松屋アールアンドディ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松屋アールアンドディ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松屋アールアンドディは東京証券取引所グロース市場に上場し、縫製自動機の開発・製造や血圧計腕帯、カーシートなどの製造・販売を展開しています。直近の連結業績は、主力のメディカルヘルスケア事業での受注が堅調に推移したことにより、売上高・経常利益ともに前期を上回り増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社松屋アールアンドディの有価証券報告書(第44期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 松屋アールアンドディってどんな会社?


同社は、縫製自動機の自社開発と、その設備を活用した縫製品の量産を行うメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1982年に家庭用ミシンの販売などを目的として設立され、その後、縫製関連機器の開発・製造へと事業を拡大しました。2001年に血圧計腕帯の製造を開始し、以降は中国、ベトナム、ミャンマーに子会社を設立して生産拠点を広げてきました。2012年にカーシート、2017年にエアバッグの製造を開始するなど事業領域を広げ、2020年に株式上場を果たしました。

現在の従業員数は連結で1,552名、単体で46名となっています。同社の大株主には、筆頭株主である後藤倫啓氏をはじめとする創業家関係者が名を連ねており、第3位には主要顧客であり資本業務提携先でもあるオムロンヘルスケアが位置しています。

氏名 持株比率
後藤倫啓 16.80%
後藤匡啓 16.80%
オムロンヘルスケア 14.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは後藤秀隆氏が務めています。また、全取締役3名のうち1名が社外取締役であり、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
後藤秀隆 代表取締役社長CEO(兼社長執行役員) 1982年同社設立代表取締役社長。中国・ベトナム等の子会社トップを歴任し、2021年より現職。
松川浩一 常務取締役CFO(兼常務執行役員)経営管理部長 2006年新日本監査法人入所。2011年公認会計士登録。2018年同社入社、経理部長等を経て2021年より現職。


社外取締役は、佐々木豊(元中外貿易常務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディカルヘルスケア」、「セイフティシステム」および「その他」事業を展開しています。

メディカルヘルスケア事業


主にオムロングループ向けの血圧計腕帯の製造を行うとともに、メディカルヘルスケア関連向け裁断機や縫製自動機の開発・製造・販売を行っています。製品は顧客の要求に沿った受注生産を採用しており、在庫リスクが低く効率的な工場稼働が可能となっています。

オムロングループからの受注に伴う製品販売が主な収益源です。運営は同社のほか、ベトナムやミャンマーの連結子会社が担っており、自社設計の縫製自動機を用いた生産ラインで自動化や省人化を進め、コスト削減に貢献しています。

セイフティシステム事業


自動車関連メーカー等向けにカーシートやエアバッグ、自動車内装品の製造を行うとともに、自動車安全装置に関する縫製自動機の開発・製造・販売を展開しています。裁断から縫製までの全工程をカバーするノウハウを活かし、顧客の要望に合わせた設備提供を強みとしています。

製品の販売や生産ラインごとにまとまった設備提供が主な収益源です。運営は同社とベトナムの連結子会社などが中心に行い、近年はドローンや航空機など輸送関連分野の自動化に向けた電子プログラムミシン等の開発も推進しています。

その他事業


メディカルヘルスケアや自動車関連メーカー向け以外の顧客に対し、家具やインテリアメーカー、アパレル関係などを中心としたそれぞれのニーズにあった縫製自動機の開発・製造・販売を行っています。

顧客から依頼を受けた独自の縫製自動機の開発や製品販売が収益源です。運営は同社のほか、中国・上海の連結子会社などが手掛けています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大を続けており、それに伴い経常利益も右肩上がりで推移しています。利益率も継続して高い水準を維持しており、強固な収益基盤が確立されていることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 56.4億円 71.6億円 84.3億円 95.7億円 97.7億円
経常利益 4.1億円 6.8億円 13.1億円 20.5億円 22.1億円
利益率(%) 7.2% 9.4% 15.5% 21.5% 22.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.0億円 -3.2億円 2.1億円 6.4億円 3.1億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に加えて売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率は向上しています。販売費及び一般管理費は増加したものの、営業利益率の改善も実現しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 95.7億円 97.7億円
売上総利益 29.1億円 32.2億円
売上総利益率(%) 30.4% 33.0%
営業利益 19.5億円 21.3億円
営業利益率(%) 20.4% 21.8%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が2.8億円(構成比26%)、役員報酬が1.6億円(同15%)、業務委託費が0.9億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のメディカルヘルスケア事業が売上・利益ともに全体を牽引しています。セイフティシステム事業は売上が減少したものの、カーシート生産の好調により利益面では大きく改善しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
メディカルヘルスケア 60.6億円 68.1億円 19.9億円 21.2億円 31.2%
セイフティシステム 33.8億円 28.6億円 2.5億円 4.0億円 13.9%
その他事業 1.3億円 1.0億円 0.3億円 -0.4億円 -34.5%
調整額 - - -3.2億円 -3.6億円 -
連結(合計) 95.7億円 97.7億円 19.5億円 21.3億円 21.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 25.7億円 12.7億円
投資CF -7.5億円 -10.7億円
財務CF -0.4億円 -2.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も65.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「Safety & Medical Healthcareを通して科学技術の向上を図り人類に貢献する。」という経営理念を掲げています。長年培ってきた開発力と技術力を基盤に、優れた品質の製品を安定供給することで顧客満足度の向上を図り、全ステークホルダーの期待に応える企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、社員一人ひとりが主体性を持って能力を発揮できる環境づくりを基本方針としています。社員の自主性を尊重し、積極的に活躍の機会を提供することで成長を促す風土があります。また、企業価値向上のためにコンプライアンスの徹底が不可欠と考え、社内規範を尊重した節度ある行動を徹底しています。

(3) 経営計画・目標


経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高および営業利益を設定しています。将来的には、運転資本の圧縮と合わせて営業キャッシュ・フローの拡大を図り、その範囲内で成長のための投資を実現することで、資本効率を着実に向上させていく計画です。

(4) 成長戦略と重点施策


中長期的には、あらゆる縫製自動化のニーズに応えるべく、高機能な縫製自動機の開発により顧客の工程自動化に貢献する戦略を描いています。縫製品事業においては、血圧計腕帯のほか、カーシートおよびエアバッグの事業拡大を重点課題としています。AI搭載の縫製自動機などの研究開発や、海外市場への販路拡大にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を持続的成長の源泉と位置づけ、将来の管理職や経営層を担う人材の計画的育成を推進しています。特に海外での事業展開が主軸であるため、海外市場で活躍できる専門性や経験を有する即戦力人材を中途採用で積極的に獲得し、事業拡大と競争力強化につなげる方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.6歳 9.4年 5,482,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、2025年3月期の中途採用者数(7名)、2026年3月期の中途採用者数(7名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定顧客への取引依存

同社グループはオムロングループに対して売上高の過半を依存しており、特定顧客への取引依存度が高い状況にあります。当該顧客の事業環境が大幅に悪化した場合や取引方針に変更があった場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、新規顧客の獲得による基盤拡大に努めています。

(2) 生産拠点の海外集中

縫製品事業の生産の大半をベトナムの連結子会社が行っており、生産拠点が特定の地域に集中しています。予測不能な法的規制や商慣習の変更、または自然災害や感染症の流行により工場の操業が中断された場合、生産体制や事業継続に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 為替変動リスク

同社グループは販売の大半を海外市場に依存しており、海外顧客との取引において外貨建て取引を採用しています。急激な為替相場の変動が発生した場合、為替差損が生じるなど同社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。