※本記事は、AI inside 株式会社 の有価証券報告書(第11期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. AI insideってどんな会社?
AI技術を活用したソフトウェアやハードウェアの開発・提供を中心に事業を展開する同社の概要を紹介します。
■(1) 会社概要
2015年8月に設立され、AI手書き文字認識サービスの提供を開始しました。2017年には主力サービスとなる「DX Suite」を提供開始し、2019年にはエッジコンピューティング用ハードウェア「AI inside Cube」の提供も始めました。同年に東京証券取引所マザーズへ株式を上場し、直近では2023年にAI統合基盤「AnyData」やAIエージェント「Heylix」をリリースしています。
現在の従業員数は単体で130名です。大株主については、筆頭株主は創業者の渡久地択氏であり、第2位は事業会社の上田八木短資、第3位は個人のご氏名が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 渡久地 択 | 47.26% |
| 上田八木短資 | 4.51% |
| 中沖 勝明 | 2.82% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは渡久地択氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡久地択 | 代表取締役社長CEO | 2015年同社設立、代表取締役社長CEO就任。より現職。 |
| 岩松秀樹 | 取締役COO | 2023年同社入社、2025年取締役COO就任。より現職。 |
| 烏野裕明 | 取締役CFO | 2024年同社入社、2025年取締役CFO就任。より現職。 |
社外取締役は、佐藤孝幸(佐藤経営法律事務所代表)、加川亘(元NTTドコモ取締役常務執行役員)、蔵元左近(蔵元国際法律事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「人工知能事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) DX SuiteとAI inside Cube
ディープラーニングによる手書き文字認識AIを活用した「DX Suite」をクラウドで提供しています。加えて、プライバシー保護が重視される業界向けに、エッジコンピューティング用ハードウェア「AI inside Cube」を自社開発し、クラウドにアクセスせずにAI処理を行える環境も提供しています。
収益源は、帳票の読み取り回数に基づく月額従量費用や月額固定費用などの継続的なリカーリング型収益と、初期費用などのセリング型収益で構成されています。運営は同社が行っており、販売は直接販売のほか、販売パートナーを通じた提供も行われています。
■(2) Leapnet等のAIプラットフォーム
企業が保有する業務知見やデータを活用し、AIエージェントの構築や運用を行うことができるLLMネイティブなAIプラットフォーム「Leapnet」などを開発・提供しています。従来提供してきた「AnyData」や「Heylix」などの技術を統合し、企業活動における業務効率化と付加価値の創出を支援します。
こちらも、継続利用に伴うリカーリング型収益と、特定の取引ごとに発生するセリング型収益が主な収益源となっています。運営は同社が行い、パートナー企業と連携しながら、複合的なAIソリューションとして顧客や社会の課題解決に向けたサービスを幅広く展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は33億円から47億円へと継続的な成長を遂げています。一方、利益面は先行投資や減損損失の影響などで赤字となる期も見られましたが、直近の2026年3月期は経常利益、当期純利益ともに黒字転換を果たし、収益性の改善が進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 33.1億円 | 38.0億円 | 41.9億円 | 44.0億円 | 47.5億円 |
| 経常利益 | 5.6億円 | 2.8億円 | 4.3億円 | 4.1億円 | 4.9億円 |
| 利益率(%) | 17.0% | 7.3% | 10.2% | 9.2% | 10.3% |
| 当期純利益 | 4.1億円 | -5.2億円 | 5.4億円 | -5.0億円 | 3.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益も拡大しています。一方で、研究開発費や人件費などの増加により販売費及び一般管理費が膨らみ、営業利益は前期を下回る結果となりました。将来の成長に向けたインフラや人材への投資を積極的に行っていることが読み取れます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 44.0億円 | 47.5億円 |
| 売上総利益 | 35.8億円 | 39.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 81.3% | 82.1% |
| 営業利益 | 3.9億円 | 3.1億円 |
| 営業利益率(%) | 8.8% | 6.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が10.1億円(構成比28%)、通信費が5.3億円(同15%)、研究開発費が4.4億円(同12%)を占めています。売上原価については、経費が7.3億円(構成比86%)、労務費が1.2億円(同14%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は人工知能事業の単一セグメントであるため、収益モデル別の売上高推移を分析します。継続的な収益基盤であるリカーリング型モデルの売上が堅調に伸びており、事業全体の安定的な成長を強力に牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| リカーリング型モデル | 41.9億円 | 44.9億円 |
| セリング型モデル | 2.1億円 | 2.6億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7.8億円 | 8.2億円 |
| 投資CF | -2.0億円 | -17.5億円 |
| 財務CF | -0.5億円 | -6.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「AIで、人類の進化と人々の幸福に貢献する」というパーパスを掲げています。また、「AI inside X」というビジョンにより、「X=様々な環境」に溶け込むAIが実装され、誰もが意識することなくAIの恩恵を受けられる豊かな社会を目指しています。その実現に向け、妥協なきテクノロジーの追求により非常識を常識に変え続けていく事業に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は、AIテクノロジーの社会実装をリードする企業として、事業活動を通じた社会課題の解決が持続可能な社会の構築に寄与すると考えています。「デジタルトランスフォーメーションを支援する」「パートナーシップで目標を達成する」「働く環境のダイバーシティを推進する」などの5つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、社会と協働・連携しながらサステナブルな経営を推進する文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、事業を持続的に成長させるための最重要指標として、継続的に収益が計上される「リカーリング型売上の成長」を掲げています。その要因として、契約件数や契約の解約率(チャーンレート)、AIファンクションのリクエスト数を重要な指標と定めており、安定した収益基盤の確立を目指して事業運営を行っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向け、基礎研究と応用研究の両輪による次世代技術の開発を強化し、高精度かつ高価値なAIを持続的に提供できる体制を構築します。また、販売パートナーとの連携推進によるリカーリング型売上の拡大や、セリング型売上の低価格化を通じた導入促進を図ります。さらに、認識AIと予測AIを組み合わせた付加価値の高い複合AIソリューションを展開し、顧客基盤の強化に取り組んでいきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社の持続的な企業価値向上を実現する原動力は「人的資本」であり、社員がAIを「相棒(Buddy)」として共に働く「Work with Buddy」の環境を整備しています。定型業務をAIが代替することで、人間の能力を拡張し、知的創造やインキュベーションなどの高度な思考を要する領域において、非連続な成長を実現する自律型人材の創出を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.4歳 | 3.04年 | 9,321,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 29.7% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(16.67%)、年次有給休暇取得率(79.4%)、全社平均残業時間(18.0時間/月)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 個人情報を含むデータを学習に用いるリスク
製品やサービスを提供する過程で、顧客から取得した個人情報を含むデータをAIの学習に用いる場合があります。法令遵守や顧客の承諾取得に努めていますが、消費者からの理解が得られず批判にさらされた場合、企業への信頼が低下し、事業や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 販売代理店への依存リスク
顧客基盤拡大のために販売代理店との協業を推進しており、売上に占める代理店経由の比率が高まっています。契約の不更新や取引条件の変更、代理店の販売不振などが発生した場合、同社の業績に影響が出る可能性があります。また、OEM販売における販売施策の変動もリスク要因となります。
■(3) ソフトウェアの資産計上に伴う費用化の影響
同社は自社利用のソフトウェア開発において、研究開発費の一部を適切に資産計上し、減価償却を行っています。今後、研究開発の進展により資産計上されるソフトウェアが増加した場合、それに伴う減価償却費も増加し、将来の財政状態や経営成績に負担となる可能性があります。



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