ステムセル研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ステムセル研究所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ステムセル研究所は東京証券取引所グロース市場に上場し、さい帯血・さい帯の細胞バンク事業を展開しています。当期は新保管プランの導入や東南アジア展開により受注が拡大し売上高28億円の増収を達成しましたが、人員増強やシステム刷新などの先行投資負担により営業利益は2億円の減益となりました。


※本記事は、ステムセル研究所の有価証券報告書(第27期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ステムセル研究所ってどんな会社?


さい帯血およびさい帯等の周産期組織由来細胞のバンク事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1999年に設立され初のさい帯血保管を開始しました。2013年に日本トリムが株式の過半数を取得し、2021年に東京証券取引所マザーズに上場し、「さい帯(へその緒)組織保管サービス」も開始しました。2024年にはシンガポール子会社を設立し、東南アジアでの展開を本格化させています。

現在の従業員数は連結136名、単体120名です。大株主については、筆頭株主は親会社であり事業会社の日本トリムで、第2位は名古屋中小企業投資育成、第3位は山本邦松氏です。

氏名 持株比率
日本トリム 71.24%
名古屋中小企業投資育成 1.67%
山本邦松 0.90%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.0%です。代表取締役社長は清水崇文氏が務めており、社外取締役比率は約28%(7名中2名)です。

氏名 役職 主な経歴
清水崇文 代表取締役社長 1998年日本トリム入社。海外及び経営企画担当などを経て、2016年6月より現職。
茅野圭 取締役 2000年野村総合研究所入社。2025年6月同社入社し、8月より現職。


社外取締役は、山田智男(元豊国工業常務取締役)、安藤公秀(安藤公秀代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「細胞バンク事業」を展開しています。

(1) 細胞バンク事業


再生医療や細胞治療分野での利用を目的とした、さい帯血およびさい帯等の周産期組織由来細胞のバンク事業を展開しています。顧客である妊婦等と委託契約を結び、出産時に採取されたさい帯血・さい帯をクリーンルームで無菌処理し、超低温タンクにて将来の医療利用に備えて長期保管するサービスを提供しています。

収益源は、細胞分離や検査・登録などの初期作業に関する技術料と、契約年数に応じた細胞保管料です。運営は主にステムセル研究所が行っているほか、シンガポール子会社を通じて東南アジアでの細胞バンク事業を、また子会社のミルケアを通じて培養上清サービスの提供など医療関連支援事業も手掛けています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


当期より連結決算へ移行しています。新保管プランの導入や海外展開により事業規模の拡大を推進しています。

項目 2026年3月期
売上高 28億円
経常利益 2億円
利益率(%) 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円

(2) 損益計算書


当期の売上高は28億円、営業利益は2億円となっています。

項目 2026年3月期
売上高 28億円
売上総利益 17億円
売上総利益率(%) 60.9%
営業利益 2億円
営業利益率(%) 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4億円(構成比27%)、広告宣伝費が3億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は細胞バンク事業の単一セグメントであり、当期の売上高は28億円です。

区分 売上(2026年3月期)
細胞バンク事業 28億円
連結(合計) 28億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2026年3月期
営業CF 1億円
投資CF -7億円
財務CF 2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.0%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「あたらしい命に、あたらしい医療の選択肢を。」をコーポレートスローガンに掲げています。産婦人科施設との強固なネットワークを活用し、再生医療や細胞治療を目的としたさい帯血等の細胞バンク事業を展開することで、社会への貢献と中長期的な事業拡大を目指しています。

(2) 企業文化


環境・社会・ガバナンスを「E×S×G=サスティナブル」と認識し、持続的な企業価値向上を図る文化を重視しています。特に人材の多様性や女性活躍、職場環境の改善を推進し、デジタル化による業務効率の向上や、コンプライアンス意識を高める透明性の高い組織運営を重んじています。

(3) 経営計画・目標


中長期的な業績拡大に向け、以下のような目標を掲げています。

・年間保管検体数20,000検体(出生数の3%)の達成
・シンガポールおよびインドネシアにおいて将来的に50%のシェア獲得

(4) 成長戦略と重点施策


国内の安定成長と東南アジア市場の開拓を二本柱とし、以下の重点施策を推進しています。医療機関との連携強化やオンラインマーケティングの全国展開、シンガポールを起点とした東南アジア地域への展開、さらにさい帯血の臨床研究支援やiPS細胞製造など新たな活用領域の拡大に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の増強と組織の強化を重要な経営課題と位置づけています。専門知識を持った優秀な人材の継続的な採用と育成を進めるとともに、デジタル化の推進やオフィス環境の改善、リモートワークの活用など働きやすい環境整備を図り、社員のモチベーション向上と組織強化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.1歳 5.2年 5,129,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 40.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -


※同社は公表義務に基づき公表項目として選択していないため、有報には男女の賃金差異の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(約79%)、育児休業後の復職率(100%)、賃上げ率(4.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 再生医療の有効性や代替治療出現リスク

同社が保管する細胞を用いた再生医療の研究において、想定通りの有効性が確認されない場合や長期化するリスクがあります。また、他に有効な治療法が出現した場合、細胞保管の訴求力が低下し、新規保管者が減少するなど経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制・許認可の変更リスク

細胞バンク事業は「再生医療等安全性確保法」等の法規制に従い特定細胞加工物製造許可を得て運営されています。予期せぬ逸脱や事故による許可の停止・取消し、あるいは関連法令の改正・強化が行われた場合、事業活動の制約や追加的対応が生じ、業績に重大な影響を与えるリスクがあります。

(3) インフラ停止・資源供給リスク

細胞処理および保管センターは事業の必須インフラであり、冷却用液体窒素などの資源も不可欠です。地震などの自然災害による建物の破損や長期的停電、資源の供給途絶が発生した場合、業務が停止する可能性があります。同社は耐震基準の適合や非常用発電機の設置等で対策を講じています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。