※本記事は、木村工機株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 木村工機ってどんな会社?
同社は、独自のプレートフィンヒーター製法を基盤に、約70年にわたり業務用空調機器の開発・製造・販売を行う専業メーカーです。
■(1) 会社概要
1947年に大阪市で設立され、1952年にプレートフィンヒーター・クーラーの製法を確立したことを契機に空調事業へ本格参入しました。1961年には現在の主力工場である八尾製作所が稼働を開始しています。その後、省エネ大賞の受賞など技術力を高め、2020年に東京証券取引所市場第二部へ上場を果たしました。
同社(単体)の従業員数は365名です。筆頭株主は創業家資産管理会社のKIMURAで、第2位は公的投資育成機関である大阪中小企業投資育成、第3位は代表取締役会長の木村惠一氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| KIMURA | 11.79% |
| 大阪中小企業投資育成 | 5.61% |
| 木村惠一 | 5.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役執行役員社長は木村晃氏です。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 木村惠一 | 代表取締役執行役員会長 | 1952年同社入社。1976年より代表取締役社長を務め、長きにわたり経営を牽引。2023年6月より現職。 |
| 木村晃 | 代表取締役執行役員社長 | 公認会計士を経て1999年同社入社。東京営業本部長、管理本部長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
| 大村英人 | 専務取締役執行役員事業推進本部長 | 第一勧業銀行(現みずほ銀行)出身。2014年同社入社。経営企画室長、営業推進本部長などを経て2023年6月より現職。 |
| 梶田正和 | 常務取締役執行役員八尾製作所長 | 森下製薬(現エイワイファーマ)を経て1991年同社入社。空調設備事業部長などを経て2023年6月より現職。 |
| 登尾公彦 | 取締役執行役員大阪営業本部長 | ヤマハ発動機、デリスを経て1986年同社入社。本社営業部長などを歴任し、2018年6月より現職。 |
| 浦野勝博 | 取締役執行役員空調技術本部長 | 1991年同社入社。河芸製作所生産技術部長、河芸製作所長などを経て2023年6月より現職。 |
| 境達也 | 取締役(常勤監査等委員) | 栗本鐵工所を経て2011年同社入社。内部監査室長、常勤監査役を経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、佐藤信孝(元日本設計取締役副社長)、西家伸郎(元第一生命保険大阪法人営業部部長)、加納淳子(弁護士法人第一法律事務所パートナー)、佐々木健次(佐々木健次公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「空調システム機器関連事業」のみの単一セグメントで事業を展開しています。
**空調システム機器関連事業**
同社は、オフィスビル、工場、病院、商業施設などに向けた業務用空調機器の開発・製造・販売を行っています。主な製品には、熱源装置を別途設けて空気の冷却・加熱を行う「エアハンドリングユニット(AHU)」や「ファンコイルユニット(FCU)」、外気の熱を利用する「ヒートポンプ式空調機・外調機」、大空間向けの「工場用ゾーン空調機」などがあります。
顧客は主に施主、総合建設業者(ゼネコン)、設備工事業者(サブコン)です。収益はこれらの顧客に対する製品の販売代金から得ています。運営は主に木村工機が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第74期から第78期にかけて、売上高は堅調な右肩上がりで推移しています。特に直近の第77期および第78期は大幅な増収となり、利益面でも経常利益率が20%を超える高い水準を維持しています。当期純利益も順調に伸長しており、収益性の高い事業運営が継続しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 105億円 | 102億円 | 117億円 | 139億円 | 160億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 13億円 | 16億円 | 27億円 | 37億円 |
| 利益率(%) | 13.4% | 13.1% | 13.4% | 19.4% | 22.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 9億円 | 10億円 | 21億円 | 25億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益が伸長しています。売上総利益率は40%台後半を維持しており、付加価値の高い製品販売が寄与していることが伺えます。営業利益率も20%台に乗っており、増収効果による利益率の向上が顕著です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 139億円 | 160億円 |
| 売上総利益 | 62億円 | 73億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.8% | 45.5% |
| 営業利益 | 27億円 | 37億円 |
| 営業利益率(%) | 19.3% | 22.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比45%)、荷造運搬費が5億円(同14%)を占めています。売上原価においては、材料費が44億円(構成比53%)、経費が21億円(同25%)を占めており、原材料費の変動が原価に与える影響が大きい構造となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、製品区分ごとの売上動向を見ると、主力の「空冷HP式空調機&外調機」が好調に推移し、売上全体の約半数を占めています。「冷温水式AHU」も大幅な増収となりました。工場用ゾーン空調機やFCUも堅調です。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 冷温水式AHU | 22億円 | 30億円 |
| 冷温水式FCU | 8億円 | 9億円 |
| 空冷HP式空調機&外調機 | 71億円 | 82億円 |
| 冷温水式&空冷HP式工場用ゾーン空調機 | 14億円 | 15億円 |
| その他 | 24億円 | 25億円 |
| 連結(合計) | 139億円 | 160億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCFパターンは、本業で稼いだ資金(営業CF+)で借入金の返済(財務CF-)を行い、設備投資(投資CF-)も実施する「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 20億円 | 22億円 |
| 投資CF | -15億円 | -20億円 |
| 財務CF | -1億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「われわれは 知恵と汗を礎にして 社会に貢献する」を社是としています。柔軟な発想と技術を用いて環境に配慮した空調製品を開発し、あらゆる用途・空間に最適な空調を提供することを目指しています。また、サステナビリティの視点を経営の中核に据え、環境問題や社会課題の解決を通じた事業機会の創出を図っています。
■(2) 企業文化
同社は「空気のちからで社会を豊かにする」をスローガンに掲げています。「エコ」と「ウェルネス」の視点から社会課題の解決に取り組み、社会と自社の成長を目指すとともに、高い対応力を持ったレジリエンスな体制構築を重視しています。また、「社是」「企業倫理規範」「社員行動規範」の実践を通じて、次代を生き抜く人財の育成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、顧客の分野別(産業・商業・保健)に需要を捉え、付加価値の高い製品を供給することで収益につなげる戦略を掲げています。具体的な数値目標として以下の指標を重視しています。
* 売上高営業利益率
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「空調システムメーカー」への進化を目指し、高度な制御技術を活用したシステム全体の最適化を推進しています。また、カーボンニュートラル社会の実現に向け、省エネ・コンパクト化による環境負荷低減製品の開発や、技術研究センターの建設を進めています。
* 空調システムメーカーへの進化(機器単体からシステム提案へ)
* 事業活動を通したカーボンニュートラル社会実現への貢献
* 健康で衛生的な空気質の追求(外調機分野の開拓・発展)
* 製造基盤の強化(八尾製作所の建替え等)と地域環境の維持向上
* DXの推進(体制構築と人材育成)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、サステナビリティの視点を全社員に浸透させるとともに、企業倫理規範の実践を通じて経営基盤を強化する方針です。社員一人ひとりが健康でいきいきと働き、やりがいを感じられる会社を目指し、研修や資格制度の充実、「自己研修手当」の新設・増額などの人的資本への投資を拡大しています。また、多様な人材が活躍できる職場環境の構築を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.8歳 | 13.4年 | 7,461,906円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 86.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用(新卒・中途)における女性比率(19.2%)、女性労働者の平均勤続年数(9.7年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自然災害リスク
同社は全国に拠点を有しており、地震や気候変動による風水害等により施設や従業員が被害を受ける可能性があります。事業継続計画の策定等の対策を講じていますが、想定を超える被害が生じた場合、事業遂行や経営成績に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 外部調達リスク
主要原材料(銅、アルミ等)や主要部品(室外機、圧縮機等)の価格高騰や調達困難が生じた場合、生産・営業活動に支障が出る可能性があります。また、外部企業への製造・物流等の委託において、コスト上昇や人員確保難により役務提供が困難になるリスクもあります。
■(3) 経済環境リスク
事業活動の基盤が国内にあるため、国内経済情勢や為替・金利変動、設備投資の減少等の影響を受けます。特に資源価格の高騰や地政学リスクの高まりなどにより経営環境が不透明になる中、これらの要因が経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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