※本記事は、株式会社ウイルテック の有価証券報告書(第33期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ウイルテックってどんな会社?
製造請負・派遣事業を主軸に、建設・IT分野への技術者派遣やEMS(受託製造)事業など、多角的なエンジニアリングサービスを展開する企業です。
■(1) 会社概要
1992年に製造請負事業を行うアイピーエヌとして設立され、2004年に現在の社名へ変更しました。その後、ベトナムやミャンマーでの海外展開を進め、2020年に東証二部へ上場、2022年には東証スタンダード市場へ移行しました。2023年にはホタルクスを子会社化し、EMS事業を拡大しています。
連結従業員数は4,768名、単体では3,050名です。筆頭株主は会長の小倉秀司氏で、第2位は同氏の資産管理会社であるRASアセット、第3位は社長の宮城力氏となっており、経営陣が主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 小倉 秀司 | 43.52% |
| 株式会社RASアセット | 13.52% |
| 宮城 力 | 6.75% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は宮城力氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 宮城 力 | 代表取締役社長執行役員 | 2000年同社入社。製造技術部、事業開発部などを経て2016年代表取締役社長に就任。2022年より現職。 |
| 小倉 秀司 | 取締役会長執行役員 | 1992年同社設立とともに代表取締役社長に就任。2004年代表取締役会長。2022年より現職。 |
| 野地 恭雄 | 取締役常務執行役員 | 2006年ウイルテック九州(現同社)入社。製造事業本部長などを経て、2022年より現職。 |
| 西 隆弘 | 取締役上席執行役員カスタマーサービス事業本部長 | 2002年同社入社。事業推進部ゼネラルマネジャー、事業開発部長を経て、2022年より現職。 |
| 渡邊 剛 | 取締役上席執行役員管理本部長 | 2003年ワット・コンサルティング入社。2012年同社管理部長、2018年管理本部長を経て、2022年より現職。 |
| 石井 秀暁 | 取締役上席執行役員マニュファクチャリング事業本部長 | TTM代表取締役社長等を経て2015年同社入社。エンジニアリング事業本部長を経て、2022年より現職。 |
| 水谷 辰雄 | 取締役上席執行役員 | 2004年ワット・コンサルティング入社。2018年同社代表取締役社長に就任。2022年より現職。 |
| 京﨑 利彦 | 取締役(監査等委員) | パナソニック電工制御テクノ代表取締役社長等を経て2014年同社入社。2018年より現職。 |
社外取締役は、麻田祐司(ブレインアシスト代表取締役社長)、見宮大介(弁護士法人御堂筋法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「マニュファクチャリングサポート事業」「コンストラクションサポート事業」「ITサポート事業」「EMS事業」および「その他」事業を展開しています。
**マニュファクチャリングサポート事業**
電子部品や電気製品等のメーカー工場における製造請負・派遣、設計開発分野への技術者派遣、および電気機器等の修理サービスを提供しています。
顧客であるメーカー等から、請負契約に基づく成果物の対価や、派遣契約に基づく稼働対価を受け取ります。運営は主にウイルテックが行っています。
**コンストラクションサポート事業**
建設業界向けに、施工管理や設計関連の技術を持つ建設系技術者の派遣、および人材紹介を行っています。また、ホテルや商業施設等のリニューアル工事における電気設備工事の請負も手掛けています。
ゼネコンやサブコン等の顧客から、技術者派遣の対価や工事請負代金を受け取ります。運営はワット・コンサルティングが行っています。
**ITサポート事業**
システムエンジニアやプログラマーなどのIT技術者に特化した人材派遣、およびシステムの設計・開発・保守を行っています。
顧客企業から、技術者派遣の対価やシステム開発等の受託費用を受け取ります。運営はパートナーが行っています。
**EMS事業**
電子機器・プリント基板の受託製造、電子部品の卸売販売、および照明器具の企画開発・製造・販売を行っています。
メーカー等への製品販売や受託製造による対価、卸売販売による収益を得ています。運営はデバイス販売テクノおよびホタルクスが行っています。
**その他**
障がい者支援事業(印刷・Web制作等)、ベトナム・ミャンマーでの海外人材コンサルティング・教育事業、中古OA機器の再生販売事業を行っています。
各サービス利用者や製品購入者から対価を受け取ります。運営はウイルハーツ、WILLTEC VIETNAM、サザンプランなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は253億円から446億円へと大幅に拡大傾向にあります。特に直近ではEMS事業の拡大等が寄与し、売上規模が大きく伸長しました。経常利益は変動があるものの、直近では12億円と高い水準に回復しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 253億円 | 300億円 | 332億円 | 357億円 | 446億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 6億円 | 11億円 | 4億円 | 12億円 |
| 利益率(%) | 4.9% | 2.2% | 3.4% | 1.1% | 2.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 3億円 | 6億円 | -6億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、利益率も14.0%から19.0%へ改善しました。営業利益率も向上しており、収益性が高まっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 357億円 | 446億円 |
| 売上総利益 | 50億円 | 85億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.0% | 19.0% |
| 営業利益 | 3億円 | 10億円 |
| 営業利益率(%) | 0.9% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が27億円(構成比36%)、支払手数料が17億円(同23%)を占めています。
■(3) セグメント収益
EMS事業がホタルクスの連結子会社化等により売上が倍増し、利益にも大きく貢献しました。主力のマニュファクチャリングサポート事業は売上が横ばいながら利益を確保しています。コンストラクションサポート事業も増収増益と好調に推移しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| マニュファクチャリングサポート事業 | 187億円 | 186億円 | -3億円 | 4億円 | 1.9% |
| コンストラクションサポート事業 | 50億円 | 56億円 | 2億円 | 3億円 | 4.8% |
| ITサポート事業 | 30億円 | 30億円 | 0億円 | 0億円 | 0.2% |
| EMS事業 | 86億円 | 169億円 | 4億円 | 4億円 | 2.3% |
| その他 | 4億円 | 5億円 | -1億円 | 0億円 | 2.5% |
| 調整額 | -3億円 | -4億円 | 0億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 357億円 | 446億円 | 3億円 | 10億円 | 2.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | 12億円 |
| 投資CF | 1億円 | -9億円 |
| 財務CF | -0億円 | -1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.6%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人との出会い」を大切にし、共に過ごす時間の中で学び成長しながら、豊かな社会の創造に邁進し、「笑顔が溢れる社会づくり」に貢献することをグループ経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
「Rise for it」というグループスローガンのもと、モノづくりを支援する会社として、地球環境、顧客、従業員など、さまざまな「it」を向上させる存在でありたいという思いを持っています。「千変万化」を経営方針とし、変化する社会環境に対して常に新たな挑戦を行い、顧客に感動を与えることを使命としています。
■(3) 経営計画・目標
「2022-2025中期経営計画」において、2025年3月末で売上高600億円、EBITDA40億円を目標として掲げていました。2025年3月期の実績は売上高446億円、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)は約13億円となりました。現在、翌期以降の新経営戦略を策定中です。
■(4) 成長戦略と重点施策
「事業規模の拡大」「新たな技術の取り込み」「高付加価値化による収益性向上」を基本方針とし、効率的な営業拠点の拡大、スマートものづくりの推進、サービス事業の拡大、高度人財教育の拡充などを重点施策として推進しています。また、M&Aの活用による新領域への進出やシナジー創出も図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「高度人財教育の拡充」を重要戦略とし、企業OBによる実践的な教育や海外の人材データベース拡充を進めています。また、未経験者の採用・育成や外国人材の活用に加え、リーダー育成や勉強会、資格取得奨励金制度などを通じて人材の定着率向上とエンゲージメント向上に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.2歳 | 5.3年 | 3,613,764円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.4% |
| 男性育児休業取得率 | 40.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 84.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 86.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、教育拠点(10拠点)、女性管理職比率目標(30%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 取引先業種の景況による影響
主要取引先には電子部品、電気機器、情報通信機器関連のメーカーが多く、これらの業界の景気変動の影響を受けやすい特徴があります。顧客の増産・減産に伴う生産変動に対応する役割を担っているため、市況悪化時には売上が急激に変動する可能性があります。
■(2) カントリーリスク
ベトナムやミャンマーに連結子会社を有しており、海外でのビジネス展開に伴う各国の政治・経済情勢の変化、法制度の見直し、自然災害、紛争などの予期せぬ事象が発生した場合、事業運営や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 人材の確保と育成
人手不足が深刻化する中でエンジニアの採用競争が激化しており、採用費用の増加が懸念されています。計画通りに人材の採用や定着が進まない場合、十分な人材を確保できず、事業成長や経営成績に悪影響が生じる可能性があります。



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