いつも 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

いつも 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場。ブランド・メーカー向けEC総合支援を主力に、D2Cやライブコマース等のプラットフォーム事業も展開しています。当期は売上高が微増したものの、事業拡大に向けた投資やコスト増により経常利益は大幅な減益となりました。


※本記事は、株式会社いつも の有価証券報告書(第18期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. いつもってどんな会社?


EC事業の戦略立案から物流までを一気通貫で支援する「ECの総合支援」を行う企業です。

(1) 会社概要


2007年に設立され、ECコンサルティングサービスを開始しました。その後、2013年にフルフィルメントサービスを開始し、2020年に東証マザーズへ上場を果たしました。2022年の市場区分見直しにより東証グロース市場へ移行し、2023年にはライブコマース事業を展開するピースユーを子会社化するなど、EC領域での事業拡大を続けています。

連結従業員数は239名(単体202名)です。筆頭株主は創業社長である坂本守氏の資産管理会社で、第2位は取締役副社長である望月智之氏の資産管理会社となっており、経営陣が主要株主となっています。

氏名 持株比率
株式会社つづく 40.48%
株式会社望月智之事務所 20.24%
坂本 守 4.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性0名の計6名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は坂本守氏です。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
坂本 守 代表取締役社長 1999年船井総合研究所(現船井総研ホールディングス)入社。2007年同社設立とともに代表取締役社長に就任。2021年いつもキャピタル代表取締役等を兼任し、グループ経営を牽引。
望月 智之 取締役副社長 1999年船井総合研究所(現船井総研ホールディングス)入社。2007年同社設立とともに取締役副社長に就任。ビジネス本部長などを歴任し、2022年より現職。


社外取締役は、五十棲剛史(元船井総研ホールディングス取締役常務執行役員)、新熊聡(弁護士・元トリドールホールディングス法務部長)、上山亨(元野村證券・カケルパートナーズ代表)、岡田章二(元ファーストリテイリング執行役員CIO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ECワンプラットフォーム」事業を展開しています。

(1) Oneコマース


ブランド・メーカーに対し、Amazonや楽天市場、自社ECサイト等でのEC事業を包括的に支援するサービスです。戦略立案からサイト運営、マーケティング、物流、顧客対応まで、ECバリューチェーンの全てまたは一部機能を提供します。

収益は主に、原則12ヶ月間の契約に基づくストック売上が主体となっており、安定的な収益が見込めるビジネスモデルです。運営は主に同社およびBAAAN合同会社が行っています。

(2) 協業ブランドパートナー


ブランド・メーカーの公式ECビジネスパートナーとして、D2C戦略を総合的に支援するサービスです。同社が在庫リスクを負って商品を仕入れ、販売から配送までを一貫して行います。

収益源は、公式ECサイトでの消費者に対する商品販売売上です。運営は主に同社が行っています。

(3) 共創・自創バリューアップ


自社ブランドやM&Aで取得したブランド、販売代理権を持つ他社ブランドなどを、ECチャネルを通じて消費者に直接販売するサービスです。スノーアパレルやコスメ、日用品など多様な商材を展開しています。

収益源は、各ECチャネルを通じた消費者への商品販売売上および海外代理店への販売収入です。運営は同社および株式会社ビーラン等の子会社が行っています。

(4) ECプラットフォーム


ライブコマースプラットフォーム「Peace you LIVE」や、中国市場向けコミュニティ等の企画・運営・開発を行うサービスです。ライブ配信を通じた商品販売の場を提供しています。

収益源は、プラットフォーム内での商品購入額に対する手数料および配信時間に応じた配信手数料です。運営は主に株式会社ピースユーが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


当期は売上高が過去最高を更新し増収となりましたが、利益面では経常利益が大幅に減少しました。先行投資やコスト増の影響が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 - 117億円 123億円 139億円 139億円
経常利益 - 6億円 3億円 3億円 0.4億円
利益率(%) - 5.0% 2.4% 2.2% 0.3%
当期利益(親会社所有者帰属) - 4億円 4億円 -6億円 1億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から微増しましたが、売上原価の増加により売上総利益は減少しました。販管費は微減しましたが、利益を圧迫する水準が続いています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 139億円 139億円
売上総利益 33億円 30億円
売上総利益率(%) 23.6% 21.4%
営業利益 3億円 1億円
営業利益率(%) 2.3% 0.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が8億円(構成比27%)、支払手数料が5億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


協業ブランドパートナー事業が売上の大半を占め、成長を牽引しています。一方、Oneコマース事業は減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
Oneコマース 33億円 28億円
協業ブランドパートナー 80億円 93億円
共創・自創バリューアップ 25億円 17億円
ECプラットフォーム 1億円 2億円
連結(合計) 139億円 139億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業CFがプラスである一方、将来への投資(マイナス)を行い、その資金を借入等の財務活動で調達している「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -6.1億円 0.7億円
投資CF -3.6億円 -4.9億円
財務CF 3.8億円 12.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-4.1%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.4%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「日本の未来をECでつくる」をミッションとして掲げています。ブランド・メーカーのEC事業を総合的に支援するとともに、自社でD2CブランドやECプラットフォームを運営することで、法人向け・消費者向け双方にビジネスを展開し、ECを通じた社会貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「いつも5バリュー」として、社員が大切にすべき5つのコアバリュー(素直誠実、リーダーシップ、当事者意識、成果への情熱、信頼)を定義しています。これらを軸にした行動様式を重視し、経営者視点を持つプロフェッショナルな人材の育成と組織づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループでは、売上高の成長と売上総利益額を重要な経営指標としています。各サービス区分において、新規顧客の獲得、既存取引の拡大、ブランドの成長、商品MDの改善、GMV(流通取引総額)の最大化などを通じて、これらの指標の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、ソーシャルコマース支援を新たな柱と位置づけています。TikTok Shop等の台頭を見据え、戦略設計から物流までを一気通貫でサポートする体制を強化します。また、AIを活用した「いつも.データマーケティング(iDM)」による支援モデルの構築や、ライブコマース事業の拡大にも注力していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


EC事業をプロデュースできる人材の採用と育成を最重要課題としています。組織をフラット化し「ユニットリーダー制度」を導入することで、次世代リーダーの育成を図っています。また、独自の実践型研修「Itsumo Business School」などを通じて、経営者マインドを持ったプロフェッショナル人材の輩出を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 32.8歳 4.3年 5,234,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 26.8%
男性労働者の育児休業取得率 60.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 86.9%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 70.2%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 203.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職昇格スピード(36ヵ月)、女性管理職比率(27%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) EC市場について


インターネットやECの歴史は浅く、将来性には不透明な部分があります。また、工場直売モデル等の新業態台頭により、Amazonや楽天等のプラットフォーム主体の市場が縮小した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。市場動向を常に分析し、計画変更を行うことで対応します。

(2) 競合会社について


Oneコマース事業では、大手広告代理店やベンチャー企業など多くの競合が存在します。競合のサービス高度化や低価格化に対し、明確な競争優位性を確立できなかった場合、業績に影響が出る可能性があります。バリューチェーンの全工程をカバーする広さや豊富な人材を強みに、差別化を図ります。

(3) 技術革新について


ECプラットフォームに関連する技術革新や消費者ニーズの変化は速く、これらに対応できなければサービスが陳腐化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。技術者の確保や研修の充実、積極的な情報収集とサービス開発への展開を通じて対応を進めます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。