#記事タイトル:ASNOVA転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社ASNOVA の有価証券報告書(第12期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ASNOVAってどんな会社?
同社は、建設現場で使用される「くさび緊結式足場」などの仮設機材レンタルを主力とし、販売も含めたワンストップサービスを全国展開する企業です。
■(1) 会社概要
2013年に福井県で日本レンテクトとして設立され、足場レンタル事業を開始しました。2019年に現商号へ変更し、2022年に名古屋証券取引所ネクスト市場へ上場、2023年には東京証券取引所グロース市場へ上場しました。2025年にはシンガポールのQool Enviro Pte.Ltd.を完全子会社化し、海外展開を加速させています。
2025年3月31日現在の連結従業員数は166名(単体152名)です。筆頭株主は一般社団法人ニチレンで、第2位は代表取締役社長の上田桂司氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 一般社団法人ニチレン | 41.26% |
| 上田 桂司 | 31.97% |
| 上田八木短資 | 1.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は上田桂司氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 上田桂司 | 代表取締役社長 | 1999年上田建機入社。2007年同社専務取締役を経て、2013年12月同社設立とともに代表取締役社長に就任し現職。 |
| 加藤大介 | 取締役管理本部長 | ガステックサービス、プロトコーポレーション等を経て2020年同社入社。2021年2月より現職。 |
| 森下哲 | 取締役仮設事業本部長 | 1997年三共入社。2017年同社に入社し営業部長を経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、梅下翔太郎(公認会計士、セレンディップ・ホールディングス執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「レンタル関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 仮設機材レンタル
戸建住宅や中低層マンションの建設現場で使用される「くさび緊結式足場」を主力としたレンタルサービスを提供しています。主な顧客は全国の中小足場施工業者です。近年は改修工事需要の増加や、繁忙期・閑散期の変動に対応するため、自社保有からレンタルへ切り替えるニーズが高まっており、取引業者数が拡大しています。
収益は、足場施工業者等の顧客から受け取る仮設機材のレンタル料です。また、パートナー企業と連携した「ASNOVA STATION」の展開や、ベトナムでの事業も行っています。運営は主にASNOVAが行い、海外事業は子会社のASNOVA VIETNAM CO.,LTDが担当しています。
■(2) 仮設機材販売
レンタルサービスを利用する顧客に対し、新品や中古の仮設機材の販売を行っています。レンタルだけでなく販売も組み合わせた提案を行うことで、顧客の機材保有量の最適化を支援し、更新需要や投資需要を取り込んでいます。また、ECサイトを通じた中古機材の全国販売も展開しています。
収益は、顧客への機材販売代金です。ビジネスの主軸はあくまでレンタルであり、販売は顧客のニーズに合わせて補完的に行う方針をとっています。機材の滅失や破損に伴う更新需要や、事業拡大のための投資需要に対してアプローチを行っています。運営はASNOVAが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近の業績を見ると、売上高は順調に拡大傾向にあります。これは仮設機材レンタルの需要増加や拠点開設などが寄与しています。一方、利益面では、経常利益が大幅に減少しています。これは積極的な設備投資に伴う減価償却費の増加や、M&A関連費用などのコスト増が影響しています。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 31億円 | 38億円 | 43億円 |
| 経常利益 | 2.1億円 | 3.2億円 | 0.5億円 |
| 利益率(%) | 6.8% | 8.6% | 1.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.6億円 | 3.3億円 | 0.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しているものの、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は減少しています。特に、将来の成長に向けた投資や体制強化に伴うコスト負担が利益を圧迫している構造が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 38億円 | 43億円 |
| 売上総利益 | 11億円 | 10億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.0% | 23.6% |
| 営業利益 | 3.5億円 | 0.5億円 |
| 営業利益率(%) | 9.2% | 1.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が2.3億円(構成比24%)、支払手数料が2.2億円(同23%)を占めています。
■(3) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金と借入金等の財務活動による資金調達を組み合わせて、投資活動に積極的に資金を投じる「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 17億円 | 15億円 |
| 投資CF | -31億円 | -30億円 |
| 財務CF | 16億円 | 37億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-0.8%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は23.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は『「カセツ」の力で、社会に明日の場を創りだす』というパーパスを掲げています。また、社員とその家族、顧客、株主のために安心と幸せを提供し、社会性を第一優先として独自性と経済性を追求することを経営理念としています。仮設機材レンタルを通じて業界の課題解決とイメージ向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「より近く、より便利」をモットーに、顧客ニーズに応えるサービス展開を重視しています。また、社会性を最優先事項としつつ、独自性と経済性を追求する姿勢を持っています。人材育成やコンプライアンス意識の向上にも力を入れ、持続的な成長を目指す組織風土を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営上の目標達成状況を判断する指標として、売上高、営業利益、およびEBITDAを重視しています。現在は投資フェーズにあるため、特に将来の成長性を示すEBITDAを重要視しています。また、仮設機材の稼働率についても、適正値を維持すべき指標として管理しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、仮設機材レンタル事業を安定基盤としつつ、周辺事業や新市場への進出による「非連続な成長」を目指しています。具体的には、拠点開発によるドミナント展開、ASEAN諸国への海外展開、オリジナル機材の開発などを進めています。
* 既存顧客の深耕および新規顧客の開拓
* 機材センターおよびASNOVA STATIONの拠点拡大
* シンガポール企業(Qool Enviro Pte.Ltd.)の買収による海外事業強化
* 次世代シート朝顔「SpeeK」などのサービス・品揃え強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、新たな事業を担う社員の育成を目的として、人事制度「ASNOVA WAY」を運用しています。評価制度の見直しに加え、大学・大学院等の外部教育機関への入学支援を行う「ASNOVA Recurrent」や、書籍購入を支援する制度などを通じ、社員のスキルアップと知識習得を積極的に支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.6歳 | 3.7年 | 4,798,000円 |
※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.7% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※男女賃金差異(非正規)については、同社は対象となる労働者がいない等の理由により記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設投資動向等の影響
同社の主力事業である仮設機材レンタルは建設現場での需要に依存しており、建設投資動向の影響を受けやすい性質があります。民間設備投資や公共事業予算の変動によりレンタル需要が減少した場合、単一セグメントで運営している同社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) ヤード内での事故発生リスク
機材センター(ヤード)内での機材の積み下ろしや格納作業中に、荷崩れなどの事故が発生するリスクがあります。万が一、重大な事故が発生した場合には、同社グループの社会的信用の低下を招き、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 機材の盗難リスク
機材センターでは機材を厳重に保管し、監視カメラやセキュリティ会社との連携で対策を講じていますが、ヤードは広大であり屋外保管も多いため、盗難のリスクを完全に排除することは困難です。盗難が発生した場合、資産の損失となり業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) レンタル品の返却時のリスク
レンタル機材には識別用の塗装などを施していますが、返却時に他社製品と混在したり、全数が返却されないケースがあります。未返却分は滅失処理として料金を収受しますが、機材が戻らないことで次のレンタル機会を逸失し、業績に影響を与える可能性があります。



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