紀文食品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

紀文食品 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の食品メーカー。「紀文」ブランドのスリミ製品(かまぼこ・ちくわ等)や惣菜の製造・販売を主力とします。第87期は、国内での価格改定効果や物流事業の好調により増収となりましたが、原材料価格やエネルギーコストの上昇等の影響で減益となり、増収減益で着地しました。


※本記事は、株式会社紀文食品 の有価証券報告書(第87期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 紀文食品ってどんな会社?


水産練り製品の最大手企業。「紀文」ブランドで、ちくわ、かまぼこ、はんぺん等の製造・販売を展開します。

(1) 会社概要


1938年に個人創業した山形屋米店を起源とし、1947年にスリミ製品の製造を開始しました。1977年には豆乳を発売し飲料事業へ参入(後にキッコーマンへ譲渡)するなど多角化を推進。2021年に東証一部へ上場し、2024年にはマルハニチロと資本業務提携契約を締結しました。

連結従業員数は2,545人、単体では992人です。筆頭株主は公益財団法人紀文・保芦記念財団で、第2位は資本業務提携先である大手水産会社のマルハニチロ、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
公益財団法人紀文・保芦記念財団 15.92%
マルハニチロ 9.90%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.11%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は堤裕氏で、社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
堤 裕 代表取締役社長 1980年入社。商品開発部長、総務本部長、常務取締役マーケティング室長などを経て、2023年6月より現職。
弓削 渉 取締役副社長兼 副社長執行役員国際事業室長 1980年入社。東京工場長、開発室長、供給本部長などを経て、2022年4月より現職。
落合 正行 取締役会長取締役会議長 1982年入社。紀文本店社長、当社取締役副会長などを経て、2023年6月より現職。
國松 浩 取締役兼 常務執行役員セールス・カテゴリー推進室長 1984年上信越紀文入社。広域第一支社長、営業本部長などを経て、2025年4月より現職。
上野 勝 取締役兼 常務執行役員グループ統括室長兼 財務部長 1986年紀文ベルサンテフーズ入社。当社経営統括室長などを経て、2025年4月より現職。
飯嶋 雄次 取締役兼 常務執行役員人的資本推進室長 1988年入社。広域事業部長、紀文西日本社長などを経て、2025年4月より現職。


社外取締役は、稲川文雄(元みずほ銀行部長)、河田格(マルハニチロ常務執行役員)、松本榮一(公認会計士)、飯野浩一(公認会計士)、金子浩子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内食品事業」「海外食品事業」「食品関連事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 国内食品事業


日本国内において、「紀文」ブランドを中心としたスリミ製品(かまぼこ、ちくわ等)、惣菜、水産珍味等の食品を製造・販売しています。また、スリミ製品の原材料となるすり身等の水産品、水産加工品、農畜産品等の輸出入と国内仕入販売も行っています。

収益は、小売店や卸売業者への製品販売および原材料の販売から得ています。運営は、同社および株式会社紀文西日本、関連会社の海洋食品株式会社が行っています。なお、同社は2025年4月に株式会社紀文西日本を吸収合併しました。

(2) 海外食品事業


海外市場において、カニカマを中心としたスリミ製品等の食品を製造・販売しています。また、農畜水産品の輸出入および仕入販売も展開しており、北中米、アジア、オセアニア、欧州などに製品を供給しています。

収益は、海外現地での製品販売および輸出入取引から得ています。運営は、タイのKIBUN (THAILAND) CO.,LTD.や米国のKIBUN FOODS (U.S.A.),INC.などの海外現地法人が担っています。

(3) 食品関連事業


チルド食品の物流を核としたロジスティクス事業を展開しています。荷主から物流を一貫して請け負う3PLビジネスや、複数の顧客と車両を共有する共同配送事業を行っているほか、情報サービスや食品衛生検査分析の受託なども手掛けています。

収益は、物流業務受託料やシステム利用料、検査分析料などから得ています。運営は主に株式会社紀文フレッシュシステムが行っており、その他、株式会社紀文ビジネスクリエイトなどが関連サービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は1,000億円前後で推移しており、直近では増加傾向にあります。経常利益は原材料価格の変動等により上下動が見られますが、黒字を維持しています。当期利益については変動幅が大きく、直近では減益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,000億円 989億円 1,055億円 1,065億円 1,089億円
経常利益 33億円 34億円 17億円 44億円 42億円
利益率(%) 3.3% 3.4% 1.7% 4.1% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 18億円 8億円 -2億円 18億円 12億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上原価や販管費の増加により、営業利益および営業利益率は低下しました。売上総利益率は若干低下し、利益率の改善が課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,065億円 1,089億円
売上総利益 245億円 251億円
売上総利益率(%) 23.0% 23.1%
営業利益 47億円 45億円
営業利益率(%) 4.4% 4.1%


販売費及び一般管理費のうち、運送費及び保管費が77億円(構成比37.6%)、給料及び手当が46億円(同22.5%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内食品事業は価格競争の激化や気温の影響を受けつつも増収となりましたが、コスト増により減益となりました。食品関連事業は物流需要の取り込み等により増収増益と好調です。海外食品事業は売上高は微減となりましたが、利益面では増益を確保しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内食品事業 761億円 770億円 29億円 25億円 3.2%
海外食品事業 118億円 118億円 8億円 10億円 8.1%
食品関連事業 186億円 201億円 10億円 12億円 6.1%
調整額 -136億円 -140億円 0.2億円 -1億円 -
連結(合計) 1,065億円 1,089億円 47億円 45億円 4.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

紀文食品は、営業活動で得た資金を基盤に、将来の成長に向けた投資と財務基盤の強化を進めています。

当期は、事業活動を通じて安定的に資金を生み出しました。一方で、将来の事業拡大を見据え、設備投資などに資金を投じています。また、財務活動では、借入金の返済や新たな資金調達を行い、財務の健全性を維持しています。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 55億円 39億円
投資CF -9億円 -20億円
財務CF -26億円 -20億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは経営理念として「革新と挑戦と夢」を掲げています。これは、夢に向かってイノベーションを起こし挑戦し続けるという創業精神を表したものです。また、社是として「感謝 即 実行」を掲げ、自然の恵みやステークホルダーへの感謝を行動で返すことを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「ひらめき(常識にとらわれない挑戦)」「わざあり(独自技術での価値創造)」「つながり(連携による価値創造)」「まっすぐ(誠実な行動)」という4つのバリューを大切にしています。「疑わしいものは仕入れず、製造せず、販売せず」という「ものづくり理念」を行動原則としています。

(3) 経営計画・目標


2024年度から「中期経営計画2026」を推進しており、最終年度となる2026年度の連結数値目標として以下の指標を掲げています。
* 売上高:1,203億円
* 営業利益:60億円
* ROE:15%以上
* 自己資本比率:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として、国内ではカニカマ・竹輪カテゴリーの強化や健康志向に対応した商品開発、業務用チャネルの拡大を推進します。海外では、スリミ製品を中心とした日本食をコア領域とし、北米・中国・東南アジアでの販売拡大と供給能力の増強を図ります。また、生産性向上やコスト削減による資本効率の改善に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「企業は、“人”だけ」の理念に基づき、多様な人財が活躍し能力を発揮できる環境づくりを目指しています。「ありたい人財像」として能動的な挑戦や自律的キャリア育成を掲げ、社員のWell-being実現に向けた職場環境整備や処遇改善、ダイバーシティ推進に取り組む方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.2歳 16.5年 5,183,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.0%
男性育児休業取得率 57.1%
男女賃金差異(全労働者) 73.3%
男女賃金差異(正規雇用) 74.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 80.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、健康診断受診率(99.4%)、入社3年以内離職率(4.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料の調達に関するリスク


主力製品の主原料である水産資源(スケソウダラ等)の減少や漁獲規制、需要変化による供給不足、相場変動による調達コスト増のリスクがあります。また、原油高騰等による包装資材価格の上昇も業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、複数ルートからの調達やグループでの調達機能統合などの対策を講じています。

(2) 食品の安全性に関するリスク


製品に万が一問題が発生した場合、健康被害や社会的信用の低下、回収費用や損害賠償費用の発生などにより業績に影響を与える可能性があります。同社はHACCPに則った衛生管理や食品安全マネジメントシステムの認証取得、専門部署による検査体制の強化により、安全性の確保に努めています。

(3) 気候変動に関するリスク


気候変動による気温上昇や気象災害の激甚化は、サプライチェーンの寸断や主力であるおでん・鍋物商材の需要減少(暖冬)を引き起こす可能性があります。これに対し、TCFD提言に基づく情報開示や、通年需要が見込まれる商品の開発、海外事業の伸長などの対策を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。