フォースタートアップス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フォースタートアップス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のフォースタートアップスは、スタートアップ向け人材支援「タレントエージェンシー」やデータベース「STARTUP DB」などを展開しています。2025年3月期は、主力の人材紹介等が堅調に推移し、売上高37億円(前期比8.1%増)、営業利益5億円(前期比7.0%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、フォースタートアップス株式会社 の有価証券報告書(第9期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フォースタートアップスってどんな会社?

スタートアップ企業への人材紹介を中核に、データベース運営や産官学連携支援など、成長産業支援プラットフォームを展開する企業です。

(1) 会社概要

同社は2016年9月、株式会社ウィルオブ・ワークのネットジンザイバンク事業部を分割して設立されました。2018年に現在の商号へ変更し、同年にはデータベース「STARTUP DB」をリリースしました。2020年3月に東証マザーズ(現グロース)へ上場し、2024年3月には親会社であったウィルグループとの資本関係を解消しています。

2025年3月31日現在、従業員数は連結230名、単体223名です。筆頭株主は創業社長の志水雄一郎氏で、第2位はタクシー事業等を展開する日本交通です。第3位は個人株主となっています。

氏名 持株比率
志水 雄一郎 9.55%
日本交通 7.52%
吉川 徹 4.91%

(2) 経営陣

同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は志水雄一郎氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
志水 雄一郎 代表取締役社長 1996年パーソルキャリア入社。ウィルオブ・ワークを経て2016年9月同社設立と共に代表取締役社長に就任(現職)。
恒田 有希子 取締役副社長兼ヒューマンキャピタル本部長兼オープンイノベーション本部長 2007年サミーネットワークス入社。メタップスを経て2016年同社入社。2024年4月より現職。
清水 和彦 取締役兼アクセラレーション本部長 2005年グローリアス入社。ウィルグループを経て2016年同社入社。2019年7月より現職。


社外取締役は、齋藤太郎(株式会社dof代表取締役社長)、梅澤高明(A.T.カーニー日本法人会長)、田久保善彦(グロービス経営大学院大学副学長)、小久保愛子(公認会計士)、堀内雅生(株式会社U-NEXT HOLDINGS常勤監査役)、秋元芳央(弁護士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「タレントエージェンシー&オープンイノベーション事業」および「ベンチャーキャピタル事業」を展開しています。

(1) タレントエージェンシー&オープンイノベーション事業

**タレントエージェンシーサービス**
スタートアップ・成長企業に対して、経営幹部層やハイクラス人材を中心とした人材紹介や、採用コンサルティングを行っています。独自のデータベースを活用し、企業の成長フェーズに合わせた人材のマッチングを強みとしています。
収益は主に求人企業からの成功報酬型コンサルティングフィーや、月額固定のコンサルティング報酬から得ています。運営は主にフォースタートアップスが行っています。また、2023年に設立されたシングレスがエグゼクティブ領域特化の人材支援を行っています。

**オープンイノベーションサービス**
成長産業データベース「STARTUP DB」の運営や、官公庁・自治体との産官学連携プロジェクト(Public Affairs)、カンファレンス「GRIC」の開催などを通じて、スタートアップ・エコシステムの発展を支援しています。
収益は「STARTUP DB」の有料会員からの利用料、官公庁・自治体からの受託事業収入、カンファレンスの協賛金などから得ています。運営は主にフォースタートアップスが行っています。

(2) ベンチャーキャピタル事業

タレントエージェンシーサービスの注力支援先であるスタートアップ企業に対して、投資事業組合を通じて投資を行っています。人材支援と資金支援の両面から成長産業を支えることを目的としています。
収益は、投資先企業の株式売却益(キャピタルゲイン)や運用益などから得ています。運営は、子会社のフォースタートアップスキャピタル合同会社およびフォースタートアップス1号投資事業有限責任組合が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近の業績を見ると、売上高は順調に拡大傾向にあります。特に2022年3月期から2025年3月期にかけて売上高は約1.6倍に成長しました。利益面では、経常利益率が10%台から20%前後で推移しており、安定して黒字を確保しています。当期純利益も毎期計上されており、成長投資を行いつつも収益性を維持していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 23億円 30億円 34億円 37億円
経常利益 5億円 6億円 4億円 4億円
利益率(%) 21.0% 19.6% 12.5% 12.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 4億円 4億円 3億円

(2) 損益計算書

前期と比較すると、売上高は増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益率は前期より若干上昇し、12%台を維持しています。事業規模の拡大に伴い売上総利益が増加し、販管費の増加を吸収して営業増益となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 34億円 37億円
売上総利益 27億円 31億円
売上総利益率(%) 79.7% 83.6%
営業利益 4億円 5億円
営業利益率(%) 12.4% 12.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が12億円(構成比44%)、地代家賃が3億円(同11%)を占めています。同社は人材ビジネスのため、販管費に占める人件費の割合が高くなる構造です。

(3) セグメント収益

主力のタレントエージェンシー&オープンイノベーション事業は、人材紹介の単価上昇やデータベースサービスの有料会員増、イベント収入増などにより増収となりました。一方、セグメント利益は本社移転費用などのコスト増により減益となりました。ベンチャーキャピタル事業は売上高計上がなく、管理費用等の発生により損失となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
タレントエージェンシー&オープンイノベーション事業 34億円 37億円 6億円 5億円 12.5%
ベンチャーキャピタル事業 - - -1億円 -0.1億円 -
連結(合計) 34億円 37億円 4億円 5億円 12.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社のCFパターンは「積極型」です。営業活動で得た資金に加え、銀行借入などの財務活動で資金を調達し、本社移転などの投資活動に充当しています。成長のための投資を積極的に行っている状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2億円 4億円
投資CF -3億円 -3億円
財務CF 0.2億円 1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は「for Startups」という経営ビジョンのもと、挑戦者であるスタートアップ企業への成長支援を通じて、日本の持続的な産業発展に貢献することを目指しています。特に「人」を最も重要な経営資源と捉え、スタートアップ企業等への人材支援を通じてイノベーション創出を促進します。

(2) 企業文化

同社はミッション「(共に)進化の中心へ」の実現に向け、3つのバリューを掲げています。「Startups First」(全ては日本の成長のために)、「Be a Talent」(自らも最たる挑戦者たれ)、「The Team」(仲間のプロデュースが日本を熱くする)を重視し、社員一人ひとりが志を持ち挑戦する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標

同社は、2026年3月期から2028年3月期にかけての中期財務目標を設定しています。売上高の継続的成長と利益成長の両立を目指し、期間中の年平均成長率および営業利益率について具体的な数値目標を掲げています。
* 売上高年平均成長率:15%~20%
* 営業利益率:15%~20%

(4) 成長戦略と重点施策

「質・量ともにNo.1のスタートアップHR」のポジション確立を目指し、ハイレイヤー人材に加えメンバークラスへの支援領域拡大や、生成AI活用による生産性向上を進めます。また、主力サービスの名称を「ヒューマンキャピタル」へ刷新し、人的資本支援の価値を再定義します。さらに、STARTUP DB等の情報資産を活かした支援メニューの拡充や、M&A・共創による事業規模拡大を推進し、「成長産業支援プラットフォーム」の構築を目指します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

ミッション等の実現には社員全員の成長と「志」の育成が不可欠と考え、「志を育む」をキーワードに人材育成を行っています。社員が志に出会い育まれているかを「Kokorozashi指数」として可視化し、モニタリングしています。また、起業家を招いた社内勉強会や、対話を通じて結束力を高める合宿などを実施し、成長と挑戦を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 30.4歳 2.4年 6,105,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.9%
男性育児休業取得率 55.6%
男女賃金差異(全労働者) 84.9%
男女賃金差異(正規雇用) 86.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 87.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員に占める女性社員の比率(29.1%)、平均休暇取得率(73.6%)、新卒入社者数(17名)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変動

同社グループはスタートアップ企業向けのサービスを提供しており、国内外の経済情勢や金融市場の変動により、スタートアップ企業の資金調達環境や求人需要が悪化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。特定の顧客群に偏らないよう顧客基盤の拡大に努めています。

(2) 人材紹介市場の競合

主力サービスのタレントエージェンシーは有料職業紹介事業に該当し、参入障壁が低く多数の競合が存在します。今後、同業他社が同様の特化型サービスを展開し競争が激化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。顧客との密な関係構築やシェア拡大により対応しています。

(3) 候補者の早期退職

人材紹介において、候補者が入社後一定期間内に自己都合退職した場合は成功報酬の一部を返金する契約となっています。ミスマッチ等により早期退職者が増加した場合には、返金が発生し業績に影響を及ぼす可能性があります。求職者への十分な説明等によりミスマッチ軽減に努めています。

(4) 求人媒体運営事業者との関係

求職者の集客において、自社媒体だけでなく他社が運営する外部人材データベースを利用しています。媒体運営会社の方針変更や関係悪化により利用に制限が生じた場合には、集客に支障をきたし業績に影響を及ぼす可能性があります。複数媒体の利用や自社集客比率の向上を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。