シキノハイテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シキノハイテック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シキノハイテックは東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。半導体検査装置を扱う電子システム事業、LSI設計を行うマイクロエレクトロニクス事業、カメラモジュール等を展開する製品開発事業を主軸としています。直近の業績は売上高が微減し、利益面では各事業の環境変化等により経常赤字となっています。


※本記事は、株式会社シキノハイテックの有価証券報告書(第54期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. シキノハイテックってどんな会社?


半導体に関する設計や検査装置の製造、カメラモジュールの開発などを手掛ける企業です。

(1) 会社概要


1975年に富山県高岡市で設立され、1986年にエレクトロニクス事業およびマイコン関連事業を開始しました。1992年に現在のシキノハイテックに商号変更しています。その後、半導体検査装置事業やカメラ開発事業などを他社から譲り受けて事業を拡大し、2021年には東京証券取引所へ上場を果たしました。

現在の従業員数は単体で435名です。筆頭株主は創業者の塚田隆氏で、第2位は中小企業の育成支援を行う名古屋中小企業投資育成、第3位はシキノハイテック従業員持株会です。

氏名 持株比率
塚田 隆 9.11%
名古屋中小企業投資育成 4.67%
シキノハイテック従業員持株会 4.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長執行役員は髙橋信一氏が務めています。社外取締役の比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
髙橋 信一 代表取締役社長執行役員 松下電器産業入社後、半導体関連の開発部門を歴任。2020年に同社へ入社し、マイクロエレクトロニクス事業本部長などを経て、2025年6月より現職。
舛田 敏彰 常務取締役執行役員管理本部長兼企画経理部長 監査法人トーマツを経て、事業会社で内部監査室長や財務部長を歴任。2024年に同社へ入社し、2025年6月より現職。
古川 卓哉 常務取締役執行役員電子システム事業本部長兼ESD品質管理室長 立山科学工業等を経て2003年に同社へ入社。電子事業関連の要職を歴任し、2019年に取締役電子システム事業本部長に就任、2026年4月より現職。
岸 和彦 取締役品質担当 1988年に同社へ入社し、アナログLSI設計部長などを経て取締役に就任。製品開発事業や品質管理のトップを歴任し、2026年4月より現職。
菊池 弘樹 取締役執行役員生産本部長兼生産技術部長 村田製作所を経て、2024年に同社へ入社。生産本部長代理兼生産技術部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、宮本幸男(志貴野メッキ社長)、髙安錬太郎(公認会計士・税理士)、星野奈津希(安田総合法律事務所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子システム事業」「マイクロエレクトロニクス事業」「製品開発事業」を展開しています。

電子システム事業


半導体製造工程で使用される検査関連機器や装置の開発・製造を行っています。車載やデータセンター向けに不可欠なバーンイン装置やバーンインボードのほか、各種電子機器の検査用ボードや専用計測器を顧客企業に提供しています。

収益は、半導体メーカーなどの産業顧客への検査関連機器・装置の販売により獲得しています。当該事業の運営は同社が行っています。

マイクロエレクトロニクス事業


半導体のLSI設計(アナログ・デジタル)およびIPコアの開発などを行っています。回路設計から特性評価までの一貫した設計体制を構築しており、技術者の人材派遣も行っています。デジタル情報家電や電気自動車関連などが主な用途です。

収益は、LSI設計の受託や技術者派遣のほか、開発したオリジナルIPコアのライセンス販売などによるロイヤルティ収入から得ています。当該事業の運営は同社が行っています。

製品開発事業


画像技術を活用した産業用組込カメラ、画像処理カメラ、見守り機器などの製品開発および製造を行っています。専用クリーンルームを完備した国内自社工場での一貫生産により、高信頼性の製品を安定供給しています。

収益は、国内外のATMやコンビニエンスストア、工場向けなどへのカメラ関連機器および画像処理システムの販売により得ています。当該事業の運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績を見ると、売上高は71億円まで順調に拡大したのち、直近2期間は65億円規模で推移しています。利益面では10%前後の経常利益率を確保していましたが、事業環境の変化等により収益性が低下し、直近では経常赤字となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 54億円 65億円 71億円 65億円 65億円
経常利益 4億円 7億円 6億円 0.5億円 -1.7億円
利益率(%) 7.8% 10.3% 9.0% 0.8% -2.6%
当期純利益 3億円 5億円 5億円 -0.1億円 -1.1億円

(2) 損益計算書


売上高は前事業年度と同水準を維持していますが、売上総利益は減少しており、売上総利益率も19.9%から14.8%へ低下しています。これに伴い営業損益は赤字に転じており、コスト構造の見直しや収益性の改善が課題となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 65億円 65億円
売上総利益 13億円 10億円
売上総利益率(%) 19.9% 14.8%
営業利益 0.6億円 -1.7億円
営業利益率(%) 0.9% -2.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.5億円(構成比31.4%)、研究開発費が1.6億円(同14.2%)を占めています。また、当期の総製造費用において、労務費が29億円(構成比49.3%)、材料費が21億円(同36.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


電子システム事業はカスタムバーンインボードの受注増などにより売上高が微増しました。マイクロエレクトロニクス事業もイメージセンサ等の設計受託が堅調で増収となりました。一方、製品開発事業は一部案件の遅延などが影響し、減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
電子システム事業 30億円 31億円
マイクロエレクトロニクス事業 21億円 21億円
製品開発事業 14億円 13億円
単体(合計) 65億円 65億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはマイナス、投資活動によるキャッシュ・フローはプラス、財務活動によるキャッシュ・フローはプラスとなっています。本業のマイナスを資産の売却や新たな資金調達で補填している救済型の状態といえます。財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は39.8%で、市場平均を下回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2.0億円 -9.6億円
投資CF -1.9億円 0.1億円
財務CF 0.4億円 6.2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「テクノロジーで新しい価値を創造し、安全・安心・効率的な社会の実現に貢献」というMission(ミッション)を掲げています。また、社会が求めるソリューションを「計測」×「デバイス」×「カメラ」で提案し実現することをVision(ビジョン)として定め、お客様の信頼を得る製品とサービスの創出を通じて、高いモラルを持ち発展し続ける企業を目指しています。

(2) 企業文化


社是として「和して拓く」を、行動指針として「自ら考え自ら行動する。挑戦なくして成功はない。」を掲げています。また、Value(バリュー)として、常に「どうあるべきか」を念頭にチャレンジし、事実を直視して考え行動する「Fact・Think・Act」の実践を重視しており、失敗を恐れずチャレンジできる風通しの良い組織文化の醸成を図っています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年度〜2027年度の中期経営計画において、中核事業の競争力強化や新技術の早期事業化などを基本方針として掲げ、以下の数値を2027年度の目標として設定しています。

・売上高:85億円以上
・経常利益率:6.5%以上
・ROE:15%以上

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として、既存の中核事業の成長を加速させるとともに、新技術や新製品の早期事業化と新市場の開拓、グローバル展開を推進しています。また、品質と信頼性の向上に向けた設計・製造・サービスの強化や、従業員エンゲージメントの向上、多様な人材の確保と育成に取り組むことで、持続的な企業価値の向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、多様性に富んだチャレンジ精神旺盛な人材を採用・育成し、能力を発揮できる環境を整備することを人材戦略の基本としています。集団としての意識と能力を継続的に高める「学習する組織」の実現に向け、階層別の研修や自発的な学びの支援、eラーニングなどを通じて、俯瞰的な視点と専門性を兼ね備えた人材の育成に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.8歳 12.2年 5,007,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 50.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 60.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 66.8%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 31.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用従業員比率(65.3%)、外国人従業員比率(0.9%)、平均有給休暇取得日数(13.1日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気やシリコンサイクルの変動


同社の製品は半導体やエレクトロニクス産業に関連しているため、AIや車載向けなどでの需要がある一方で、シリコンサイクルと呼ばれる業界特有の景気変動の影響を受けます。最終製品の需要変動によって半導体メーカーが設備投資を抑制した場合、同社の業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の主要顧客への依存


同社は、特定の主要顧客に対する取引の依存度が高い状況にあります。新規開拓などにより依存しない収益体制の構築に努めていますが、何らかの理由により主要顧客の投資方針や同社との関係に変化が生じ、継続的な受注が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 激しい技術革新への対応遅れ


同社が事業を展開する半導体業界は、技術の進歩が非常に速く、コスト競争も激しい環境にあります。営業拠点の拡充や新技術の研究開発を通じて顧客ニーズの把握に努めていますが、求められる技術の変革に対して競合他社よりも先行して対応できなかった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。