※本記事は、株式会社マナック・ケミカル・パートナーズ の有価証券報告書(第4期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. マナック・ケミカル・パートナーズってどんな会社?
臭素化・ヨウ素化技術を強みとする化学メーカーです。多品種少量生産を特徴とし、電子材料や医薬品原料などを提供しています。
■(1) 会社概要
同社は2021年10月、マナックの単独株式移転により持株会社として設立され、東証二部に上場しました。2022年4月の市場区分見直しに伴い東証スタンダード市場へ移行しています。2023年6月には神奈川県藤沢市に湘南イノベーション研究所を開設し、研究開発体制を強化しました。2024年3月には連結子会社であった八幸通商の全株式を譲渡しています。
同社グループの連結従業員数は211名、提出会社(単体)は8名です。筆頭株主は同社製品の主要な原材料供給元でもある化学メーカーの東ソーで、第2位は一般財団法人松永財団、第3位は同社代表取締役会長兼社長の杉之原祥二氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 東ソー | 19.84% |
| 一般財団法人松永財団 | 16.54% |
| 杉之原 祥二 | 5.27% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長兼社長は杉之原祥二氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉之原 祥二 | 代表取締役会長兼社長 | 1973年マナック入社。同社取締役、常務、専務を経て2006年社長就任。2021年よりマナック・ケミカル・パートナーズ代表取締役会長、2022年より現職。 |
| 笠井 正信 | 専務取締役 | 1989年東ソー入社。バイオサイエンス事業部長等を歴任。2022年同社専務取締役就任。現在はグループ中期経営計画やR&D事業化等を管掌し、湘南イノベーション研究所長を兼務。 |
| 千種 琢也 | 取締役 | 1980年三菱商事入社。三菱製紙販売執行役員社長室長などを経てマナック入社。同社常務等を歴任し、2022年よりマナック代表取締役社長執行役員。現在はグループ海外事業化を管掌。 |
| 杉之原 誠 | 取締役(監査等委員) | 1982年マナック入社。経営管理本部総務・人事部長、購買部長、管理部長、監査室長などを歴任。2019年より同社取締役(監査等委員)。2021年より現職。 |
社外取締役は、井本英昭(東ソー執行役員)、黒松敦(ミテリ・アソシエイツ代表取締役)、生越由美(東京理科大学専門職大学院嘱託教授)、内海康仁(光和物産代表取締役会長兼社長)、森信茂樹(元財務省財務総合政策研究所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ファインケミカル事業」「難燃剤事業」「ヘルスサポート事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■(1) ファインケミカル事業
医薬やハイテク分野で使用される機能性材料、半導体分野、電子材料および情報関連分野の中間体を提供しています。多岐にわたる特殊用途向けの製品が多く、顧客の研究開発段階から関与することもあります。主な顧客は化学メーカーや製薬会社などです。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に連結子会社のマナックおよびマナック(上海)貿易有限公司が行っています。
■(2) 難燃剤事業
電気製品や自動車部品などのプラスチックに使用される難燃剤を提供しています。臭素化合物を中心とした製品群を展開し、高い難燃性能と樹脂への適合性を持つ製品を供給しています。
収益は、難燃剤製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に連結子会社のマナックおよびマナック(上海)貿易有限公司が行っています。
■(3) ヘルスサポート事業
人工透析薬剤用原料、抗菌剤原料および試薬などを提供しています。人々の健康や生活の質を支える製品群であり、高い品質管理が求められる分野です。
収益は、製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に連結子会社のマナックが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2023年3月期は売上高119億円、経常利益12億円と好調でしたが、直近2期は減収傾向にあります。特に2025年3月期は、難燃剤事業の需要低迷が響き売上高は93億円に減少しました。利益面では、2024年3月期以降、経常損失を計上しており、2025年3月期は減損損失の計上により当期純損失895百万円と赤字幅が拡大しています。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 119億円 | 97億円 | 93億円 |
| 経常利益 | 12億円 | -0.1億円 | -2.8億円 |
| 利益率(%) | 9.9% | -0.1% | -3.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 1億円 | -9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しており、売上総利益率も18.8%から15.8%へと低下しました。これは主に難燃剤事業における販売数量減少やコスト増が影響しています。営業損益は前期の赤字からさらに悪化し、3.4億円の損失となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 97億円 | 93億円 |
| 売上総利益 | 18億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.8% | 15.8% |
| 営業利益 | -1.1億円 | -3.4億円 |
| 営業利益率(%) | -1.1% | -3.7% |
販売費及び一般管理費のうち、事務員給与が4.4億円(構成比24%)、手数料が1.9億円(同10%)を占めています。売上原価においては、原材料費や製造経費などが主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
ファインケミカル事業は半導体分野の回復等により微増収を確保しましたが、利益は横ばいです。難燃剤事業は中国内需の低迷等により大幅な減収減益となりました。ヘルスサポート事業は売上高が横ばいで推移しましたが、利益は減少しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ファインケミカル事業 | 39億円 | 39億円 | 6億円 | 6億円 | 15.3% |
| 難燃剤事業 | 44億円 | 40億円 | 4億円 | 1億円 | 1.8% |
| ヘルスサポート事業 | 14億円 | 14億円 | 0.6億円 | 0.5億円 | 3.9% |
| 連結(合計) | 97億円 | 93億円 | -1.1億円 | -3.4億円 | -3.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
マナック・ケミカル・パートナーズのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の回収により資金を獲得しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得により資金を使用しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いにより資金を使用しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.2億円 | 1.1億円 |
| 投資CF | -2.3億円 | -4.9億円 |
| 財務CF | -0.8億円 | -1.3億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、化学を基盤とする技術と製品の創出を通じて、医薬・先端技術分野のみならず社会全体に価値を提供し、持続可能な社会の実現に貢献することを経営方針としています。また、多様なパートナーとの協業を推進し、多様な知見や技術を融合させることで、より多くの人々にとって「ワクワクする未来」を創出することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、スペシャリティーケミカル(機能性化学品)の製造と活用を通じて人々の生活に貢献し、ステークホルダーとの共存共栄を目指しています。今までの経営基盤を強化しながら、迅速かつ果断に挑戦し続ける姿勢を重視しており、全従業員がプロフェッショナル意識を持ち、主体的に判断し行動する集団となることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、投下資本の運用効率と収益を重視し、自己資本利益率(ROE)を経営管理の重要指標と位置づけています。2024年6月に公表したグループ中期計画においては、中期的な目標値としてROE8%以上を設定しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
臭素化・ヨウ素化技術を強みに、環境対応やグローバル・スタンダードへの適合を進め、高機能・高付加価値製品の提案による新技術開発と新分野開拓に取り組みます。中期計画では2024-2025年度を事業再構築期間、2026-2027年度を事業拡大期間とし、早期の業績回復と成長投資を行う方針です。
* ファインケミカル事業:半導体関連製品の受託拡大、高機能製品の創出。
* 難燃剤事業:販売価格改定、製造工程最適化、難燃不燃材料等の早期収益化。
* ヘルスサポート事業:サプライチェーン維持による安定的かつ持続的な供給。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、スペシャリティーケミカルを基盤に社会に貢献するため、人材の採用、教育、心身の健康への取り組みを積極的に行っています。特に製造部門における次世代リーダー人材の不足を課題とし、若手社員のローテーションによる成長機会の提供や、高い専門性を持つ人材のスポット採用を実施しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.2歳 | 8.4年 | 6,893,386円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※マナックは女性活躍推進法の規定による公表義務の対象ではないため、賃金差異の記載を省略しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.94%)、離職率(10.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内外の経済情勢・需要変動
同社グループの製品は、半導体、医薬、電気製品、電子材料など多岐にわたる分野の中間材料として使用されています。そのため、最終製品の販売状況の影響を受けやすく、特に中国市場の消費低迷や電子材料部材の需要減少などが業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の市況変動
使用する原料の多くは石油化学原料に関連しており、ナフサ価格や為替相場、国際情勢等の影響を受け価格が変動する可能性があります。特に難燃剤事業の主要原材料である臭素の価格上昇は、業績と財務状況に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 法的規制等
事業遂行にあたり各種法令等の規制を遵守する必要があり、特に環境問題への意識の高まりから規制が強化される傾向にあります。これらへの対応により、事業活動の制限や追加の設備投資、費用が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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