※本記事は、株式会社十六フィナンシャルグループの有価証券報告書(第4期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 十六フィナンシャルグループってどんな会社?
岐阜県・愛知県を主要基盤とする地方銀行グループです。銀行業務を中核に、リースや証券などの総合金融サービスを提供しています。
■(1) 会社概要
同グループの中核である十六銀行は1877年に第十六国立銀行として設立され、140年超の歴史を持ちます。2021年10月、十六銀行の単独株式移転により持株会社である同社が設立され、上場しました。2022年4月には東京証券取引所プライム市場へ移行し、2023年4月には長期ビジョンおよび第2次中期経営計画を策定するなど、グループ体制の強化と事業領域の拡大を進めています。
同社の連結従業員数は2,374名、単体では175名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口)で、第2位は同じく資産管理を行う株式会社日本カストディ銀行(信託口)です。第3位は同社と取引関係のある製パン大手のフジパングループ本社株式会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.36% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 5.54% |
| フジパングループ本社 | 2.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.0%です。代表取締役社長は池田直樹氏です。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 村瀬幸雄 | 取締役会長(代表取締役) | 1979年十六銀行入行。人事部長、常務、専務等を経て2013年頭取就任。2021年より十六銀行会長兼頭取および同社取締役会長。2021年10月より現職。 |
| 池田直樹 | 取締役社長(代表取締役) | 1980年十六銀行入行。取締役名古屋営業部長、常務、取締役副頭取等を経て、2021年10月より現職。十六銀行取締役を兼務。 |
| 石黒明秀 | 取締役副社長 | 1987年十六銀行入行。執行役員経営企画部長、取締役常務執行役員等を経て、2021年10月より現職。十六銀行取締役頭取を兼務。 |
| 白木幸泰 | 取締役専務執行役員グループ営業統括部長 | 1985年十六銀行入行。取締役常務執行役員営業支援本部長等を経て、2021年10月より現職。十六リース社長、十六信用保証社長を兼務。 |
| 尾藤喜昭 | 取締役常務執行役員グループリスク統括部長 | 1988年十六銀行入行。同社執行役員グループ経営監査部長を経て、2022年6月より現職。十六銀行取締役常務執行役員を兼務。 |
| 塩崎智子 | 取締役執行役員サステナビリティ統括室長 | 1995年十六銀行入行。同社執行役員サステナビリティ統括室長、十六銀行執行役員等を経て、2024年6月より現職。 |
| 山下明人 | 取締役(監査等委員) | 1988年十六銀行入行。執行役員岡崎支店長、十六ビジネスサービス社長、十六銀行常勤監査役を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、伊藤聡子(報道・情報番組キャスター、大学客員教授)、上田泰史(明治安田生命保険相互会社専務執行役)、石原真二(石原総合法律事務所所長)、柘植里恵(柘植公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 銀行業
十六銀行の本店ほか159か店において、預金、貸出、有価証券投資、為替、デリバティブ取引などを営み、地域の金融パートナーとして多様なサービスを提供しています。また、連結子会社において事務受託や信用保証業務を行い、銀行業務を補完しています。
主な収益源は、貸出金利息や有価証券利息配当金などの資金運用収益、および為替や各種手数料などの役務取引等収益です。運営は、中核子会社である十六銀行のほか、十六ビジネスサービス、十六信用保証などの連結子会社が行っています。
■(2) リース業
地域のお客さまの設備投資ニーズに応えるため、各種物件のリース業務を行っています。銀行業務と連携し、多様化する金融ニーズに対応したサービスを提供しています。
収益源は、リース契約に基づくリース料収入などです。運営は、連結子会社である十六リースが行っています。
■(3) その他
銀行・リース以外の金融関連サービスとして、調査・研究、証券、クレジットカード、デジタルソリューション、M&Aアドバイザリー、投資事業組合の運営、地域活性化コンサルティングなどを展開しています。
収益源は、証券業務の手数料、クレジットカードの取扱手数料、コンサルティング料などです。運営は、十六総合研究所、十六TT証券、十六カード、十六電算デジタルサービス、NOBUNAGAサクセション、カンダまちおこしなどの各連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
当期は増収増益となりました。経常収益は、主に資金運用収益の増加などにより、前連結会計年度比で増加しました。一方、経常費用は、資金調達費用の増加などにより増加しました。過去からの趨勢としては、経常収益、経常利益ともに増加傾向で推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|
| 経常収益(億円) | 11,735 | 11,269 | 12,884 | 13,630 |
| 経常利益(億円) | 2,680 | 2,726 | 2,791 | 3,124 |
| 当期純利益(億円) | 1,719 | 1,863 | 1,932 | 2,084 |
■(2) 損益計算書
当期は、経常収益が前期比で増加した一方で、経常費用も増加しました。これにより、経常利益は前期比で増加しました。当期純利益も前期比で増加しました。経常収益の増加は主に資金運用収益の増加によるものであり、経常費用の増加は主に資金調達費用の増加によるものです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 経常収益 | 12,884 | 13,630 |
| 経常費用 | 10,093 | 10,506 |
| 経常利益 | 2,791 | 3,124 |
| 当期純利益 | 1,932 | 2,084 |
■(3) 役務取引等収益の内訳
同行の非金利収益である役務取引等収益は、当期において前期比で増加しました。最も大きい区分はリース業務であり、次いで証券関連業務となっています。
| 区分 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 役務取引等収益 合計 | 40 | 4 |
| 証券関連業務 | 31 | 16 |
| 信託報酬 | 0 | 4 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
十六フィナンシャルグループは、借用金の増加などにより営業活動によるキャッシュ・フローは収入となりました。有価証券の売却などにより投資活動によるキャッシュ・フローは大幅な収入を計上し、配当金の支払いなどにより財務活動によるキャッシュ・フローは支出となりました。これらの結果、現金及び現金同等物は期末残高が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 1,568 | 3 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | 707 | 1,078 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △7 | △9 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「私たちの使命」として「お客さま・地域の成長と豊かさの実現」を掲げています。また、「私たちのめざす姿」として「ともに地域の未来を創造し、ともに持続的な成長を遂げる総合金融グループ」を目指し、グループの総合力を発揮してお客さまや地域の課題解決に取り組むことで、地域の持続的な成長に貢献していくとしています。
■(2) 企業文化
同グループは、「私たちの価値観(value)」として、「信頼と倫理観(Trust & Integrity)」、「創造と革新(Creation & Innovation)」、「多様性と受容(Diversity & Inclusion)」を掲げています。これらを全役職員の活動のよりどころとし、具体的な行動指針として実践することで、地域社会からの信頼に応え、新たな価値を創造する企業風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2023年4月から長期ビジョン「16Vision-10」(10年間)と、その前半5か年を期間とする「第2次中期経営計画」をスタートさせています。2027年度を最終年度とする計数目標として以下を掲げています。
* 連結当期純利益:200億円以上
* 連結ROE:5%以上
* 連結修正OHR:50%台
* 連結自己資本比率:11%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
第2次中期経営計画では、「トランスフォーメーション戦略」「ヒューマンイノベーション戦略」「マーケットインアプローチ戦略」「地域プロデュース戦略」の4つを基本戦略としています。10年後のありたい姿からバックキャストで描いたこれらの戦略を全社的に推進し、異業種連携や新会社設立による事業領域の拡大を強みとして、地域総合金融サービスグループへの進化を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、長期ビジョン実現のため、能力を最大限発揮し戦略にチャレンジできる人材の育成に努めています。人材育成を中心に、モチベーション向上やスキルアップに資する取り組みを実行し、役職員が自律的に活躍できる環境を整備しています。また、IT・DX人材や専門人材の育成、新人事制度による評価、キャリアチャレンジ制度などにより、チャレンジングな組織風土の醸成を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 45.0歳 | 22.0年 | 9,311,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.2% |
| 男性育児休業取得率 | 104.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 48.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 56.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、IT・DX人材の育成(238名)、炭素会計アドバイザー資格3級合格者数(417名)、男性の育児休業取得率(7日以上)(95.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 金利ある世界での競争激化
日本銀行の政策変更により金利のある世界へ回帰しつつある中、貸出金・預金の獲得競争が激化する可能性があります。また、預金の調達コスト上昇により、貸出における利鞘が改善しないリスクや、流動性リスクが増大する恐れがあります。これらが進行した場合、同グループの収益性や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 気候変動に関するリスク
気候変動に伴う自然災害や異常気象の増加は、取引先の業績悪化や担保価値の毀損を通じて貸出資産の価値を低下させる可能性があります。また、脱炭素社会への移行に伴う規制強化や市場の変化が取引先に影響を与え、与信関係費用が増加する恐れがあります。同グループの対応が遅れた場合、企業価値の低下を招く可能性があります。
■(3) 人的・コンプライアンスリスク
地域総合金融サービス業として相応しい知識とコンプライアンス意識を持った人材が確保できない場合や、人材の過度な流出が生じた場合、業務遂行に支障をきたす恐れがあります。また、役職員による不適切な行為が発生した場合、信用失墜や損害賠償等により、同グループの財政状態および経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。



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