※本記事は、株式会社コマースOneホールディングス の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. コマースOneホールディングスってどんな会社?
中堅・中小規模のEC事業者向けに、サイト構築や運営支援システムをSaaS型で提供する企業グループです。
■(1) 会社概要
2006年にECサイト認証事業を行う企業として設立されました。その後、2010年にECサイト構築支援のフューチャーショップ、2011年に在庫管理システムのソフテルを子会社化し、体制を強化しました。2017年に持株会社体制へ移行し、2020年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ上場しました。近年では2022年にSAMURAI TECHNOLOGY(後にソフテルへ吸収合併)、2023年に空色、2024年に既読を子会社化しています。
連結従業員数は177名、単体では7名です。筆頭株主は代表取締役の岡本高彰氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。また、第3位には通信サービス等の光通信が入っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 岡本 高彰 | 30.38% |
| UBS AG HONG KONG(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支店) | 24.00% |
| 光通信 | 6.59% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役は岡本高彰氏です。取締役5名のうち1名が社外取締役であり、社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡本 高彰 | 代表取締役 | 1991年富士銀行入行。2005年オプト入社。2006年TradeSafe(現コマースOneホールディングス)代表取締役就任。グループ各社取締役を経て現職。 |
| 清水 究 | 取締役兼管理本部長 | 2007年霞が関監査法人入社。2011年オプト入社。2021年SQA設立し代表取締役就任。2023年6月より現職。 |
| 星野 裕子 | 取締役 | 1990年エスピー研入社。2002年フューチャースピリッツ入社。2010年フューチャーショップ代表取締役就任。2020年2月より現職。 |
| 北川 輝信 | 取締役 | 1997年電算システム入社。2001年ソフテル設立し代表取締役就任。2020年2月より現職。 |
| 伊藤 勇太 | 取締役 | 2004年監査法人トーマツ入社。2014年伊藤会計事務所代表就任。2018年6月より現職。 |
社外取締役は、伊藤勇太(元有限責任監査法人トーマツ、現伊藤会計事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ECプラットフォーム事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) ECサイト構築プラットフォーム事業(futureshop)
中堅・中小企業を中心としたECサイト運営事業者に対し、SaaS型でECサイト構築プラットフォーム「futureshop」を提供しています。サイトのデザインカスタマイズ性が高く、消費者嗜好の変化に対応したサイト構築が可能です。また、実店舗との在庫連携機能なども提供しています。
収益は、導入企業からの初期費用および月額基本料金(登録商品数に応じた固定料金)等から構成されています。また、サイト改善提案などのサポートを通じた流通額拡大への寄与も行っています。運営は株式会社フューチャーショップが行っています。
■(2) ECバックヤード支援事業(通販する蔵)
多店舗展開するECサイト運営者向けに、受注処理や在庫管理を一元管理するシステム「通販する蔵」を提供しています。顧客の既存システムやニーズに合わせてカスタマイズを行い、専用サーバー環境(プライベートクラウド)で提供するのが特徴です。
収益は、初期導入時のカスタマイズ料と、導入後の月額保守・運用料から構成されています。運営は株式会社ソフテルが行っています。
■(3) ECサイト認証・分析およびその他事業
ECサイトの信頼性を審査・認証する「トラストマーク」サービスや、EC受注状況分析ツール「ECnote」などを提供しています。また、WEB接客ソリューションや生成AIを活用したクリエイティブ制作支援も行っています。
収益は、認証サービスの登録料・月額利用料や、各ツールの利用料等から構成されています。運営は株式会社TradeSafe、株式会社空色、株式会社既読が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に増加傾向にありますが、利益面では変動が見られます。直近では売上高が過去最高を更新する一方で、利益率は低下傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 25億円 | 29億円 | 32億円 | 36億円 | 37億円 |
| 経常利益 | 5.9億円 | 7.2億円 | 6.1億円 | 7.0億円 | 4.2億円 |
| 利益率(%) | 23.3% | 24.4% | 19.0% | 19.7% | 11.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.1億円 | 4.6億円 | 2.3億円 | 0.6億円 | 0.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販売費・一般管理費の増加により、営業利益は微減となりました。また、持分法による投資損失等の営業外費用の計上により、経常利益率は低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 36億円 | 37億円 |
| 売上総利益 | 20億円 | 21億円 |
| 売上総利益率(%) | 56.7% | 56.9% |
| 営業利益 | 6.4億円 | 6.4億円 |
| 営業利益率(%) | 18.1% | 17.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.0億円(構成比34%)、役員報酬が2.0億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントにおいて売上高は概ね堅調でしたが、特に主力のフューチャーショップが増収を牽引しました。一方で空色は減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| フューチャーショップ | 26億円 | 28億円 |
| ソフテル | 9億円 | 8億円 |
| TradeSafe | 0.5億円 | 0.5億円 |
| 空色 | 1.1億円 | 0.7億円 |
| 既読 | - | 0.0億円 |
| 連結(合計) | 36億円 | 37億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で稼いだ資金をもとに、投資活動や株主還元、借入返済を行っている健全な状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7.8億円 | 5.3億円 |
| 投資CF | -3.7億円 | -1.8億円 |
| 財務CF | -3.1億円 | -2.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「テクノロジーを活用する人の力を最大化させるコマースプラットフォーム」であることをミッションに掲げています。成長志向の国内中堅・中小ECサイト運営企業の成長支援と、信頼に基づく安心の環境づくりを通じて、社会の持続的発展を支えるECインフラの創出を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「環境に配慮した事業運営」、「個の成長による組織力の強化」、「DXで業務効率化/時間創出」、「適切な情報開示とステークホルダーとの建設的な対話」を重要なテーマとして掲げています。これらを通じて社会に貢献し、信頼される企業となることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
経営上の重要な指標として、主要事業子会社ごとに以下の数値を重視しています。
* 株式会社フューチャーショップ:流通取引総額(GMV)および1契約店舗あたりGMV
* 株式会社ソフテル:開発売上総額および1社あたり開発売上高
■(4) 成長戦略と重点施策
EC業界のビジネスインフラとしての地位確立に向け、導入企業数の拡大と顧客単価の向上を軸とした成長戦略を推進しています。また、人材確保やグループ内ガバナンスの強化、グループ間シナジーの追求にも注力しています。
* シンプルかつ汎用性の高いサービス提供による新規導入数の増加
* 新商品開発やオプション提供、クロスセルによる顧客単価の向上
* 知名度向上と財務基盤強化による優秀な人材の採用
* コンプライアンス体制の強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「個の成長による組織力の強化」を掲げ、グループ各社において自律的なキャリア構築を支援する教育制度を実施しています。多様な属性や経験を持つ人材を積極的に採用し、性別や年齢に関係なく活躍できる環境整備(時短勤務、在宅勤務、育児休業取得促進など)を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.0歳 | 5.2年 | 7,240千円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」および「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内EC市場の動向
同社グループの事業は国内EC市場の動向に依存しており、マクロ経済環境、特に消費者の消費動向の影響を受けます。国内経済の悪化等により市場成長が鈍化または停滞した場合、顧客であるEC事業者の業況悪化を通じて、同社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) EC市場特有のマーケットリスク
インターネット環境やデジタルデバイスの進化によりEC市場は拡大傾向にありますが、新たな法規制の導入や、通信・物流コストの増大などが発生した場合、市場の拡大スピードが鈍化したり、EC事業者や利用者のコスト負担が増加したりすることで、同社グループの経営成績に影響が出る可能性があります。
■(3) インターネットインフラへの依存
サービスはSaaS形式で提供されており、インターネット経由での利用が前提です。セキュリティ対策等は講じていますが、不正アクセス、想定以上のアクセス集中、自然災害や事故等によるシステム障害やサーバーダウンが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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