LITALICO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

LITALICO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

LITALICOは東証プライム市場に上場し、障害者向けの就労支援や児童発達支援、福祉施設向けプラットフォーム事業を展開しています。直近の連結業績は、施設数の拡大や海外事業の開始により、売上収益は前期比20.0%増と伸長し、営業利益は同0.1%増と微増ながら増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社LITALICO の有価証券報告書(第5期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年7月4日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. LITALICOってどんな会社?


障害福祉領域において就労支援や学びの支援を行う店舗サービスと、インターネットプラットフォーム事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


2005年に株式会社イデアルキャリアとして設立され、2008年に就労移行支援事業を開始しました。2011年に学習塾および児童発達支援事業を開始し、2014年に現社名へ変更しました。2016年にマザーズへ上場し、同年「LITALICO発達ナビ」を開始。2017年には東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2024年には米国法人を設立し、海外事業を開始しています。

2025年3月31日時点の従業員数は連結5,075名、単体1,495名です。筆頭株主は代表取締役社長の長谷川敦弥氏で、第2位は資産管理業務を行う株式会社日本カストディ銀行(信託口)、第3位は日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)となっており、創業者が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
長谷川 敦弥 27.48%
日本カストディ銀行(信託口) 12.98%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は長谷川敦弥氏です。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
長谷川 敦弥 代表取締役社長 2008年LITALICO入社。2009年同社代表取締役社長などを経て、2025年1月より現職。
辻 高宏 取締役副社長 日本長期信用銀行、ソニー、エムスリー取締役などを経て、2025年1月より現職。


社外取締役は、北村康央(弁護士)、彌野泰弘(Bloom&Co.代表取締役)、小室淑恵(ワーク・ライフバランス代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「就労支援事業」、「児童福祉事業」、「プラットフォーム事業」、「海外事業」および「その他」事業を展開しています。

就労支援事業


就労を目指す障害のある方を対象に、就労移行支援、就労定着支援、特定相談支援を提供しています。職業訓練や就職活動支援、職場定着支援などを行い、個々の適性に合った就労をサポートしています。

収益は、国または地方公共団体からの障害福祉サービス等報酬(公費)および一部利用者からの自己負担金により構成されています。運営は主に株式会社LITALICOパートナーズなどのグループ会社が行っています。

児童福祉事業


発達障害児を中心とした児童を対象に、児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援を提供しています。学習面・行動面・コミュニケーション面等の指導を行い、個別最適な教育を実践しています。

収益は、行政によって発行された受給者証に基づき、国または地方公共団体から支払われる給付費(公費)および利用者負担金等からなります。運営は主に株式会社LITALICOパートナーズなどのグループ会社が行っています。

プラットフォーム事業


障害児の家族や障害のある求職者向けの情報ポータルサイト運営、福祉施設向けの業務支援SaaS、および人材紹介サービスを提供しています。「LITALICO発達ナビ」「LITALICO仕事ナビ」「LITALICOキャリア」などを展開しています。

収益は、福祉施設事業所からのSaaS利用料や広告掲載料、人材紹介における成果報酬等からなります。運営は主にLITALICOが単体で行うほか、一部サービスはプラスワンソリューションズ株式会社等が提供しています。

海外事業


米国ネブラスカ州において、知的障害・発達障害のある方を対象とした住まいと日中活動のサービスを提供しています。特に強度行動障害を伴う重度の障害のある方を主な対象としています。

収益は、米国連邦政府または州政府の定める制度に基づき提供される福祉サービスの対価(公費)等からなります。運営は現地のDevelopmental Disability Center of Nebraska, LLCが行っています。

その他


学習教室「LITALICOジュニアパーソナルコース」、IT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」、ライフプラン作成支援「LITALICOライフ」などを展開しています。

収益は、利用者からの授業料やサービス利用料等からなります。運営はLITALICOおよびグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の業績を見ると、売上収益は連続で増加しており、事業規模の拡大が続いています。利益面では、税引前利益および当期利益は第4期にピークをつけた後、第5期では減少に転じました。これは事業拡大に伴う投資や費用の増加などが要因と考えられます。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 242億円 277億円 332億円
税引前利益 29億円 45億円 32億円
利益率(%) 11.9% 16.1% 9.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 18億円 35億円 24億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上収益の増加に伴い売上総利益も増加しています。一方で、売上総利益率と営業利益率は若干低下しており、収益性の面では費用増の影響が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 277億円 332億円
売上総利益 113億円 123億円
売上総利益率(%) 40.8% 37.0%
営業利益 35億円 35億円
営業利益率(%) 12.5% 10.5%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が44億円(構成比50%)、広告宣伝費が10億円(同11%)を占めています。売上原価においては、人件費等のサービス提供コストが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


就労支援事業とプラットフォーム事業は売上・利益ともに増加しました。新たに加わった海外事業も収益に貢献しています。一方で、児童福祉事業は売上が微減し、利益面では損失を計上しました。その他事業は増収増益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
就労支援事業 106億円 125億円 35億円 46億円 36.7%
児童福祉事業 96億円 93億円 17億円 -1億円 -0.8%
プラットフォーム事業 40億円 46億円 13億円 14億円 29.5%
海外事業 - 28億円 - 8億円 26.6%
その他 37億円 40億円 4億円 5億円 13.0%
調整額 -1億円 -1億円 -34億円 -37億円 -
連結(合計) 277億円 332億円 35億円 35億円 10.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金と外部調達資金を活用して、積極的な投資を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 54億円 49億円
投資CF -12億円 -66億円
財務CF -34億円 15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は21.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.2%で市場平均を上回っています(いずれもプライム市場非製造業平均との比較)。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「障害のない社会をつくる」というビジョンを掲げています。多様な人々が自分らしい人生を選択できる「人を中心とした社会」の実現を通じて、社会にある障害を解消し、ビジョンを達成することを目指しています。

(2) 経営文化


「LITALICO(りたりこ)」という理念のもと、社会課題を解決するための事業運営を行っています。ビジョンを経営陣や従業員一人ひとりに浸透させ、サステナビリティと財務リターンの共生を重視する文化があります。多様性を尊重し、公正で透明性の高い経営を確保することを基本としています。

(3) 経営計画・目標


同社は、インターネットプラットフォームを軸とした障害福祉分野のトータルソリューションサービスの展開を通じて、中長期的な企業価値の最大化を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


インターネットプラットフォームの拡充により、質の高い情報の提供と機能拡大を図ります。また、顧客の要望に応えるため、全国で施設サービスの安定的な拡大を計画しています。人材の質がサービスの質を左右するため、採用と育成に経営資源を重点的に配分する方針です。さらに、事業基盤の強化としてサービスの平準化や地域連携、事業間シナジーの創出を推進し、必要に応じて他社との提携やM&Aも実施します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


障害のある方への支援やプラットフォーム運営という専門性の高い事業であるため、人材の「採用と教育」に大きな資源を割いています。専門性を持つキャリア人材だけでなく新卒・未経験者も積極的に採用し、社内で育成する方針です。また、多様な人材が活躍できるよう、年齢・性別等を問わない採用や評価を行い、退職率の最適化を指標として安心して働ける環境整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 34.2歳 4.7年 5,652,000円


※平均年間給与は、給与・賞与・確定拠出年金制度に関するライフプラン手当および株式報酬費用の総額を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 35.0%
男性育児休業取得率 68.0%
男女賃金差異(全労働者) 90.8%
男女賃金差異(正規雇用) 78.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 154.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、退職率(14.3%)、兼業制度利用者数(523名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制等について


就労支援事業や児童福祉事業は、障害者総合支援法や児童福祉法に基づく公費による報酬を得ています。報酬制度の改定や法令の変更があった場合、業績に影響を与える可能性があります。また、事業所ごとの指定取り消しや営業停止のリスク、各自治体の運用変更により定員超過運営ができなくなるリスクなどがあります。

(2) 個人情報保護について


事業運営上、顧客や保護者の個人情報を多数保有しています。個人情報の適正な管理に努めていますが、不正アクセスやシステム障害等により情報漏洩が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 人材の確保及び育成について


専門的な知識や指導技術を持った人材の確保が急務となっています。施設開設やサービス開発のスピードに対し、人材の採用と育成が追いつかない場合、事業展開や業績に影響を与える可能性があります。

(4) 競合について


障害福祉サービス業界は人材の質に左右されるため参入障壁は一定程度ありますが、競合他社の事業拡大や新規参入により競争が激化した場合、同社の業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。