ウイルテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウイルテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウイルテックは東京証券取引所スタンダード市場に上場する総合ソリューション企業です。製造請負や技術者派遣を行う人財系事業と、電子部品・照明等の製造を行うモノ・コトづくり事業を展開しています。直近の業績は、各事業での底堅い需要や契約単価の改善提案などが奏功し、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社ウイルテックの有価証券報告書(第34期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ウイルテックってどんな会社?


同社は、製造・技術者派遣と受託製造を軸に、人材とモノづくりの総合支援を提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1992年に設立され、製造請負事業を開始しました。2003年より労働者派遣事業へ進出し、技術者派遣やEMS(電子機器等の受託製造)事業などM&Aを活用しながら事業領域を拡大してきました。2020年に東京証券取引所へ上場し、現在は人材派遣と製造のノウハウを融合させた事業を展開しています。

現在の同社グループは、連結で4,744名、単体で2,991名の従業員を抱える体制となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主は創業者の小倉秀司氏であり、第2位には資産管理会社、第3位には現社長の宮城力氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
小倉 秀司 41.06%
RASアセット 13.58%
宮城 力 6.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は宮城力が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
宮城 力 代表取締役社長執行役員 2000年同社正社員入社。事業開発部ゼネラルマネジャー、専務取締役などを経て、2022年6月より現職。
小倉 秀司 取締役会長執行役員 1992年同社設立とともに代表取締役社長に就任。その後、代表取締役会長を経て2022年6月より現職。
野地 恭雄 取締役常務執行役員 2006年ウイルテック九州入社。大分工場長、同社製造事業本部長などを経て、2022年6月より現職。
西 隆弘 取締役上席執行役員カスタマーサービス事業本部長 2002年同社入社。事業開発部長、カスタマーサービス事業本部長などを経て、2022年6月より現職。
渡邊 剛 取締役上席執行役員管理本部長 光通信などを経て2012年同社管理部長に就任。管理本部長などを経て、2022年6月より現職。
石井 秀暁 取締役上席執行役員マニュファクチャリング事業本部長 TTM代表取締役社長等を経て2015年同社入社。エンジニアリング事業本部長等を経て、2024年4月より現職。
水谷 辰雄 取締役上席執行役員 2004年ワット・コンサルティング入社。2018年同社代表取締役社長に就任後、2022年6月より現職。


社外取締役は、麻田祐司(公認会計士・ブレインアシスト社長)、見宮大介(弁護士・御堂筋法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「人財系フィールド」「モノ・コトづくりフィールド」および「その他」事業を展開しています。

(1) 人財系フィールド


製造請負・派遣事業および技術者派遣事業を展開しています。メーカーや建設企業、IT企業に対し、製造現場での生産支援や、機電・建設・IT分野での高度な技術サービスを提供しています。

人材を顧客企業へ派遣し、派遣先からの料金を収益としています。また製造請負では自社で指揮命令を行い、製造物等の対価を受け取ります。運営は主に同社およびワット・コンサルティングなどが行っています。

(2) モノ・コトづくりフィールド


EMS事業(電子部品や照明器具の製造・販売)と社会サポート事業(インフラ、雇用、サーキュラーエコノミー)を展開しています。多様な社会課題の解決を目指した新規サービスの開発を進めています。

製品の設計から製造、販売による売上や、インフラ設備の保守、外国人雇用支援等のサービス提供により収益を得ています。運営はホタルクスやデバイス販売テクノなどが担っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、障がい者支援事業や海外事業を展開しています。特例子会社による就労支援や、海外での人材・教育コンサルティングなどを行っています。

印刷やWeb制作などの受託業務のほか、外国人技能実習生の受入や海外人材の育成を通じたサービスで収益を得ています。運営はウイルハーツや海外子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に成長を続けており、300億円台から450億円規模へと事業を拡大しています。利益面では一時的な落ち込みがあったものの、直近では利益率の改善とともに力強い回復を見せています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 300億円 332億円 357億円 446億円 459億円
経常利益 6億円 11億円 4億円 12億円 15億円
利益率(%) 2.2% 3.4% 1.1% 2.7% 3.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 6億円 -6億円 7億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高の伸長とともに売上総利益率および営業利益率がともに改善傾向にあります。契約単価の見直しや高付加価値化への取り組みが利益水準の底上げに寄与していることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 446億円 459億円
売上総利益 85億円 91億円
売上総利益率(%) 19.0% 19.9%
営業利益 10億円 13億円
営業利益率(%) 2.4% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が28億円(構成比35%)、支払手数料が18億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


人財系フィールドは技術者需要の拡大や単価改善が牽引し成長しています。モノ・コトづくりフィールドでも、照明器具のLED移行需要などを取り込み、手堅く売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
人財系フィールド 256億円 266億円
モノ・コトづくりフィールド 188億円 192億円
その他 1億円 1億円
連結(合計) 446億円 459億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金で借入金の返済や投資を賄う「健全型」のパターンを示しています。安定した本業の稼ぎをベースに、財務基盤の維持と将来への投資のバランスを取っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 12億円 9億円
投資CF -9億円 -2億円
財務CF -1億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社はパーパス(存在意義)として『人の可能性を発掘する~Discovering your potential』を掲げています。また、多様な機会を提供する総合ソリューション企業として、『「革新がもたらす豊かな社会」を共に創り出す』ことをミッションとして定めています。

(2) 企業文化


『絶えず学び、成長する』『自ら動き、機会を捉える』『ともに知恵を出し、改善し続ける』という3つの想いをバリューとして重視しています。個のキャラクターを尊重し、成長を支え、「未来を築く人財を育てる」ことを事業の根幹に据える文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


グループ長期ビジョン「Future Vision 2035」を策定し、持続的な企業価値の向上を目指しています。2035年に向けて、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高 1,000億円
* 経常利益 50億円
* ROE 15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「Re-Design」をキーワードに、既存の機能や価値を見直し、新たなサービスを創出する戦略を進めています。また、異なる分野の顧客基盤を連携させて潜在的な市場領域を広げる取り組みも行っています。

* 事業ポートフォリオの再構築
* 成長分野への投資による売上拡大
* DXやデータ活用を通じた顧客情報の連携

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財育成方針」に基づき、「利他的行動をし、人を大切にする人財」「変化する環境に対応し、改善・チャレンジし続ける人財」の育成を目指しています。未経験者の採用と育成、外国人材の活用を進め、長く活躍できる環境づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.2歳 5.5年 3,793,420円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.2%
男性育児休業取得率 63.6%
男女賃金差異(全労働者) 84.9%
男女賃金差異(正規雇用) 84.9%
男女賃金差異(パート・有期) 90.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、間接部門の女性比率(43.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取引先業種の景況による影響


同社の取引先は電子部品や情報通信機器関連メーカーが多く、売上構成に偏りが見られます。顧客企業の生産変動や景況悪化が起きた場合、同社グループの売上が急激に変動し、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 海外展開に伴うカントリーリスク


ベトナムやミャンマーに在外子会社を有しているため、各国の政治、経済の諸条件の変更、法制度の見直しなどの影響を受けます。予期せぬ政治不安や紛争などが生じた場合、事業遂行に支障を来す可能性があります。

(3) 人材の確保と育成に関するリスク


人材アウトソーシング事業を展開する上で、採用と定着は最重要課題です。エンジニアの採用競争が激化する中、採用費用の増加や、計画通りの人材確保・定着が進まない場合、収益力の低下を招くリスクが懸念されます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。