社名へ変更し東証マザーズ市場(現グロース市場)へ上場しました。2023年にはWDB臨床研究を子会社化し吸収合併しています。
同社単体の従業員数は516名です。筆頭株主は人材サービス事業やCRO事業などを展開する親会社のWDBホールディングスで、第2位は事業会社の光通信、第3位は代表取締役社長の谷口晴彦氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| WDBホールディングス | 67.66% |
| 光通信 | 4.00% |
| 谷口 晴彦 | 2.49% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は谷口晴彦氏です。社外取締役比率は18.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 谷口 晴彦 | 代表取締役社長 | 1999年3月WDB入社。2005年4月同社執行役員、2012年6月同社取締役を経て、2014年6月に同社取締役へ就任。同年11月より現職。 |
| 平光 初音 | 取締役薬事申請・品質保証部長兼エビデンス創出部長 | 2008年4月WDB入社。2014年7月同社執行役員、2016年6月同社取締役、受託事業本部長などを経て、2026年4月より現職。 |
| 藤原 素行 | 取締役プロセス開発部長 | 2007年3月WDB入社。2011年4月同社執行役員、2012年6月同社取締役、管理本部長などを経て、2025年2月より現職。 |
| 今村 敦 | 取締役臨床開発部長兼エビデンス創出部長兼営業部長 | 1998年3月WDB入社。2010年4月同社取締役、2014年11月電助システムズ代表取締役などを経て、2026年4月より現職。 |
| 齋藤 和貴 | 取締役経営管理部長兼人事部長 | 2007年3月WDB入社。2021年4月同社経営管理部長、2024年4月同社執行役員経営管理部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 中野 敏光 | 取締役 | 1982年8月アリコジャパン入社。1985年7月ワークデーターバンク(現WDBホールディングス)を設立し代表取締役就任。2011年4月より現職。 |
社外取締役は、横川堅太(公認会計士・CREST税理士法人代表社員)、大井理(弁護士・松柏法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、CRO事業の単一セグメントで事業を展開しています。
■CRO事業
医薬品・医療機器開発における国内外の臨床試験や市販後に発生する各種業務の支援・代行サービスを提供しています。主に製薬企業や医療機関向けに、安全性情報管理、ドキュメントサポート、製造販売後調査支援、臨床研究支援の4つのサービスを展開しています。
収益は顧客企業からの業務受託や、一部人材派遣契約によるサービス提供の対価として得ています。売上高の大部分を占める安全性情報管理サービスを中心に、同社が主体となって各工程の品質向上や生産性改善を伴うオペレーションを提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、2022年3月期から2025年3月期にかけては売上高および経常利益ともに右肩上がりで順調に成長を続けていました。しかし、2026年3月期は一部顧客における委託業務範囲の見直しや副作用情報の症例数減少などが響き、売上高は48億円、経常利益は10億円にとどまり、減収減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 36億円 | 41億円 | 46億円 | 53億円 | 48億円 |
| 経常利益 | 10億円 | 11億円 | 13億円 | 13億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 26.6% | 26.7% | 27.7% | 24.6% | 20.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 7億円 | 9億円 | 9億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益ともに減少しています。利益率も低下傾向にあり、特に営業利益率は前期間の24.5%から当期間は19.9%まで悪化しています。これは売上高の減少に対し、労務費等の適正化を図ったもののカバーしきれなかったことが主な要因です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 53億円 | 48億円 |
| 売上総利益 | 21億円 | 17億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.0% | 35.5% |
| 営業利益 | 13億円 | 10億円 |
| 営業利益率(%) | 24.5% | 19.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3億円(構成比43%)、役員報酬が0.6億円(同8%)、支払手数料が0.5億円(同7%)を占めています。売上原価については、労務費が28億円(構成比90%)、経費が3億円(同10%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力のCRO事業では、既存顧客からの追加受託案件が寄与したものの、一部顧客において委託業務範囲の見直しや副作用情報の症例数が減少した影響を受けました。これにより、当期のセグメント売上高は前期と比較して減少する結果となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| CRO事業 | 53億円 | 48億円 |
| 連結(合計) | 53億円 | 48億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー・パターンを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | 6億円 |
| 投資CF | -1億円 | -1億円 |
| 財務CF | -2億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.8%であり、いずれも市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「仕事の成果」の保証と「新しい価値」の提供を通じて、お客様の課題を解決し、医療の未来に貢献することを企業理念として掲げています。この企業理念を継続的に成し遂げることによって、患者さんにおける革新的医薬品への早期アクセスと医療アウトカムの向上の実現に努めています。
■(2) 企業文化
企業理念、行動理念、人事理念、社員人材像等を包括的に体系化し明文化したフィロソフィーである「COCO way」を制定しており、これに基づき行動することを重視しています。優秀かつ多様性のある人材の確保と育成、定着が重要であるとの認識のもと、フィロソフィーに基づいた人事制度の運用を行っています。
■(3) 経営計画・目標
「売上高経常利益率」を重要な経営指標と捉え、今後も収益力の拡大に注力し、株主価値の向上に努める方針です。持続可能な成長の達成と中長期的な企業価値の向上を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
CRO市場における定型業務の自動化や運用方法の変化などの構造的変化を捉え、業務の属人化を排除し標準化と自動化を進めることで、品質の再現性と生産性を向上させる方針です。判断、顧客対応、品質担保など人が担うべき実務価値領域に資源を集中させ、AIと共存する新たなCROモデルの確立を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
優秀かつ多様性のある人材の確保と育成、定着を重要な経営課題と位置づけ、フィロソフィー「COCO way」に基づいた人事制度や研修制度を設計しています。能力に応じた管理職の登用や男性社員の育児休業取得を推進し、多様な人材が活躍できる両立支援と成長を促す環境づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 36.6歳 | 4.7年 | 4,565,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 64.1% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 77.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 73.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法規制や行政動向の変更
同社の事業は薬事関連法規や労働者派遣法等の適用を受けており、法規制の強化や行政施策が変更された場合、組織体制の変更や追加資金が必要となり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定のサービスおよび顧客への依存
安全性情報管理サービスが売上高の大部分を占めており、上位顧客への売上依存度も高い状況です。そのため、競合激化や顧客の経営方針転換、委託先選定方針の変更などにより契約が満了した場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 人材の確保・育成と組織体制
継続的な事業拡大には優秀な人材の確保と定着が不可欠です。求める人材が適時に確保・育成できない場合や人材流出が進んだ場合、内部管理体制の構築遅れにより、安定した業務運営や事業拡大に支障をきたす可能性があります。



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