いつも 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

いつも 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

いつもは東京証券取引所グロース市場に上場し、ブランド・メーカーへのEC事業総合支援、D2C及びECプラットフォーム運営を展開しています。直近の業績は、協業ブランドパートナー事業の成長などにより売上高が約179億円、経常利益が約2.5億円となり、前年から大幅な増収増益を達成して成長を続けています。


※本記事は、株式会社いつもの有価証券報告書(第19期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. いつもってどんな会社?


ブランド・メーカーのEC事業総合支援と、自社D2Cブランド等のECプラットフォーム運営を展開しています。

(1) 会社概要


2007年2月に設立され、ECコンサルティングサービスの提供を開始しました。その後、2013年10月にフルフィルメントサービス、2016年8月にブランド・メーカーD2C事業支援サービスの提供を開始し事業を拡大しました。2020年12月には東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)へ上場を果たし、近年ではビーランやピースユーを子会社化しています。

同社の従業員数は連結で212名、単体で200名体制です。筆頭株主は創業者の坂本守氏の資産管理会社であるつづくで、第2位は同じく役員の資産管理会社である望月智之事務所です。第3位には代表取締役の坂本守氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
つづく 40.37%
望月智之事務所 20.19%
坂本守 4.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は坂本守氏が務めており、社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
坂本守 代表取締役社長 コムソン社、フジプレアム、船井総合研究所を経て、2007年に同社を設立し代表取締役社長に就任。いつもキャピタル代表取締役などを経て現職。
望月智之 取締役副社長 船井総合研究所を経て、2007年に同社設立に伴い取締役副社長に就任。いつもキャピタル取締役、ビーラン取締役などを経て現職。


社外取締役は、五十棲剛史(iOffice代表取締役等)、新熊聡(オーロラ法律事務所カウンセル)、上山亨(カケルパートナーズ代表社員等)、岡田章二(ISENSE代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「Oneコマース」「協業ブランドパートナー」「共創・自創バリューアップ」「ECプラットフォーム」事業を展開しています。

Oneコマース

ブランド・メーカー向けに、主要ECプラットフォームから自社ECサイト、ソーシャルコマースまで多岐にわたるチャネルにおいて、戦略立案からサイト運営、マーケティング、物流、顧客対応まで一貫した包括的なEC事業支援サービスを提供しています。
コンサルティングや業務支援に対する継続的なストック報酬等を中心に収益を得ています。運営は主に同社が行っています。

協業ブランドパートナー

ブランド・メーカーの公式ECビジネスパートナーとして、EC事業展開を全面的に代行しています。商品を仕入れて自社で在庫リスクを負い、国内の最適なECチャネルにて販売から顧客対応、配送までを一気通貫で支援します。
各ECプラットフォームを通じた消費者への直接販売による売上を主な収益源としています。運営は主に同社が行っています。

共創・自創バリューアップ

自社ブランドや他社ブランドを各ECチャネルを通じて消費者に直接販売しています。M&Aや出資によるブランド取得、販売代理権の獲得によって取扱いブランドを拡大し、多様な商品をECで展開しています。
公式ECサイトでの消費者向け売上や、独占販売権を取得したブランドの海外代理店からの収入を得ています。運営は同社やビーラン、COMYが行っています。

ECプラットフォーム

ライブコマースプラットフォーム「Peace you LIVE」および、中国市場向け会員招待制コミュニティ「ICE CREAM」の開発・企画・運営を行っています。高い販売スキルを持つ配信者がライブ動画を通じて商品を販売できる仕組みを提供します。
プラットフォーム内での消費者による購入額に対する販売手数料や、配信時間に応じた配信手数料を収益源としています。運営は同社およびピースユーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5年間で継続的に右肩上がりの成長を続けており、特に直近では大幅な増収を達成しています。経常利益は一時的な低迷が見られたものの、直近では大きく回復し、利益水準の改善が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 117億円 123億円 139億円 139億円 179億円
経常利益 6億円 3億円 3億円 0億円 3億円
利益率(%) 5.0% 2.4% 2.2% 0.3% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 -2億円 3億円 -1億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益も順調に拡大し、利益率も改善しています。これに加えて営業利益も大きく増加しており、本業の収益性が高まっていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 139億円 179億円
売上総利益 52億円 67億円
売上総利益率(%) 37.0% 37.7%
営業利益 1億円 3億円
営業利益率(%) 0.5% 1.5%


販売費及び一般管理費のうち、業務委託費が16億円(構成比25%)、広告宣伝費が12億円(同19%)、給料及び手当が11億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力である協業ブランドパートナーが大幅な増収となり、全社の成長を力強く牽引しています。OneコマースやECプラットフォームも堅調に伸びていますが、共創・自創バリューアップは商品構成や外部環境の影響等により減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
Oneコマース 28億円 32億円
協業ブランドパートナー 93億円 131億円
共創・自創バリューアップ 17億円 14億円
ECプラットフォーム 2億円 2億円
連結(合計) 139億円 179億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的である末期型の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1億円 -16億円
投資CF -5億円 -2億円
財務CF 12億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は26.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「Eコマースで、日本の未来をリードする」というミッションを掲げています。法人向け・消費者向け双方にビジネスを展開し、ブランド・メーカーのEC事業を総合的に支援するとともに、自社でD2CブランドやECプラットフォームを運営するECのリーディングカンパニーを目指しています。

(2) 企業文化


同社は持続的な成長を支える最大の基盤は「人財」であると考え、コアバリューとなる「社内原理原則」を策定・導入しています。具体的には、「素直誠実」「リーダーシップ」「当事者意識」「成果への情熱」「信頼」の5つのコアバリューを定義し、日常の業務意思決定に組み込むことで全員経営の実現を推進しています。

(3) 経営計画・目標


具体的な中短期の数値目標は有報には記載されていませんが、売上高の成長と売上総利益額の増加を重要な経営指標に掲げています。各事業において新規ブランドの獲得や既存取引先の成長を促進し、事業全体の相乗効果を引き出すことで持続的な成長を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は独自支援モデル「いつも.データマーケティング(iDM)」に生成AIを融合させた「iDM×AI」を戦略の中核に据え、バリューチェーンとマルチチャネルの分断を解消する「いつも.TX」を推進しています。具体的にはAIエージェントの開発・実装による支援強化や、TikTok Shopなどのソーシャルコマースにおける「成長連鎖モデル」による持続的な成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は優秀なEC人材の確保と育成を最重要課題と位置づけ、人的資本への戦略的な先行投資を推進しています。具体的には、プロフェッショナルマネジャーを育成する「ユニットリーダー制度」の導入や、AIテクノロジーを活用して専門性や創造性を発揮できる環境を構築し、生産性向上と新人の即戦力化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 33.0歳 4.3年 5,587,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 39.0%
男性育児休業取得率 75.0%
男女の賃金の差異(全労働者) 89.5%
男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 74.8%
男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 148.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) EC市場動向と競争環境の変化

同社グループの事業はEC市場の拡大を背景に成長していますが、新たな業態の台頭などで主要な物販ECプラットフォーム市場が縮小した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。市場動向を常に分析し、タイムリーな計画変更を行うことでリスク低減に努めています。

(2) 競合会社との競争激化

ECコンサルティングなどの支援サービス分野には多くの企業が参入しています。テクノロジーを活用したサービス高度化や低価格競争に対し、明確な競争優位戦略を確立できなかった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。バリューチェーン全体をカバーする強みを活かし競争力を維持しています。

(3) 技術革新と消費者ニーズへの対応

主要なECプラットフォームに関連する技術革新のスピードや消費者ニーズの変化は速く、新サービスの導入が相次いでいます。これらの変化に対応する技術者の確保やサービス開発が想定通りに進まない場合、提供サービスが陳腐化し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 支援サービスにおける契約獲得と継続率の維持

主力事業の「Oneコマース」では、新規契約件数の獲得と継続率が重要な要素となります。マーケティング活動の失敗やシステムトラブル等の理由により、新規契約数や継続率が想定を大きく下回る事態が続いた場合、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。