**※本記事は、株式会社十六フィナンシャルグループの有価証券報告書(第5期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月11日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。**
1. 十六フィナンシャルグループってどんな会社?
同社は、十六銀行を中心に銀行業務やリース業務など、地域に根ざした多様な金融サービスを展開しています。
■(1) 会社概要
1877年に第十六国立銀行として設立され、1896年に十六銀行として新たに発足しました。1972年に東京証券取引所第一部へ上場し、2012年に岐阜銀行を吸収合併しています。2021年には単独株式移転により十六フィナンシャルグループを設立して上場し、十六銀行を完全子会社とする持株会社体制へ移行しました。
現在の従業員数は連結で2,322名、単体で176名です。筆頭株主および第2位株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には事業会社であるフジパングループ本社が名を連ねています。強固な顧客基盤を背景に、地域社会の持続的な成長と豊かな未来の創造に貢献しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.52% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.52% |
| フジパングループ本社 | 2.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長である池田直樹氏が経営を牽引し、社外取締役比率は40.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 池田直樹 | 取締役社長(代表取締役) | 1980年十六銀行入行。高山支店長、名古屋営業部長、取締役副頭取などを歴任。2021年10月より十六フィナンシャルグループ取締役社長および十六銀行取締役。 |
| 村瀬幸雄 | 取締役会長(代表取締役) | 1979年十六銀行入行。人事部長、常務取締役などを経て2013年取締役頭取に就任。2021年10月より十六フィナンシャルグループ取締役会長、十六銀行取締役会長。 |
| 石黒明秀 | 取締役副社長 | 1987年十六銀行入行。執行役員経営管理部長、取締役執行役員経営企画部長などを歴任。2021年10月より十六フィナンシャルグループ取締役副社長、十六銀行取締役頭取。 |
| 白木幸泰 | 取締役専務執行役員グループ戦略部長 | 1985年十六銀行入行。常務執行役員愛知営業本部長などを経て2021年十六リース社長。2026年4月より十六フィナンシャルグループ取締役専務執行役員グループ戦略部長。 |
| 塩崎智子 | 取締役執行役員グループリスク管理部長兼グループサステナビリティ推進部長 | 1995年十六銀行入行。2023年に執行役員サステナビリティ統括室長に就任。2026年4月より十六フィナンシャルグループ取締役執行役員グループリスク管理部長兼サステナビリティ推進部長。 |
| 山下明人 | 取締役(監査等委員) | 1988年十六銀行入行。十六ビジネスサービス社長、十六銀行常勤監査役を経て、2024年6月より十六フィナンシャルグループの監査等委員である取締役。 |
社外取締役は、伊藤聡子(事業創造大学院大学客員教授)、上田泰史(明治安田生命保険執行役専務)、石原真二(石原総合法律事務所所長)、柘植里恵(柘植公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」および「リース業」ならびに「その他」の事業を展開しています。
■銀行業
中核となる十六銀行を中心に、個人および法人顧客向けに預金、貸出、内国・外国為替、商品有価証券売買、有価証券投資などの銀行業務全般を提供しています。あわせて、信用保証業務や事務受託業務などを通じて、地域の金融パートナーとして多様なニーズに応える体制を整えています。
収益源は、顧客からの貸出金利息や各種為替手数料、証券関連サービス等の手数料です。事業の運営は主に十六銀行が行い、十六信用保証や十六ビジネスサービスなどの子会社が業務の効率化と専門的なサポートを担っています。
■リース業
地域の中小企業などの法人や個人事業主を主な対象として、設備投資に必要な機械や車両、情報関連機器などのリース業務全般を提供しています。企業の初期投資負担を軽減し、多様な資金調達ニーズや設備の陳腐化リスクへの対応を支援しています。
収益源は、顧客から毎月支払われるリース料や割賦手数料などです。運営は十六リースが主体となって行っており、地域社会の設備投資意欲にきめ細かく応えながら、グループ全体の収益基盤の多様化に貢献しています。
■その他
銀行業とリース業の枠組みを超えた幅広い金融ニーズに対応するため、調査・研究業務、金融商品取引業務、クレジットカード業務、決済・デジタルソリューション業務、経営承継・M&Aアドバイザリー業務、地域活性化に関するコンサルティング業務などを展開しています。
収益源は、クレジットカードの加盟店・会員手数料、証券仲介やM&A成立に伴うアドバイザリー手数料など多岐にわたります。運営は、十六カード、十六TT証券、十六総合研究所、NOBUNAGAサクセションなどの専門子会社がそれぞれの領域を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の単体ベースの経常利益と当期利益の推移を見ると、金融持株会社として安定的に利益を拡大していることが分かります。特に直近の2026年3月期においては、各利益指標が110億円規模へと大きくジャンプアップしており、グループ全体の収益力の向上が親会社である同社の業績に強く寄与しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 経常利益 | 28億円 | 61億円 | 55億円 | 71億円 | 114億円 |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 28億円 | 60億円 | 53億円 | 70億円 | 113億円 |
■(2) 損益計算書
収益性の推移を見ると、単体の営業利益は前期の72億円から当期は117億円へと大きく伸長しています。利益率の具体的な算出はできませんが、利益水準が順調に拡大しており、持株会社としての効率的な経営と、子会社からの安定した配当等による収益基盤の強さが確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 72億円 | 117億円 |
販売費及び一般管理費の主要項目として、給料・手当が9億円、社会保険料等が2億円を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの経常収益の推移を見ると、主力である銀行業が前期の999億円から当期は1,334億円へと大幅に増加し、全体の成長を力強く牽引しています。一方、リース業は282億円から272億円へと微減となりましたが、その他事業も安定した収益水準を維持しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 銀行業 | 999億円 | 1,334億円 |
| リース業 | 282億円 | 272億円 |
| その他 | 83億円 | 84億円 |
| 連結(合計) | 1,363億円 | 1,691億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は金融関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に借用金の減少によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | -1,903億円 |
| 投資CF | 1,078億円 | 2,250億円 |
| 財務CF | -89億円 | -102億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も6.2%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「お客さま・地域の成長と豊かさの実現」を自らの使命(ミッション)として掲げています。また、「ともに地域の未来を創造し、ともに持続的な成長を遂げる総合金融グループ」を目指すべき姿とし、地域社会の課題解決に取り組むことで、持続的な成長に貢献することを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
役職員の活動のよりどころとして、「信頼と倫理観(Trust & Integrity)」「創造と革新(Creation & Innovation)」「多様性と受容(Diversity & Inclusion)」の3つを大切な価値観(バリュー)として定めています。これらを全役職員が共有し、既成概念にとらわれない新たな発想で変革を起こす文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
「長期ビジョン『16Vision-10』」のもと、その前半5か年を計画期間とする「第2次中期経営計画」を推進しています。金利政策の影響などを踏まえ、2027年度の計数目標を上方修正し、以下の達成を目指しています。
・連結当期純利益:280億円以上
・連結ROE:6%以上
・連結修正OHR:50%台
・連結自己資本比率:11%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
長期ビジョンの実現に向けて、「トランスフォーメーション戦略」「ヒューマンイノベーション戦略」「マーケットインアプローチ戦略」「地域プロデュース戦略」の4つの基本戦略を推進しています。具体的には、チーフオフィサー制度の導入による意思決定の迅速化、「じゅうろくアプリ」を起点としたデジタルとリアルの連携強化などに注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「ヒューマンイノベーション戦略」のもと、多様性と受容を重視し、役職員一人ひとりが自律的に活躍できる組織環境の整備を進めています。お客さまや地域の課題解決に伴走できる人材を育成するため、特定の専門性を有する重要ポジション人材の育成と登用や、社内公募制度の拡充、継続的な自己啓発・リスキリング支援に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.9歳 | 21.9年 | 10,569,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.3% |
| 男性育児休業取得率 | 105.5% |
| 男女の賃金の差異(全労働者) | 53.0% |
| 男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 74.1% |
| 男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | 60.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメント総合スコア(66.4)、従業員持株会加入率(86.9%)、IT・DX人材数(274名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 銀行業務固有の信用・市場リスク
貸出先の業績悪化や不動産市況の低迷に伴う不良債権の増加、特定業種への与信集中などにより、貸倒引当金が想定を上回る可能性があります。また、金利や為替、株価の変動により、保有する有価証券ポートフォリオの価値が減少し、同社グループの財務状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) 外部環境の変化に伴うリスク
自然災害の激甚化や深刻な感染症の流行により、営業店舗やシステムの損壊、業務の中断が生じる可能性があります。また、地域経済の低迷、人口減少、地政学的リスクの高まりによる取引先の業況悪化なども、収益基盤の縮小に直結する重要なリスクとして認識されています。
■(3) 業務運営およびシステムに関するリスク
基幹システムへの依存度が高いなか、サイバー攻撃や外部委託先の障害によるシステムダウン、情報漏洩が発生した場合、顧客からの信用失墜や損害賠償に発展する恐れがあります。また、金融犯罪の巧妙化への対応コスト増加や、人材確保に関わるリスクも業務運営上の課題となっています。



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