※本記事は、株式会社STG の有価証券報告書(第44期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. STGってどんな会社?
同社は、マグネシウム等の軽量化金属部品の一貫製造加工に強みを持つグローバル製造メーカーです。
■(1) 会社概要
1975年に創業し、1982年に三輝ブラストとして設立されました。1998年にマグネシウム製品の生産を開始し、2015年にTOSEIを合併して現在のSTGへ商号変更しています。2024年にグロース市場へ上場を果たし、2025年にはマレーシア企業を子会社化して海外での生産能力を拡大しています。
従業員数は連結で808名、単体で56名です。筆頭株主は創業家であり代表取締役社長の佐藤輝明氏で、第2位も同氏の資産管理会社である三輝となっており、両者で安定した持株比率を有しています。第3位には資産管理業務を行う野村證券(常任代理人)が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 佐藤 輝明 | 14.12% |
| 三輝 | 14.12% |
| NOMURA PB NOMINEES LIMITED OMNIBUS-MARGIN(CASHPB) | 3.84% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は佐藤輝明氏が務めており、社外取締役の比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐藤 輝明 | 代表取締役社長 | 日通商事を経て三輝ブラスト(現同社)入社。同社取締役専務等を経て、2009年より現職。 |
| 森田 泰成 | 専務取締役 | TOSEI入社。同社専務取締役を経て、2015年に同社専務取締役に就任。2024年より現職。 |
| 林 忠德 | 専務取締役 | 三輝ブラスト(現同社)入社。三輝特殊技研(香港)総経理や同社常務取締役等を経て、2023年より現職。 |
| 白井 芳弘 | 専務取締役 | 紀陽銀行に入行し、東京支店副支店長等を歴任。同社常務取締役管理本部長を経て、2024年より現職。 |
社外取締役は、佐々木智一(佐々木化学薬品代表取締役)、鈴木昭彦(コンピューターソフトウェア倫理機構理事長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「金属部品鋳造及び加工事業」を展開しています。
■金属部品鋳造及び加工事業
マグネシウム合金やアルミニウム合金を中心とした軽量化金属部品の製造・加工を行っています。高付加価値カメラ、自動車、ネットワークカメラ、医療機器など、製品の軽量化や放熱性、電磁シールド性を求めるメーカーを顧客とし、金型の設計から鋳造、機械加工、塗装、組立に至るまでの一貫した生産体制を提供しています。
製品の徹底した軽量化とコストダウンを追求する製造メーカーに部品を供給し、その販売代金を収益源としています。事業の運営は同社に加え、中国向けの深圳市参輝精密五金、タイを拠点とするSANKI EASTERN、マレーシアでアルミニウム製品を担うSTX PRECISIONおよびE-CAST INDUSTRIESなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が継続して右肩上がりの成長を遂げており、事業規模が着実に拡大しています。一方で利益面は、原材料価格や為替の変動、海外でのM&Aや設備投資に伴う費用の影響などもあり、増減を繰り返しながら推移する傾向が見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 35.0億円 | 46.8億円 | 52.4億円 | 64.3億円 | 68.2億円 |
| 経常利益 | 1.6億円 | 2.9億円 | 3.0億円 | 5.1億円 | 3.8億円 |
| 利益率(%) | 4.5% | 6.1% | 5.7% | 8.0% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.7億円 | -0.2億円 | 0.7億円 | 2.6億円 | 2.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は着実に増加し、売上総利益率も安定した水準を維持していますが、販売費及び一般管理費の増加によって営業利益は減益となり、営業利益率も低下しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 64.3億円 | 68.2億円 |
| 売上総利益 | 15.2億円 | 16.2億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.7% | 23.8% |
| 営業利益 | 4.9億円 | 3.4億円 |
| 営業利益率(%) | 7.5% | 4.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.9億円(構成比31%)、支払手数料が1.8億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は「金属部品鋳造及び加工事業」の単一セグメントで事業を展開しています。受注環境の好調な推移や、海外子会社によるアルミニウム合金部品の生産拡大などが寄与し、全体として増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 金属部品鋳造及び加工事業 | 64.3億円 | 68.2億円 |
| 連結(合計) | 64.3億円 | 68.2億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金と借入などの財務活動で調達した資金を元に、積極的な投資活動を行う「積極型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.4億円 | 6.9億円 |
| 投資CF | -3.6億円 | -22.7億円 |
| 財務CF | -2.1億円 | 22.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.8%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「3つの輝き(お客様の輝き・働く仲間の輝き・社会全体の輝き)」を経営理念として掲げています。期待以上の製品を提供して顧客に喜ばれること、社員一人ひとりが能力を発揮できやりがいを持って輝ける舞台を提供すること、そして適正なガバナンスを通じた企業価値の向上によって社会に貢献することを存在意義としています。
■(2) 企業文化
「同業他社にはない独自の技術力をもとに成長し事業の拡大を実現させる」というコンセプトを掲げています。危険で加工が難しいとされるマグネシウムの取り扱いや、長年培ってきた金型設計力・鋳造技術力など、専門性の高い技術を継承し、妥協のない徹底した品質へのこだわりを最優先とする行動様式を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年12月に公表した中期経営計画「Challenge 100」(2025年度〜2027年度)において、売上高の増収を重視しつつ、マグネシウム部品売上高とEBITDAを重要指標と位置づけています。また、長期目標の達成に向けた道筋として、計画終了時の数値目標を以下の通り設定しています。
* 連結売上高120億円
* 連結営業利益12億円
* 長期目標としての連結売上高300億円
* 長期目標としての連結営業利益30億円
■(4) 成長戦略と重点施策
製品の軽量化を求める顧客への精密部品供給を推進し、電動車の普及等に伴う市場拡大の機会を捉えることを戦略の軸としています。急速な企業規模の拡大を支えるため、M&Aや積極的な設備投資を活用して生産能力の向上を図るとともに、人員の確保や新たな生産拠点の整備、事業領域の拡大による一層の内製化を進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「幅広い人材の登用」「社会的弱者への雇用機会創出」「高齢者の雇用」を人事理念として掲げています。年齢や国籍、性別を区別せず、能力のある優秀な従業員が平等に活躍できる人事制度や、リモートワーク等の柔軟な働き方の導入、奨学金返還支援制度など、多様な人材がそれぞれの持ち場で能力を発揮できる職場環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.7歳 | 12.4年 | 4,879,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人材育成のための教育投資額(4,547千円)、奨学金返還支援制度の利用者(2名)、入社3年以内の従業員の離職率目標(0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 精密機器市場への依存と環境変化
各種製品の軽量化を主眼とした部品供給を行っていますが、精密機器分野の受注比率が高いため、同分野の開発予算の圧縮や開発スケジュールの変更、モデルチェンジサイクルの変化等の影響を受けやすい環境にあります。自動車分野など裾野の広い産業からの受注を拡大することでリスクの低減を図っています。
■(2) グローバル展開に伴う為替変動リスク
関係会社を通じてアジアを中心に原材料の調達や製品の供給をグローバルに展開しています。外貨建てで取引される原材料の調達コストや製品の販売価格、および在外子会社の財務諸表を円換算する際などに為替レートの変動の影響を受けます。現地通貨建ての取引を増やすことで為替リスクの削減に努めています。
■(3) 発火性の高いマグネシウムの取り扱いと安全対策
主力素材であるマグネシウムは発火しやすく、微細な状態では爆発事故等の危険を伴うため、厳格な安全確保が求められます。過去には同業他社で爆発事故が多く発生した経緯もあり、不慮の火災や事故が発生した場合、操業への支障や多額の損害賠償によって業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。