※本記事は、株式会社NexToneの有価証券報告書(第26期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. NexToneってどんな会社?
音楽著作権の管理からデジタル配信まで、権利者と利用者を支えるエンタテインメントエージェントです。
■(1) 会社概要
2000年9月に著作権管理事業を目的としてイーライセンスが設立され、同年12月にジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)が設立されました。2001年に民間管理事業者として届出を行い事業を開始し、2016年に両社が合併してNexToneが発足しました。2020年にマザーズに上場し、2023年にはレコチョクを連結子会社化しています。
同社グループは、連結従業員数306名、単体従業員数127名の体制で事業を運営しています。筆頭株主は事業会社のアミューズで、第2位はJRCホールディングス、第3位は事業会社のソニー・ミュージックエンタテインメントとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アミューズ | 7.37% |
| JRCホールディングス | 4.28% |
| ソニー・ミュージックエンタテインメント | 4.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役CEOは阿南雅浩氏です。社外取締役は4名で、社外取締役比率は36.4%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 阿南 雅浩 | 代表取締役CEO | 1986年シービーエス・ソニーグループ入社。ミュージックレイン代表等を経て、2015年イーライセンス代表取締役社長に就任。2016年より現職。 |
| 荒川 祐二 | 代表取締役COO | 1992年電通コーテック入社。2000年ジャパン・ライツ・クリアランス代表取締役等を経て、2016年より現職。 |
| 渡邊 史弘 | 常務取締役 | 1984年東邦生命保険入社。科研製薬取締役等を経て、2022年同社取締役に就任。2025年より現職。 |
| 足立 大輔 | 取締役 | 1997年あさひ銀行入行。2005年ジャパン・ライツ・クリアランス入社。同社執行役員営業本部長等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、阿部優子氏(元衆議院調査局長・指名・報酬委員会委員長)、小坂準記氏(TMI総合法律事務所パートナー)、尾木敦子氏(ログイン代表取締役)、田村優氏(インクストゥエンター代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「著作権管理事業」「デジタルコンテンツディストリビューション(DD)事業」「音楽配信事業」および「その他」事業を展開しています。
■著作権管理事業
作詞家や作曲家、音楽出版社などの著作権者から委託を受け、音楽著作物の利用許諾や使用料の徴収・分配を行う事業を展開しています。録音権、出版権、貸与権などの支分権や、放送、インタラクティブ配信、カラオケなど複数の利用形態に区分して緻密な管理を行っています。
収益源は、利用者から徴収する著作権使用料の一部を受け取る管理手数料であり、著作権管理に伴う業務代行サービスなども提供しています。事業の運営は同社およびエムシージェイピーが担い、最適な著作権管理の提案から契約サポートまで、一貫したサービスを提供しています。
■デジタルコンテンツディストリビューション(DD)事業
国内外の音楽配信サービス事業者へ、音源や映像などのデジタルコンテンツを販売・流通させる事業を行っています。レコードメーカーや音楽プロダクションなどの権利者から原盤のライセンスを受け、多様な配信種別に対応しながら、効率的な流通ネットワークを通じてユーザーに音楽を届けています。
収益源は、配信先から支払われる使用実績に応じた原盤使用料等の分配収益となります。YouTubeでの動画収益を権利者へ分配する独自サービスも展開しており、運営は主に同社およびレコチョクが担当しています。
■音楽配信事業
インターネットを通じて、個人および法人向けに音楽・映像コンテンツを配信する事業を展開しています。個人向けには単曲販売のダウンロードや定額制のストリーミングサービスを提供し、法人向けには店舗、カラオケボックス、結婚式場などへのBGM・映像配信サービスを手がけています。
収益源は、個人ユーザーからのサブスクリプション利用料や楽曲購入代金、および法人顧客からのサービス利用料です。本事業の運営はレコチョクが行っており、高度なIT技術を活かした安定的なコンテンツ提供を実現しています。
■その他
上記の報告セグメントに含まれない周辺領域として、キャスティング、リユースプロダクト、システム開発・保守運用などの事業を展開しています。音楽ライブの企画立案やアーティストのブッキング、廃棄花を減らすリユース型祝い花の提供、エンタメ業界特有の権利処理に対応したシステム開発などを行っています。
収益源は、イベント等のコーディネート料、リユース花サービスの販売代金、およびシステム開発に伴う業務委託料などです。運営は同社のほか、NexToneシステムズやレコチョクがそれぞれの専門領域を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が持続的な成長を遂げており、特にM&A等の効果もありここ数年で急拡大しています。利益面でも着実な増加傾向にあり、先行投資やのれん償却等のコスト負担を吸収しつつ、高い成長性と安定した収益基盤を構築していることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 75億円 | 88億円 | 134億円 | 194億円 | 208億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 8億円 | 7億円 | 10億円 | 13億円 |
| 利益率(%) | 9.5% | 9.5% | 4.9% | 5.3% | 6.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 6億円 | 5億円 | 7億円 | 8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は着実に伸長し、売上総利益も増加しています。売上総利益率および営業利益率ともに前年から改善を見せており、事業規模の拡大と効率的なコストコントロールが両立していることが分かります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 194億円 | 208億円 |
| 売上総利益 | 48億円 | 53億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.9% | 25.6% |
| 営業利益 | 10億円 | 13億円 |
| 営業利益率(%) | 5.2% | 6.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が14億円(構成比36%)、賞与引当金繰入額が2億円(同6%)、役員報酬が2億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
著作権管理事業は楽曲数増加と国内外の使用料徴収額拡大により堅調です。DD事業はストリーミング市場の成長やアニメ・ゲーム関連の原盤再生増で増収となりました。音楽配信事業は主力サービスの料金改定により安定的に推移し増益に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 著作権管理事業 | 14億円 | 15億円 | 7億円 | 7億円 | 47.9% |
| DD事業 | 94億円 | 101億円 | 10億円 | 10億円 | 10.3% |
| 音楽配信事業 | 76億円 | 77億円 | 13億円 | 16億円 | 20.3% |
| その他 | 10億円 | 15億円 | -4億円 | -3億円 | -22.4% |
| 連結(合計) | 194億円 | 208億円 | 10億円 | 13億円 | 6.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスとなっており、本業の利益で投資と借入返済を賄う「健全型」の状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 22億円 | 22億円 |
| 投資CF | -6億円 | -8億円 |
| 財務CF | 0億円 | 0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「For the Future of Music ~音楽文化・音楽産業の発展のために、私たちは挑戦を続けます~」という企業理念を掲げています。また、「次代を奏でるオンリーワン・エージェント」というビジョンのもと、新しい時代のエージェントを目指し、音楽文化と産業の発展、持続可能でより良い社会の実現に貢献することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、コンプライアンスを企業活動の前提とし、透明性と公平性を備えた組織運営を重視しています。また、多様なバックグラウンドを持つ人材が能力を最大限に発揮できるダイバーシティの促進や、働きがいのある職場づくりに向けた健康増進・就業支援の拡充に取り組んでおり、従業員エンゲージメントを大切にする文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期業績計画において、著作権使用料徴収額シェアを中期的に10%、長期的に50%とする目標を掲げています。また、プライム市場上場を見据え、財務上の具体的な数値目標として以下を設定しています。
* 売上高目標:260億円以上
* 対前期売上高伸長率目標:10%
* 営業利益率目標:9%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は著作権管理事業において、未参入分野である第6区分(カラオケ・社交場等)への進出を目指すとともに、AIなどの先進技術の導入により、精度の高い使用料徴収と分配に取り組んでいます。また、DD事業や音楽配信事業等を相互に活用した総合エージェントとして、グループ全体のDXを推進しながら複合的な事業基盤の拡大を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、次代を奏でるオンリーワン・エージェントとして、音楽文化・産業の発展に貢献できる専門人材の育成を重視しています。著作権やシステム等の高度なスキルを持つ人材の育成に加え、新任管理職研修やデジタルスキル強化など多様な機会を提供しています。また、社員の安全と健康を守り、柔軟で働きがいのある職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 36.8歳 | 6.3年 | 5,670,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 26.2% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 106.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、連結の女性管理職比率(24.4%)、有給休暇消化率(50.2%)、連結の有給休暇消化率(41.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 著作権管理事業の市場構造
音楽著作権管理市場は特定の管理団体が大半のシェアを占める状態が続いています。同社グループは独自の利用促進マネタイズ事業等で差別化を図りシェア拡大を目指していますが、想定通りに市場規模が拡大しない場合や、差別化戦略が奏功しない場合は、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 音楽配信市場への依存
同社が展開する音楽配信市場は、通信会社の方針や配信プラットフォームへの依存度が高くなっています。技術革新による消費行動の変化、国内外の有力企業による競争激化、海外プラットフォームのシェア伸長に伴う為替変動などの要因で市場が想定通り推移しない場合、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 情報セキュリティ
同社グループは事業遂行において、著作権者や音楽配信サービス利用者等の個人情報を取り扱っています。プライバシーマークの取得や情報リテラシー向上などセキュリティ強化に努めていますが、サイバー攻撃等によるシステムダウンや顧客情報の流出が発生した場合には、法的責任やブランドイメージの毀損につながる可能性があります。



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