i-plug 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

i-plug 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場するHRプラットフォーム企業です。新卒オファー型就活サービス「OfferBox」を主力事業として展開しています。第13期の連結業績は、売上高が前期比増収、経常利益も大幅な増益となり、当期純利益は黒字転換を果たしました。増収増益基調で成長を続けています。


※本記事は、株式会社i-plug の有価証券報告書(第13期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. i-plugってどんな会社?


新卒ダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」を運営し、学生と企業の最適なマッチングを支援する企業です。

(1) 会社概要


2012年に設立され、新卒ダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」の提供を開始しました。2021年に東京証券取引所マザーズ(現グロース市場)へ上場を果たしています。適性検査サービスを提供するイー・ファルコンや、就活イベント運営のマキシマイズを子会社化するなど、HR領域での事業拡大を進めています。

連結従業員数は330人(単体299人)です。筆頭株主は創業者の中野智哉氏で、第2位は取締役の田中伸明氏、第3位は取締役の直木英訓氏であり、経営陣が主要株主となっています。

氏名 持株比率
中野智哉 56.25%
田中伸明 4.44%
直木英訓 2.44%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役CEOは中野智哉氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
中野智哉 代表取締役CEO 2001年株式会社ロード入社。インテリジェンス(現パーソルキャリア)を経て、2012年に同社を設立し代表取締役社長に就任。2018年より現職。
直木英訓 取締役COO 2005年インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社。2014年同社取締役COO就任。事業推進室やマーケティング部等の要職を経て、2024年より新卒事業本部本部長を兼務。
阪田貴郁 取締役CFO トリドール等を経て、Board代表取締役に就任。2017年同社監査役、2019年社外取締役を経て、2022年より取締役CFO。2024年よりコーポレート本部本部長を兼務。
田中伸明 取締役 アフラック、グロービスを経て2012年同社取締役営業担当。CMO、CHRO、CFO等を歴任し、2022年よりイー・ファルコン代表取締役を兼務。
山田雅人 取締役CSO NTTコミュニケーションズ、リクルート等を経てLITALICO執行役員CSOに就任。2023年同社に入社し、2024年より取締役CSO、2025年より経営戦略本部本部長。


社外取締役は、田中邦裕(さくらインターネット代表取締役社長)、麻田祐司(株式会社ブレインアシスト代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「HRプラットフォーム事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) OfferBox(新卒オファー型就活サービス)


企業から学生に直接オファーを送ることができる新卒特化型のダイレクトリクルーティングサービスです。就職活動中の学生と、新卒採用を行う企業をマッチングさせます。学生はプロフィールを登録し、企業はデータベースから自社の要件に合う学生を検索してアプローチします。

収益モデルは、採用広報解禁日前から利用可能な「早期定額型」と、入社合意時に費用が発生する「成功報酬型」の2種類があります。早期定額型は利用料と採用枠料金を受け取り、成功報酬型は採用決定時に報酬を受け取ります。運営はi-plugが行っています。

(2) eF-1G(適性検査サービス)


新卒・中途採用から育成、配置、登用まで一貫して活用できる適性検査サービスです。194個の測定項目により、個人の特性やストレス耐性などを可視化します。OfferBoxにも標準搭載されており、企業の採用活動におけるマッチング精度向上に寄与します。

企業から適性検査の利用料や受検料を受け取るモデルです。定量契約(期間契約)と従量契約(受検都度課金)があります。運営は主に子会社のイー・ファルコンが行っており、i-plugも連携して提供しています。

(3) その他


業界特化型の就活イベントサービス「Tsunagaru就活」や、学生向け会員制ラウンジサービス「plugin lab」、キャリア教育サービス「キャリア大学」などを展開しています。学生のキャリア形成や就職活動を多角的に支援するサービス群です。

イベント参加料やサービス利用料などが収益源となります。運営は主に子会社のマキシマイズやi-plugが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けており、第13期には51億円に達しました。利益面では第11期に赤字を計上しましたが、第13期には経常利益5.8億円、当期純利益6.0億円とV字回復し、高い利益率を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 22億円 30億円 37億円 46億円 51億円
経常利益 2.9億円 3.7億円 -4.0億円 1.4億円 5.8億円
利益率(%) 13.6% 12.2% -10.6% 3.0% 11.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.8億円 2.7億円 0.7億円 -8.4億円 6.0億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、51億円となりました。売上総利益率は高い水準を維持しており、営業利益も前期の1.4億円から5.8億円へと大幅に増加しました。収益性が大きく改善していることが分かります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 46億円 51億円
売上総利益 41億円 46億円
売上総利益率(%) 88.4% 90.9%
営業利益 1.4億円 5.8億円
営業利益率(%) 3.0% 11.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が16億円(構成比39%)、販売促進費が10億円(同25%)を占めています。

(3) セグメント収益


サービス別の売上高を見ると、主力の「OfferBox(早期定額型)」が前期比で増加し、全体の成長を牽引しています。「eF-1G(適性検査)」や「その他」も増加しましたが、「OfferBox(成功報酬型)」は減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
OfferBox(早期定額型) 34億円 40億円
OfferBox(成功報酬型) 7.4億円 6.3億円
eF-1G(適性検査) 2.7億円 2.8億円
その他 1.4億円 2.1億円
連結(合計) 46億円 51億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、投資活動はマイナス、財務活動はマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態(健全型)です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 4.9億円 8.2億円
投資CF -2.9億円 -3.5億円
財務CF -4.2億円 -1.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は54.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「つながりで、人の可能性があふれる社会をつくる」というMissionを掲げています。また、中長期的には「未来を担う若い世代から、もっとも選ばれるプラットフォームになる」ことをVision2030として設定し、個人の自分らしい成長と企業の発展に貢献することを目指して事業に取り組んでいます。

(2) 企業文化


MissionやVision2030の実現に向けて必要な価値観として「5Values」を掲げ、組織への浸透を図っています。グループ全員が共通した思いを共有し、持続的な価値提供と事業成長を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


新卒ダイレクトリクルーティング市場のリーディングカンパニーとして、市場拡大と高い成長性の継続を目指しています。経営上の重要な指標として、以下の項目を重視しています。
* 売上高
* 決定人数(売上高に直接的に紐づく指標)
* 営業利益

(4) 成長戦略と重点施策


市場環境への適応と持続的成長のため、2030年度に向けた中長期事業戦略を策定しています。2024年度から2026年度を「挑戦期」、2027年度から2030年度を「飛躍期」と位置づけ、以下の戦略を推進します。
* 規律をもった投資による既存領域(OfferBox等)の着実な成長(年率20%台の成長)
* 新卒領域以外での事業開発と利益成長の両立(第2の収益の柱の開発)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「共創するプロフェッショナル組織」の構築を目指し、従業員一人ひとりの成長を支援する方針です。経験学習サイクル(経験→内省→教訓→実践)を基盤としたOJTや、上司の関わりの質を高めるための研修を実施しています。また、多様な人材の確保に向けて、女性や若手層の活躍推進、新卒・キャリア採用の強化に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 34.4歳 3.3年 6,052,992円

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.8%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全労働者) 70.8%
男女賃金差異(正規雇用) 70.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 91.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、20代若手管理職(課長級)の人数(1人)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 企業の人材採用ニーズの変動


同社グループの事業は企業の採用意欲に大きく依存しています。景気悪化等により企業の雇用水準が低迷した場合、サービスの利用減少につながり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定サービスへの依存


売上の大部分を「OfferBox」が占めており、特定サービスへの依存度が高い状態です。競合との差別化や新規事業の開発を進めていますが、これらが計画通りに進まない場合、当該サービスの売上変動が業績に大きな影響を与える可能性があります。

(3) 新卒採用スケジュールの変更


「OfferBox」の受注は企業の新卒採用スケジュールに影響を受けます。政府による就職・採用活動日程ルールの変更や、企業の採用活動時期の変動が生じた場合、サービスの利用時期や売上計上時期に影響が生じる可能性があります。

(4) 競争の激化と新規参入


新卒ダイレクトリクルーティング市場において、テクノロジーに長けた新興企業や、豊富なデータを持つ大手人材企業の参入により競争が激化した場合、市場シェアや収益性に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。