※本記事は、エブレン株式会社 の有価証券報告書(第52期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エブレンってどんな会社?
産業用コンピュータや電子機器の心臓部となる「バックプレーン」や筐体の設計・製造を行う専門メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1973年に産業用コンピュータ機器の設計・製造を目的に設立されました。1986年にVME規格のバックプレーン等を開発し、2002年には中国・蘇州に製造子会社を設立して生産体制を強化しました。2011年に株式会社タンバックを子会社化(後に吸収合併)し、システムソリューション分野へも展開しています。2020年にJASDAQ(スタンダード)へ上場し、2022年の市場再編に伴いスタンダード市場へ移行しました。
現在の従業員数は連結で111名、単体で92名という規模です。筆頭株主は代表取締役社長の上村正人氏で、第2位は同氏が代表を務めるカーム有限会社となっており、経営トップとその関連会社が大株主となっています。第3位には光通信が名を連ねています。
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は上村正人氏が務めています。社外取締役比率は16.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 上村 正人 | 代表取締役社長 | 日本電気入社を経て、1973年同社取締役就任。1987年より現職。カーム有限会社代表取締役社長等を兼任。 |
| 清水 旬 | 取締役営業本部長 | 読売折込センター入社後、1995年同社入社。営業統括部長を経て2018年より現職。 |
| 上村 和人 | 取締役経営企画部長 | 日本電気ソフトウェア(現NECソリューションイノベータ)入社後、2013年同社入社。総務部長等を経て2019年より現職。 |
| 田中 猛 | 取締役管理部長 | 1986年同社入社。管理本部長を経て2019年より現職。 |
| 仲山 典邦 | 取締役事業本部長 | ナショナルコンピューター入社、アバールテクノロジー設立取締役、アバールデータ常務取締役等を経て2019年より現職。 |
社外取締役は、青柳伸幸(エーディーアイキューブ代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「産業用コンピュータ事業」およびその応用分野における製品設計・製造・販売を展開しています。
■(1) 産業用コンピュータおよび周辺製品
同社グループは、産業用電子機器や工業用コンピュータに使用されるバックプレーン、システムラック(筐体)、ボードコンピュータ等の設計・製造・販売を行っています。特にバックプレーンは、各種回路基板を接続し信号伝送や電力供給を行う重要なユニットであり、同社はこれをコア技術としています。顧客独自の仕様に合わせたカスタム製品の提供に加え、これらを組み込んだコンピュータ本体としての完成品販売も行っています。
収益は、大手システムメーカー(産業用電子機器メーカーや機械装置メーカー等)に対する製品販売から得ています。主な運営はエブレンが行い、連結子会社の蘇州惠普聯電子有限公司(中国)がバックプレーン等の製造および部材調達を担い、相互に連携して事業を展開しています。
■(2) 応用分野別展開
同社の製品は、高い信頼性が求められる社会インフラや産業インフラに組み込まれています。具体的な応用分野としては、半導体製造装置やFA機器などの「計測・制御」、鉄道や船舶搭載装置などの「交通関連」、医療機器やスーパーコンピュータなどの「電子応用」、通信基地局などの「通信・放送」、そして「防衛・その他」の5分野に分類されています。
収益は、これらの各分野における顧客企業からの製品売上によって構成されています。運営はエブレンが主体となり、各分野の顧客ニーズに対応した受託設計・製造を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は40億円前後で推移しており、直近では微増収となりました。利益面では、経常利益率は10%を超える高い水準を維持していますが、直近2期は減少傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 32億円 | 39.2億円 | 42.6億円 | 39.9億円 | 40.3億円 |
| 経常利益 | 3億円 | 5.3億円 | 6.5億円 | 4.9億円 | 4.8億円 |
| 利益率(%) | 9.4% | 13.5% | 15.4% | 12.3% | 11.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.9億円 | 3.2億円 | 4億円 | 3.1億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増しましたが、売上原価の増加により売上総利益および営業利益は減少しました。売上総利益率は20%台前半で推移しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 39.9億円 | 40.3億円 |
| 売上総利益 | 9.1億円 | 8.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.8% | 21.5% |
| 営業利益 | 4.9億円 | 4.6億円 |
| 営業利益率(%) | 12.2% | 11.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.2億円(構成比30%)、役員報酬が0.4億円(同11%)を占めています。売上原価においては、材料費の高騰等により原価率が上昇しています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、応用分野別の売上状況を分析します。計測・制御分野が全体の約6割を占める主力ですが微増にとどまりました。一方、交通関連と防衛・その他分野が2桁増と好調に推移し、通信・放送や電子応用分野の減少を補いました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 計測・制御 | 24.4億円 | 24.6億円 |
| 交通関連 | 6.6億円 | 7.4億円 |
| 電子応用 | 4.5億円 | 3.7億円 |
| 通信・放送 | 2.7億円 | 2.3億円 |
| 防衛・その他 | 1.6億円 | 2.3億円 |
| 連結(合計) | 39.9億円 | 40.3億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
エブレンは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。営業活動によるキャッシュ・フローは、事業運営の基盤を支えています。投資活動によるキャッシュ・フローは、新製品開発やバリエーション拡充といった成長に向けた投資に活用されています。財務活動によるキャッシュ・フローは、資金調達の柔軟な検討を通じて事業展開を支えています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.1億円 | 3.8億円 |
| 投資CF | -0.3億円 | -0.0億円 |
| 財務CF | -0.4億円 | -0.6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、エレクトロニクス分野における頭脳、知力の集団となることを目標とし、社名(EBRAINS)に込めた「最高のソリューションを提供することのできるブレインでありたい」という思いのもと、事業拡大に取り組んでいます。技術力と信頼を重視し、コンピュータ産業の発展に寄与することを使命としています。
■(2) 企業文化
技術力と生産力を全分野横断的に提供することを基本とし、特にバックプレーン分野において突出した技術サービスと良質な製品づくりを重視しています。顧客の信頼に応えるため、品質の向上、納期の厳守・短縮化に努め、クオリティ、コスト、デリバリーの全ての面で顧客満足度を高める姿勢を持っています。また、法令遵守や倫理観を持った行動を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、売上高および経常利益を重視する経営指標としています。これらを実現するため、営業体制の強化や技術的研究開発への投資を行っています。
* 2025年3月期目標:売上高41億円、経常利益5.3億円(実績は売上高40.3億円、経常利益4.8億円で未達)
■(4) 成長戦略と重点施策
「ユニット供給を中心に受託範囲を拡げることにより事業ドメインの拡大を目指す」ことを中期的戦略目標として掲げています。バックプレーン単体だけでなく、周辺デバイスやボードコンピュータを含めたシステム全体の提案力を強化し、高付加価値化を図ります。
* ユニット供給の拡大:システムラックやコンピュータ・プラットフォーム全体での提供を推進し、顧客の製品開発期間短縮ニーズに応える。
* コア事業の強化:新製品開発やバリエーション拡充、コストダウンの推進。
* DX、5G、IoT等への対応:エッジコンピューティングやローカル5G等の新技術分野へ積極的に対応。
* 放熱技術の研究:高性能化に伴う発熱問題に対応する技術開発。
* 中国子会社の活用:コスト競争力の強化とアジア地域でのビジネス拡大。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、更なる技術革新に対応しうる技術者や、営業・管理部門の優秀な人材の確保・育成を重視しています。ハローワーク等を活用した採用活動や、職場安全パトロールによる労働環境の適正化、ワークライフバランスへの配慮を通じて、人材の定着を図る方針です。また、能力や適性等で総合的に判断する登用制度により、性別・国籍・採用区分に関わらず人材を登用しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.8歳 | 13.4年 | 4,738,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.8% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社は常時雇用する労働者数101人以上300人以下に該当するため「男性労働者の育児休業取得率」、「労働者の男女の賃金の差異」については、公表項目として選択していないため、記載を省略しております。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得実績平均(13.7日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場動向の変動によるリスク
同社グループの売上は、半導体製造装置関連への依存度が高くなっています。半導体市場は技術革新が激しく、需給バランスの変化も急激であるため、市場での需要減少や産業全体の設備投資抑制が起きた場合、受注の減少や在庫の増加などを招き、同社の業績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。
■(2) 部材の仕入及び価格変更等によるリスク
製品製造には電子部品をはじめとする様々な部材が必要であり、業界全体での需給バランスが崩れることで部材入手が困難になるリスクがあります。納期遅延や部材価格の慢性的な上昇が発生した場合、利益率の低下や受注機会の損失につながり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 特定の顧客への販売依存に対するリスク
同社グループの販売高において、株式会社アバールデータ向けの割合が22.7%と高くなっています。同社とは友好的な関係を築いていますが、同社の顧客である半導体関連の最終顧客の動向により受注が減少した場合、エブレングループの業績にも連動して悪影響が及ぶ可能性があります。



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