一家ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

一家ホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

一家ホールディングスは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、飲食、ブライダル、レジャー事業を展開しています。飲食事業で「屋台屋博多劇場」等の直営店を運営するほか、東京タワー前のブライダル施設等も手掛けます。直近の業績は増収となり、経常利益も前期の赤字から黒字へと回復して増益傾向にあります。


※本記事は、株式会社一家ホールディングスの有価証券報告書(第5期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 一家ホールディングスってどんな会社?


飲食、ブライダルおよびレジャー事業を通じ、おもてなしによる感動を提供する企業です。

(1) 会社概要


1997年10月にロイスカンパニーを設立し、1号店を千葉県にオープンしました。2000年に一家ダイニングプロジェクトへ組織変更および商号変更し、2012年にはブライダル事業に参入しました。2017年に東証マザーズに上場し、2021年に単独株式移転により持株会社である同社が設立されました。

同社グループの従業員数は連結で419名、単体で29名体制です。筆頭株主は創業者である武長太郎氏の資産管理業務を行うTKコーポレーションで、第2位は武長太郎氏本人となっており、第3位には事業会社であるサントリーが名を連ねています。

氏名 持株比率
TKコーポレーション 21.78%
武長 太郎 11.28%
サントリー 1.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は武長太郎氏が務めており、社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
武長 太郎 代表取締役社長 1997年ロイスカンパニー設立、代表取締役社長。2021年同社設立に伴い代表取締役社長。一家レジャーサービス社長等を経て現職。
秋山 淳 取締役副社長営業統括 2000年一家ダイニングプロジェクト入社。同社取締役総料理長、専務取締役等を経て2018年同社取締役副社長営業統括。2021年より現職。
野瀬 健 取締役人財育成部長 2000年一家ダイニングプロジェクト入社。同社執行役員人財育成部長を経て、2014年同社取締役人財育成部長。2021年より現職。
髙橋 広宜 取締役管理部長 2001年一家ダイニングプロジェクト入社。同社常勤監査役、執行役員等を経て、2016年同社取締役管理部長。2021年より現職。
岩田 明 取締役経営企画室長 2001年一家ダイニングプロジェクト入社。同社常務取締役、常勤監査役等を経て、2016年同社取締役経営企画室長。2021年より現職。
清水 将登 取締役総務部長 2000年一家ダイニングプロジェクト入社。同社取締役営業統括部長、監査役等を経て、2022年同社取締役総務部長。ボタラシアンリゾート監査役を経て現職。
渡邉 桂一 取締役営業開発部長 2003年一家ダイニングプロジェクト入社。同社執行役員店舗開発部長等を経て、2022年より現職。


社外取締役は、赤塚元気氏(DREAM ON COMPANY代表取締役等)、五宝滋夫氏(シライ電子工業社外取締役監査等委員等)、由木竜太氏(フォーサイト総合法律事務所パートナー弁護士)、神野美穗氏(神野公認会計士事務所所長等)です。

2. 事業内容


同社グループは、「飲食事業」、「ブライダル事業」、「レジャー事業」を展開しています。

(1) 飲食事業


「屋台屋 博多劇場」「大衆ジンギスカン酒場ラムちゃん」「こだわりもん一家」「にのや」「韓国屋台ハンサム」などの飲食店を直営店として企画・運営しています。スタッフによる「おもてなし」を特徴とし、幅広い年齢層の顧客へ向けて多様なシーンに対応した和食や韓国料理などの飲食サービスを提供しています。

顧客に対する飲食サービスの提供による代金を収益源としています。店舗での通常営業に加え、スマートフォンアプリを使った会員システムの導入によるリピーターの育成にも注力しています。運営は子会社の一家ダイニングプロジェクトおよびEgoが主に行っています。

(2) ブライダル事業


東京タワーの目の前に位置するブライダル施設「The Place of Tokyo」を運営し、結婚式の企画・施行およびその他パーティーの企画・施行などを提供しています。新郎新婦や、幅広い年齢層のゲストの多様なニーズに応えるオリジナルのジャパニーズキュイジーヌを用いたウェディングサービスを主な事業としています。

顧客への婚礼および宴席サービスの提供が完了した時点での代金を主な収益源としています。挙式後も利用可能な併設レストランでのディナー招待など、継続的な関係を築くリピーター戦略も推進しています。運営は子会社の一家ダイニングプロジェクトが行っています。

(3) レジャー事業


バーベキュー場およびビアガーデン業態の店舗運営のほか、茨城県の植物園および県民の森をリニューアルした体験型植物園「THE BOTANICAL RESORT『林音』」を運営しています。「泊まる」「癒される」「食べる」「遊ぶ」といった複数の体験要素を掛け合わせた日本初のアウトドア型レジャーサービスを提供しています。

体験価値を求めるファミリー層などの顧客へ向けたレジャーサービスの提供に伴う利用料を主な収益源としています。季節性や地域性を取り入れた商品企画により、新規顧客やリピーターの確保に努めています。運営は子会社の一家レジャーサービスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、経済活動の正常化や新規出店、業態変更などの取り組みにより、売上高は順調な成長傾向にあります。経常利益は一時的な赤字を計上する期があったものの、当期は黒字へと転換し、本業の収益性が着実に改善していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 44億円 84億円 92億円 101億円 115億円
経常利益 -8億円 1億円 2億円 -1億円 2億円
利益率(%) -17.0% 1.6% 2.4% -1.0% 1.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 0.2億円 0.1億円 0.0億円 0.1億円 0.2億円

(2) 損益計算書


売上高の順調な拡大に伴い、売上総利益も増加しています。人材への投資や新規事業に係る経費が増加したものの、利益率の高い既存店舗の好調により、営業利益は前期の赤字から当期は黒字へと大きく改善し、稼ぐ力が回復していることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 101億円 115億円
売上総利益 67億円 78億円
売上総利益率(%) 66.2% 67.5%
営業利益 -1億円 3億円
営業利益率(%) -0.7% 2.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が30億円(構成比40%)、地代家賃が12億円(同16%)を占めています。売上原価(38億円)は売上高の33%を占めており、飲食事業等における食材の仕入れ等が主な要因となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高を見ると、主力である飲食事業がドミナント出店や既存店の客単価上昇により着実な増収を牽引しています。ブライダル事業も婚礼の受注や宴席の好調により売上を伸ばしたほか、バーベキュー施設などを展開するレジャー事業の売上も大きく拡大しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
飲食事業 81億円 89億円
ブライダル事業 19億円 22億円
レジャー事業 0.0億円 5億円
調整額 0.0億円 0.0億円
連結(合計) 101億円 115億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動によるキャッシュ・フローはマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローはプラスとなっており、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う「積極型」の状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2億円 6億円
投資CF -7億円 -6億円
財務CF 4億円 4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は15.1%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客様、関わる全ての人と喜びと感動を分かち合う」、「誇りの持てる家族のような会社であり続ける」、「夢を持ち、限りなき挑戦をしていく」という経営理念を掲げています。この理念のもと、「あらゆる人の幸せに関わる日本一のおもてなし集団」をグループのミッションとし、日本を代表するリーディングカンパニーを目指しています。

(2) 企業文化


「人」による「おもてなし」こそが事業経営のコアコンピタンスであるという価値観を重視しています。お客様を自分の大切な家族と考え、「お客様がして欲しいことをして差し上げる」という行動指針に基づき、サービスマニュアルにとらわれない自発的なおもてなしを表現できるよう、全社的な理念浸透と教育に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


持続的な成長を実現し、安定した経営資源を確保するため、経常利益額の最大化を目標に掲げています。また、客観的な指標として、業態の陳腐化や店舗の状況を把握するため、オープン後18カ月以上経過した既存店の売上高、客数および客単価の前年同月比を重要視し、経営効率の向上に努めています。

(4) 成長戦略と重点施策


関東圏の一都三県を中心に主力業態の新規出店を着実に進めるとともに、健康志向などの顧客ニーズに応じた新業態の開発や既存店の業態変更、新規事業への挑戦を進めています。加えて、人材育成による店舗運営力の強化、大量仕入れを活かした商品力の向上、独自の会員システムを通じた顧客のファンづくりに継続的に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


おもてなしの源泉となる人的資本への投資を最重要課題と位置付けています。「価値観採用」を重視し、新卒やキャリア採用のほか、アルバイトからの社員登用やリファラル(紹介)採用を推進しています。働きながら学べる環境として階層別の研修制度を充実させ、ライフイベントに合わせた復職支援など、社員がやりがいを感じる環境整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.8歳 8.7年 4,612,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全従業員) 64.4%
男女賃金差異(正規雇用) 74.8%
男女賃金差異(非正規雇用) -%

※当事業年度において、臨時雇用者に比較対象者(男性)がいないことから非正規雇用の記載はありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、Ikka Universal College参加率(71.1%)、役員面談実施率(93.6%)、ストレスチェック受診率(93.5%)、障がい者雇用人数(15名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外食・ブライダル市場の環境変化

原材料費やエネルギーコストの高騰、人手不足による人件費上昇に加え、婚姻組数の減少やニーズの多様化など、市場環境が想定以上に急激に変化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合他社の影響

同業他社等からの新規参入による新たな競合の発生や、ホテル・専門式場などのゲストハウスウェディングへの進出など、他業種を含めた他社との競争が激化した場合、集客や収益に悪影響を与える可能性があります。

(3) 原材料の安定調達と仕入価格の高騰

天候不順や自然災害等により必要量の食材確保が困難になる状況が発生した場合や、市場相場や為替変動による仕入価格の高騰により売上原価が上昇した場合、収益性を圧迫するリスクがあります。

(4) 食品衛生と安全管理

店舗や施設での飲食提供において、万が一食中毒などの衛生事故や商品表示の誤りが発生した場合、営業の禁止や営業許可の取り消しを命じられるほか、社会的信用の失墜を招き、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。