※本記事は、株式会社ペルセウスプロテオミクスの有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ペルセウスプロテオミクスってどんな会社?
東京大学先端科学技術研究センター発の創薬バイオベンチャーです。独自の抗体技術を基盤に、がんやその他疾患の治療用抗体医薬品の研究開発を行っています。
■(1) 会社概要
2001年に設立され、研究用試薬の販売を開始しました。2009年に富士フイルムが親会社となりましたが、2022年に関係を解消しています。2021年に東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ上場しました。
従業員数は32名(単体)です。筆頭株主はベンチャーキャピタル、第2位はネット証券会社、第3位は元親会社の事業会社である富士フイルムです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱UFJキャピタル株式会社 | 1.93% |
| 楽天証券株式会社 | 1.75% |
| 富士フイルム株式会社 | 1.60% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は横川拓哉氏が務めています。社外取締役比率は62.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 横川 拓哉 | 代表取締役社長執行役員 | 富士フイルムに入社し、医薬品研究所所長やヘルスケア事業推進室マネージャー等を歴任。2018年より現職。 |
| 鈴川 信一 | 取締役執行役員管理部長 | 国際電信電話(現KDDI)に入社し、KDDIシンガポール社長やグローバルICT本部長等を歴任。2020年より現職。 |
| 萩原 真二 | 取締役執行役員研究開発部長事業開発部長 | サンド薬品(現ノバルティスファーマ)、グラクソ・スミスクラインを経て富士フイルム入社。2023年より現職。 |
社外取締役は、小南欽一郎(テック&フィンストラテジー代表取締役)、花井陳雄(元協和発酵キリン代表取締役社長)、長清達矢(元KDDI内部統制部長)、堀内正(慶應義塾大学病院訪問教授)、大野貴史(大野公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「医薬品事業」および「その他」事業を展開しています。
(1) 創薬
がん及びその他疾患の治療用抗体医薬品候補の研究開発を行っています。独自の抗体取得技術やスクリーニング技術を活用し、製薬企業へ導出することを目指しています。
収益源は、製薬企業等とのライセンス契約に基づく契約一時金、マイルストーン収入、ロイヤリティ収入です。運営は同社が行っています。
(2) 抗体研究支援
製薬企業やアカデミアに対して、抗体作製や配列解析などの研究支援サービスを提供しています。同社が保有する技術やノウハウを活用し、顧客の研究開発をサポートします。
収益源は、顧客からの受託サービス料です。運営は同社が行っています。
(3) 抗体・試薬販売
核内受容体抗体や、各種疾患のバイオマーカーとなる研究用試薬を販売しています。また、抗体薬物複合体(ADC)研究用の抗体試薬なども取り扱っています。
収益源は、研究機関や企業などの顧客からの製品販売代金です。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にありますが、研究開発への投資が先行しているため、経常損失および当期純損失が続いています。利益率はマイナス圏で推移しており、創薬ベンチャー特有の先行投資フェーズにあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 0.7億円 | 0.7億円 | 0.9億円 | 1.0億円 | 1.2億円 |
| 経常利益 | -4.1億円 | -4.8億円 | -6.9億円 | -8.8億円 | -8.3億円 |
| 利益率(%) | -603.6% | -669.6% | -732.1% | -875.9% | -689.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -4.1億円 | -6.0億円 | -7.9億円 | -11.0億円 | -9.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、売上総利益率も高い水準を維持していますが、販売費及び一般管理費が売上高を大きく上回っているため、営業損失が継続しています。当期は前期と比較して損失幅が縮小しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1.0億円 | 1.2億円 |
| 売上総利益 | 0.9億円 | 1.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 87.3% | 86.4% |
| 営業利益 | -8.9億円 | -8.3億円 |
| 営業利益率(%) | -891.1% | -686.5% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が5.9億円(構成比64%)、支払手数料が1.1億円(同12%)を占めています。売上原価は材料費が0.1億円(構成比63%)を占めています。
■(3) セグメント収益
医薬品事業の単一セグメントですが、サービス別の売上構成を見ると、抗体・試薬販売が主力の収益源となっており、抗体研究支援も増加傾向にあります。創薬分野からの売上計上はありませんでした。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 抗体研究支援 | 0.2億円 | 0.2億円 |
| 抗体・試薬販売 | 0.8億円 | 1.0億円 |
| 創薬 | -億円 | -億円 |
| 連結(合計) | 1.0億円 | 1.2億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -8.3億円 | -7.2億円 |
| 投資CF | -1.5億円 | -0.8億円 |
| 財務CF | 0.6億円 | 9.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はマイナスで市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、東京大学発のベンチャーとして、「最先端の抗体技術で世界の医療に貢献する」ことを企業理念としています。独自の抗体取得技術とシーズ探索技術を駆使して、がん及びその他の疾患の治療用抗体医薬品の研究開発を進めています。
■(2) 企業文化
同社は、東京大学先端科学技術研究センター・システム生物医学ラボラトリー(LSBM)で開発された技術を基盤としており、アカデミアとの連携を重視する文化があります。東京大学発であることを起点にネットワークを広げ、多くの大学や研究機関との共同研究を通じて、最先端の科学技術を医療に応用することを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、導出時の契約一時金やマイルストーン収入が研究開発の進捗に左右されるため、ROAやROEといった数値目標は設定していません。その代わり、将来の売上につながるパイプラインの開発進捗、パイプラインの拡充、および売上高を重要な経営指標として掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、継続的に新規抗体を創出することを重要課題とし、既存パイプラインの開発と拡充、次期パイプラインの探索研究に注力しています。
* 既存パイプライン(PPMX-T002、T003、T004)の着実な開発と導出推進
* 独自の抗体ライブラリやスクリーニング技術を活用した新規シーズの探索
* 抗体研究支援および抗体・試薬販売の拡大による収益基盤の強化
* 抗体薬物複合体(ADC)や放射性同位体標識抗体等の新技術への対応
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、優秀な人材を積極的に採用し、新たな抗体医薬品の開発と拡充を図ることを基本方針としています。ジェンダーや国籍を問わず、働きやすくやりがいのある職場づくりに継続的に取り組み、社員の成長を促すことで企業基盤の強化に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 47.9歳 | 7.3年 | 7,536,012円 |
※平均年間給与は基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(33.3%)、男女の賃金の差異(79.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新薬開発の不確実性
医薬品開発は多額の投資と長期間を要し、成功確率は低いとされています。臨床試験で期待した効果が得られない場合や、承認が得られない場合、研究開発の中止や遅延が生じ、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 競合の激化
抗体医薬品市場は成長が見込まれる一方、欧米のベンチャー企業を含む多数の企業が参入しています。競合他社の開発が先行した場合や、競合新薬が上市された場合、同社の事業優位性が低下し、開発計画や導出活動に影響が出る可能性があります。
■(3) 収益の変動リスク
同社の収益は、製薬企業等への導出に伴う契約一時金やマイルストーン収入に大きく依存しています。研究開発の進捗遅れや導出先の事業方針変更により、これらの収入が得られない場合、期間損益が大きく変動する可能性があります。
■(4) 資金繰りリスク
研究開発型のビジネスモデルであり、営業キャッシュ・フローのマイナスが続いています。研究開発資金を確保するために、提携先からの収入や資本市場からの調達を行っていますが、これらが計画通りに進まない場合、事業展開に影響を及ぼす可能性があります。



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