ASNOVA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ASNOVA 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ASNOVAは東京証券取引所グロース市場および名古屋証券取引所ネクスト市場に上場し、国内の足場レンタルを主力としながら海外での各種レンタル事業も展開しています。直近の業績は、M&Aの効果などにより増収を達成したものの、のれん償却費などの販管費増加により営業減益となり、最終赤字となっています。


※本記事は、株式会社ASNOVAの有価証券報告書(第13期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ASNOVAってどんな会社?


同社グループは、足場などの建設仮設機材や仮設トイレのレンタル・販売サービスを提供しています。

(1) 会社概要


同社は2013年に日本レンテクトとして設立され、足場レンタル事業を開始しました。2019年にASNOVAへと社名を変更し、2022年に名古屋証券取引所ネクスト市場へ上場するとともにベトナムに子会社を設立しました。2023年には東京証券取引所グロース市場へ上場し、2025年にはシンガポールのQool Enviro Pte.Ltd.を完全子会社化するなど、事業領域の拡大を進めています。

従業員数は連結で231名、単体で156名が在籍しています。筆頭株主は一般社団法人ニチレンで、第2位は創業者の上田桂司氏、第3位はSBI証券です。

氏名 持株比率
一般社団法人ニチレン 41.26%
上田桂司 31.97%
SBI証券 1.72%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は上田桂司氏が務めており、社外取締役の比率は25%です。

氏名 役職 主な経歴
上田桂司 代表取締役社長 1999年三栄コーポレーション入社。上田建機を経て、2013年の同社設立時に代表取締役社長に就任し、現在に至る。
加藤大介 取締役管理本部長 2007年ガステックサービス入社。プロトコーポレーション等を経て、2020年同社入社。2021年より現職。
森下哲 取締役仮設事業本部長 1997年三共入社。2017年に同社へ入社し営業部長を務める。2021年より現職。


社外取締役は、梅下翔太郎(セレンディップ・ホールディングス執行役員等)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内足場レンタル事業」「海外足場レンタル事業」「海外その他レンタル事業」を展開しています。

(1) 国内足場レンタル事業


国内の戸建住宅や中低層マンション向けに普及しているクサビ式足場のレンタルサービスを、全国の中小足場施工業者に提供しています。レンタルだけでなく、顧客のニーズに応じて機材の販売も組み合わせた提案を行っており、中古機材の販売は自社ECサイトを通じても提供しています。

収益源は、顧客である足場施工業者や建設会社からのレンタル利用料および販売代金です。当事業の運営は主に同社(親会社)が行っており、全国の営業所や機材センターを起点としたサービス提供を通じて収益を上げています。

(2) 海外足場レンタル事業


ベトナムにおいて、日本式のクサビ式足場のレンタルおよび販売サービスを提供しています。経済成長やインフラ投資の拡大を背景に高まる現地の建設需要に対し、日本国内で培った運営ノウハウを活かして機材の強度や品質を訴求しています。

収益源は、現地の顧客企業からの足場レンタル料や販売代金です。事業の運営は、2022年に設立された子会社のASNOVA VIETNAM CO.,LTDが行っており、現地での顧客獲得を通じて収益を得ています。

(3) 海外その他レンタル事業


シンガポールにおいて、仮設トイレや衛生用品などのレンタルサービスを展開しています。建設現場やイベント会場における衛生環境の整備ニーズは高く、足場以外の新たな領域でのレンタルビジネスとして事業拡大を進めています。

収益源は、シンガポール国内の顧客からの仮設トイレ等のレンタル利用料です。事業の運営は、2025年に同社グループに加わった子会社のQool Enviro Pte.Ltd.が行っており、安定した顧客基盤から収益を上げています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の連結業績を見ると、売上高はM&Aの寄与などもあり一貫して成長を続けています。一方で、のれん償却費など成長投資に伴う費用の増加により、利益面では経常減益傾向にあり、直近では赤字に転じています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 31.4億円 37.9億円 42.7億円 49.2億円
経常利益 2.1億円 3.2億円 0.5億円 -0.8億円
利益率(%) 6.8% 8.6% 1.1% -1.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.4億円 2.1億円 -0.2億円 -1.5億円

(2) 損益計算書


直近2期間の売上高は増加していますが、M&Aに伴う各種費用の発生により営業利益は減少しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 42.7億円 49.2億円
売上総利益 10.1億円 13.4億円
売上総利益率(%) 23.6% 27.3%
営業利益 0.5億円 0.1億円
営業利益率(%) 1.1% 0.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が4.1億円(構成比30%)、支払手数料が1.6億円(同12%)、減価償却費が1.5億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内足場レンタル事業が主力ですが、当期は新規連結の海外その他レンタル事業が売上に寄与しました。利益面では海外足場事業が先行投資で赤字となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
国内足場レンタル事業 42.0億円 40.9億円 8.7億円 7.6億円 18.5%
海外足場レンタル事業 0.7億円 0.3億円 -1.3億円 -1.8億円 -589.7%
海外その他レンタル事業 - 7.9億円 - 0.7億円 8.3%
調整額 - - -6.9億円 -6.4億円 -
連結(合計) 42.7億円 49.2億円 0.5億円 0.1億円 0.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得たキャッシュ内で投資と借入返済を賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 14.8億円 17.8億円
投資CF -29.6億円 -20.2億円
財務CF 37.2億円 -20.9億円


企業の収益力を測るROEは-4.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.0%で、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


『「カセツ」の力で、社会に明日の場を創りだす』というパーパス(存在意義)のもと、レンタル事業を通じた循環型社会の実現への貢献を目指しています。社員や顧客、株主に安心と幸せを提供し、社会性を第一優先としながら独自性と経済性を追求することを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、対話と共感を基盤として信頼を育む「自走型組織」への進化を目指しています。社員一人ひとりの主体的な行動を促すため、人間学を学ぶ輪読会や部門横断の合宿を通じた相互理解の深化に取り組んでおり、挑戦を後押しする組織文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年のありたい姿として、「足場レンタル事業を確固たる収益基盤とする、高収益のグローバルなレンタルビジネスのエクセレントカンパニー」となることを目標に掲げています。既存事業の収益力向上に加えて、M&Aによる非連続的な成長とグループ経営体制の整備を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


国内足場レンタル事業のドミナント展開を進めるとともに、M&Aを活用した海外進出と新規事業領域の拡大を重点施策としています。今後はASEAN地域での展開を加速させるため、シンガポールに地域統括会社を設立し、グループ全体の経営効率化とガバナンス強化を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、継続的な価値創出を担う専門人材の育成と定着を目的とした人材戦略を定めています。書籍の提供や資格取得支援を通じて基礎教養や専門知識の習得を促すとともに、多面的な評価制度を用いて、挑戦のプロセスや価値観の体現を処遇へ反映させる方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.0歳 4.6年 4,809,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.4%
男性育児休業取得率 66.6%
男女賃金差異(全労働者) 74.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.5%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設投資動向の影響


主力の足場レンタル事業は、民間設備投資や公共事業予算などの建設投資動向の影響を強く受けます。資材価格の高騰や金利上昇の懸念などにより、住宅市場や建設業界の需要が落ち込んだ場合、仮設機材のレンタル需要が減少し、業績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) ヤード内での事故・盗難リスク


仮設機材の保管・荷捌きを行うヤードでは、事故や荷崩れなどが発生するリスクがあります。また、屋外保管の特性上、監視カメラ等の防犯対策を講じているものの、機材が盗難に遭うリスクも存在しており、これらが現実化した場合に不測の損失を被る可能性があります。

(3) M&A・海外事業展開に関するリスク


ASEAN地域を中心としたM&Aや海外展開を成長戦略として推進していますが、期待したシナジーが得られない場合や、為替・法規制・カントリーリスク等の影響を受けるリスクがあります。これらが事業運営に影響し、グループの業績を押し下げる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。