※本記事は、株式会社NexTone の有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. NexToneってどんな会社?
音楽著作権管理ビジネスを主軸に、デジタル配信やマーケティング支援等も手掛けるエンタテインメント企業です。
■(1) 会社概要
同社は、2000年に設立された株式会社イーライセンスと株式会社ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)が2016年2月に合併し発足しました。2001年の著作権等管理事業法施行に伴い参入し、2020年3月に東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ上場を果たしました。2023年9月には株式会社レコチョクを連結子会社化し、事業基盤を拡大しています。
2025年3月31日現在の連結従業員数は308名(単体117名)です。筆頭株主は大手芸能プロダクションの株式会社アミューズ、第2位はコンテンツ配信技術等を持つ株式会社フェイス、第3位は資産管理業務を行う野村信託銀行株式会社(投信口)です。アミューズとフェイスは同位の大株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アミューズ | 7.38% |
| フェイス | 7.38% |
| 野村信託銀行(投信口) | 4.74% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役CEOは阿南雅浩氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 阿南 雅浩 | 代表取締役CEO コンプライアンス担当 コンプライアンス委員会委員長 | 1986年シービーエス・ソニーグループ入社。エイベックス・グループ・ホールディングス執行役員、イーライセンス代表取締役社長などを経て、2016年2月より現職。 |
| 荒川 祐二 | 代表取締役COO 営業本部管掌 | 1992年電通コーテック入社。2000年ジャパン・ライツ・クリアランス代表取締役、JRCホールディングス代表取締役などを経て、2016年2月より現職。 |
| 渡邊 史弘 | 常務取締役 コーポレートサービス本部管掌 兼 経営管理本部管掌 報酬委員会委員 | 1984年東邦生命保険相互会社入社。科研製薬執行役員総務部長、同社取締役などを経て、2022年6月同社取締役。2025年6月より現職。 |
| 足立 大輔 | 取締役 著作権事業本部管掌 | 1997年あさひ銀行入行。ジャパン・ライツ・クリアランス執行役員、同社執行役員営業本部長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、阿部優子(元衆議院事務局事務次長)、小坂準記(TMI総合法律事務所パートナー)、尾木敦子(プロダクション尾木取締役)、田村優(インクストゥエンター代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「著作権管理事業」、「デジタルコンテンツディストリビューション(DD)事業」、「音楽配信事業」および「その他」事業を展開しています。
■著作権管理事業
作詞家、作曲家、音楽出版社等の著作権者から委託を受け、音楽著作物の利用許諾、使用料の徴収・分配を行うほか、音楽著作権管理業務の代行サービスなどを提供しています。利用者には放送局、配信事業者、カラオケ事業者などが含まれ、音楽作品の利用促進を図る窓口としての役割を担っています。
収益は、音楽著作権の利用者から徴収する著作権使用料の一部を管理手数料として受け取ることで発生します。運営は主にNexToneが行っており、子会社のエムシージェイピーが音楽出版社向け業務代行サービスを提供しています。
■デジタルコンテンツディストリビューション(DD)事業
音楽コンテンツ(音源や映像)の原盤を権利者から預かり、国内外の音楽配信サービス(Apple Music、Spotify、YouTube等)へ販売・流通させる事業です。アニメ・ゲーム関連やネットクリエイター等の原盤を取り扱い、YouTubeでのコンテンツマネージメントサービスも提供しています。
収益は、音楽配信サービスから受領する原盤使用料の一部を手数料として受け取るほか、YouTube等での動画収益の一部を受領します。運営はNexTone、株式会社レコチョク、株式会社エッグスが行っています。
■音楽配信事業
スマートフォンやパソコン向けにインターネットを通じて楽曲を配信する事業です。個人向けには「dヒッツ」などの定額制ストリーミングサービスや単曲ダウンロード販売を提供し、法人向けには店舗や結婚式場などへのBGM配信サービスを行っています。
収益は、個人ユーザーからの月額利用料やコンテンツ購入料、および法人顧客からのサービス利用料等から構成されます。運営は主に株式会社レコチョクが行っています。
■その他(ビジネスサポート事業)
アーティストのキャスティングやイベント企画、ファンクラブ運営支援、音楽・映像業界向けのシステム開発・保守運用、インディーズアーティストの活動支援プラットフォーム「Eggs」の運営など、エンタテインメントビジネスを多角的にサポートしています。
収益は、イベント等の企画制作費、システム開発・保守運用費、プラットフォーム利用料等から得ています。運営はNexTone、株式会社NexToneシステムズ、株式会社レコチョク、株式会社エッグスが連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、特に直近2期は株式会社レコチョクの子会社化等の影響もあり急拡大しています。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに着実に増加しており、事業規模の拡大に伴う成長が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 61億円 | 75億円 | 88億円 | 134億円 | 194億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 7億円 | 8億円 | 7億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 8.8% | 9.5% | 9.5% | 4.9% | 5.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4億円 | 5億円 | 6億円 | 5億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は2024年3月期の26.1%から2025年3月期は24.9%へと推移しており、営業利益は前期の6億円から10億円へと大きく伸長しました。営業利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 134億円 | 194億円 |
| 売上総利益 | 35億円 | 48億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.1% | 24.9% |
| 営業利益 | 6億円 | 10億円 |
| 営業利益率(%) | 4.8% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が14億円(構成比37%)、賞与引当金繰入額が2億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収増益を達成しました。特に音楽配信事業はレコチョクの通期連結化により売上が大幅増となり、利益面でも大きく貢献しています。著作権管理事業やDD事業も市場拡大を背景に堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 著作権管理事業 | 11億円 | 14億円 | 5億円 | 7億円 | 50.7% |
| DD事業 | 74億円 | 94億円 | 8億円 | 10億円 | 10.2% |
| 音楽配信事業 | 40億円 | 76億円 | 6億円 | 13億円 | 17.6% |
| その他 | 9億円 | 10億円 | -1億円 | -4億円 | -41.2% |
| 調整額 | - | - | -11億円 | -16億円 | - |
| 連結(合計) | 134億円 | 194億円 | 6億円 | 10億円 | 5.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は自己資金を運転資金及び将来の事業拡大のための投資資金の財源としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、業績好調による利益増加や、著作権管理・音楽配信事業における権利者への分配増加に伴う未払金・買掛金の増加などにより積み上がりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、システム改修や新機能追加のための無形固定資産取得による支出が主な要因です。
財務活動によるキャッシュ・フローは発生しませんでした。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 14億円 | 22億円 |
| 投資CF | 7億円 | -6億円 |
| 財務CF | -1億円 | - |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「For the Future of Music ~音楽文化・音楽産業の発展のために、私たちは挑戦を続けます~」を企業理念として掲げています。また、「次代を奏でるオンリーワン・エージェント」というビジョンの下、音楽と音楽を愛するすべての人の未来のために、新しい時代のエージェントを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、音楽文化・音楽産業のより一層の発展、持続可能でより良い社会の実現に貢献することを基本方針としています。権利者から選ばれ、利用者から支持される存在となるため、公平・公正かつ透明性の高い業務遂行や、変化する環境への迅速な対応を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期からの中期業績計画において、著作権管理事業の取扱高拡大を最重要指標としています。また、近い将来のプライム市場上場を見据え、財務目標も設定しています。
* 著作権管理事業の取扱高:伸長率10%以上
* 売上高:296億円以上
* 営業利益率:9%以上
* 経常利益:2年で合計25億円(プライム市場上場基準)
■(4) 成長戦略と重点施策
著作権管理事業では、海外徴収や演奏権(コンサート、店舗BGM等)の管理強化を進め、将来的にはカラオケ等の第6区分への参入を目指します。また、DD事業や音楽配信事業等の周辺事業を推進し、これらから生まれる新規事業を含めた総合エージェントとしての中長期的な成長を図ります。
* 著作権使用料徴収額シェア目標:長期的50%
* 管理楽曲数目標:毎期10万曲以上増加
* 取扱原盤数目標:毎期23万原盤以上増加
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、権利者・利用者のニーズに応え音楽産業の発展に貢献できる人材の育成を目指しています。人事評価制度による適正な処遇、専門スキルやデジタルスキルの強化研修、資格取得支援などを行っています。また、多様な人材が活躍できるよう、フレックス制度や在宅勤務、副業制度などを導入し、働きがいのある職場環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 36.4歳 | 6.7年 | 5,684,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 78.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇消化率(48.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 「著作権管理事業」の市場構造に関するリスク
同社の中核事業である音楽著作権管理事業市場は、現在に至るまでJASRACが大半のシェアを保有しています。同社は差別化戦略によりシェア拡大を目指していますが、差別化が奏功せず業界ポジションが向上しなかった場合、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 音楽配信市場に関するリスク
音楽配信市場は通信会社の方針やプラットフォームの動向、技術革新の影響を強く受けます。ストリーミング市場の競争激化や為替変動など、外部環境の悪化により市場規模が想定通り推移しなかった場合、同社の経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 投資に関するリスク
同社は成長のために新規事業、人材、システム、M&A等への投資を行っています。しかし、投資後に事業環境の急激な変化や予期せぬ事由により計画通りに事業が進展しない場合、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) システムリスク
事業においてコンピューターシステムやインターネットを活用しており、アクセス集中によるサーバーダウンやシステム障害が発生する可能性があります。これによりサービスの安定提供が困難になった場合、収益の低下や信用失墜につながる恐れがあります。



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