※本記事は、ステラファーマ株式会社の有価証券報告書(第19期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ステラファーマってどんな会社?
ステラファーマは、BNCT用ホウ素薬剤の実用化に取り組み、がん患者に新たな治療の選択肢を提供する企業です。
■(1) 会社概要
ステラファーマは、ホウ素同位体の高濃縮技術を活用したBNCTの事業化を目的に、2007年にステラケミファの子会社として設立されました。2020年には世界初となるBNCT用ホウ素薬剤「ステボロニン」の医薬品製造販売承認を取得し、販売を開始しています。2021年に東京証券取引所マザーズ(現グロース市場)へ上場しました。
同社単体の従業員数は47名です。筆頭株主は同社医薬品の原材料製造等を担う事業会社であり持分法適用関連会社であるステラケミファで、第2位は個人の株主、第3位は証券会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ステラケミファ | 33.66% |
| 中村 沢司 | 3.48% |
| モルガン・スタンレーMUFG証券 | 1.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は上原幸樹氏が務めており、社外取締役の比率は約42.9%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 上原 幸樹 | 代表取締役社長 | 2003年ステラケミファ入社。2007年同社入社、研究開発部長。取締役開発本部長などを経て2020年より現職。 |
| 藪 和光 | 取締役 | 1981年ステラケミファ入社。同社取締役営業部長、取締役専務執行役員営業統括などを経て2015年同社代表取締役会長。2020年より現職。 |
| 林 利充 | 取締役 | 2006年新日本科学入社。2011年同社入社。臨床推進部長、薬事部長、執行役員などを経て2022年より現職。 |
| 城戸 崇裕 | 取締役 | 1997年三井物産入社。同社海外ビジネス推進室次長、三井物産(中国)戦略企画部総監などを経て2018年同社入社。2022年より現職。 |
社外取締役は、大西雅也(公認会計士・税理士)、辻井康平(弁護士)、福地叔之(公認会計士・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品事業」の単一セグメントであるため、事業の枠組みに沿って解説します。
がん細胞を選択的に破壊する放射線治療の手法「BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)」に用いるホウ素薬剤の研究、開発、製造及び販売を行っています。天然ホウ素の安定同位体B-10を高純度に濃縮した原薬「ボロファラン(10B)」を用いた点滴静注製剤「ステボロニン」を提供し、がん患者に新たな治療の選択肢を届けています。
医薬品卸売業者を介した自販モデルによる収益化を実現しています。また、海外では中国や欧米などへの事業展開も推進し、パートナー企業との連携を通じたアライアンスモデルにより収益拡大を図っています。事業の運営は主にステラファーマが行っており、製造委託先や加速器メーカーなどと共同で推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は国内市場の開拓や中国向け販売等で第18期に一時的に大きく拡大しましたが、第19期は海外向け売上が計上されず減収となりました。先行して研究開発費などの費用が継続的に発生するため経常利益および当期利益は一貫して赤字が続いており、中長期での収益化を目指す投資フェーズにあります。
| 項目 | 第15期 | 第16期 | 第17期 | 第18期 | 第19期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1億円 | 2億円 | 3億円 | 10億円 | 3億円 |
| 経常利益 | -8億円 | -8億円 | -8億円 | -1億円 | -8億円 |
| 利益率(%) | -763.4% | -338.8% | -282.1% | -14.3% | -240.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -8億円 | -8億円 | -8億円 | -1億円 | -8億円 |
■(2) 損益計算書
前事業年度にあった海外向け売上がなくなり、当期は大幅な減収となりました。一方で事業基盤の整備や研究開発活動は継続しているため各種費用が膨らみ、営業赤字の幅が拡大する結果となっています。
| 項目 | 第18期 | 第19期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10億円 | 3億円 |
| 売上総利益 | 8億円 | 3億円 |
| 売上総利益率(%) | 88.0% | 86.3% |
| 営業利益 | -0.9億円 | -7億円 |
| 営業利益率(%) | -9.4% | -231.6% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が3億円(構成比約29%)、給料及び手当が2.1億円(同約21%)、業務委託費が1.4億円(同約14%)を占めています。研究開発を先行するバイオベンチャーの事業特性がコスト構造に表れています。売上原価は当期0.4億円であり、外注加工費などが大部分を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は医薬品開発事業の単一セグメントです。国内の売上は前事業年度と同水準を維持しましたが、中国向けの売上高が当事業年度は計上されなかったため、全体として大幅な減収となりました。
| 区分 | 売上(第18期) | 売上(第19期) |
|---|---|---|
| 医薬品開発事業 | 10億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 10億円 | 3億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
現在のCFパターンは、営業CF、投資CF、財務CFのすべてがマイナスとなる「末期型」に分類されます。ただし、同社は研究開発を先行するバイオベンチャー企業であり、借入金の返済や積極的な研究開発の継続に伴って一時的に資金が流出しているものであり、一般的な事業会社の業績悪化とは背景が異なります。
| 項目 | 第18期 | 第19期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.4億円 | -3.3億円 |
| 投資CF | 2.9億円 | -0.2億円 |
| 財務CF | 7.2億円 | -0.3億円 |
財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.1%で、グロース市場(製造業)の平均を下回っています。なお、同社は当期純損失を計上しているため、企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は算出されていません。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「ひとりのかけがえのない命のために、ステラファーマは世界の医療に新たな光を照らします。」を企業理念に掲げています。がん患者へ新たな医療の選択肢を提供することを目指しており、BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)の実用化とその普及を通じて世界の医療に貢献することを事業の根幹に据えています。
■(2) 企業文化
「ひとりのかけがえのない命のために」それぞれの使命を実行することを行動指針の基盤とし、「世界の医療に新しい光を照らす」ことを経営目標の策定方針としています。社会的責任の観点から、有効な標準的治療法が見つかっていない「アンメットメディカルニーズ」の分野への貢献を強く意識した組織文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、新規医薬品の上市を目指して研究開発を先行して行うバイオベンチャー企業であり、当面の経営目標は新たな医療としてのBNCTの認知度を向上させ、上市後の安定的な収益獲得と事業基盤の確立を実現することです。具体的には、BNCTの実施症例数の伸長に基づく月次売上高(「ステボロニン」の受注数量)を主要な経営指標として定めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画2027において「BNCT医薬品の世界でフロントランナーであり続ける」ことを目指し、以下の重点施策に取り組んでいます。
・再発髄膜腫や胸部悪性腫瘍などへの適応疾患の拡大
・欧米やアジア(特に中国)への海外展開の推進
・深部がん治療に向けた新規パイプラインの拡充
・資本性資金と負債性資金のバランスを意識した財務体質の強化
・製造委託先の移管等による製品の安定供給の維持・確保
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業の持続的成長と企業価値の向上を実現するため、創薬研究や臨床開発等における高度な専門性と経験を有する人材の確保・育成・定着を最重要の経営資源と位置付けています。短期的な業績評価に偏重せず、研究開発活動や組織への貢献度を重視し、導入教育・継続教育などの各種研修を通じて専門性の向上と次世代人材の育成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 第19期 | 48.5歳 | 7.0年 | 6,630,190円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新規医薬品の研究開発における不確実性
がん治療分野における適応疾患の拡大など、新薬の基礎研究から承認取得までには長期間と多額の投資が必要です。開発過程における臨床試験の結果や規制当局の指導により、開発が遅延・中止となるリスクがあります。また、市場への上市後も予期せぬ副作用が発現し、製造物責任等を問われる可能性があります。
■(2) BNCT事業特有の医療機器等への依存
同社の治療法は、ホウ素薬剤と中性子線を照射する小型加速器を組み合わせた「コンビネーションプロダクト」です。加速器メーカー側の研究開発・製造の遅延、設置機器の不具合などにより、医療機関でのBNCTの普及が制限されるリスクがあります。また、原材料の仕入を特定の企業に独占的に依存している点も課題です。
■(3) 長期にわたる先行投資と資金調達の懸念
バイオベンチャー企業として、開発パイプラインの収益化まで研究開発費が先行し、継続的な営業損失が生じる傾向にあります。事業規模の拡大に伴って成長投資や海外展開への資金需要が続くため、必要なタイミングで新株発行や金融機関からの借入等の資金調達が行えない場合、事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。



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