フォースタートアップス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フォースタートアップス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するフォースタートアップスは、スタートアップや成長企業向けの人材支援を行うヒューマンキャピタル事業を中心に展開しています。加えて、オープンイノベーション事業やベンチャーキャピタル事業も手掛けます。直近の業績は売上高、経常利益ともに大幅な増収増益を達成し、順調に成長しています。


※本記事は、フォースタートアップス株式会社の有価証券報告書(第10期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. フォースタートアップスってどんな会社?


スタートアップ・成長企業向けの人材支援サービスを中核に、オープンイノベーションや資金提供も手掛ける企業です。

(1) 会社概要


同社の前身はウィルグループ子会社の事業部として2013年4月に発足しました。2016年9月にスタートアップ企業向けの人材支援を目的として会社分割により新設され、2018年3月に現社名へ商号変更しました。2020年3月に上場を果たし、現在はオープンイノベーション事業等も展開しています。

従業員数は連結で252名、単体で238名です。筆頭株主は創業者の志水雄一郎氏で、第2位は日本交通です。第3位にはベル投資事業有限責任組合1が名を連ねています。

氏名 持株比率
志水雄一郎 9.83%
日本交通 7.74%
ベル投資事業有限責任組合1 5.45%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役 CEOは志水雄一郎氏が務めています。役員のうち6名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
志水雄一郎 代表取締役 CEO 1996年インテリジェンス入社。セントメディア等を経て2016年同社代表取締役社長。2026年より現職。
恒田有希子 代表取締役 COO 2007年サミーネットワークス入社。メタップス等を経て2016年同社入社。取締役副社長等を経て2026年より現職。
清水和彦 取締役 2005年グローリアス入社。ウィルグループ等を経て2016年同社入社。人事本部長等を経て2026年より現職。


社外取締役は、齋藤太郎(dof代表取締役社長)、梅澤高明(A.T.カーニーシニアアドバイザー)、田久保善彦(グロービス経営大学院大学特任副学長)、小久保愛子(元監査法人トーマツ)、堀内雅生(U-NEXT HOLDINGS常勤監査役)、秋元芳央(英和法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ヒューマンキャピタル事業」「オープンイノベーション事業」および「ベンチャーキャピタル事業」を展開しています。

ヒューマンキャピタル事業


スタートアップ企業や成長企業向けに、人材紹介を中心とした人材支援やコンサルティングサービスを提供しています。ハンティング型の採用手法を用い、求人企業のニーズに合致する経営幹部層などの優秀な人材を効率的に発掘・紹介しています。起業家とベンチャーキャピタルを繋ぐ起業支援も行っています。

収益は主に、求人企業から入社決定者の理論年収に一定の手数料率を乗じた成功報酬として受け取ります。また、採用課題を解決するコンサルティングサービスでは月額固定報酬を収受しています。本事業は同社およびシングレス、アリカタが運営しています。

オープンイノベーション事業


データベースを活用し、大手企業や官公庁・自治体とスタートアップ企業の連携を促進するサービスを提供しています。成長産業データベースの提供や、産官学連携を通じたスタートアップ育成事業の受託、さらには国内最大規模のカンファレンス開催やM&A仲介によるイグジット支援なども手掛けています。

法人向けデータベースの定額利用料やデータ販売料のほか、官公庁からの業務受託料、カンファレンスの協賛金などを収受しています。M&A仲介では譲渡企業と譲受企業双方から成功報酬を受け取ります。本事業は同社が運営しています。

ベンチャーキャピタル事業


ヒューマンキャピタル事業で注力して支援しているスタートアップ企業に対して直接投資を実行しています。企業の成長を資金面から支援することで、対象企業の価値向上を後押ししています。

投資先企業が上場やM&Aなどでイグジットした際に、投資収益を計上するモデルです。本事業は子会社のフォースタートアップスキャピタルおよびフォースタートアップス1号投資事業有限責任組合を通じて運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績をみると、売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けており、特に直近の事業年度では前期比で大きく売上を伸ばしています。利益面については、一時的に伸び悩む時期も見られましたが、直近では大幅な増益を達成し、利益率も20%台に回復するなど、成長と高収益性を両立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 23.5億円 30.0億円 34.2億円 36.9億円 52.7億円
経常利益 4.9億円 5.9億円 4.3億円 4.5億円 10.5億円
利益率(%) 21.0% 19.6% 12.5% 12.2% 20.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.8億円 4.3億円 4.0億円 3.3億円 9.0億円

(2) 損益計算書


収益性の高さが特徴で、売上総利益率は80%前後の高い水準を維持しています。直近では売上高の拡大に伴い、営業利益が前期比で大きく増加しており、営業利益率も改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 36.9億円 52.7億円
売上総利益 30.9億円 42.0億円
売上総利益率(%) 83.6% 79.8%
営業利益 4.5億円 11.2億円
営業利益率(%) 12.3% 21.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が14.0億円(構成比45.3%)、法定福利費が2.7億円(同8.7%)、地代家賃が2.7億円(同8.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のヒューマンキャピタル事業は、人材紹介サービスにおいて生産性向上と単価上昇が進み、大幅な増収を牽引しました。オープンイノベーション事業もデータベースサービスの契約社数増加などにより順調に売上を拡大しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ヒューマンキャピタル事業 31.2億円 44.8億円
オープンイノベーション事業 5.7億円 7.9億円
連結(合計) 36.9億円 52.7億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスであり、営業で得た資金で借入の返済や投資を賄っている健全な状態です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は33.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.5%で、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3.6億円 9.7億円
投資CF -2.5億円 -5.5億円
財務CF 1.5億円 -1.6億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「(共に)進化の中心へ」をミッションに、「for Startups」をビジョンとして掲げています。スタートアップ企業等への成長支援を通じて、日本の持続的な産業発展およびイノベーション社会の創出に貢献することを目指し、成長産業に集う挑戦者を支えるプラットフォームの構築を推進しています。

(2) 企業文化


行動指針として「Startups First」「Be a Talent」「The Team」という3つのバリューを掲げています。すべては日本の成長とスタートアップスのために行動し、自らも最たる挑戦者として生き様を発信するとともに、チーム一丸となって成長産業支援のプロデュースに取り組む文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期から2028年3月期にかけてのオーガニック成長における中期財務目標を設定しています。オーガニックでの売上高成長の継続と利益成長の両立を目指し、以下の指標を目標に掲げています。

* 売上高成長率:20%
* 営業利益率:20%以上

(4) 成長戦略と重点施策


圧倒的な実績とブランド力を活かし、人材支援を中核とした複合的なサービスの提供を推進します。具体的には、スタートアップHRにおいてナンバーワンのポジションを確立し、独自データを活用した支援メニューの拡大を図ります。さらに、M&Aなども視野に入れた事業規模の拡大を進める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ミッションやビジョンへの共感と即戦力を重視した採用を行い、年齢や勤続年数に関わらず成果に応じて報いる実力主義の風土を持っています。積極的な抜擢や起業家層との接点を通じた成長環境を提供し、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる筋肉質な組織の維持と価値創造力の最大化に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 30.6歳 2.6年 6,877,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.8%
男性育児休業取得率 45.5%
男女賃金差異(全労働者) 82.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 83.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 90.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員に占める女性社員の比率(29.4%)、残業時間/月(24.6時間)、平均休暇取得率(68.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変動


同社の事業はスタートアップ企業向けのサービスに特化しているため、景気動向や金融資本市場の変動により、スタートアップ企業数や資金供給が減少した場合、求人ニーズの低下などを通じて業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、顧客基盤の拡大やM&A仲介などの新規事業による収益基盤の多角化を進めています。

(2) 人材紹介市場の競争激化


主力のヒューマンキャピタル事業は参入障壁が低く、多数の同業他社が存在しています。また、M&A仲介事業においても競合が多いため、他社との競争が激化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はスタートアップや成長企業に特化した専門性で顧客と密な関係を構築し、差別化を図っています。

(3) 人材の確保と育成


事業の拡大と企業価値の向上のためには、優秀な人材の確保と育成が不可欠です。特にヒューマンキャピタル事業では、人材が期待通りの成果を出すまでに一定の育成期間を要します。同社が求める人材を適時適切に確保・育成できなかった場合、事業運営に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 個人情報保護と情報セキュリティ


多数の個人情報や機密性の高い企業情報を取り扱っており、クラウド上のデータベースを利用しています。システム障害や外部からの不正アクセス、役職員の過失により情報漏洩が発生した場合、損害賠償請求やブランド価値の毀損、社会的信用の低下を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。