ファブリカホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ファブリカホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、SMS配信プラットフォームと自動車販売支援システムを主軸に展開する企業です。直近の業績は、売上高が前期比12.8%増、経常利益が同2.6%増と増収増益を達成しましたが、特別損失の計上により当期純利益は減益となりました。


※本記事は、ファブリカホールディングス の有価証券報告書(第31期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ファブリカホールディングスってどんな会社?


SMS配信サービス「メディアSMS」と自動車販売業務支援システム「symphony」を二本柱とするIT企業です。

(1) 会社概要


1992年に自動車鈑金塗装業として創業し、1994年に有限会社中部車検センターを設立しました。2004年に中古車販売管理システム、2011年に法人向けSMS配信サービスを開始し、事業を拡大。2021年に東京証券取引所JASDAQ(現スタンダード)へ上場しました。2024年には持株会社体制へ移行し、現社名へ商号変更しています。

連結従業員数は212名、単体では8名です。筆頭株主は資本業務提携先であるLINEヤフーで、第2位は代表取締役社長CEOの資産管理会社、第3位は海外の機関投資家等の資産管理を行う銀行等が名を連ねています。

氏名 持株比率
LINEヤフー 16.12%
インディゴベース 12.66%
NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE NON TREATY CLIENTS ACCOUNT 7.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名、計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは谷口 政人氏が務めています。取締役における社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
谷口 政人 代表取締役社長CEO 1992年に個人事業ガレージバツを創業し、1994年に同社設立、社長就任。グループ会社の代表を歴任し、2023年より現職。
近藤 智司 取締役副社長 1992年にガレージバツを共同創業。同社設立時より取締役を務め、事業統括本部長などを経て2024年より現職。
岩館 徹 取締役CFO 三菱UFJ信託銀行、ヤフー、カービュー取締役CFO等を経て、2024年より現職。Sparkle AI取締役CFO等を兼任。
渡辺 友太 取締役CTO 日本マイクロソフト、ネットマイル取締役CTO等を経て、2024年より現職。Sparkle AI代表取締役CEO等を兼任。
奥岡 征彦 取締役 名鉄エージェンシーを経て2004年に入社。メディア4u代表取締役社長等を歴任し、2019年より現職。
渡邊 暁 取締役 税理士事務所、豊通テックを経て2019年に入社。管理本部長、経理・財務担当を経て2024年より現職。


社外取締役は、杉山 浩一(元あいおいニッセイ同和損害保険執行役員)、鬼頭 耕平(鬼頭耕平公認会計士事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「SMSソリューショングループ」「U-CARソリューショングループ」「インターネットサービスグループ」「オートサービスグループ」および「その他」事業を展開しています。

(1) SMSソリューショングループ


法人向けSMS送信サービス「メディアSMS」を提供しています。全キャリアと直接接続を行うことで高い品質を実現しており、本人認証や重要連絡、督促、販促など多岐にわたる用途で、企業や自治体に利用されています。

収益は、クライアントからのSMS送信数に応じた従量課金が主となります。運営は主に子会社のメディア4uが行っています。

(2) U-CARソリューショングループ


中古車販売業務支援クラウドサービス「symphony」を提供しています。在庫管理、広告出稿、顧客管理などの機能をワンストップで提供し、中古車販売店の業務効率化や収益最大化を支援しています。

収益は、システムを利用する中古車販売店からの月額利用料などです。運営は主にファブリカコミュニケーションズが行っています。

(3) インターネットサービスグループ


自動車WEBマガジンの運営や中古車一括査定サービス、EC事業者向けCRMプラットフォーム「アクションリンク」などを提供しています。また、グループ内の他セグメントに対するWEB集客支援も担っています。

収益は、広告掲載料やサービス利用料などです。運営は主にファブリカコミュニケーションズが行っています。

(4) オートサービスグループ


「鈑金塗装fabrica」「fabricaレンタカー」ブランドでの自動車修理・レンタカーサービスや、自動車整備、車両販売を行っています。損害保険会社等と連携し、事故対応から修理までをワンストップで提供します。

収益は、修理代金、レンタカー利用料、車検整備費、車両販売代金などです。運営は主にファブリカコミュニケーションズが行っています。

(5) その他


AIやブロックチェーンに関する事業を展開しています。AIモデルの活用や次世代インターネットであるWeb3における分散型アプリケーションの開発に取り組んでいます。

収益は、関連サービスの提供によるものですが、現在は開発・投資段階の側面もあります。運営は主にSparkle AIが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は過去5期間で一貫して増加しており、順調な成長トレンドを描いています。経常利益も10億円規模を維持し、安定した収益力を示していますが、直近期では利益率がやや低下傾向にあります。当期純利益については、直近期において特別損失の計上などにより減少しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 48億円 59億円 76億円 82億円 92億円
経常利益 7億円 9億円 13億円 11億円 11億円
利益率(%) 13.6% 16.0% 16.6% 13.3% 12.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 6億円 8億円 7億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約10億円増加し、売上総利益も順調に伸長しています。一方で、販売費及び一般管理費も増加したため、営業利益の伸び率は売上高の伸び率に比べて緩やかになっています。売上総利益率は40%台後半を維持しており、高い収益性を保っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 82億円 92億円
売上総利益 40億円 42億円
売上総利益率(%) 49.0% 46.1%
営業利益 11億円 11億円
営業利益率(%) 13.1% 12.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が10億円(構成比33%)、広告宣伝費が4億円(同13%)を占めています。売上原価は50億円で、売上高に対する構成比は54%です。

(3) セグメント収益


SMSソリューショングループが売上の過半を占め、利益面でも全体を牽引しています。U-CARソリューショングループとオートサービスグループも一定の売上規模を持っていますが、利益率はSMS事業に比べて低めです。インターネットサービスグループは増収増益で黒字化しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
SMSソリューショングループ 48億円 56億円 13億円 15億円 27.8%
U-CARソリューショングループ 14億円 14億円 4億円 3億円 19.1%
インターネットサービスグループ 3億円 4億円 -0.2億円 1億円 22.1%
オートサービスグループ 17億円 18億円 1億円 0.2億円 1.0%
その他 0.0億円 0.0億円 -0.3億円 -0.5億円 -1102.6%
調整額 -0.6億円 -0.3億円 -6億円 -8億円 -
連結(合計) 82億円 92億円 11億円 11億円 12.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で得た資金の一部を投資や借入返済に充てており、財務基盤の健全性を維持しつつ事業運営を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6億円 11億円
投資CF -5億円 -2億円
財務CF -2億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均(9.4%)とほぼ同等である一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.6%で市場平均(48.5%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「デジタルの力で新たな価値を創造し、あらゆる組織と人々に貢献する」というミッションを掲げています。社会の課題を新しい発想とテクノロジーで解決し、人々の暮らしを安全かつ豊かにし、未来への希望に満ちた社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「VALUE(10の約束)」を定めており、グループの全ての取締役および社員が共有すべき考え方や行動指針としています。これを遵守し、コンプライアンス経営の徹底を図ることで、健全な企業活動と持続的な成長を実現する組織風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、持続的な成長による企業価値の向上を経営目標としています。具体的には、以下の指標を重要な経営指標として位置づけ、収益力の強化と経営の効率化に取り組んでいます。

* 売上高
* 営業利益率

(4) 成長戦略と重点施策


主力事業の優位性確立と新規領域への拡大を軸とした成長戦略を推進しています。SMS配信市場でのシェア維持、自動車アフターマーケットでのソリューション拡充に加え、AI技術の活用やM&Aによる新規事業創出に注力しています。

* SMS配信サービス「メディアSMS」の機能拡充とシェア拡大
* 自動車整備業務支援システムやBtoBサービス等の開発による事業領域拡大
* AI等の先端技術を活用した業務効率化と新サービス開発
* 開発力強化のためのエンジニア採用とM&Aの活用

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長のために、優秀な人材の確保と育成を重視しています。競争力ある報酬水準による採用強化に加え、研修の充実やキャリアパスの多様化により、社員一人ひとりが能力を発揮できる環境を整備しています。また、AI活用環境の提供と教育を通じ、新技術に対応できる人材育成にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.4歳 5.2年 7,844,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内法人向けSMS配信市場の拡大について


主力事業であるSMS配信市場は拡大傾向にありますが、新たな法的規制の導入や技術革新、通信キャリアの方針変更等により市場環境が変化する可能性があります。市場拡大が想定通りに進まない場合や競争が激化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 株式会社メディア4uについて


連結子会社のメディア4uは連結売上高の約6割を占め、利益貢献度も高い状態です。クライアントの事業戦略の変化等により契約変更や取引縮小が生じた場合、また通信キャリアとの接続契約に変更や支障が生じた場合には、グループ全体の業績に大きな影響を与える可能性があります。

(3) システム障害について


インターネットを活用したサービスを提供しているため、システムの安定稼働とセキュリティ確保が重要です。自然災害やアクセスの集中、サイバー攻撃等によりシステム障害や情報漏洩が発生した場合、損害賠償責任の発生や社会的信用の失墜により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 検索エンジンへの対応について


同社グループのWEBサイトは検索エンジンからの集客に依存している部分があります。検索エンジンのアルゴリズム変更等により検索順位が下落し、SEO施策が機能しなくなった場合、集客力が低下し、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。