QDレーザ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

QDレーザ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するQDレーザは、通信や加工等に用いる半導体レーザの開発・販売と、網膜投影技術を活用した機器の開発を行う企業です。直近の業績は、量子ドットレーザや開発受託の需要増により増収となる一方、先行投資の負担により営業赤字が続いていますが、前年より赤字幅は縮小しています。


※本記事は、QDレーザの有価証券報告書(第20期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. QDレーザってどんな会社?


半導体レーザや網膜投影機器の開発・製造・販売を手掛ける研究開発型企業です。

(1) 会社概要


同社は、富士通と三井物産の資金を活用し、量子ドットレーザ技術に基づく光デバイスのベンチャー企業として2006年に設立されました。2010年に光通信用量子ドットレーザを世界で初めて実用量産化し、2018年には網膜走査型レーザアイウェアの販売を開始しました。2021年にマザーズ(現グロース)市場へ上場しています。

従業員数は単体で50名です。筆頭株主はJP JPMSE LUX RE UBS AG LONDON BRANCH EQ CO(常任代理人 三菱UFJ銀行)、第2位はモルガン・スタンレーMUFG証券、第3位は創業者の石井良明氏です。

氏名 持株比率
JP JPMSE LUX RE UBS AG LONDON BRANCH EQ CO(常任代理人 三菱UFJ銀行) 1.31%
モルガン・スタンレーMUFG証券 0.98%
石井良明 0.94%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は大久保潔氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
大久保潔 代表取締役社長 元三井物産コーポレートディベロップメント本部金融事業部アセットマネジメント事業室長
長尾收 取締役 元米国三井物産上席副社長 米州本部業務本部長


社外取締役は、波多野薫(BioLumina代表取締役)、内田悟(元JXホールディングス執行役員兼グループCIO)、森大輝(光和総合法律事務所パートナー)、松下修(松下修公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「レーザデバイス事業」および「レーザ・オプティカルソリューション事業」を展開しています。

レーザデバイス事業


通信、精密加工、センサ、バイオ系検査装置などに向けた半導体レーザの開発・ファブレス製造・販売を行っています。また、量子ドット結晶成長などのコア技術を活かし、研究機関やメーカー向けに基礎技術や新規アプリケーション光源の開発受託も手掛けています。

収益源は、各種レーザ製品の販売代金や顧客からの開発受託料です。製造工程のうち、特性を決める活性層成長等を自社で行い、チップ加工やモジュール実装を外部の協力会社に委託する水平分業体制をとっており、事業運営はQDレーザが直接行っています。

レーザ・オプティカルソリューション事業


網膜投影技術を用いたXRグラス用光学ディスプレイユニットの開発や、産業機器用の光学モジュール・ユニットのファブレス製造・販売を行っています。また、スマートフォン装着型などの網膜投影製品の企画・開発も手掛けています。

収益源は、法人顧客からの試作品・製品の開発受託料や、直販・代理店経由での製品販売代金です。製造は外部の協力会社に委託し、QDレーザが企画・設計や最終検査を担い、国内および米国子会社のQD Laser America,Inc.やドイツ子会社のQD Laser Deutschland GmbH等を通じて展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は毎年着実に成長を続けています。一方、研究開発への先行投資などにより各段階で赤字が継続していますが、直近では高出力レーザや量子ドットレーザの販売増、開発受託の拡大により、赤字幅は縮小傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 11.0億円 11.6億円 12.5億円 13.1億円 13.7億円
経常利益 -8.9億円 -5.5億円 -6.0億円 -4.4億円 -3.1億円
利益率(%) -81.1% -47.2% -48.2% -33.9% -22.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -8.8億円 -5.5億円 -6.4億円 -4.5億円 -3.6億円

(2) 損益計算書


直近2期のコスト構造と利益水準を比較すると、前期に計上された多額の棚卸資産評価損が減少したことや価格見直しにより、売上総利益率が大きく改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 13.1億円 13.7億円
売上総利益 4.4億円 5.8億円
売上総利益率(%) 33.9% 42.1%
営業利益 -4.5億円 -3.3億円
営業利益率(%) -34.1% -23.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与が3.1億円(構成比34%)、試作材料費が0.9億円(同9%)を占めています。売上原価の多くは外注費を中心とした当期総製造費用で構成されています。

(3) セグメント収益


レーザデバイス事業は高出力レーザや量子ドットレーザの需要増により増収となりました。レーザ・オプティカルソリューション事業は網膜投影製品の売上が減少したものの、スマートグラス向け要素技術の開発受託が拡大し増収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
レーザデバイス事業 11.2億円 11.7億円 1.4億円 1.3億円 10.9%
レーザ・オプティカルソリューション事業 1.9億円 2.0億円 -3.1億円 -1.4億円 -68.0%
調整額 -億円 -億円 -2.8億円 -3.2億円 -%
連結(合計) 13.1億円 13.7億円 -4.5億円 -3.3億円 -23.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業は赤字ですが、将来成長のための借入等で投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -5.1億円 -4.8億円
投資CF -5.7億円 -8.9億円
財務CF -0.1億円 3.6億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「人の可能性を照らせ。」という経営理念を掲げています。AIの進化や自動化技術の進歩で半導体レーザの有用性が高まる中、業界をリードする新製品の開発と安定量産化、顧客満足度の向上、信頼性の確立などを重点施策とし、社会課題の解決と持続的な発展への寄与を目指しています。

(2) 企業文化


少数精鋭体制のもと、各メンバーが自律的に専門性を発揮し、製品の価値向上と顧客満足の実現に貢献する文化を重視しています。とりわけ、技術・開発・営業の現場を横断できる人材の存在を競争力の中核と位置づけ、共通のビジョンに向かって協働し、価値観の共有と一体感の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画を策定し、2027年3月期の全社黒字化達成に向けたプランを推進しています。今後はフリー・キャッシュ・フローの増加を重視し、EBITDAを目標指標としています。

* 2027年3月期のEBITDA目標:1.1億円
* レーザデバイス事業の売上高成長率:毎年20~25%
* 同事業の粗利率目標:45%

(4) 成長戦略と重点施策


レーザデバイス事業では既存製品の拡販や低コスト化、新規アプリケーションへの参入を進め、量子ドットを中長期的な成長ドライバとして光通信やLiDAR等への研究開発を進めます。レーザ・オプティカルソリューション事業では、XRグラスへの技術採用に向けた共同開発や、光学モジュール・ユニットの提供を通じて黒字化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長に向けて人的資本が価値創造の源泉であると考え、人材力の強化と最適化を進めています。採用から育成、評価、報酬まで一貫した仕組みを整備し、トレーニングやキャリア開発プログラムによるスキル向上支援、1on1面談を通じた成長支援、柔軟な働き方の導入による定着率の向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 51.1歳 7.7年 8,307,267円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性人材率(19.0%)、離職率(4.2%)、スキルポイント(93点)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) レーザ関連市場の変動リスク

同社の参入するレーザ関連市場は成長が見込まれますが、更なる技術革新による廉価な代替品の登場や、景気後退に伴う設備投資意欲の減退などにより市場の成長が鈍化・縮小した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 継続的な研究開発と投資の負担

最先端のレーザ技術に基づく研究開発にコストを投じていますが、市場の変化を予測できず顧客の支持を得る新製品を提供できないリスクや、開発コストが想定以上に増加し収益化に時間を要するリスクがあります。

(3) 部品・部材の調達と価格変動

製造に必要な部品や部材を外部から調達しており、中東情勢やレアアース規制等により供給の不安定化や価格高騰、品質劣化が発生した場合、製品の納期遅延やコスト増に繋がり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。