松屋アールアンドディ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

松屋アールアンドディ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。縫製自動機の技術を活かし、血圧計腕帯やカーシートなどの縫製品製造を行う企業です。直近の業績は、売上高96億円(前年同期比13.4%増)、経常利益21億円(同57.2%増)と増収増益を達成しています。オムロングループ向けの売上が大きく、ベトナムを主要生産拠点としています。


※本記事は、株式会社松屋アールアンドディの有価証券報告書(第43期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 松屋アールアンドディってどんな会社?

縫製自動機の開発力と製造ノウハウを強みに、医療用血圧計腕帯や自動車安全部品をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要

1982年に縫製機械の製造販売を目的に設立され、2001年に血圧計腕帯の製造を開始しました。2008年にはベトナムに子会社を設立し生産拠点を拡大、2017年にはカーシートおよびエアバッグの製造を開始しました。2020年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2022年にグロース市場へ移行しています。

同グループは連結1,403名、単体43名の従業員を擁する体制です。筆頭株主は後藤倫啓氏、第2位は後藤匡啓氏と創業家関連が名を連ね、第3位は主要取引先であるオムロンヘルスケア株式会社となっています。

氏名 持株比率
後藤 倫啓 16.87%
後藤 匡啓 16.87%
オムロンヘルスケア株式会社 14.83%

(2) 経営陣

同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEO(兼社長執行役員)は後藤秀隆氏が務めています。社外取締役比率は16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
後藤 秀隆 代表取締役社長CEO(兼社長執行役員) 1982年8月松屋縫製機器販売(現同社)設立、代表取締役社長。2021年6月より現職。
松川 浩一 常務取締役CFO(兼常務執行役員)経営管理部長 2006年12月新日本監査法人入所。2018年1月同社入社。2021年6月より現職。


社外取締役は、佐々木豊(元CBC常務取締役)です。

2. 事業内容

同社グループは、「メディカルヘルスケア事業」「セイフティシステム事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) メディカルヘルスケア事業

オムロングループ向けの血圧計腕帯をベトナムを中心に製造・販売するほか、同分野向けの裁断機や縫製自動機の開発・製造・販売を行っています。また、リハビリ用及び医療用ロボットの販売も手掛けています。

収益は主に血圧計腕帯製品の販売によって得ており、顧客からの要求に沿った受注生産を行っています。運営は同社のほか、Matsuya R&D(Vietnam)Co.,Ltd.などが製造・販売を行っています。

(2) セイフティシステム事業

自動車メーカー等向けにカーシート、エアバッグなどの自動車内装品に加え、これらに関連する縫製自動機の開発・製造・販売を行っています。また、ドローン用エアバッグや3D縫製自動機などの開発も進めています。

収益は自動車関連メーカー等への製品販売から得ています。エアバッグメーカー向けを中心にまとまった受注が得られる事業形態です。運営は同社およびMatsuya R&D(Vietnam)Co.,Ltd.が行っています。

(3) その他事業

メディカルヘルスケアおよび自動車関連以外のアパレルや家具・インテリアメーカー等に対し、顧客のニーズに合わせた縫製自動機や裁断機の開発・製造・販売を行っています。

収益は各業界の顧客への製品販売から得ています。運営は同社が開発・製造・販売を行い、瑪茨雅商貿(上海)有限公司が部品販売等を行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近では過去最高を更新しています。利益面でも、経常利益および当期利益ともに拡大基調にあり、高い利益率を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 73億円 56億円 72億円 84億円 96億円
経常利益 8億円 4億円 7億円 13億円 21億円
利益率(%) 11.4% 7.2% 9.4% 15.5% 21.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 -0.0億円 -3億円 2億円 6億円

(2) 損益計算書

売上高は増加し、売上総利益率も改善しています。販管費もコントロールされており、営業利益率が大幅に向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 84億円 96億円
売上総利益 23億円 29億円
売上総利益率(%) 27.2% 30.4%
営業利益 13億円 20億円
営業利益率(%) 15.2% 20.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が2.1億円(構成比22.1%)、役員報酬が1.5億円(同15.4%)を占めています。

(3) セグメント収益

メディカルヘルスケア事業、セイフティシステム事業ともに売上が伸長しており、特にメディカルヘルスケア事業が高い利益率を維持しています。その他事業も大幅な増収増益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
メディカルヘルスケア事業 54億円 61億円
セイフティシステム事業 30億円 34億円
その他事業 0.4億円 1億円
連結(合計) 84億円 96億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動がマイナス、財務活動がマイナスであることから、健全型(営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業)に該当します。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5億円 26億円
投資CF -6億円 -7億円
財務CF -2億円 -0.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.6%で市場平均とほぼ同じ水準です。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「Safety & Medical Healthcareを通して科学技術の向上を図り人類に貢献する。」を経営理念として掲げています。長年培ってきた開発力・技術力を基盤に、優れた品質の製品を安定供給することで、顧客満足度の向上とステークホルダーからの信頼に応える企業を目指しています。

(2) 企業文化

同社は、持続的な成長のために既存事業の拡大に加え新規事業への進出にも積極的に取り組む姿勢を持っています。また、企業価値向上のためにはコンプライアンスの徹底が必要不可欠であると考え、法令遵守や内部管理体制の強化を通じて、全てのステークホルダーの信頼に応える組織づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標

同社グループでは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高および営業利益を重視しています。将来的には、運転資本の圧縮と合わせ営業キャッシュ・フローの拡大を図り、成長投資を実現することで資本効率を向上させ、企業価値の最大化を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策

高機能な縫製自動機の開発による顧客の自動化貢献と、血圧計腕帯、カーシート、エアバッグの事業拡大を重点課題としています。ベトナムのMATSUYA INNOVATION CENTERを中心とした研究開発力の強化、生産体制・能力の増強、品質向上、新規販路の開拓などに取り組んでいく方針です。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

社員の自主性を尊重し、積極的に活躍の機会を提供することで昇進・昇格の拡大と早期化を図り、将来の管理職や経営層を育成する方針です。海外展開が主であることから、中途採用や外国人の採用など人材の多様化を進め、成果に応じた人事評価制度の構築や研修・資格取得支援などを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 48.2歳 10.5年 5,083,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、CO2排出量 Scope1(223.25tCO2)、中途採用者数(7名)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客の属する業界動向

主な販売先であるヘルスケア業界および自動車業界の景況や事業環境の変化が業績に影響を与える可能性があります。海外生産品の品質や価格の変化、技術革新等により、同社製品が市場ニーズを満たせなくなった場合、事業展開に影響が及ぶリスクがあります。

(2) 特定顧客への取引依存

オムロングループへの売上依存度が高く、同グループへの直接販売および関連会社経由の販売を含めると連結売上高の過半を占める状況にあります。そのため、当該顧客の事業環境の悪化や方針変更があった場合、同社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 生産拠点の集中

縫製品事業の生産の大半をベトナムの子会社で行っており、生産拠点が集中しています。現地の政治的要因、法的規制の変更、感染症や自然災害などにより工場の操業が中断された場合、財政状態および経営成績に悪影響を与える可能性があります。

(4) 海外の事業活動

販売の大半を海外市場に依存しており、生産拠点も海外に集中しています。各国の政治・経済情勢の不安定化、労働争議、為替変動、法規制の変更などが生じた場合、事業継続が困難になり、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。