一家ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

一家ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の飲食・ブライダル企業。「屋台屋博多劇場」等の飲食事業を主軸に、ブライダル施設運営やレジャー事業も展開しています。2025年3月期は飲食・ブライダル共に需要が回復し、売上高は増収となりましたが、原材料費高騰や減損損失等の計上により、経常損益および当期純損益は減益(赤字)となりました。


※本記事は、株式会社一家ホールディングスの有価証券報告書(第4期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 一家ホールディングスってどんな会社?


千葉県に本社を置き、「屋台屋博多劇場」などの飲食店やブライダル施設「The Place of Tokyo」等を運営する持株会社です。

(1) 会社概要


1997年に飲食事業を行う有限会社ロイスカンパニーとして設立され、2000年に株式会社一家ダイニングプロジェクトへ商号変更しました。2010年に「屋台屋博多劇場」1号店を出店し、2012年にはブライダル事業へ参入。2017年に東証マザーズへ上場しました。2021年に持株会社である同社を設立し、2024年にはレジャー事業を担う子会社を設立しています。

2025年3月31日時点の従業員数は連結379名、単体26名です。筆頭株主は、資産管理会社のTKコーポレーション(22.42%)で、第2位は代表取締役社長の武長太郎氏(13.72%)であり、創業社長が安定的な支配権を維持しています。第3位にはサントリー株式会社が名を連ねています。

氏名 持株比率
TKコーポレーション 22.42%
武長太郎 13.72%
サントリー 1.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は武長太郎氏です。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
武長太郎 代表取締役社長 1997年ロイスカンパニー(現一家ダイニングプロジェクト)設立、代表取締役社長就任。2021年より現職。
秋山淳 取締役副社長営業統括 2000年一家ダイニングプロジェクト入社。同社取締役総料理長、専務取締役営業統括を経て2021年より現職。
野瀬健 取締役人財育成部長 2000年一家ダイニングプロジェクト入社。同社執行役員人財育成部長、取締役人財育成部長を経て2021年より現職。
髙橋広宜 取締役管理部長 2001年一家ダイニングプロジェクト入社。同社執行役員総務部長、常勤監査役、取締役管理部長を経て2021年より現職。
岩田明 取締役経営企画室長 2001年一家ダイニングプロジェクト入社。同社常務取締役、常勤監査役、取締役経営企画室長を経て2021年より現職。
清水将登 取締役総務部長 2000年一家ダイニングプロジェクト入社。同社取締役営業統括部長、監査役、同社執行役員総務部長を経て2022年より現職。
渡邉桂一 取締役営業開発部長 2003年一家ダイニングプロジェクト入社。同社執行役員店舗開発部長、同社執行役員店舗開発部長を経て2022年より現職。


社外取締役は、赤塚元気(株式会社DREAM ON代表取締役)、五宝滋夫(元麒麟麦酒)、由木竜太(弁護士)、神野美穗(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「飲食事業」、「ブライダル事業」および「レジャー事業」を展開しています。

(1) 飲食事業


「屋台屋博多劇場」「こだわりもん一家」「大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん」などの居酒屋業態を中心に、直営飲食店の企画・運営を行っています。関東圏の一都三県を主要エリアとし、多様な業態を展開しています。

顧客からの飲食代金が主な収益源です。運営は主に子会社の株式会社一家ダイニングプロジェクトが行っており、株式会社Egoも一部店舗(「肉のウヱキ」業態など)の運営を行っています。

(2) ブライダル事業


東京タワーの目の前に位置するブライダル施設「The Place of Tokyo」を運営し、結婚式の企画・施行およびパーティーの企画・施行を行っています。また、レストランウエディングや付帯するレストラン運営も手掛けています。

挙式・披露宴の施行に伴う飲食代や施設利用料、およびレストラン利用料が主な収益源です。運営は子会社の株式会社一家ダイニングプロジェクトが行っています。

(3) レジャー事業


バーベキュー場やビアガーデンの店舗運営を行っています。また、2025年11月開業予定の茨城県植物園および茨城県民の森のリニューアル事業であるレジャー施設「THE BOTANICAL RESORT『林音』」の開業準備も進めています。

施設利用料や飲食代金が主な収益源です。運営は、2024年4月に設立された子会社の株式会社一家レジャーサービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近3期間の業績を見ると、売上高は順調に拡大傾向にあり、最新期では100億円を突破しました。一方、利益面では黒字と赤字を行き来しており、最新期では経常損益が赤字に転じています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 84億円 92億円 101億円
経常利益 1.3億円 2.2億円 -1.0億円
利益率(%) 1.6% 2.4% -1.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.1億円 0.0億円 0.1億円

(2) 損益計算書


直近2期間の傾向を見ると、売上高は増加し、売上総利益率も改善していますが、営業損益は赤字に転じました。これは事業拡大に伴うコスト増や一時的な損失計上が影響していると考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 92億円 101億円
売上総利益 61億円 67億円
売上総利益率(%) 66.4% 66.2%
営業利益 2.3億円 -0.7億円
営業利益率(%) 2.5% -0.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が27億円(構成比40%)、地代家賃が11億円(同17%)、減価償却費が3億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


飲食事業は増収基調を維持しており、グループ売上の大半を占めています。ブライダル事業も回復傾向にあり増収となりました。新たに立ち上げられたレジャー事業も売上寄与を開始しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
飲食事業 76億円 81億円
ブライダル事業 16億円 19億円
レジャー事業 - 0.0億円
連結(合計) 92億円 101億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持していますが、将来の成長に向けた投資活動を積極的に行っており、その資金を借入金等の財務活動で調達している「積極型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5.4億円 1.8億円
投資CF -4.2億円 -6.7億円
財務CF 2.7億円 3.6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-18.2%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は15.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客様、関わる全ての人と喜びと感動を分かち合う」「誇りの持てる家族のような会社であり続ける」「夢を持ち、限りなき挑戦をしていく」という経営理念を掲げています。この理念のもと、おもてなしを通じて関わる人々と喜びや感動を共有できる企業を目指しています。

(2) 企業文化


「あらゆる人の幸せに関わる日本一のおもてなし集団」をグループミッションとして掲げています。お客様を「自分の大切な人(家族)」と考え、「お客様がして欲しいことをして差し上げる」という姿勢で接客を行うなど、スタッフによる主体的な「おもてなし」を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長と安定した経営資源の確保を目指し、経常利益額の最大化を図る方針です。具体的な経営指標としては、売上高、経常利益、経常利益率を重要視しています。また、既存店の状況把握のため、売上高、客数、客単価の前年同月比も客観的な指標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後は飲食事業の主軸である「屋台屋博多劇場」や「大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん」を中心に関東圏での新規出店を進めるとともに、顧客ニーズに応じた新業態開発や既存店の業態変更、おもてなしに関わる新規事業開発に注力します。また、サービス力の向上や商品力・調理技術の向上、リピート率の向上にも取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「働きながら学べる会社」として、採用後のフォローアップや教育カリキュラムの充実に注力しています。新卒・中途採用に加え、アルバイトからの社員登用やリファラル採用(社員紹介)も強化しています。階層別研修やサービス研修を実施し、経営理念の浸透とサービス力の向上を図るとともに、従業員満足度の向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.7歳 8.3年 4,161,000円


※平均年間給与は、基準外賃金(除、通勤手当)を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 40.0%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 66.7%
男女賃金差異(正規) 78.1%
男女賃金差異(非正規) -%


※男性育児休業取得率については、当事業年度中に、男性労働者の配偶者が出産をしておりませんので、実績を記載しておりません。臨時雇用者の労働者の男女の賃金の差異については、当事業年度において、臨時雇用者に比較対象者(男性)がいないことから記載しておりません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェック受診率(92.6%)、障がい者雇用人数(7名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外食市場環境の変化


個人消費の選別化や中食市場の成長、原材料費・物流費の高騰などにより市場環境は厳しさを増しています。景況感の悪化や競争激化が進んだ場合、業績に影響を与える可能性があります。

(2) 競合他社の影響


飲食事業における新規出店後の交通アクセス変化や同業他社の参入、ブライダル事業におけるホテルや専門式場のゲストハウスウエディングへの進出など、競争環境が激化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 原材料の調達リスク


食材等の仕入について、疾病、天候不順、自然災害等により必要量の確保が困難になるリスクや、市場価格・為替変動により仕入価格が高騰し売上原価が上昇するリスクがあります。これらが発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(4) 人材の確保・育成


事業拡大には正社員やパート・アルバイトの確保が不可欠ですが、労働人口の減少等により計画通りに人材を確保・育成できない場合や、人件費が高騰し続けた場合には、出店計画の遅れや利益圧迫により、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。