※本記事は、株式会社シキノハイテック の有価証券報告書(第53期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. シキノハイテックってどんな会社?
同社は、半導体検査装置の開発製造、LSI設計、産業用カメラ開発を柱とするエレクトロニクス企業です。
■(1) 会社概要
1975年に富山県高岡市で設立され、1987年に現在の主力事業の一つである半導体検査用基板(バーンインボード)の事業を開始しました。2004年にはカメラ開発事業を開始し、事業の多角化を推進しています。2021年にJASDAQ(現 東証スタンダード)へ上場を果たしました。近年では、2024年に福島事業所を開設するなど、拠点の拡大を進めています。
同社(単体)の従業員数は455名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は元代表者と思われる個人株主で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は企業の育成投資を行う投資会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 塚田 隆 | 9.00% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 5.20% |
| 名古屋中小企業投資育成株式会社 | 4.63% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長執行役員は髙橋 信一氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 髙橋 信一 | 代表取締役社長執行役員 | 1984年松下電器産業(現パナソニックHD)入社。同社半導体部門で開発部長等を歴任後、2020年にシキノハイテック入社。執行役員事業推進室長等を経て2025年6月より現職。 |
| 舛田 敏彰 | 常務取締役執行役員管理本部長兼企画経理部長 | 1998年監査法人トーマツ入所。公認会計士。クロタニコーポレーション(現MERF)取締役財務部長等を経て2024年シキノハイテック入社。2025年6月より現職。 |
| 古川 卓哉 | 常務取締役執行役員電子システム事業本部長 | 1991年立山科学工業入社。2003年シキノハイテック入社。電子事業本部長代理、執行役員電子システム事業本部長等を経て2025年6月より現職。 |
| 岸 和彦 | 取締役執行役員品質管理本部長 | 1988年シキノハイテック入社。アナログLSI設計部長、取締役マイクロエレクトロニクス事業本部長、常務取締役製品開発事業本部長等を経て2025年6月より現職。 |
| 菊池 弘樹 | 取締役執行役員生産本部長兼生産技術部長 | 1986年村田製作所入社。2021年シキノハイテック出向、生産本部生産管理部長代理。2024年入社し、執行役員生産本部長兼生産技術部長を経て2025年6月より現職。 |
社外取締役は、宮本幸男(志貴野メッキ代表取締役社長)、髙安錬太郎(税理士法人Wells Accounting代表社員)、星野奈津希(安田総合法律事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電子システム事業」「マイクロエレクトロニクス事業」「製品開発事業」を展開しています。
■(1) 電子システム事業
半導体製造プロセスの後工程で使用される検査装置(バーンイン装置)や検査用基板(バーンインボード)、周辺機器の開発・製造を行っています。特に車載用半導体の検査工程で重要な役割を果たしており、産業機器向けの各種電子機器の設計・製造も手掛けています。
収益は、半導体メーカーなどの顧客企業に対する検査装置や検査ボード、電子機器製品の販売代金から得ています。また、検査治具や消耗品の継続的な販売も収益源となります。運営は主にシキノハイテックが行っています。
■(2) マイクロエレクトロニクス事業
半導体のLSI設計(アナログ・デジタル)や、IPコア(LSIの部分的な回路情報)の開発を行っています。電源ICや高速インターフェース、画像処理LSIなどの設計に強みを持ち、テストプログラム作成までの一貫体制を構築しています。
収益は、顧客からのLSI設計受託料や技術者派遣料、および自社開発したIPコアのライセンス料から得ています。IPコアに関しては、ライセンス販売に加え、周辺回路設計やカスタマイズ等の付随サービスも提供しています。運営は主にシキノハイテックが行っています。
■(3) 製品開発事業
画像処理技術を活用した産業用組込カメラ、画像処理カメラモジュールの開発・製造およびシステム開発を行っています。画像検査、計測、認識処理など幅広い用途に対応し、専用クリーンルームでの一貫生産により高品質な製品を提供しています。
収益は、産業機器メーカーやシステムインテグレーターなどに対するカメラモジュールや画像処理システムの製品販売代金、および受託開発料から得ています。国内自社工場での生産体制を活かし、安定供給による信頼を獲得しています。運営は主にシキノハイテックが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2024年3月期まで順調に拡大し71億円に達しましたが、当期は65億円へ減少しました。利益面では、経常利益が2023年3月期の6.7億円をピークに減少傾向にあり、当期は0.5億円へと大きく落ち込んでいます。これに伴い当期純損益も赤字に転落しており、成長局面から一転して厳しい調整局面にあることが読み取れます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 44.3億円 | 53.6億円 | 64.8億円 | 70.9億円 | 65.2億円 |
| 経常利益 | 2.1億円 | 4.2億円 | 6.7億円 | 6.4億円 | 0.5億円 |
| 利益率(%) | 4.7% | 7.8% | 10.3% | 9.0% | 0.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.1億円 | 3.3億円 | 4.8億円 | 5.1億円 | -0.1億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較すると、売上高の減少に加え、売上総利益率が約26.5%から約19.9%へと大幅に低下しています。これにより営業利益は前期の6.0億円から0.6億円へと9割以上減少し、利益率も0.9%まで低下しました。売上の減少幅以上に利益の落ち込みが激しく、収益構造が悪化している状況です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 70.9億円 | 65.2億円 |
| 売上総利益 | 18.8億円 | 13.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.5% | 19.9% |
| 営業利益 | 6.0億円 | 0.6億円 |
| 営業利益率(%) | 8.5% | 0.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.5億円(構成比28%)、研究開発費が3.0億円(同24%)を占めています。売上原価は52.2億円で、売上高に対する構成比は80%です。
■(3) セグメント収益
電子システム事業は車載用半導体の在庫過多による設備投資抑制の影響で減収となり、営業損失を計上しました。マイクロエレクトロニクス事業はデジタルLSI設計の需要減で減益ですが、黒字を維持しています。製品開発事業はカメラ製品の減少等が響き、赤字が継続しています。全体として電子システム事業の不振が業績悪化の主要因となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電子システム事業 | 35.0億円 | 30.2億円 | 4.3億円 | -0.3億円 | -1.0% |
| マイクロエレクトロニクス事業 | 21.1億円 | 20.7億円 | 2.4億円 | 1.7億円 | 8.2% |
| 製品開発事業 | 14.8億円 | 14.3億円 | -0.7億円 | -0.8億円 | -5.8% |
| 連結(合計) | 70.9億円 | 65.2億円 | 6.0億円 | 0.6億円 | 0.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業での収益(営業CFプラス)があるものの、設備投資等を積極的に行い(投資CFマイナス)、不足分を借入等で調達(財務CFプラス)する「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.0億円 | 2.0億円 |
| 投資CF | -3.6億円 | -1.9億円 |
| 財務CF | -1.6億円 | 0.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は赤字のため算出できず市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「和して拓く」を社是とし、「テクノロジーで新しい価値を創造し、安全・安心・効率的な社会の実現に貢献」することをミッションに掲げています。ビジョンとして「社会が求めるソリューションを『計測』×『デバイス』×『カメラ』で提案・実現」することを目指しており、顧客の信頼を得る製品とサービスを創出し続けることを理念としています。
■(2) 企業文化
同社は「Fact・Think・Act」の実践をバリューとして掲げています。これは、常に「どうあるべきか」を念頭にチャレンジし、事実を直視し、自ら考え行動することを重視する文化です。また、行動指針として「自ら考え自ら行動する。挑戦なくして成功はない。」を定めており、主体性と挑戦心を持つ人材を尊重する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は2025年度から2027年度までの中期経営計画において、最終年度である2027年度の数値目標を設定しています。
* 売上高:85億円以上
* 経常利益率:6.5%以上
* ROE:15%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略として、「中核事業の競争力強化」「新技術・新製品の創出、早期事業化」「新市場、グローバル事業の拡大」「デジタルインフラ活用と人材育成」の4つを基本方針としています。特に、AI関連やパワー半導体市場の活性化を機会と捉え、技術力とものづくり力を活かした高付加価値製品の開発や、海外市場への展開を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様性に富んだチャレンジ精神旺盛な人材を採用・育成し、全ての能力発揮のための環境整備を戦略としています。「自発的成長を促す」「エンゲージメントの向上」「社会人基礎力を鍛える」を軸に、階層別研修や選抜研修などを実施し、専門性と俯瞰的視点を兼ね備えた人材の育成に注力しています。また、多様な人材の活躍推進にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.0歳 | 11.4年 | 4,950,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.6% |
| 男性育児休業取得率 | 85.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 31.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用従業員比率(66.4%)、育休復職率(100%)、定期健康診断受診率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定顧客への依存
同社の売上高の一部は、ソニーセミコンダクタソリューションズ、デンソー、ルネサスエレクトロニクスといった特定の主要顧客に依存しています。新規顧客開拓に努めていますが、これら主要顧客との取引関係に変化が生じた場合や、顧客の生産計画・方針変更があった場合、同社の業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 半導体市場の変動(シリコンサイクル)
同社の主力事業である電子システム事業やマイクロエレクトロニクス事業は、半導体業界の景気変動(シリコンサイクル)の影響を強く受けます。半導体需給のバランスが崩れ、顧客企業の設備投資抑制や生産調整が行われると、同社製品の受注減少や価格競争の激化につながり、業績が悪化するリスクがあります。
■(3) 人材の確保および育成
高度な技術力を要する事業を展開しているため、電子回路の知識や応用技術を持つ優秀なエンジニアの確保が不可欠です。人材獲得競争の激化により十分な採用ができない場合や、既存の優秀な技術者が流出した場合、技術力の低下や開発体制の維持が困難になり、競争力や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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