ペルセウスプロテオミクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ペルセウスプロテオミクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ペルセウスプロテオミクスは、東京証券取引所グロース市場に上場する創薬ベンチャー企業です。東京大学発の技術を基盤とし、がん等の治療用抗体医薬品の研究開発や抗体研究支援、試薬販売を展開しています。直近の業績は研究開発費の先行により赤字が続いていますが、増収を達成し赤字幅は縮小傾向にあります。


※本記事は、株式会社ペルセウスプロテオミクスの有価証券報告書(第26期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ペルセウスプロテオミクスってどんな会社?


ペルセウスプロテオミクスは、東京大学発の最先端の抗体技術を基盤とし、がん等の治療用抗体医薬品の研究開発を主力とする創薬ベンチャー企業です。

(1) 会社概要


同社は2001年2月に、東京大学先端科学技術研究センター・システム生物医学ラボラトリーで開発された技術を基盤として設立されました。2002年に研究用試薬としての抗体販売を開始し、2019年には自社治験となる第I相試験を日本で開始しました。その後、2021年6月に東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)へ株式上場を果たしています。

同社単体の従業員数は35名です。筆頭株主は大和証券で、第2位はSBI証券、第3位は三菱UFJキャピタルと、証券会社やベンチャーキャピタル等の金融・投資関連企業が上位を占めています。

氏名 持株比率
大和証券 2.93%
SBI証券 2.42%
三菱UFJキャピタル 1.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は横川拓哉氏です。社外取締役は5名で、社外取締役比率は62.5%です。

氏名 役職 主な経歴
横川拓哉 代表取締役社長執行役員 富士写真フイルムに入社し、医薬品研究所長等を歴任。富山化学工業等への出向を経て、2018年より現職。
鈴川信一 取締役執行役員管理部長 国際電信電話に入社し、KDDIヨーロッパ副社長等を歴任。2019年に同社監査役に就任し、2020年より現職。
萩原真二 取締役執行役員研究開発部長 サンド薬品に入社し、富士フイルムの医薬品ヘルスケア研究所統括マネージャー等を経て、2023年より現職。


社外取締役は、小南欽一郎(元みずほ証券法人グループディレクター)、花井陳雄(元協和発酵キリン社長)、長清達矢(元KDDI内部統制部長)、堀内正(元第一製薬創薬開拓研究所長)、大野貴史(大野公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社は「医薬品事業」の単一セグメントですが、事業内容は大きく「創薬」と「抗体研究支援・試薬販売」に分けられます。

創薬


同社は、独自のハイブリドーマ法やファージディスプレイ法等を活用し、高機能な抗体を創出しています。取得した抗体に遺伝子工学的な改変や化学的な修飾を施し、がん等の治療用抗体医薬品候補として研究開発を進めています。
収益モデルは、製薬企業へ医薬品候補を導出することによる契約一時金収入や、開発進捗に応じたマイルストーン収入、上市後のロイヤリティ収入です。主に自社での非臨床試験や臨床試験を経て、国内外の製薬企業に導出する事業を同社が運営しています。

抗体研究支援および抗体・試薬販売


抗体作製や遺伝子配列の解析、研究用試薬の創出を通じて培った技術と経験を活かし、大学などのアカデミアや製薬企業向けに抗体に関連した研究支援を実施しています。また、各種疾患のバイオマーカーとなる核内受容体抗体などの研究用試薬を販売しています。
収益モデルは、抗体作製や研究受託の対価として受け取る業務受託料や、研究用試薬キット等の販売代金です。これらは同社が直接運営しており、創薬活動のネットワーク拡大や安定的な収益基盤としての役割も担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は0.7億円から1.4億円へと継続して増加しています。一方で、創薬ベンチャー特有の先行する多額の研究開発費により、毎期数億円規模の経常損失を計上しています。ただし、直近では増収効果や費用のコントロール等により、赤字幅は縮小傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 0.7億円 0.9億円 1.0億円 1.2億円 1.4億円
経常利益 -4.8億円 -6.9億円 -8.8億円 -8.3億円 -6.8億円
利益率(%) -669.6% -732.1% -875.9% -689.4% -501.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -6.0億円 -7.9億円 -11.0億円 -9.0億円 -7.2億円

(2) 損益計算書


同社の収益構造を見ると、売上高は増加傾向にあり、売上総利益率も約86%と高水準を維持しています。しかしながら、先行する研究開発投資等の負担が重く、営業利益は赤字となっています。前期と比較して増収による売上総利益の増加と販管費の減少により、営業赤字は改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1.2億円 1.4億円
売上総利益 1.0億円 1.2億円
売上総利益率(%) 86.4% 85.7%
営業利益 -8.3億円 -7.4億円
営業利益率(%) -686.5% -549.8%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が5.7億円(構成比67%)、支払手数料が0.9億円(同11%)を占めています。売上原価に関連する当期総製造費用では、材料費が構成比56%、労務費が同30%を占めています。

(3) セグメント収益


同社は医薬品事業の単一セグメントですが、サービス別の収益を見ると、抗体研究支援が前期の0.2億円から当期は0.4億円へ大きく伸長しました。これは規模の大きい案件の受注やサービス拡充によるものです。一方、抗体・試薬販売は1.0億円で堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
抗体研究支援 0.2億円 0.4億円
抗体・試薬販売 1.0億円 1.0億円
連結(合計) 1.2億円 1.4億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「勝負型」の傾向を示しています。研究開発先行により営業キャッシュ・フローはマイナスですが、株式の発行等による資金調達を行い、将来の成長に向けた事業投資を継続しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -7.2億円 -6.5億円
投資CF -0.8億円 -0.1億円
財務CF 9.2億円 5.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.1%で、グロース市場の非製造業平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「最先端の抗体技術で世界の医療に貢献する」ことを企業理念として掲げています。東京大学先端科学技術研究センター・システム生物医学ラボラトリーで開発された蛋白質発現技術や抗体スクリーニング技術を駆使し、がんおよびその他の疾患の治療用抗体医薬品の研究開発を進めることで、世界の医療への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、研究開発を事業の中心に据える創薬ベンチャーとして、高い専門性と情熱を持つ人材の育成を重視しています。ジェンダーや国籍を問わず働きやすく、やりがいのある職場づくりに継続的に取り組み、従業員の成長を促すことで企業基盤の強化に努める文化があります。また、大学等のアカデミアや製薬企業との連携によるオープンイノベーションも大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は、導出時の契約一時金やその後の継続的なマイルストーン収入が研究開発の進捗に大きく左右される事業モデルであるため、ROAやROEなどの数値的な目標は設定していません。その代わり、将来の売上につながるパイプラインの開発の進捗、パイプラインの拡充、および売上高の成長を重要な目標と位置づけ、事業活動を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社の中長期的な重要課題は、継続的に新規抗体を創出することです。複数の大学研究機関との継続的な共同研究によって、次期パイプラインの創出に向けた候補標的の評価データを収集しています。また、人工知能などの新技術の導入による創薬探索や、抗体薬物複合体や放射性同位体標識抗体などの新たなサービス提供も推進し、事業の多角化と収益拡大を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材」こそが成長の原動力であるとし、競争優位性を高めるために優秀な人材の確保と定着を重視しています。国内外から優れた実績を持つ研究者を積極的に採用するとともに、社外の研究顧問をアドバイザーとした発表会や学会への参加支援を通じて専門性の向上を図っています。また、多様性を尊重し、性別によらない公正な評価や外国籍人材の採用も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.6歳 7.6年 7,778,263円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 37.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) 84.8%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) -


※同社は男性育児休業取得率等の項目について公表義務の対象ではないため、有報には一部項目の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新薬開発の不確実性と長期化


医薬品の開発は基礎研究から承認取得まで長期間を要し、多額の研究開発投資が必要です。また、他産業と比較して成功確率が極めて低い特性があります。同社のパイプラインにおいても、臨床試験で期待した効果が得られなかったり、予期せぬ副作用が発生したりすることで開発が遅延・中止となるリスクが存在します。

(2) 外部委託先との連携やトラブル


同社は経営の機動性や専門性の観点から、治験薬の製造や非臨床試験、臨床試験のモニタリングなどを外部の専門機関に委託しています。委託先との関係は良好ですが、自然災害や予期せぬ事情により適時なサービスが受けられなくなったり、契約内容が不利に変更されたりした場合、研究開発活動に支障をきたす可能性があります。

(3) 資金確保と資金繰りに関するリスク


創薬ベンチャーである同社は、研究開発費用が先行して発生するため、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナス傾向にあります。事業展開に必要な資金を確保するため、製薬企業との提携等による一時金やマイルストーン収入、株式発行による資金調達を目指していますが、これらが計画通りに進まない場合、事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。