ゼネテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゼネテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ゼネテックはスタンダード市場に上場し、組込みソフトウェアなどのシステムソリューション事業、製造業向けDX支援のエンジニアリングソリューション事業、GPS事業を展開しています。直近の業績は、モビリティやデジタル家電開発などの需要拡大により売上高が順調に推移し、継続的な増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社ゼネテックの有価証券報告書(第41期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ゼネテックってどんな会社?

組込みシステム開発や製造業向けDX支援ソリューションを主力とし、幅広い産業のデジタル化を推進しています。

(1) 会社概要

1985年の設立以来、組込みシステム受託開発事業をコアに成長しました。1990年に3次元CAD/CAMソフト「Mastercam」の販売を開始し、現在のエンジニアリングソリューション事業の基盤を構築しました。2015年には防災サポートアプリ「ココダヨ」を開始し、2020年に株式上場を果たしました。

現在、同社グループの従業員数は連結で648名、単体で452名体制となっています。筆頭株主はKEN&パートナーズで、第2位は創業者の上野憲二氏です。積極的なM&Aを通じて事業領域の拡大を図っており、グループ一体経営による持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

氏名 持株比率
KEN&パートナーズ 36.04%
上野憲二 9.98%
山田陽國 5.29%

(2) 経営陣

同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長社長執行役員は上野憲二氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
上野憲二 代表取締役社長社長執行役員 1977年朝日ビジネスコンサルタント入社。ニューメディカルサイエンス取締役等を経て、1985年同社代表取締役社長に就任。関連会社の代表取締役を歴任し、2022年6月より現職。
鈴木章浩 取締役副社長執行役員経営管理統括部長 1986年日本債券信用銀行入行。キョウデン取締役管理本部長などを経て、2021年同社取締役管理本部長に就任。フラッシュシステムズ等の役員を歴任し、2025年11月より現職。
末永司 取締役専務執行役員システムソリューション営業統括部長兼品質マネジメント室担当 1983年東芝入社。東芝ソリューション事業部長などを経て、2023年同社顧問に就任。2025年取締役専務執行役員ビジネスユニット統括などに就き、2026年4月より現職。
上野大輔 取締役常務執行役員ビジネスユニット統括兼ビジネスサービス統括部長兼エンジニアリングソリューション事業部担当 2016年NTTデータグローバルソリューションズ入社。2019年同社入社。バート代表取締役社長などを経て、2025年取締役上席執行役員に就任。2026年4月より現職。
八戸雅利 取締役(常勤監査等委員) 1983年岩崎通信機入社。1991年同社入社。技術管理部長、システム本部長などを経て2015年取締役に就任。2020年エンジニアリングソリューション本部長を務め、2021年6月より現職。


社外取締役は、田中俊平(長島・大野・常松法律事務所パートナー弁護士)、水谷翠(水谷翠会計事務所代表)、白上博能(三菱ケミカル常務執行役員)です。

2. 事業内容

同社グループは、「システムソリューション事業」「エンジニアリングソリューション事業」「GPS事業」を展開しています。

システムソリューション事業

モビリティ分野(自動車、鉄道車両等)やデジタル家電などの組込みソフトウェア開発に加え、産業用機器向けのソフトウェア・ハードウェア一体型システム開発を提供しています。自動車メーカーや大手家電メーカーなどを主要顧客とし、設計から製造までの一括受託開発を行っています。

収益は、顧客企業からのシステム受託開発費等から得ています。同社の強みであるハードウェア制御の知識や通信・ネットワーク分野の開発技術力を活かし、エッジコンピューティングなどの高付加価値案件を受注しています。運営は主に同社およびモアソンジャパンが行っています。

エンジニアリングソリューション事業

製造業や物流業界などのデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援する各種ソフトウェアを提供しています。3次元CAD/CAMソフトウェア「Mastercam」や3次元シミュレーション「FlexSim」、製品ライフサイクル管理システムなどを取り扱っています。

収益は、ソフトウェアのライセンス販売、導入・技術支援、保守サポート、教育・研修などのソリューションサービス料から構成されています。自社開発のIoT稼働モニタリングシステムなども展開し、主に同社およびモアソンジャパンが運営しています。

GPS事業

自社開発のスマートフォン向け防災サポートアプリ「ココダヨ」および「ココダヨ Life」を提供しています。緊急地震速報の受信と同時に家族の最新の居場所を自動配信し、お互いの安否を把握できる機能や、防犯・見守り機能を備えています。

収益は、NTTドコモが提供するアプリ使い放題サービスを通じたレベニューシェアや、アプリストア経由での一般ユーザーからの利用料から得ています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、堅調な成長を続けています。利益面では一時的に踊り場を迎えた時期もありましたが、足元ではシステムソリューション事業における高付加価値案件の増加やM&A効果により、過去最高の売上高および各段階利益を更新しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 47億円 59億円 72億円 81億円 110億円
経常利益 3億円 1億円 6億円 7億円 8億円
利益率(%) 5.4% 1.9% 8.9% 8.4% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.7億円 0.9億円 4億円 6億円 5億円

(2) 損益計算書

売上高の大幅な拡大に伴い、売上総利益も順調に増加していますが、M&Aによる新規連結子会社の影響やハードウェア部材の仕入価格上昇により、売上総利益率は低下しています。一方で、各事業の収益改善施策が奏功し、営業利益は前期から増益を達成しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 81億円 110億円
売上総利益 33億円 41億円
売上総利益率(%) 40.3% 37.8%
営業利益 7億円 8億円
営業利益率(%) 8.5% 7.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が10億円(構成比29%)、広告宣伝費が3億円(同10%)、支払手数料が2億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益

主力のシステムソリューション事業は、モビリティ開発などの堅調な需要とM&A効果により大幅な増収増益を達成しました。エンジニアリングソリューション事業も技術サービスの強化で増収増益となりましたが、GPS事業はプラットフォーム経由の売上が減少し減収減益となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
システムソリューション事業 47億円 68億円 13億円 15億円 22.3%
エンジニアリングソリューション事業 29億円 38億円 4億円 5億円 12.1%
GPS事業 5億円 4億円 1億円 0.2億円 6.0%
連結(合計) 81億円 110億円 7億円 8億円 7.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 5億円 1億円
投資CF -4億円 -0.5億円
財務CF 7億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は19.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「想像力・創造力・技術力を駆使して、安心・安全な社会づくりに寄与すると共に、社会の継続的発展と成長に貢献する」を経営理念として掲げています。この理念のもと、「お客さま満足度の継続的な向上に努める」および「社員の健全で豊かな生活の実現に努める」を経営方針とし、社会課題の解決と企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化

行動指針として「行動憲章」を定め、すべての役員および従業員が職務を執行するにあたっての基本方針としています。コンプライアンス経営および法令遵守を重視し、高い倫理観を持った事業活動を通じて社会の持続的な発展に貢献する文化を育んでいます。また、従業員の多様性や人格、個性を理解・尊重した差別のない企業風土づくりを実践しています。

(3) 経営計画・目標

2026年度から2028年度までの3ヵ年を対象とした中期経営計画を策定し、売上高、営業利益、営業利益率、ROEを重要な経営目標として設定しています。M&Aによる事業拡大を含め、最終年度には以下の数値目標の達成を目指しています。

* 売上高:160億円
* 営業利益:14億円
* 営業利益率:9%
* ROE:18%

(4) 成長戦略と重点施策

「トータルソリューションパートナーへの進化」を全社方針とし、「事業領域拡大と収益力強化」「コンサル/技術サービス強化」を重点施策としています。各事業を部門・会社を超えた一体経営で取り組むことでシナジーを最大化します。また、事業成長を支える経営基盤戦略として、人的資本の強化、生成AIの活用による生産性向上、基幹システムの利用高度化を推進しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人的資本の強化」を人材戦略の柱として位置づけ、事業成長の基礎となる人材育成を推進しています。組織の統率力を高めるプロジェクトマネジメント力の強化と、現場の開発力を高めるエンジニアの育成に注力しています。また、「人材育成」「成果発揮」「処遇向上」「人材獲得」の好循環サイクルを回し、従業員が能力や活力を発揮できる就業環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.6歳 6.9年 6,070,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.4%
男性育児休業取得率 37.5%
男女賃金差異(全労働者) 82.2%
男女賃金差異(正規雇用) 82.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 74.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性エンジニア比率(15.7%)、年次有給休暇取得率(67.5%)、自発的離職率(5.0%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済環境や市場動向に関するリスク

同社グループの事業は、自動車、産業機器、デジタル家電などの幅広い製造業界や物流業界に及んでいます。為替変動や地政学的要因などによってこれらの産業が悪影響を被った場合や、競合他社との価格競争が激化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。多様な業界への事業展開によりリスクの低減に努めています。

(2) 技術革新に関するリスク

情報サービス産業は技術革新のスピードが速く、新技術や新サービスが続々と登場します。同社グループにおいて、最新技術への対応が遅れたり、対応できなかったりした場合は、市場競争力が低下し事業運営に支障が生じる可能性があります。技術者の採用や教育、社内環境の整備を通じて、スピーディーな対応を図っています。

(3) 特定領域への依存度に関するリスク

システムソリューション事業において、組込み領域への依存度が高く、売上高の過半を占めています。発注元企業の開発体制の見直しや事業戦略の変更に伴い、発注方針に変化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。他セグメントへの人材シフトや新規案件の開拓を通じて、依存度の低減と事業の多角化を進めています。

(4) プロジェクトの採算性に関するリスク

システムソリューション事業において、プロジェクトごとに適正利益の確保と進捗管理を行っていますが、不測の事態によって開発工数が増大した場合には、採算が悪化する可能性があります。工数見積りの精度向上や、問題発生の兆候を早期に発見・報告する体制の構築により、リスクの極小化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。