サイバートラスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サイバートラスト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のデジタルトラスト事業を展開する企業です。認証・セキュリティサービスやLinux/OSS技術を活用したプラットフォームサービスを提供しています。直近の連結業績は、売上高が前期比15.1%増、経常利益が同29.2%増、当期純利益が同86.9%増となり、増収増益を達成しました。


※本記事は、サイバートラスト株式会社 の有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サイバートラストってどんな会社?


デジタルトラスト事業を主軸に、認証・セキュリティ技術やLinux/OSS等でデジタル社会の信頼基盤を支える企業です。

(1) 会社概要


同社の源流は2000年に設立されたミラクル・リナックスです。2014年にソフトバンク・テクノロジー(現SBテクノロジー)の子会社となり、2017年には旧サイバートラストを吸収合併して現商号へ変更しました。2021年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ上場し、2024年10月にはサービス区分を統合・変更するなど、事業基盤の強化を進めています。

同グループは連結従業員277名、単体236名の体制で事業を展開しています。大株主構成については、筆頭株主は親会社であるSBテクノロジー(57.96%)です。第2位はソフトウェア開発等の事業を行うオービックビジネスコンサルタント(5.57%)、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(2.25%)となっています。

氏名 持株比率
SBテクノロジー 57.96%
オービックビジネスコンサルタント 5.57%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 2.25%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長執行役員兼CEOは北村裕司氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
北村 裕司 代表取締役社長執行役員兼CEO 1996年旧サイバートラスト入社。技術本部、新規事業開発室長などを経て、2017年同社副社長執行役員兼CTO兼CISO。2023年6月より現職。
眞柄 泰利 代表取締役会長 日本ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)執行役専務等を経て、2011年同社入社。2012年社長就任。2025年4月より現職。
清水 哲也 取締役常務執行役員 兼 CFO 銀行を経て、ソフトバンク・ファイナンス(現ソフトバンク)入社。SBテクノロジー執行役員経営企画本部長などを経て、2021年同社取締役就任。2024年4月より現職。
香山 春明 取締役 マイクロソフト(現日本マイクロソフト)執行役常務などを経て、2018年Cybersecure Tech Inc.社長就任。同年6月より現職。


社外取締役は、広瀬容子(ラピッヅワイド社長)、田島弓子(ブラマンテ社長)、石田佳久(元東芝クライアントソリューション会長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルトラスト事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) トラストサービス


公開鍵基盤(PKI)技術を用い、SSL/TLS証明書によるWebサイトの実在証明や、デバイス証明書による端末認証などを提供しています。また、本人確認サービスや電子署名用証明書などの「iTrust」シリーズにより、ビジネスプロセスのデジタル化における信頼性を支援するサービスです。

顧客である企業や自治体等から、証明書の発行手数料やサービスの利用料、ライセンス料を受け取ることで収益を得ています。また、導入支援などのプロフェッショナルサービスも提供しています。運営は主に同社が行っています。

(2) プラットフォームサービス


企業向けLinux OS「MIRACLE LINUX」や、IoT機器向けLinux OS「EMLinux」などを提供しています。オープンソース技術を活用し、サーバーや産業用コンピュータ、IoT機器のライフサイクルを通じたセキュリティ対策や長期サポートを実現し、ITインフラの安定稼働を支援します。

顧客企業から、OSやソフトウェアのライセンス料、システム監視・バックアップ製品等の対価を受け取ります。また、長期サポートやセキュリティ更新などのリカーリング収益、受託開発等のプロフェッショナルサービスによる収益もあります。運営は同社および連結子会社のリネオソリューションズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。利益面では、経常利益も売上拡大に伴い増加基調を維持しており、利益率も20%近くまで向上しています。当期純利益についても、直近で大幅な増益となっており、成長性と収益性の両面で好調な推移を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 49.0億円 57.3億円 61.7億円 64.7億円 74.4億円
経常利益 7.2億円 8.7億円 10.7億円 11.2億円 14.5億円
利益率(%) 14.6% 15.2% 17.3% 17.3% 19.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.0億円 5.1億円 6.8億円 4.8億円 8.9億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益を見ると、売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。売上総利益率は47〜48%台で推移しており、営業利益率も17%台から19%台へと向上しました。コストコントロールを行いつつ事業拡大が進んでおり、収益性が高まっていることが確認できます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 64.7億円 74.4億円
売上総利益 30.5億円 35.9億円
売上総利益率(%) 47.2% 48.2%
営業利益 11.1億円 14.2億円
営業利益率(%) 17.2% 19.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6.9億円(構成比32%)、業務委託費が1.3億円(同6%)を占めています。

(3) セグメント収益


認証・セキュリティサービスは、電子認証サービスやデバイス証明書管理サービスのパートナー取引増加により売上が伸長しました。プラットフォームサービスは、CentOSのサポート終了に伴う代替需要や、IoT機器におけるセキュリティ法規制対応の需要拡大により大幅な増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
認証・セキュリティ 39.4億円 41.4億円
プラットフォーム 25.2億円 33.0億円
連結(合計) 64.7億円 74.4億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

サイバートラストは、自己資金または増資により資金調達することを基本としています。

同社は、営業活動により潤沢な資金を生み出しており、事業の成長を支えています。一方で、将来の事業拡大に向けた設備投資や、新たな事業機会への投資も積極的に行っています。また、株主還元や自己株式の取得など、財務活動を通じて資本構成の最適化を図っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 12.2億円 19.9億円
投資CF -5.7億円 -8.7億円
財務CF -1.3億円 -4.3億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「信頼とともに」という経営理念を掲げています。また、社会における存在意義(パーパス)として「安心・安全なデジタル社会の実現」を掲げ、デジタル社会における全ての「ヒト」「モノ」「コト」に対して信頼を提供することを目指して事業活動を行っています。

(2) 企業文化


同社は、持続的な成長を実現するため、「DXを支えるトラストサービス推進」「オープンイノベーションによるテクノロジーの発展」「省資源・省エネルギー化」「レジリエントな組織づくり」という4つのマテリアリティに取り組んでいます。多様な人材が活躍できる風土や、アジリティ(俊敏性)を持った組織体制を重視し、ウェルビーイングな職場環境の構築を推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業の進捗や収益性を測る指標として「売上高」「営業利益」「営業利益率」に加え、設備投資を要する事業特性から「EBITDA」を重視しています。また、高収益率な事業モデルを目指し、「リカーリング売上」およびその比率を重要な経営指標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、デジタル社会の信頼基盤を提供するデジタルトラスト事業の需要拡大を見込み、5つの重点テーマを推進します。人的資本への投資や組織の柔軟性向上を図りつつ、トラストサービスでは本人確認や電子契約の利用拡大、プラットフォームサービスでは重要インフラ向けOSの提供や長期サポートを強化します。

また、グローバル市場への展開やOSSコミュニティへの貢献を進めるとともに、第二認証センターの構築などサービス提供能力の強化にも取り組みます。さらに、コーポレートガバナンスの強化を通じ、経営の透明性を高めながら持続的な成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本経営を重視し、多様な人材の確保と活躍できる環境整備を進めています。リーダーシップ研修や資格取得支援による人材育成、新報酬制度の導入、働き方改革を通じたウェルビーイングな職場環境の構築に注力しています。また、エンゲージメント施策により組織の状態を可視化し、優秀な人材の獲得と維持、組織の活性化を図ることで、企業成長につなげる方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.9歳 9.9年 7,297,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.3%
男性育児休業取得率 85.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.5%
男女賃金差異(正規) 78.3%
男女賃金差異(非正規) 47.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性比率(23.4%)、採用における正社員に占める女性比率(21.4%)、正社員の女性労働者の平均継続勤務年数(10.8年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) パートナー企業との関係性


同社のSSL/TLS証明書事業は、現在セコムトラストシステムズ社のルート認証局を用いた署名サービス契約に基づき展開されています。自社ルート認証局への移行を進める方針ですが、該当期間内に同社との関係に大きな変化が生じ、サービス提供に支障が出た場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) OSSライセンスと知的財産権


同社製品にはオープンソースソフトウェア(OSS)が多く利用されています。OSSのライセンス内容の大幅な変更や、第三者の権利侵害が発覚した場合、製品の修正や提供停止などの対応が必要となり、経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(3) WebTrust監査への適合性


電子証明書市場では、WebTrust監査への適合が事業継続の重要な条件となります。万が一、監査機関よりWebTrustおよびWebTrust EVプログラムへの適合保証が得られなくなった場合、電子証明書の発行業務に制約を受け、事業運営に重大な影響が生じる可能性があります。

(4) 親会社グループとの関係


同社はSBテクノロジーが親会社であり、ソフトバンクグループに属しています。親会社グループとの良好な取引関係は事業上重要ですが、関係の変化や、将来的にグループ内企業との競合が発生した場合、事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。また、支配株主の影響を受けるリスクも存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。