ウイルテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウイルテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウイルテックは東京証券取引所スタンダード市場に上場する総合エンジニアリング企業です。製造請負・派遣、建設・IT技術者派遣、EMS事業などを展開しています。直近の連結業績は、売上高446億円(前期比24.9%増)、経常利益12億円(同200.2%増)と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社ウイルテック の有価証券報告書(第33期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ウイルテックってどんな会社?


製造請負・派遣事業を主軸に、建設・IT分野への技術者派遣やEMS(受託製造)事業など、多角的なエンジニアリングサービスを展開する企業です。

(1) 会社概要


1992年に製造請負事業を行うアイピーエヌとして設立され、2004年に現在の社名へ変更しました。その後、ベトナムやミャンマーでの海外展開を進め、2020年に東証二部へ上場、2022年には東証スタンダード市場へ移行しました。2023年にはホタルクスを子会社化し、EMS事業を拡大しています。

連結従業員数は4,768名、単体では3,050名です。筆頭株主は会長の小倉秀司氏で、第2位は同氏の資産管理会社であるRASアセット、第3位は社長の宮城力氏となっており、経営陣が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
小倉 秀司 43.52%
株式会社RASアセット 13.52%
宮城 力 6.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は宮城力氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
宮城 力 代表取締役社長執行役員 2000年同社入社。製造技術部、事業開発部などを経て2016年代表取締役社長に就任。2022年より現職。
小倉 秀司 取締役会長執行役員 1992年同社設立とともに代表取締役社長に就任。2004年代表取締役会長。2022年より現職。
野地 恭雄 取締役常務執行役員 2006年ウイルテック九州(現同社)入社。製造事業本部長などを経て、2022年より現職。
西 隆弘 取締役上席執行役員カスタマーサービス事業本部長 2002年同社入社。事業推進部ゼネラルマネジャー、事業開発部長を経て、2022年より現職。
渡邊 剛 取締役上席執行役員管理本部長 2003年ワット・コンサルティング入社。2012年同社管理部長、2018年管理本部長を経て、2022年より現職。
石井 秀暁 取締役上席執行役員マニュファクチャリング事業本部長 TTM代表取締役社長等を経て2015年同社入社。エンジニアリング事業本部長を経て、2022年より現職。
水谷 辰雄 取締役上席執行役員 2004年ワット・コンサルティング入社。2018年同社代表取締役社長に就任。2022年より現職。
京﨑 利彦 取締役(監査等委員) パナソニック電工制御テクノ代表取締役社長等を経て2014年同社入社。2018年より現職。


社外取締役は、麻田祐司(ブレインアシスト代表取締役社長)、見宮大介(弁護士法人御堂筋法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「マニュファクチャリングサポート事業」「コンストラクションサポート事業」「ITサポート事業」「EMS事業」および「その他」事業を展開しています。

**マニュファクチャリングサポート事業**
電子部品や電気製品等のメーカー工場における製造請負・派遣、設計開発分野への技術者派遣、および電気機器等の修理サービスを提供しています。
顧客であるメーカー等から、請負契約に基づく成果物の対価や、派遣契約に基づく稼働対価を受け取ります。運営は主にウイルテックが行っています。

**コンストラクションサポート事業**
建設業界向けに、施工管理や設計関連の技術を持つ建設系技術者の派遣、および人材紹介を行っています。また、ホテルや商業施設等のリニューアル工事における電気設備工事の請負も手掛けています。
ゼネコンやサブコン等の顧客から、技術者派遣の対価や工事請負代金を受け取ります。運営はワット・コンサルティングが行っています。

**ITサポート事業**
システムエンジニアやプログラマーなどのIT技術者に特化した人材派遣、およびシステムの設計・開発・保守を行っています。
顧客企業から、技術者派遣の対価やシステム開発等の受託費用を受け取ります。運営はパートナーが行っています。

**EMS事業**
電子機器・プリント基板の受託製造、電子部品の卸売販売、および照明器具の企画開発・製造・販売を行っています。
メーカー等への製品販売や受託製造による対価、卸売販売による収益を得ています。運営はデバイス販売テクノおよびホタルクスが行っています。

**その他**
障がい者支援事業(印刷・Web制作等)、ベトナム・ミャンマーでの海外人材コンサルティング・教育事業、中古OA機器の再生販売事業を行っています。
各サービス利用者や製品購入者から対価を受け取ります。運営はウイルハーツ、WILLTEC VIETNAM、サザンプランなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は253億円から446億円へと大幅に拡大傾向にあります。特に直近ではEMS事業の拡大等が寄与し、売上規模が大きく伸長しました。経常利益は変動があるものの、直近では12億円と高い水準に回復しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 253億円 300億円 332億円 357億円 446億円
経常利益 12億円 6億円 11億円 4億円 12億円
利益率(%) 4.9% 2.2% 3.4% 1.1% 2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 3億円 6億円 -6億円 4億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、利益率も14.0%から19.0%へ改善しました。営業利益率も向上しており、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 357億円 446億円
売上総利益 50億円 85億円
売上総利益率(%) 14.0% 19.0%
営業利益 3億円 10億円
営業利益率(%) 0.9% 2.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が27億円(構成比36%)、支払手数料が17億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


EMS事業がホタルクスの連結子会社化等により売上が倍増し、利益にも大きく貢献しました。主力のマニュファクチャリングサポート事業は売上が横ばいながら利益を確保しています。コンストラクションサポート事業も増収増益と好調に推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
マニュファクチャリングサポート事業 187億円 186億円 -3億円 4億円 1.9%
コンストラクションサポート事業 50億円 56億円 2億円 3億円 4.8%
ITサポート事業 30億円 30億円 0億円 0億円 0.2%
EMS事業 86億円 169億円 4億円 4億円 2.3%
その他 4億円 5億円 -1億円 0億円 2.5%
調整額 -3億円 -4億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 357億円 446億円 3億円 10億円 2.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6億円 12億円
投資CF 1億円 -9億円
財務CF -0億円 -1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人との出会い」を大切にし、共に過ごす時間の中で学び成長しながら、豊かな社会の創造に邁進し、「笑顔が溢れる社会づくり」に貢献することをグループ経営理念として掲げています。

(2) 企業文化


「Rise for it」というグループスローガンのもと、モノづくりを支援する会社として、地球環境、顧客、従業員など、さまざまな「it」を向上させる存在でありたいという思いを持っています。「千変万化」を経営方針とし、変化する社会環境に対して常に新たな挑戦を行い、顧客に感動を与えることを使命としています。

(3) 経営計画・目標


「2022-2025中期経営計画」において、2025年3月末で売上高600億円、EBITDA40億円を目標として掲げていました。2025年3月期の実績は売上高446億円、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)は約13億円となりました。現在、翌期以降の新経営戦略を策定中です。

(4) 成長戦略と重点施策


「事業規模の拡大」「新たな技術の取り込み」「高付加価値化による収益性向上」を基本方針とし、効率的な営業拠点の拡大、スマートものづくりの推進、サービス事業の拡大、高度人財教育の拡充などを重点施策として推進しています。また、M&Aの活用による新領域への進出やシナジー創出も図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「高度人財教育の拡充」を重要戦略とし、企業OBによる実践的な教育や海外の人材データベース拡充を進めています。また、未経験者の採用・育成や外国人材の活用に加え、リーダー育成や勉強会、資格取得奨励金制度などを通じて人材の定着率向上とエンゲージメント向上に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.2歳 5.3年 3,613,764円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.4%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 83.2%
男女賃金差異(正規) 84.0%
男女賃金差異(非正規) 86.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、教育拠点(10拠点)、女性管理職比率目標(30%以上)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取引先業種の景況による影響


主要取引先には電子部品、電気機器、情報通信機器関連のメーカーが多く、これらの業界の景気変動の影響を受けやすい特徴があります。顧客の増産・減産に伴う生産変動に対応する役割を担っているため、市況悪化時には売上が急激に変動する可能性があります。

(2) カントリーリスク


ベトナムやミャンマーに連結子会社を有しており、海外でのビジネス展開に伴う各国の政治・経済情勢の変化、法制度の見直し、自然災害、紛争などの予期せぬ事象が発生した場合、事業運営や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 人材の確保と育成


人手不足が深刻化する中でエンジニアの採用競争が激化しており、採用費用の増加が懸念されています。計画通りに人材の採用や定着が進まない場合、十分な人材を確保できず、事業成長や経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。