LITALICO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

LITALICO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

LITALICOは東京証券取引所プライム市場に上場し、「障害のない社会をつくる」というビジョンのもと、就労支援や児童福祉などの施設サービス、および福祉領域のプラットフォーム事業を展開しています。直近の業績は、各事業の順調な拡大により売上収益、各段階利益ともに増加し、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社LITALICO の有価証券報告書(第6期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. LITALICOってどんな会社?


就労支援や児童福祉サービス、福祉領域のプラットフォーム事業を展開し、障害のない社会の実現を目指す企業です。

(1) 会社概要


2005年に設立され、2008年より現在の就労支援事業を開始しました。2011年には児童福祉領域へ参入し、その後「LITALICO」へブランドを統一しました。2016年に東証マザーズ、2017年に東証一部へ上場し、2024年には米国企業を買収して海外事業も展開しています。

現在の従業員数は連結で5,443名、単体で1,616名体制となっています。筆頭株主は代表取締役社長の長谷川敦弥氏で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
長谷川敦弥 28.26%
日本カストディ銀行(信託口) 13.61%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.36%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は長谷川敦弥氏です。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
長谷川敦弥 代表取締役社長 2008年に同社へ入社し、2009年に代表取締役社長に就任しました。その後、代表取締役会長などを経て、2025年1月より現職。
辻高宏 取締役副社長 1991年に日本長期信用銀行へ入社後、ソニーやエムスリーを経て、2020年に同社へ入社しました。専務などを経て、2025年1月より現職。


社外取締役は、北村康央(北村・平賀法律事務所パートナー)、彌野泰弘(Bloom&Co.代表取締役)、小室淑恵(ワーク・ライフバランス代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「就労支援事業」「児童福祉事業」「プラットフォーム事業」「海外事業」および「その他」事業を展開しています。

就労支援事業


就労を目指す障害者を対象に、就職するための訓練や就職活動支援から就労後の職場定着まで、一貫した支援サービスを提供しています。また、公費による福祉サービスを利用するための利用計画の作成やモニタリングなども行っています。

国や地方公共団体が定める障害福祉サービス等報酬(公費)を主な収益源としています。本事業の運営は、主にLITALICOパートナーズが行っています。

児童福祉事業


発達障害児を中心とした未就学児や学齢期の児童を対象に、学習面、行動面、コミュニケーション面などの指導を提供しています。また、児童が通う保育所や幼稚園、小学校などへの訪問支援も実施しています。

行政によってサービス受給者証を発行された児童に対する公費によるサービス報酬を主な収益源としています。本事業の運営は、主にLITALICOパートナーズが行っています。

プラットフォーム事業


障害福祉施設の利用者やその家族、求職者を対象としたマッチングメディアの運営や人材紹介サービスを提供しています。また、施設向けには集客や採用支援、請求管理ソフトなどの経営支援プロダクトも展開しています。

施設からのシステム利用料や、人材紹介における成果報酬などを収益源としています。本事業の運営は、主に同社が行っています。

海外事業


米国ネブラスカ州において、知的障害や発達障害を持つ方、特に強度行動障害を伴う重度の方を主な対象として、グループホームの運営など住まいと日中活動の支援サービスを提供しています。

米国連邦政府または州政府の定める制度に基づき、公費による福祉サービス報酬を収益源としています。事業の運営は、Developmental Disability Center of Nebraska, LLCが行っています。

その他


サービス受給者証が未発行の発達障害児への短期集中型教育プログラムや、デジタルものづくりを通じたIT教育、障害児を持つ家族向けのライフプラン作成支援サービスなどを提供しています。

利用者からのサービス利用料などを主な収益源としています。本事業の運営は、同社およびグループ会社がそれぞれの特徴を活かして展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績は、施設展開の拡大やプラットフォーム事業の成長により売上収益が継続して増加しています。利益面では一時的な増減があるものの、概ね高い水準を維持しており、全体として順調な事業成長が確認できます。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 242億円 277億円 325億円 382億円
税引前利益 29億円 45億円 32億円 42億円
利益率(%) 11.9% 16.1% 9.8% 11.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 18億円 35億円 24億円 27億円

(2) 損益計算書


売上収益が増加する一方で、売上総利益および営業利益も着実に成長しています。営業利益率は向上しており、事業拡大に伴うコスト増を吸収しながら収益性を高めていることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 325億円 382億円
売上総利益 50億円 54億円
売上総利益率(%) 15.4% 14.1%
営業利益 34億円 46億円
営業利益率(%) 10.6% 12.0%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が26億円(構成比47%)、広告宣伝費が6億円(同11%)を占めています。また、売上原価においても人件費が19億円(同56%)と大きな割合を占めており、人材確保と育成に注力する事業特性が表れています。

(3) セグメント収益


全ての事業セグメントで増収を達成しています。特に児童福祉事業は新規施設の開設等により売上が大きく伸び、利益面でも黒字転換を果たしました。また、プラットフォーム事業や海外事業も高い利益率を確保し、全体の業績成長を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
就労支援事業 125億円 142億円 46億円 44億円 30.8%
児童福祉事業 88億円 110億円 -1億円 10億円 9.3%
プラットフォーム事業 46億円 56億円 14億円 18億円 31.7%
海外事業 28億円 37億円 8億円 9億円 23.5%
その他 38億円 40億円 5億円 4億円 9.8%
調整額 -1億円 -2億円 -37億円 -38億円 -
連結(合計) 325億円 382億円 34億円 46億円 12.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「積極型」です。営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 49億円 72億円
投資CF -66億円 -71億円
財務CF 15億円 36億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.4%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「障害のない社会をつくる」というビジョンを掲げています。多様な人々が自分らしい人生を選択できる「人を中心とした社会」の実現を通じて、社会課題を解決することを経営の基本方針としています。事業を通じて質の高いサービスを提供し、ビジョンの実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は社名でもある「LITALICO(りたりこ)」という理念を掲げており、これは利他と利己の共生を意味しています。多様性を尊重し、お互いを大切にしあえる行動を重視しており、年齢や性別、国籍などの属性を問わず、潜在能力の高い人材を積極的に採用・登用する企業文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、就労支援や児童福祉といった施設サービスの継続的な成長と、インターネットプラットフォームを軸とした障害福祉分野のトータルソリューションサービスの展開を中長期の経営戦略としています。事業計画に沿って全国に新規施設を継続的に開設し、福祉業界全体の質の向上とサービス拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けた重点施策として、インターネットプラットフォームの機能拡大と施設サービスの安定的な開設を推進しています。また、サービスの質を左右する最大の要素として人材の採用と教育に注力するとともに、各事業間での知見の共有や地域・関係機関との連携強化、さらにはM&Aの実施を通じた企業価値の最大化を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、サービスの質を左右する最大の要素は人材であるとの認識から、採用と教育に大きな経営資源を割いています。潜在能力の高い人材であれば属性や採用経路を問わず積極的に採用し、社内で専門的な教育を行う方針を採っています。従業員が安心して働ける環境を整備し、退職率の最適化を目標として掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.7歳 4.9年 5,498,000円


※平均年間給与は給与・賞与・ライフプラン手当のほか、株式報酬費用を含んで算出されています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 33.0%
男性育児休業取得率 80.2%
男女賃金差異(全労働者) 90.9%
男女賃金差異(正規雇用) 79.9%
男女賃金差異(パート・有期雇用) 158.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、退職率(13.02%)、週短時間勤務制度の利用者数(145名)、兼業制度の利用者数(555名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法規制・制度改定リスク


障害福祉サービスや児童福祉サービスは国からの公費報酬を主な収益源としており、原則3年に1回行われる報酬制度の改定や、関連法令の制定・改廃、厚生労働省の通達変更などが、同社の事業活動や業績に直接的な影響を与える可能性があります。

(2) 専門人材の確保と育成リスク


同社の展開する施設運営やプラットフォーム構築においては、専門的な知識や指導技術を持つ人材の確保が急務です。施設の新規開設やサービス開発のスピードに対して人材の採用・育成が追いつかない場合、事業展開や業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 情報システム障害と情報漏洩リスク


事業運営において顧客の個人情報やプラットフォーム上のデータを多数取り扱っており、不正アクセスやシステム障害が発生した場合には、業務遂行の遅延や損害賠償、社会的信用の失墜を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。