ファブリカホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファブリカホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファブリカホールディングスは、東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。法人向けSMS配信を中心とするビジネスコミュニケーション事業や、中古車販売業務支援などのオートモーティブプラットフォーム事業を展開しています。直近の業績では全事業で増収を達成し、過去最高の売上高を更新する増収増益となっています。


※本記事は、株式会社ファブリカホールディングスの有価証券報告書(第32期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ファブリカホールディングスってどんな会社?


ファブリカホールディングスは、SMS配信サービスや自動車アフターマーケット向け業務支援システムを提供する企業です。

(1) 会社概要


1992年に自動車鈑金塗装業として創業し、1994年に有限会社中部車検センターを設立しました。2005年にファブリカコミュニケーションズへ商号変更し、中古車販売管理システム等のITサービスを開始しています。2021年に東京証券取引所へ上場し、2024年には持株会社体制へ移行して現在の社名となりました。

現在の同社グループは、連結従業員数230名、単体従業員数7名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は資産管理業務を行うインディゴベースで、第2位は事業会社のLINEヤフー、第3位は創業者の谷口政人氏となっています。

氏名 持株比率
インディゴベース 13.22%
LINEヤフー 12.07%
谷口 政人 7.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは谷口政人氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
谷口 政人 代表取締役社長CEO 1992年にガレージバツを創業。中部車検センター(現同社)設立時に代表取締役社長に就任。メディア4uの代表取締役副社長等を経て、2023年より現職。
近藤 智司 取締役副社長 1992年にガレージバツを創業。1994年に同社取締役に就任し、2013年に取締役副社長となる。執行役員事業統括本部長などを歴任し、2024年より現職。
岩館 徹 取締役CFO 2002年にUFJ信託銀行に入行。ヤフーやカービューの取締役CFO等を経て、2017年に同社社外取締役に就任。経営企画室管掌などを経て、2024年より現職。
渡辺 友太 取締役CTO 2012年に日本マイクロソフトに入社。ネットマイルの取締役CTO等を経て、2023年にSparkle AI代表取締役に就任。同年同社取締役CTOに就任し、2024年より現職。
奥岡 征彦 取締役 1991年に名鉄エージェンシーに入社。2004年に同社に入社し、メディア4uの代表取締役社長などを歴任。2019年に同社取締役に就任し、2024年より現職。


社外取締役は、杉山浩一(元あいおいニッセイ同和損害保険執行役員)、鬼頭耕平(公認会計士・税理士法人代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ビジネスコミュニケーション事業」「オートモーティブプラットフォーム事業」「AI事業」「オートサービス事業」を展開しています。

ビジネスコミュニケーション事業


法人向けSMS配信サービス「メディアSMS」や、AIを活用したIVRサービス「TeleForce」、EC事業者向けCRMシステム「アクションリンク」などを提供しています。企業と顧客の非対面コミュニケーションの自動化や効率化、接点強化を支援する統合プラットフォームとしてサービスを展開しています。

収益は、SMS配信数に応じた従量課金やクラウドサービスの月額利用料などから得ています。事業の運営は主に子会社のメディア4uが行っており、国内全キャリアへの直接接続による高いサービス品質を強みとして、国内法人向けSMS市場で高い配信数シェアを獲得しています。

オートモーティブプラットフォーム事業


中古車販売業務を一元管理できるクラウド型業務支援システム「symphony販売管理」を中心に、自動車整備業者や中古車販売店向けのソリューションを提供しています。また、一般消費者に向けてクルマの魅力や売買情報などを発信する総合自動車メディア「CARPRIME」の運営も行っています。

収益は、業務支援システムの月額利用料や、中古車検索サイトへの広告出稿プラットフォームの提供などから得ています。運営は主に子会社のファブリカコミュニケーションズが行っており、自動車アフターマーケット事業者の業務効率化と事業成長を支援しています。

AI事業


AI、ブロックチェーン、Web3.0などの最先端技術を活用し、同社グループの既存サービスの価値向上や次世代を担う新規事業の創出を推進しています。音声AIエージェントと電話通信をシームレスに繋ぐ通信基盤や、音声AI構築プラットフォームの開発と商用化などに注力しています。

事業の運営は子会社のSparkle AIが行っていましたが、AIサービスの市場投入スピードの加速と収益機会の拡大を図るため、次期より開発と営業機能を統合し、当事業はビジネスコミュニケーション事業へ統合される予定です。それにより新ブランドでの展開拡大を図ります。

オートサービス事業


東海地域において、事故で損害を受けた自動車の修理から、レッカーサービス、修理期間中のレンタカー貸出までをワンストップで提供するリアルサービス事業です。また、地域ユーザー向けに自動車修理、車検、中古車販売を行う店舗の運営も行っています。

損害保険会社や代理店からの依頼によるBtoBtoCモデルの事業や、一般消費者向けサービスの提供により収益を得ています。事業の運営は子会社のファブリカコミュニケーションズが行っており、同社のITサービスのパイロットショップとしても機能し、サービス改善に貢献しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業の順調な拡大がうかがえます。一方で利益面については、成長投資やシステム開発などによる費用負担の影響もあり、利益率は緩やかな低下傾向を示していますが、経常利益の金額自体は安定した水準を維持し、直近では増益に転じています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 58.6億円 76.0億円 81.6億円 92.1億円 105.7億円
経常利益 9.4億円 12.6億円 10.9億円 11.2億円 12.3億円
利益率(%) 16.0% 16.6% 13.3% 12.1% 11.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 7.0億円 5.5億円 7.4億円 3.5億円 8.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を分析すると、増収に伴い売上総利益および営業利益ともに増加を達成しています。利益率については先行投資などの影響でわずかに低下していますが、基礎的な収益力は順調に拡大しており、売上高の伸びが利益成長をしっかりと牽引していることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 92.1億円 105.7億円
売上総利益 42.4億円 47.2億円
売上総利益率(%) 46.1% 44.7%
営業利益 11.1億円 12.2億円
営業利益率(%) 12.0% 11.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11.4億円(構成比32%)、広告宣伝費が4.4億円(同12%)を占めています。また、売上原価は58.4億円となっており、売上高に対する原価率は55%となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、全セグメントにおいて前年を上回る増収を達成しています。特に主力のビジネスコミュニケーション事業は、金融機関を中心とした本人認証需要の拡大によりSMS配信通数が力強く伸長し、全体を牽引しました。また、オートサービス事業やオートモーティブプラットフォーム事業も堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ビジネスコミュニケーション事業 57.2億円 66.9億円
オートモーティブプラットフォーム事業 16.4億円 17.5億円
AI事業 0.0億円 0.1億円
オートサービス事業 18.4億円 21.2億円
連結(合計) 92.1億円 105.7億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 10.6億円 12.5億円
投資CF -2.0億円 -5.4億円
財務CF -5.0億円 -8.8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.6%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も60.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「デジタルの力で新たな価値を創造し、あらゆる組織と人々に貢献する」というミッションを掲げています。世の中にある様々な問題や課題を新しい発想と最新のテクノロジーで解決し、人々の暮らしがより安全に、より豊かになり、未来への希望に満ちた社会を実現することを目指しています。顕在化したニーズだけでなく、未来の姿を思い描き、今までにない斬新なサービスを社会に提供していく方針です。

(2) 企業文化


同社グループは、全ての取締役および社員が共有すべき考え方や行動指針として「VALUE(10の約束)」を定めており、その周知徹底を図っています。また、「変化を好機と捉え、新たな価値を創造し、広く社会に貢献する」というグループミッションの実現に向け、自ら課題を発見し、新たな事業やサービスを提案・推進できる人材を育成する文化が根付いています。多様な人材が能力を発揮できる組織づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、持続的な成長による企業価値の向上を経営目標とし、収益力を高めると共に経営の効率化を図っています。具体的には、「売上高」および「EBITDA(営業利益に減価償却費とのれん償却額を加えた指標)」を重要な経営指標として位置づけ、各経営課題の改善に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、デジタル化の推進が追い風となるSMS配信市場においてシェアトップを維持し、統一ブランド「Aurora X」のもとで総合的なソリューション提供体制を強化します。また、自動車アフターマーケット市場では、自動車整備業者やカー用品取扱店などに幅広く活用される新たなソリューションを開発し、顧客数の拡大を図ります。加えて、AI等の先端技術を活用した革新的なソリューション創出に向け、研究開発投資やM&Aの活用も視野に新規事業を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業戦略と人材戦略を連動させ、多様な人材が能力を最大限に発揮できる組織づくりを推進しています。変化の激しいインターネット業界で競争優位性を維持するため、自発的なスキルアップを支援する制度を整備しています。新卒採用に加え、AI・DX分野など高度な専門性を持つ人材の採用を強化し、女性管理職の登用促進や外国人材の採用を通じて多様性の確保とイノベーションの創出を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.1歳 4.5年 7,800,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) SMS配信市場の変化と競争激化


主力事業である国内法人向けSMS配信市場は急速に拡大していますが、新たな法的規制の導入や、SMSに代わる新技術の登場、携帯電話事業者の方針変更などにより市場が想定通りに拡大しない場合や、新規参入等によって競争が激化した場合、同社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定事業および特定人物への依存


連結売上高において子会社のメディア4uが占める割合が61.7%と高く、同社との取引が縮小した場合は業績に影響が及ぶ可能性があります。また、代表取締役社長CEOの谷口政人氏が経営方針の決定や事業戦略の遂行において極めて重要な役割を果たしており、同氏が業務を継続できなくなった場合も事業運営に影響が生じるリスクがあります。

(3) 検索エンジンへの対応とAI技術の進展


同社が運営する各種Webサイトは検索エンジンからの集客に大きく依存しており、検索エンジンのアルゴリズム変更によって集客力が低下するリスクがあります。また、生成AIを活用した情報検索サービスの普及によりユーザー行動が変化し、従来の流入が減少した場合、同社グループの事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。