木村工機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

木村工機 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダードに上場する木村工機は、業務用空調機器の製造・販売を主力とするメーカーです。店舗や工場向けのヒートポンプ式外調機やゾーン空調機等で高い独自性を持ちます。業績は堅調な設備投資需要を背景に高性能製品の販売が好調に推移しており、直近の業績は増収増益と過去最高益を更新しています。


※本記事は、木村工機株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 木村工機ってどんな会社?

業務用空調機器の製造・販売に特化し、独自の技術力と個別受注生産を強みとするメーカーです。

(1) 会社概要

1945年の創業から始まり、1947年に木村工機が設立されました。1952年にプレートフィンヒーター・クーラーの製法を確立したことを契機に空調事業を拡大させ、約80年にわたり業務用空調に特化しています。2020年に東証二部へ上場し、2022年に現在の東証スタンダード市場へ移行しました。

従業員数は単体で386名です。筆頭株主は資産管理業務などを行うとみられるKIMURAで、第2位は大阪中小企業投資育成、第3位は創業家出身の役員である木村惠一氏です。

氏名 持株比率
KIMURA 11.91%
大阪中小企業投資育成 5.67%
木村惠一 5.36%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役執行役員社長は木村晃氏、代表取締役執行役員会長は木村惠一氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
木村晃 代表取締役執行役員社長 監査法人等を経て1999年入社。取締役本社営業部長、専務取締役執行役員管理本部長などを歴任し、2023年より現職。
木村惠一 代表取締役執行役員会長 1952年に入社し、1955年取締役就任。代表取締役専務や代表取締役社長などを長きにわたり歴任し、2023年より現職。
大村英人 専務取締役執行役員事業推進本部長 第一勧業銀行(現みずほ銀行)等を経て2014年出向・2015年転籍。取締役経営企画部長等を経て2023年より現職。
梶田正和 常務取締役執行役員八尾製作所長 森下製薬等を経て1991年入社。八尾製作所製造部長、執行役員空調設備事業部長等を経て2023年より現職。
登尾公彦 取締役執行役員大阪営業本部長 ヤマハ発動機等を経て1986年入社。本社営業部長等を経て2013年より執行役員大阪営業本部長。2018年より現職。
浦野勝博 取締役執行役員空調技術本部長 1991年入社。河芸製作所生産技術部長、執行役員河芸製作所長等を歴任し、2023年より現職。
境達也 取締役(常勤監査等委員) 栗本鐵工所を経て2011年入社。内部監査室長、常勤監査役等を歴任し、2023年より現職。


社外取締役は、佐藤信孝(元日本設計副社長執行役員)、加納淳子(第一法律事務所パートナー)、岩渕信雄(元三菱UFJファクター常務)、関美緒(せき公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容

同社は「空調関連機器」の製造・販売を行う単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 空調システム機器の製造・販売

オフィスビル、商業施設、工場、病院などに向けた業務用空調機器の開発・製造・販売を行っています。主力製品は、導入外気を冷却・加熱して空気質改善を行うヒートポンプ式外調機や、暑熱対策が必要な工場の大空間向けゾーン空調機などです。特許に裏付けられた高い技術力と個別受注生産を強みとしています。

収益源は、施主・オーナーの建築物に設置される空調機器の販売代金です。当事業は木村工機単体で運営されており、総合建設業者(ゼネコン)や設備工事業者(サブコン)などの専門事業者を各段階の取引先として製品を納入するビジネスモデルを構築しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

過去5期間にわたり、売上高および各利益項目は順調な拡大基調にあります。高い独自性を持つ空調機器の需要増を背景に、規模の拡大とともに利益率も大きく向上しており、収益力の飛躍的な改善が進んでいることが読み取れます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 102億円 117億円 139億円 160億円 179億円
経常利益 13億円 16億円 27億円 37億円 46億円
利益率(%) 13.1% 13.4% 19.4% 22.8% 25.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 10億円 21億円 25億円 33億円

(2) 損益計算書

売上高の成長に加えて売上総利益率および営業利益率がともに改善しており、高付加価値な製品の販売が奏功していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 160億円 179億円
売上総利益 73億円 88億円
売上総利益率(%) 45.6% 49.2%
営業利益 37億円 46億円
営業利益率(%) 23.0% 25.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が18億円(構成比44%)、荷造運搬費が7億円(同16%)を占めています。売上原価においては、材料費が52億円(当期製造費用に対する構成比54%)、労務費が22億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益

同社は空調システム機器の開発・製造・販売の単一セグメントですが、堅調な国内設備投資需要の取り込みにより、産業・商業・保健の各分野向けで高性能タイプが好調に推移し、全社的な増収に寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
空調システム機器 160億円 179億円
連結(合計) 160億円 179億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を設備投資などの投資活動に充て、さらに借入金の返済など財務活動にも充当している「健全型」の傾向を示しています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.2%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 22億円 39億円
投資CF -20億円 -25億円
財務CF -4億円 -7億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「われわれは 知恵と汗を礎にして 社会に貢献する」を社是として掲げています。柔軟な発想と技術で、環境にやさしい空調製品の開発に努め、あらゆる用途・空間に最適な空調を提供していくことを使命とし、サステナビリティの視点を経営の中核に位置づけています。

(2) 企業文化

「空気のちからで社会を豊かにする」をスローガンに掲げています。エコとウェルネスの視点で社会課題の解決に真摯に取り組みながら、社会と自社の成長を目指す企業文化を持っています。社員一人ひとりが心身ともに健康でいきいきとした人生を送り、やりがいを感じて働ける環境づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標

同社は、顧客の分野別に需要をとらえ、付加価値の高い製品を供給することで販売および収益につなげる経営戦略を掲げており、売上高営業利益率を主要経営指標の一つとして設定しています。また、気候変動対応におけるCO2排出量の削減に向け、以下のような目標を掲げています。

* 売上高営業利益率の改善
* 2030年度のCO2排出量:2019年度比50%削減
* 2050年度のCO2排出量:実質ゼロ

(4) 成長戦略と重点施策

従来の枠を超え、空調全体をシステムで提案できる「空調システムメーカー」への進化を目指しています。工場などの産業分野、商業施設、オフィスビルなどの商業分野、病院や学校などの保健分野での最適空調に加え、農・畜産陽圧空調の実用化に向けた新領域の開拓にも注力しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「社是」「企業倫理規範」および「社員行動規範」の実践を通じて、次の時代を生き抜く人材を育て、経営基盤の強化を目指しています。全社員にサステナビリティの視点の浸透を図るほか、自己研修手当や資格手当の拡充など人的資本への投資を進め、多様な人材が能力を最大限に発揮できる職場環境の構築に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.9歳 13.4年 8,125,336円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.3%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 85.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役職者に占める女性比率(27.2%)、女性労働者の平均勤続年数(9.9年)、採用における女性比率(23.7%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料や主要部品の調達リスク

銅やアルミ等の主要原材料や室外機・圧縮機等の主要部品について、国際情勢や為替相場の影響による価格高騰や調達困難が生じる可能性があります。同社はサプライチェーンの見直しや部品の備蓄、調達先の多様化などで対策を講じています。

(2) 法規制の変更および環境規制リスク

建設業法や廃棄物処理法、フロン類の管理に関する法律など、事業展開に関連する法的規制の改正や環境規制の強化が行われた場合、製品開発や事業活動が制限されるリスクがあります。同社は法務部門によるモニタリング等で法令遵守の徹底を図っています。

(3) 人的資本と人材確保のリスク

少子高齢化や人件費の上昇に伴い、事業継続に必要な優秀な人材の確保が困難になるリスクがあります。同社は賃金の適正な引き上げや労働環境の整備、自己研修などの教育投資を実施し、人材の定着を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。