i-plug 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

i-plug 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場し、新卒オファー型就活サービス「OfferBox」や適性検査「eF-1G」などのHRプラットフォーム事業を展開しています。業績は堅調に推移しており、直近5期は増収トレンドを維持しつつ、当期は主力サービスの伸長と収益性の改善により大幅な増益を達成しました。


※本記事は、株式会社i-plugの有価証券報告書(第14期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. i-plugってどんな会社?


同社は、新卒オファー型就活サービス「OfferBox」を主力とするHRプラットフォーム事業を展開しています。

(1) 会社概要


同社は2012年4月に設立され、同年10月に新卒ダイレクトリクルーティング「OfferBox」の提供を開始しました。2017年には適性検査「eF-1G」を導入し、2020年にイー・ファルコンを完全子会社化しています。2021年3月に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場を果たしました。

従業員数は連結で357名、単体で324名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業者の社長である中野智哉氏であり、第2位には役員の田中伸明氏、第3位にも同じく役員の直木英訓氏が名を連ねています。経営陣が上位の株式を保有する構成となっています。

氏名 持株比率
中野智哉 55.91%
田中伸明 4.25%
直木英訓 2.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役CEOは中野智哉氏が務めており、社外取締役の比率は36.4%となっています。

氏名 役職 主な経歴
中野智哉 代表取締役CEO 2001年ロード入社、アド・エイエヌを経て、2012年4月同社代表取締役社長に就任。2018年6月より現職。
山田雅人 取締役副社長兼CSO NTTドコモビジネス等を経て2012年リクルート入社。2023年同社入社、2025年10月より現職。
直木英訓 取締役COO 2005年インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。2014年8月に同社取締役COOに就任し、現在に至る。
阪田貴郁 取締役CFO トリドール等を経て夢展望取締役等を歴任。2017年同社監査役、社外取締役を経て2022年9月より現職。
田中伸明 取締役 アフラック等を経て、2012年に同社取締役に就任。CFO等を歴任し、2022年9月より現職。


社外取締役は、田中邦裕(さくらインターネット社長)、麻田祐司(麻田祐司公認会計士・税理士事務所代表)、古川明日香(カルチャーガードナー社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「HRプラットフォーム事業」の単一セグメントを展開しています。

(1) 新卒オファー型就活サービス「OfferBox」


就職活動中の学生と新卒採用を行う企業をマッチングする、新卒に特化したダイレクトリクルーティングサービスです。企業側から採用ターゲットの学生に直接オファーを送ることができるプラットフォームを提供し、学生のプロフィールや適性検査結果に基づく効率的な採用活動を支援しています。

収益は、利用企業から受け取るシステム利用料や成功報酬によって構成されています。採用広報解禁前から利用できる早期定額型と、入社合意時に費用が発生する成功報酬型の2つの料金プランを用意しています。運営はi-plugが行っています。

(2) 適性検査サービス「eF-1G」


新卒採用から中途採用、人材育成、配置、登用まで、人事活動のあらゆる場面で一貫して活用できる適性検査サービスです。幅広い測定項目により、ストレス耐性やコミュニケーション力、行動特性などを分析し、個々の企業で活躍し定着する人材の要件を見極めることが可能です。

収益は、適性検査サービスを利用する企業からのアカウント利用料や受検料によって構成されています。受検料は、契約期間内の受検件数に応じた定量契約や、受検時に費用が発生する従量契約などのプランがあります。運営はイー・ファルコンが行っています。

(3) その他のサービス


大学生の就職を支援する食品業界特化型の就活イベントサービス「Tsunagaru就活」や、学生向け会員制コミュニティスペース「OfferBox VVV Station」などを提供しています。ユーザー価値の拡大を目指し、多様なキャリア機会を創出しています。

収益は、イベントへの参加企業からの協賛金や出展料などで構成されています。これらのサービスを通じて、学生と企業の接点を増やし、早期からのキャリア形成を支援しています。就活イベントの運営はマキシマイズが、会員制スペースの運営はi-plugが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の連結業績を見ると、売上高は一貫して増加を続けており、30億円から58億円へと着実に成長しています。経常利益は一時的な赤字を計上した期もありましたが、近年は再び成長軌道に乗り、増益傾向で推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 30億円 37億円 46億円 51億円 58億円
経常利益 4億円 -4億円 1億円 6億円 7億円
利益率(%) 12.2% -10.6% 3.0% 11.4% 12.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 0.7億円 -8億円 6億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は約90%という高い水準を維持しており、営業利益も前期の6億円から7億円へと増加し、収益性の改善が進んでいます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 51億円 58億円
売上総利益 46億円 51億円
売上総利益率(%) 90.9% 89.2%
営業利益 6億円 7億円
営業利益率(%) 11.4% 12.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が17億円(構成比39%)、販売促進費が11億円(同25%)を占めています。また、売上原価では、外注費が3.1億円(構成比53%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社はHRプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、事業全体での収益を示しています。主力の「OfferBox」を中心に利用企業数や学生登録数が堅調に推移し、増収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
HRプラットフォーム事業 51億円 58億円
連結(合計) 51億円 58億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で投資や借入金の返済を賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は29.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.8%で市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 8億円 15億円
投資CF -4億円 -6億円
財務CF -1億円 -1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「つながりで、人の可能性があふれる社会をつくる」というMissionを掲げています。また、Vision2030として「未来を担う若い世代から、もっとも選ばれるプラットフォームになる」ことを目指し、一人ひとりの個性や多様性を活かすプラットフォームの提供を通じて、より豊かなキャリア機会の創出を追求しています。

(2) 企業文化


MissionやVision2030の実現に向けて、組織として目指すべき姿をStatement「共創するプロフェッショナル集団」と定めています。これを実現するための行動指針として「5Values」を構築し、プロフェッショナルとしての成長と、関係者との共創による価値創造を重視する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


新卒ダイレクトリクルーティング市場のリーディングカンパニーとして、同市場を拡大し高い成長性を継続することを目指しています。経営上重要な指標として、売上高および売上高に直接的に紐づく決定人数、並びに営業利益を設定し、利益成長とのバランスをとりながら適切な成長投資を行う方針を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


長期的な持続的成長に向け、既存領域の着実な成長と、新卒領域以外での事業開発・利益成長の両立を進めています。

・主力サービス「OfferBox」の価値提供範囲拡大
・第2の収益の柱となり得る事業の開発・探索
・規律をもった投資による年率20%台の成長の実現
・M&Aやアライアンスを通じた新規事業の創出

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「共創するプロフェッショナル組織」の構築を目指し、経験学習サイクルを基盤とした育成施策を推進しています。OJTを中核に据え、目標設定と振り返りを通じて従業員の自律的な成長を支援するとともに、人材委員会での議論や社内公募制度により、戦略的な配置や多彩なキャリア形成の機会を提供しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.7歳 3.7年 6,202,896円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.3%
男性育児休業取得率 78.6%
男女賃金差異(全労働者) 67.6%
男女賃金差異(正規雇用) 72.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 164.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、係長級社員のうち20代労働者が占める割合(17.1%)、人材育成費用(21,590千円)、キャリア採用人数(61名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材採用ニーズの変動
同社の事業は企業の人材採用支援を主としているため、景気悪化等により企業の雇用水準が低迷し採用ニーズが減少した場合、サービスの利用企業数やオファー流通量に影響が及び、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 特定サービスへの依存
主力のHRプラットフォーム事業は、特定サービスである「OfferBox」に依存した収益構造となっています。競合との差別化や新規事業への投資を進めているものの、計画通りに進まず同サービスへの依存度が低下しない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 新卒採用活動スケジュールの影響
「OfferBox」の受注時期は、企業の新卒採用活動スケジュールの影響を強く受けます。政府の就活ルール指針の変更や、企業の採用活動時期の変動により、成功報酬型や早期定額型の利用動向が変化した場合、資金繰りや業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。