コマースOneホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コマースOneホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コマースOneホールディングスは東京証券取引所グロース市場に上場し、ECサイト構築プラットフォーム「futureshop」やバックヤード一元管理システムなどを提供するECプラットフォーム事業を展開しています。直近の業績は、成長投資の強化により営業利益は減少したものの、増収および最終増益を達成しました。


※本記事は、コマースOneホールディングスの有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コマースOneホールディングスってどんな会社?


ECプラットフォーム事業を中核とし、ECサイト運営者の成長を支援するITインフラ企業です。

(1) 会社概要


2006年8月にECサイトの信頼性認証サービスを提供するTradeSafeとして設立されました。2010年にカートASPサービスを展開するフューチャーショップを設立して子会社化し、2011年にはECサイト一元管理システムを手掛けるソフテルを子会社化しました。2017年の持株会社移行や2019年の現社名への変更を経て、2020年にマザーズ(現グロース市場)へ上場しました。近年は空色や既読、AttendMeなどを子会社化し、事業領域を拡大しています。

同社グループの従業員数は連結で191名、単体で7名です。筆頭株主は創業者の岡本高彰氏で、第2位は資産管理業務を行うUBS AG HONG KONG(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店)、第3位は光通信KK投資事業有限責任組合です。

氏名 持株比率
岡本 高彰 30.82%
UBS AG HONG KONG(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店) 25.21%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役は岡本高彰氏が務めています。社外取締役の比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
岡本 高彰 代表取締役 1991年富士銀行入行。2005年オプト入社。2006年TradeSafe代表取締役。2010年フューチャーショップ取締役等を経て、2017年より現職。
清水 究 取締役兼管理本部長 2007年霞が関監査法人入社。エヌ・ピー・シー、オプトなどを経て、2021年SQA設立、代表取締役。2023年より現職。
星野 裕子 取締役 1990年エスピー研入社。2002年フューチャースピリッツ入社。2010年フューチャーショップ代表取締役。2020年より現職。
北川 輝信 取締役 1997年電算システム入社。2001年ソフテル設立、代表取締役。2020年より現職。


社外取締役は、伊藤勇太(伊藤会計事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ECプラットフォーム事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) インターフェース関連サービス


EC事業運営者に対して、SaaS型でECサイト構築プラットフォーム「futureshop」などを提供しています。多様化する消費者嗜好をとらえたECサイト構築を定額で利用でき、デザインの独自性や更新性を高めたサービスが特徴です。導入後もカスタマーサポートを通じたサイト改善提案を実施し、顧客の売上拡大を支援しています。

収益源は、導入時の初期費用と利用期間に応じて継続して支払われる基本料金です。登録可能商品数などに応じたプランが用意されており、主にフューチャーショップが運営を行っています。

(2) バックヤード関連サービス


多店舗展開するECサイト運営者のバックヤードを一元管理するシステム等を、顧客ニーズに合わせてカスタマイズした上で提供しています。受注在庫などを一元管理できる「通販する蔵」を中心に、ECサイト・POS・物流管理の各システム連携を備え、プライベートクラウド型で展開しています。

収益は、初期導入に係るカスタマイズ料と、導入後の保守・運用並びに改修に伴う継続的な収入から構成されています。主にソフテルが運営を行っており、近年はAIを活用した次世代の統合型ECプラットフォームの開発も進められています。

(3) ECサイト認証関連サービス


ECサイトの信頼性を審査・確認し、一定のガイドラインに則って「トラストマーク」を付与する認証サービスを提供しています。また、データ解析に基づくEC受注状況分析ツール「ECnote」などの経営補助ツールも展開し、安心・安全なEC環境の構築を支援しています。

収益は、認証サービス利用時の登録料や、月間店舗売上および店舗数などに応じた月額利用料から構成されています。運営はTradeSafeが行っており、他社サービスとの連携を通じたグループシナジーの創出にも取り組んでいます。

(4) マーケティング関連サービス


EC事業者へのマーケティングコミュニケーションツールや、VTuberと提携したインフルエンサーマーケティングサービスを提供しています。UGCを活用したレビュー収集や、生成AIを活用したクリエイティブ制作などを通じて、新しい購買体験の実現とEC事業者の資産形成を支援しています。

収益源は、サービス利用に伴う月額利用料などから構成されます。本領域の運営は、空色、既読、AttendMeなどの各子会社がそれぞれ担っており、グループ内の他サービスと連携した付加価値の向上を推進しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は29.4億円から39.0億円へと順調に拡大しています。一方で、経常利益はシステム再構築や新規事業関連への成長投資、人材関連費用の増加などが影響し、直近では4.7億円となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 29.4億円 32.0億円 35.6億円 36.9億円 39.0億円
経常利益 7.2億円 6.1億円 7.0億円 4.2億円 4.7億円
利益率(%) 24.4% 19.0% 19.7% 11.5% 12.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 4.6億円 2.3億円 0.6億円 0.4億円 2.8億円

(2) 損益計算書


売上高は順調に伸長しており、売上総利益も増加傾向にあります。しかし、開発人件費や外注費の増加に加え、新プロダクト開発等による販売費及び一般管理費の増加が影響し、営業利益率は低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 36.9億円 39.0億円
売上総利益 21.0億円 21.3億円
売上総利益率(%) 56.9% 54.6%
営業利益 6.4億円 3.8億円
営業利益率(%) 17.3% 9.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6億円(構成比34%)、役員報酬が2億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


単一セグメントであるため、売上高の推移を示します。主力のECプラットフォーム事業は、大型案件の受注増加やストック売上の好調により、増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ECプラットフォーム事業 36.9億円 39.0億円
連結(合計) 36.9億円 39.0億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえます。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.8%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.1%であり、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 5.3億円 3.1億円
投資CF -1.8億円 -0.8億円
財務CF -2.1億円 -2.4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「テクノロジーを活用する人の力を最大化させるコマースプラットフォーム」であることをミッションに掲げています。「成長志向の国内中堅・中小ECサイト運営企業様の成長を支援すること」と「信頼に基づく安心の環境づくり」を事業内容とし、社会の持続的発展を支えるECインフラの創出を目指しています。

(2) 企業文化


長期的な企業価値の向上に向け、サステナビリティの観点を経営に組み込んでいます。「環境に配慮した事業運営」「個の成長による組織力の強化」「DXで業務効率化/時間創出」「適切な情報開示とステークホルダーとの建設的な対話」をテーマに掲げ、多様なステークホルダーが豊かで公正な社会を享受できる環境づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、主要な事業子会社であるフューチャーショップとソフテルにおいて、以下の指標を経営上の重要な客観的指標として設定しています。
・フューチャーショップ:流通取引総額(GMV)および1契約店舗あたりGMV
・ソフテル:開発売上総額および1社あたり開発売上高

(4) 成長戦略と重点施策


中小事業者向けにシンプルかつ汎用性の高いサービスを提供し、顧客ニーズに応じた付加機能の継続的な開発による導入企業数の拡大を目指しています。また、グループ各社のサービスを連携させたクロスセルやAPI連携を通じて顧客単価の向上を図るとともに、M&Aを含めたグループ間シナジーの追求により収益基盤の強化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「個の成長による組織力の強化」を重要なテーマとし、自律的なキャリア構築を支援する教育制度等を通じて継続的な人材育成に取り組んでいます。また、時短勤務や在宅勤務、育児休業の取得を促進し、性別や年齢に関係なく多様な人材がやりがいをもって働ける社内環境の整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.0歳 6.2年 7,315,000円


※平均年間給与は基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内EC市場の動向


国内EC市場は拡大が見込まれるものの、消費者の消費動向というマクロ経済環境によって業況が左右されます。国内経済環境の悪化等により市場の成長率が鈍化・停滞した場合、顧客であるEC事業運営者の業況悪化を通じて、同社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) インターネットインフラへの依存


同社グループのサービスはSaaS形式での提供が主体であり、インターネットを経由したシステムの利用が前提です。不正アクセスや想定を上回るアクセスによるシステム障害、自然災害等によるサーバーダウンに伴いサービスが停止した場合、社会的信用やブランドイメージの低下を招くリスクがあります。

(3) 競合と技術革新


同社グループの提供するサービスは、他のシステムインテグレーターやSaaS運営会社との間で競争環境にあります。他社による模倣や追随で差別化が難しくなった場合や、生成AIなどの新たな技術やサービスへの対応が遅れ、提供サービスが陳腐化した場合、競争優位性が低下する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。