WDBココ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

WDBココ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。医薬品開発支援(CRO)事業を展開し、特に安全性情報管理サービスを主軸としています。直近の業績は、既存顧客からの追加受託や新規顧客の開拓、吸収合併した子会社の寄与により、売上高53億円(前期比15.9%増)、経常利益13億円(同2.9%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、WDBココ株式会社 の有価証券報告書(第42期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. WDBココってどんな会社?


医薬品開発における安全性情報管理を主軸としたCRO(開発業務受託機関)事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1984年に翻訳サービスを行うアイ・シー・オーとして設立されました。2011年にWDB(現WDBホールディングス)の完全子会社となり、2012年にWDBメディカルを吸収合併してCRO事業を本格化させました。2019年に現社名へ変更し、同年12月に東証マザーズへ上場しました。2022年には市場区分見直しに伴い東証グロースへ移行しています。

現在の従業員数は566名(単体)です。筆頭株主は人材サービス事業などを展開する親会社のWDBホールディングスであり、第2位はカストディ業務を行う外国銀行、第3位は投資事業等を行う事業会社となっています。親会社が発行済株式の過半数を保有しており、安定した資本関係にあります。

氏名 持株比率
WDBホールディングス 67.70%
CACEIS BANK/QUINTET LUXEMBOURG SUB AC / UCITS CUSTOMERS ACCOUNT 3.30%
光通信 2.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は谷口 晴彦氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
谷口 晴彦 代表取締役社長 1999年WDB入社。同社執行役員、取締役を経て、2014年より現職。
平光 初音 取締役受託事業部長 2008年WDB入社。WDBココ執行役員、受託事業本部長などを経て2024年より現職。
藤原 素行 取締役プロセス開発部長 2007年WDB入社。WDBココ管理本部長、経営管理部長などを経て2025年より現職。
今村 敦 取締役臨床開発事業部長兼受託営業部長 1998年WDB入社。電助システムズ代表取締役などを経て2025年より現職。
齋藤 和貴 取締役経営管理部長兼人事部長 2007年WDB入社。WDBココ経営管理部長などを経て2025年より現職。
中野 敏光 取締役 1985年ワークデーターバンク(現WDBホールディングス)設立。同社代表取締役などを兼任し2011年より現職。


社外取締役は、横川 堅太(CREST税理士法人代表社員)、大井 理(松柏法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「CRO事業」を展開しています。

CRO事業


医薬品開発の代行・支援業務として、「安全性情報管理サービス」を主軸に、「ドキュメントサポートサービス」「製造販売後調査支援サービス」「臨床研究支援サービス」を提供しています。製薬企業や医療機器企業を顧客とし、医薬品の臨床試験や市販後に発生する副作用情報の収集・評価・報告支援、承認申請資料の作成支援、製造販売後調査の管理代行などを手掛けています。

収益は、主に製薬企業等の顧客から受領する業務受託費によって構成されています。一部、人材派遣契約によるサービス提供も行っています。運営はWDBココが行っており、特定のアセットに依存せず、業務プロセスの標準化や自動化推進によるオペレーションの提供を強みとしています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は26億円から53億円へと順調に拡大しており、毎期増収を達成しています。経常利益も5億円から13億円へと増加傾向にあり、利益率も20%台を維持するなど高い収益性を確保しています。当期純利益も3.7億円から9.1億円へと成長しており、事業規模の拡大とともに利益水準も着実に向上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 26億円 36億円 41億円 46億円 53億円
経常利益 5.3億円 9.6億円 10.9億円 12.7億円 13.1億円
利益率(%) 20.5% 26.6% 26.7% 27.7% 24.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.7億円 6.5億円 7.4億円 8.6億円 9.1億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上原価の増加率が売上高の伸びを上回ったため、売上総利益率は若干低下しています。一方、営業利益は増益を確保しており、安定した収益構造を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 46億円 53億円
売上総利益 19億円 21億円
売上総利益率(%) 42.2% 39.0%
営業利益 13億円 13億円
営業利益率(%) 27.7% 24.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.3億円(構成比43%)、役員報酬が0.6億円(同8%)、支払手数料が0.5億円(同7%)を占めています。売上原価においては、労務費が29.8億円(構成比92%)と大半を占めており、労働集約的なコスト構造となっています。

(3) セグメント収益


当期は、既存顧客からの追加受託や新規顧客の開拓に加え、吸収合併した子会社の臨床研究サービスが寄与し、CRO事業全体で増収となりました。利益面でも、採用強化や給与水準見直しによるコスト増を吸収し、増益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
CRO事業 46億円 53億円 13億円 13億円 24.5%
連結(合計) 46億円 53億円 13億円 13億円 24.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.9%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を上回る良好な水準です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7.7億円 11.0億円
投資CF -0.9億円 -0.9億円
財務CF -1.1億円 -2.0億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「仕事の成果」の保証と「新しい価値」の提供を通じて、お客様の課題を解決し、医療の未来に貢献することを企業理念として掲げています。医薬品開発の各段階における支援サービスを通じて、顧客の課題解決と価値提供を進め、市場での競争優位性を強化することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、企業理念、人事理念、社員人材像等を包括的に体系化し明文化したフィロソフィーである「COCO way」を制定しています。このフィロソフィーに基づき、人的資本に関する人事制度や福利厚生、研修等の各種制度を設計し、優秀で多様性のある人材の確保と従業員の成長を促進する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、売上高経常利益率を重要な経営指標と捉えています。今後も収益力の拡大に注力し、株主価値の向上に努める方針です。具体的な数値目標としては、人材確保に関する指標(女性管理職比率70%以上など)を設定していますが、財務数値に関する具体的な中期目標値は記載されていません。

(4) 成長戦略と重点施策


CRO市場における生成AIや自動化技術の進展による構造変化を捉え、業務プロセスの自動化・標準化を推進するとともに、センター運営を強化する方針です。判断や顧客対応といった人が担うべき高付加価値領域に資源を集中させ、AIと共存する新たなCROモデルを確立することで、顧客の本質的な課題解決に応えることを目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社はフィロソフィー「COCO way」に基づき、優秀で多様性のある人材の確保と育成を目指しています。継続的な事業拡大のためには人材の確保・定着が重要であると考え、採用強化や給与水準の見直しを実施しています。また、研修施設の開設など教育体制の充実も図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 35.6歳 3.5年 4,749,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 63.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.1%
男女賃金差異(正規) 78.5%
男女賃金差異(非正規) 71.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 親会社が支配権を有することに伴うリスク


親会社であるWDBホールディングスが議決権の約68%を所有しており、親会社の方針が同社の経営判断に影響を及ぼす可能性があります。親会社の利益と少数株主の利益が一致しない可能性や、親会社の経営方針変更等が同社の業績に影響を与える可能性があります。

(2) 特定のサービスへの依存


売上高の約7割を「安全性情報管理サービス」が占めており、同サービスへの依存度が高くなっています。競合他社との差別化が進まない場合や競争激化により同サービスの収益性が低下した場合には、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定の顧客への依存


売上高の上位3社で全体の約半数を占めており、特定の大手製薬企業への依存度が高くなっています。これら主要顧客の経営方針転換や合併・統合、委託方針の変更等により取引が縮小した場合、同社の業績に影響が出る可能性があります。

(4) 人材の確保や育成


継続的な事業拡大には優秀な人材の確保と育成が不可欠ですが、必要な人材を適時に確保・育成できない場合や人材流出が進んだ場合、業務運営に支障をきたす可能性があります。また、採用コストの増加や人件費の高騰が利益を圧迫するリスクもあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。