マナック・ケミカル・パートナーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マナック・ケミカル・パートナーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

マナック・ケミカル・パートナーズは、東京証券取引所スタンダード市場に上場する化学メーカーです。ファインケミカル、難燃剤、ヘルスサポート事業を展開し、臭素化合物を中核とした少量多品種生産を特徴としています。当期は医薬分野での大型案件の立ち上がりや販売単価見直し等により、増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社マナック・ケミカル・パートナーズの有価証券報告書(第5期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. マナック・ケミカル・パートナーズってどんな会社?


各種化学製品の製造および販売を主たる業務とし、臭素化合物を中核とした少量多品種生産を強みとする企業です。

(1) 会社概要


同社は、2021年10月にマナックの単独株式移転により持株会社として設立され、東京証券取引所市場第二部に上場しました。その後、2022年4月の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。2026年3月には、臭素化合物の受託事業に強みを持つ錦海化学の全株式を取得し、連結子会社化しています。

同社グループは、連結従業員数246名、単体従業員数4名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は事業会社の東ソーで、第2位は一般財団法人の松永財団、第3位は創業家の役員である杉之原祥二氏です。

氏名 持株比率
東ソー 19.67%
一般財団法人松永財団 16.40%
杉之原祥二 5.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長兼社長は杉之原祥二氏が務めており、社外取締役比率は55.6%となっています。

氏名 役職 主な経歴
杉之原祥二 代表取締役会長兼社長 1973年マナック入社。常務、専務等を経て2006年代表取締役社長に就任。2021年10月より同社会長、2022年6月より現職。
花﨑保彰 取締役 1986年東ソー入社。2010年マナック入社後、研究所長や事業部長等を歴任。2025年6月より現職。
吉田誠吾 取締役 2009年マナック入社。企画戦略部長などを経て、2022年10月に同社へ転籍し経営企画室長等を歴任。2025年6月より現職。
杉之原誠 取締役(監査等委員) 1982年マナック入社。総務・人事部長や購買部長等を経て、2021年10月より同社取締役(常勤監査等委員)として現職。


社外取締役は、井本英昭(東ソー上席執行役員)、黒松敦(ミテリ・アソシエイツ代表取締役)、生越由美(東京理科大学専門職大学院嘱託教授)、内海康仁(光和物産代表取締役会長兼社長)、森信茂樹(ジャパン・タックス・インスティテュート代表理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ファインケミカル事業」「難燃剤事業」「ヘルスサポート事業」を展開しています。

(1) ファインケミカル事業


多岐かつ特殊用途向けの機能性材料を提供しており、医薬、ハイテク分野、半導体、電子材料、情報関連分野における中間体として使用されています。顧客の量産立ち上げを技術と生産の両面からサポートしています。

同事業は、マナック、錦海化学、およびマナック(上海)貿易有限公司が運営しています。主に顧客企業へ化学製品および中間体を販売することで収益を得ています。

(2) 難燃剤事業


電気製品や自動車部品等の産業分野において使用されるプラスチック用難燃剤や、関連製品を提供しています。また、サステナブルな社会実現に向け、ウッドプラスチックコンポジット(WPC)などの機能性材料開発にも取り組んでいます。

同事業は、マナックおよびマナック(上海)貿易有限公司が運営しています。難燃剤製品を製造・販売し、電子材料部材や家電製品等のメーカーから製品代金を受け取ることで収益を上げています。

(3) ヘルスサポート事業


人工透析薬剤用原料、抗菌剤原料、および試薬として使用される製品を提供しています。社会的需要の高い製品について、顧客のニーズに応じた安定的かつ継続的な供給体制を構築しています。

同事業は、マナックが運営しています。主に製薬メーカー等に対して透析用原料や抗菌剤原料を販売し、その対価を得ることで収益を確保しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は90億円台から110億円台の間で推移しています。経常利益は一時的に赤字を計上する時期がありましたが、直近期は医薬分野での大型案件の順調な立ち上がりや販売単価の見直しが奏功し、大幅な黒字回復を達成しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 107億円 119億円 97億円 93億円 110億円
経常利益 9億円 12億円 -0.1億円 -3億円 8億円
利益率(%) 8.2% 9.9% -0.1% -3.0% 7.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 7億円 5億円 1億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で大きく増加し、110億円となりました。売上総利益も前期から大幅に改善して25億円となり、売上総利益率も大きく向上しています。これにより、営業利益は黒字転換を果たし、収益性の回復が明確に表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 93億円 110億円
売上総利益 15億円 25億円
売上総利益率(%) 15.8% 22.8%
営業利益 -3億円 7億円
営業利益率(%) -3.7% 6.7%


販売費及び一般管理費(18億円)のうち、事務員給与が4億円(構成比22%)、手数料が2億円(同13%)、運搬費が2億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収増益を達成しました。特にファインケミカル事業では、医薬分野の大型案件が寄与し大幅な増益となっています。難燃剤事業やヘルスサポート事業でも、需要の底堅い推移や販売単価の適正化により、収益性が改善しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ファインケミカル事業 39億円 50億円 6億円 12億円 24.1%
難燃剤事業 40億円 45億円 0.7億円 5億円 11.5%
ヘルスサポート事業 14億円 14億円 0.5億円 1億円 7.6%
連結(合計) 93億円 110億円 -3億円 7億円 6.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 1億円 21億円
投資CF -5億円 -17億円
財務CF -1億円 7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、化学を基盤とする技術と製品の創出を通じて、医薬・先端技術分野にとどまらず、社会全体に価値を提供し、持続可能な社会の実現に貢献していくことを経営方針として掲げています。多様なパートナーとの協業を積極的に進めることで、多様な知見や技術を融合させ、より多くの人々にとって“ワクワクする未来”の創出を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、スペシャリティーケミカル(機能性化学品)を活用することで人々の生活に貢献し、ステークホルダーとの共存共栄を目指しています。今までの経営基盤を強化しながら迅速かつ果断に挑戦し続ける行動様式を重んじ、従業員一人ひとりがプロフェッショナル意識を持ち、主体的に判断し行動する「自律性」を組織の文化として重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、投下資本の運用効率と収益を重視しており、自己資本利益率(ROE)を経営管理の重要指標として位置付けています。2024年に公表したグループ中期計画において、以下の数値目標を掲げています。

・自己資本利益率(ROE):中期的目標として8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、臭素化・ヨウ素化技術を強みに、環境対応やグローバル・スタンダードへの適合を進め、高機能・高付加価値製品の提案を通じて新技術開発と新分野開拓に取り組んでいます。グループ中期計画では、2024-2025年度を事業再構築期間、2026-2027年度を事業拡大期間と位置付け、企業価値向上に向けた成長投資を実行していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、従業員一人ひとりの自主的な挑戦と専門性が成長の源泉であると考え、「自律性」を人材戦略の柱として個々の能力を発揮できる組織構築に努めています。持株会社では中途採用による即戦力獲得を、事業会社では新卒採用も組み合わせ、計画的なリーダー育成や多能工化を重点的に進めることで人材基盤の強化を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.2歳 9.2年 5,088,892円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規労働者) -
男女賃金差異(非正規労働者) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障害者法定雇用率(3.12%)、年次有給休暇取得率(72.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内外の経済情勢・需要変動による影響


同社グループの製品は半導体、医薬、電子材料など多岐にわたる分野の中間材料として使用されています。そのため、関連市場の需要変動や最終製品の販売状況の影響を受けやすく、顧客の開発遅延等が生じた場合には、同社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料の調達と市況変動


原材料は多数の供給業者から調達しており、中東地域の不安定化や海外での政策変更等により調達に支障が生じるリスクがあります。また、主要原材料である臭素などの価格変動や、エネルギー価格・為替相場の急激な変動によるコスト上昇が、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 新製品・新技術の事業化の遅延


技術進歩が著しい市場で事業を展開しており、継続的な成長には新製品の開発や新規事業の育成が不可欠です。半導体市場の変化への対応遅れや、顧客の量産立ち上げサポートの遅延などにより、新製品を計画通りに事業化できない場合、業績と財務状況に影響を与えるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。