エブレン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エブレン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エブレンは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、産業用・工業用コンピュータ向けバックプレーンやシステムラックなどの設計・製造・販売を主力としています。直近の業績は、売上高が微減となったものの、価格転嫁の進展等により営業利益、経常利益、当期純利益のいずれも増益を達成しました。


※本記事は、エブレン株式会社の有価証券報告書(第53期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エブレンってどんな会社?


産業用電子機器や工業用コンピュータに組み込まれるバックプレーン等の設計・製造を手がける専門メーカーです。

(1) 会社概要


1973年に産業用コンピュータ機器の設計・製造を目的に設立されました。1986年にVME規格のバックプレーン等を開発し、1994年には専用の自動組立装置であるプレスフィットマシンを自社開発して運用を開始しています。2002年には中国・蘇州に製造拠点を設立し、2020年に株式上場を果たしました。

現在の従業員数は連結で106名、単体で87名となっています。筆頭株主は創業者で代表取締役社長の上村正人氏であり、第2位は同氏が代表取締役社長を務めるカーム、第3位は光通信KK投資事業有限責任組合が名を連ねています。

氏名 持株比率
上村正人 33.18%
カーム 16.57%
光通信KK投資事業有限責任組合 4.67%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は上村正人氏が務めています。取締役6名のうち1名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
上村正人 代表取締役社長 1963年日本電気入社。1973年同社取締役、1987年より現職。カーム等の代表も兼務。
清水旬 取締役営業本部長 1994年読売折込センター入社。1995年同社入社。営業統括部長等を経て2018年より現職。
上村和人 取締役経営企画部長 1994年日本電気ソフトウェア入社。2013年同社入社。総務部長等を経て2019年より現職。
田中猛 取締役管理部長 1986年同社入社。2018年管理本部長を経て2019年より現職。
仲山典邦 取締役事業本部長 1984年ナショナルコンピューター入社。アバールデータ常務等を経て2019年より現職。


社外取締役は、青柳伸幸(元新川執行役員研究開発部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、産業用電子機器及び工業用コンピュータ関連の単一セグメントで事業を展開しています。

産業用コンピュータ関連事業


産業用電子機器や工業用コンピュータに使用されるバックプレーン、システムラック、ボードコンピュータ等の設計・製造・販売を行っています。通信・放送分野をはじめ、医療機器、半導体製造装置、交通インフラなど、社会基盤や産業活動を支えるシステムに組み込まれる製品を提供し、幅広い顧客のニーズに応えています。

収益源は、顧客である電子機器メーカーや機械装置メーカーからの製品販売代金や受託設計・製造代金です。標準品だけでなく、顧客独自の仕様に合わせたカスタム製品の販売を中心に収益を獲得しています。運営は主にエブレンが行い、中国子会社の蘇州惠普聯電子有限公司が製造の一部と現地での部材調達を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は40億円前後で安定して推移しています。経常利益は一時的に減少した時期もありましたが、直近では価格転嫁の進展等により増益となり、利益率は13.8%と高水準を維持しています。当期利益も底堅く推移しており、強固な顧客基盤を背景に安定した収益基盤を確立していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 39億円 43億円 40億円 40億円 40億円
経常利益 5億円 7億円 5億円 5億円 6億円
利益率(%) 13.5% 15.4% 12.3% 11.8% 13.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 4億円 3億円 3億円 4億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減となったものの、材料費等の高騰に対する売価への価格転嫁が進んだことで売上原価が抑えられ、売上総利益は増加しています。その結果、営業利益も前期の5億円から6億円(正確には4.6億円から5.3億円)へと増加し、収益性の改善が見られます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 40億円 40億円
売上総利益 9億円 9億円
売上総利益率(%) 21.5% 23.1%
営業利益 5億円 5億円
営業利益率(%) 11.5% 13.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.2億円(構成比30%)、役員報酬が0.4億円(同11%)、支払手数料が0.4億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、応用分野別の売上高を見ると、主力の計測・制御分野が半導体製造装置の設備投資延期の影響で減少した一方、通信・放送や防衛・その他分野で新規案件が成約し、全体を支えています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
通信・放送 2億円 3億円
電子応用 4億円 3億円
計測・制御 25億円 23億円
交通関連 7億円 8億円
防衛・その他 2億円 3億円
連結(合計) 40億円 40億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で生み出した資金を将来の成長に向けた投資(長期性預金の預入等)に充てており、手元資金で事業活動を賄う優良な状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4億円 6億円
投資CF - -10億円
財務CF -0.6億円 -0.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も80.1%となり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


エレクトロニクス分野における頭脳、知力の集団となることを目標とし、最高のソリューションを提供することのできる「ブレイン」でありたいという社名に込めた思いを経営理念として掲げています。技術力を磨き、良質な製品づくりを通してコンピュータ産業の発展に寄与することを使命としています。

(2) 企業文化


突出した技術サービスと良質な製品づくりを重視する文化があります。新規格の発表を注視し、準拠した製品を早期に商品化することや、自社製の組立装置を用いて高品質な製品を短納期で提供することで顧客からの信頼を獲得しており、プロフェッショナルな技術集団としての価値観が根付いています。

(3) 経営計画・目標


売上高および経常利益を重視する経営指標として設定しています。これを実現するために、営業体制の強化や技術的研究開発、生産体制の再整備等への投資を進めています。具体的な数値目標は以下の通りです。

・売上高:41億円
・経常利益:5億円

(4) 成長戦略と重点施策


事業ドメインの拡大に向けて、バックプレーン単体から周辺デバイスを含めたシステム提案など「ユニット供給の拡大」を重点施策としています。また、IoTやエッジコンピューティング、5Gなど新技術への対応や放熱技術の研究開発を推進し、中国子会社を活用したコスト競争力の強化にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


性別や国籍、新卒・中途採用の区別なく、能力や適性を総合的に判断する登用制度を運用しています。人材育成においては、職位・職能ごとに求める能力を定義し、上司とのコミュニケーションを通じて個別目標を定めています。また、従業員の定着率向上のため、ワークライフバランスの充実にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.8歳 13.1年 4,908,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.8%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社は従業員規模が300人以下のため、男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異については公表義務の対象ではなく、有報には記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 半導体市場の変動リスク

主力の計測・制御分野において半導体製造装置関連への販売が多くを占めています。そのため、技術革新が激しい半導体業界の設備投資動向や需給変化によって需要が急減した場合、受注の減少や在庫の増加が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 部材の調達遅延・価格上昇リスク

製品の製造には多種多様な電子部品等の部材を使用しています。業界全体で部材の需給バランスが崩れ、入手困難による納期遅延や部材価格の高騰が慢性的に発生した場合、利益の圧迫や受注の機会損失が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定顧客への販売依存リスク

当期において、アバールデータに対する売上高が全体の18.6%を占めています。同社とは友好的な関係を築いているものの、同社の顧客である半導体関連最終顧客の状況変化などにより取引が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。