ステラファーマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ステラファーマ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場、がん治療法「BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)」用薬剤の開発・製造販売を行う創薬ベンチャーです。主力製品「ステボロニン」の海外販売開始により、当期は前期比で大幅な増収を達成し、赤字幅も縮小しました。今後は適応疾患の拡大と海外展開の加速により、収益基盤の確立を目指しています。


※本記事は、ステラファーマ株式会社 の有価証券報告書(第18期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ステラファーマってどんな会社?


がん細胞を選択的に破壊する治療法「BNCT」に用いるホウ素薬剤を開発・製造販売する製薬企業です。

(1) 会社概要


同社は、ステラケミファの子会社として2007年に設立されました。2020年にBNCT用ホウ素薬剤「ステボロニン」の製造販売承認を取得し、販売を開始しています。2021年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ上場を果たしました。2022年の市場区分見直しに伴いグロース市場へ移行し、2025年には中国・海南島医療特区への初回出荷を行い、海外展開を本格化させています。

2025年3月31日現在、従業員数は単体43名です(連結子会社はありません)。筆頭株主は、親会社であったステラケミファで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。同社はステラケミファの持分法適用関連会社となっています。

氏名 持株比率
ステラケミファ 33.65%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 4.36%
野村信託銀行株式会社(投信口) 3.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は上原幸樹氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
上原 幸樹 代表取締役社長 ステラケミファ入社後、同社に入社。研究開発部長、開発本部長などを歴任し、2020年6月より現職。
藪 和光 取締役 橋本化成工業(現ステラケミファ)入社。同社営業本部長などを経て、ステラファーマ代表取締役会長を歴任し、2020年6月より現職。
林 利充 取締役 新日本科学を経て同社入社。臨床推進部長、執行役員薬事部長などを歴任し、2022年9月より現職。
城戸 崇裕 取締役 三井物産入社。三井物産(中国)有限公司戦略企画部総監を経て同社に入社し、執行役員経営企画部長などを歴任。2022年6月より現職。


社外取締役は、大西雅也(大西雅也公認会計士・税理士事務代表)、辻井康平(弁護士法人御堂筋法律事務所パートナー)、福地叔之(ふくち会計税務事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医薬品事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

医薬品事業


同社は、がん治療の一種であるBNCT(ホウ素中性子捕捉療法)に使用されるホウ素薬剤「ステボロニン」の研究開発、製造および販売を行っています。BNCTは、ホウ素薬剤をがん細胞に取り込ませた後、中性子線を照射してがん細胞を選択的に破壊する治療法であり、従来の放射線治療とは異なるアプローチとして注目されています。主な顧客は、BNCT治療を実施する医療機関です。

収益は、主に医療機関に対する「ステボロニン」の販売により得ています。国内では医薬品卸売業者を通じて医療機関へ販売する自販モデルを採用しており、海外ではパートナー企業との連携による展開を進めています。製品の製造は外部委託および親会社であるステラケミファからの原料供給を受けて行われており、運営はステラファーマが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にありますが、研究開発への先行投資が重く、損失計上が続いています。ただし、第18期においては海外売上の計上などにより売上高が急増し、赤字幅が大幅に縮小しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2.1億円 1.0億円 2.3億円 2.7億円 9.6億円
経常利益 -6.6億円 -7.6億円 -7.8億円 -7.6億円 -1.4億円
利益率(%) -318.7% -763.4% -338.8% -282.1% -14.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -6.6億円 -7.7億円 -7.8億円 -7.6億円 -1.4億円

(2) 損益計算書


売上高が前期比で3倍以上に伸長したことで売上総利益が増加しました。一方で、研究開発費や一般管理費の抑制もあり、営業損失および経常損失は前期と比較して大幅に改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2.7億円 9.6億円
売上総利益 2.2億円 8.5億円
売上総利益率(%) 80.6% 88.0%
営業利益 -7.6億円 -0.9億円
営業利益率(%) -282.1% -9.4%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が3.3億円(構成比35%)、給料及び手当が1.8億円(同20%)を占めています。売上原価に関しては、製品売上原価が1.2億円(売上原価合計の47%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期より海外販売が開始されたことで、医薬品事業全体の売上が大きく伸長しました。特に中国向けの売上が寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
医薬品事業 2.7億円 9.6億円
連結(合計) 2.7億円 9.6億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -8.8億円 1.4億円
投資CF -0.1億円 2.9億円
財務CF 2.3億円 7.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できず市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.2%で市場平均(グロース市場製造業平均63.5%)をやや下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「ひとりのかけがえのない命のために、ステラファーマは世界の医療に新たな光を照らします。」という企業理念を掲げています。創業以来、この理念に基づき、がん患者に対する新たな治療の選択肢を提供するため、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)の実用化に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、「ひとりのかけがえのない命のために」それぞれの使命を実行することを行動指針の基盤としています。また、「世界の医療に新しい光を照らす」ことを経営目標の策定方針とし、BNCTという新しい医療技術を通じて社会貢献を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、当面の経営目標として、BNCTの認知度向上による上市後の安定的収益の獲得と事業基盤の確立を掲げています。利益基準の指標(ROE等)ではなく、売上高の増加割合、すなわちBNCT実施症例数の伸長を主要な経営指標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2027」において「BNCT医薬品の世界でフロントランナーであり続ける」ことを目指しています。具体的には、適応疾患の拡大(再発高悪性度髄膜腫、血管肉腫等の承認申請)、海外展開の推進(欧米での共同開発、中国市場への供給)、新規パイプラインの拡充(深部腫瘍への適応等)を重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人」を最重要な資産と位置づけ、グローバル展開を見据えて製薬業界の経験や知見を持つ優秀な人材の採用と育成に注力しています。また、従業員が仕事と生活を両立できるよう、フレックスタイム制度やテレワーク制度を導入し、多様な働き方を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.7歳 7.4年 6,480,453円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医薬品研究開発の不確実性


医薬品開発は長期間と多額の投資を要しますが、臨床試験の結果や規制当局の審査により、開発の中止や遅延が生じる可能性があります。計画変更や承認取得の遅れが発生した場合、同社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定仕入先への依存


主力製品の原料である高純度ホウ素(B-10)の供給は、親会社であるステラケミファに依存しています。代替品がないため、同社との取引関係の変化や供給停止が生じた場合、製品の製造販売が困難となり、業績に重大な影響を与える可能性があります。

(3) BNCT事業の特異性と普及リスク


BNCTは薬剤と医療機器(加速器)を組み合わせた治療法であり、加速器の普及状況や治療実績の蓄積が事業進捗に影響します。加速器の設置が進まない場合や不具合が生じた場合、治療機会が制限され、販売計画に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 財務基盤と資金調達


先行投資型のバイオベンチャーとして営業損失が続いており、継続的な資金需要があります。計画通りの収益化が遅れた場合や、必要な時期に適切な条件での資金調達ができない場合、事業継続に懸念が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。