PHCホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

PHCホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

PHCホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場しており、糖尿病マネジメント、ヘルスケアソリューション、診断・ライフサイエンス事業を展開しています。直近の業績は、売上収益が3,616億円で増収、営業利益は226億円で前期比大幅な増益となり、最終損益も黒字転換を果たしました。


※本記事は、PHCホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第12期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. PHCホールディングスってどんな会社?


医療機器やヘルスケアIT製品の開発・製造・販売をグローバルに展開するヘルスケア企業です。

(1) 会社概要


同社は、2014年にパナソニックのヘルスケア事業がカーブアウトし、KKRの出資を受けて発足しました。2016年にBayer社の糖尿病ケア事業を買収し、事業を拡大。2019年にはサーモフィッシャーサイエンティフィックから病理事業を譲受するとともに、LSIメディエンスを子会社化しました。2021年に東京証券取引所へ上場を果たしています。

現在の従業員数は連結9,041人、単体176人です。筆頭株主はKKRグループの投資ファンドで、第2位は資本参加している三井物産、第3位は三菱ケミカルグループの生命科学インスティテュートとなっています。

氏名 持株比率
KKR PHC INVESTMENT L.P. 38.03%
三井物産 17.33%
生命科学インスティテュート 9.74%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表者は代表取締役社長CEOの出口恭子氏です。社外取締役比率は約63.6%です。

氏名 役職 主な経歴
出口 恭子 代表取締役社長CEO 日本GEプラスチックス取締役CFO、日本ストライカー代表取締役社長、アッヴィ社長等を歴任。2021年PHCホールディングス社外取締役を経て、2024年4月より現職。
佐藤 浩一郎 代表取締役副社長COO・CSO 三井物産入社後、ヘルスケア事業部室長等を歴任。2017年PHCホールディングス社外取締役、2022年代表取締役副社長COOを経て、2024年7月より現職。
山口 快樹 取締役CFO 三井住友銀行、三井物産を経て、2017年PHCホールディングスへ出向。経営企画部長、常務執行役員CSO等を歴任し、2025年6月より現職。


社外取締役は、平野博文(KKRジャパン会長)、谷田川英治(KKRジャパンパートナー)、イヴァン・トルノス(Zimmer Biomet CEO)、デイビッド・スナイダー(弁護士)、山下美砂(ビジネスコーチ社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「糖尿病マネジメント」、「ヘルスケアソリューション」、「診断・ライフサイエンス」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

糖尿病マネジメント


糖尿病ケア製品の開発・製造・販売を行っており、主な製品は血糖自己測定システム(BGM)です。また、提携を通じて持続血糖測定システム(CGM)の提供も行っています。高精度な検査・分析機器を世界110以上の国と地域の医療機関や薬局等に提供しています。

収益は、医療機関や薬局等への製品販売から得ています。運営は主にPHCが開発・製造を行い、Ascensia Diabetes Care Holdings AGおよびその販売子会社を通じてグローバルに販売しています。一部製品はPT PHC Indonesiaにて製造しています。

ヘルスケアソリューション


診療所・病院向けの医科医事システムや電子カルテ、薬局向け電子薬歴システム等の医療IT製品を提供しています。また、臨床検査受託サービスや、創薬支援を行うCRO事業も展開し、多様なヘルスケアサービスを提供しています。

収益は、医療機関や薬局等からのIT製品販売・保守料、および臨床検査等の受託料から得ています。運営は、IT事業をウィーメックスとその子会社、臨床検査事業をLSIメディエンス、CRO事業をメディフォードが主に行っています。

診断・ライフサイエンス


研究・医療支援機器(超低温フリーザー等)、病理診断機器、診断薬等を扱っています。再生医療や創薬研究に必要な機器、がん診断のための病理検査機器、POCT(迅速検体検査)製品などを開発・提供しています。

収益は、大学・研究機関や医療機関への機器・試薬販売から得ています。運営は主にPHCおよびEpredia Holdings傘下の子会社が行っており、海外市場へは各国の販売子会社を通じて展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は3,000億円台半ばで推移しています。2024年3月期は一時的な要因等により損失を計上しましたが、2025年3月期は営業利益、税引前利益ともに大幅に改善し、当期利益も黒字転換を果たしました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 3,061億円 3,405億円 3,564億円 3,539億円 3,616億円
税引前利益 228億円 30億円 2億円 -132億円 188億円
利益率(%) 7.4% 0.9% 0.1% -3.7% 5.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 169億円 -85億円 -32億円 -129億円 105億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上収益は微増し、売上総利益率も改善しています。前期は営業損失に近い水準でしたが、当期は営業利益が大きく回復し、営業利益率も6.2%まで向上しました。コスト構造の見直しや一時費用の減少などが寄与しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 3,539億円 3,616億円
売上総利益 1,580億円 1,662億円
売上総利益率(%) 44.6% 46.0%
営業利益 16億円 226億円
営業利益率(%) 0.4% 6.2%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が721億円(構成比50%)、その他経費が437億円(同30%)を占めています。売上原価においては、材料費が817億円(売上原価比42%)、その他経費が596億円(同31%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別に見ると、ヘルスケアソリューションと診断・ライフサイエンスが増収増益となりました。特にヘルスケアソリューションは前期の赤字から黒字転換しました。一方、糖尿病マネジメントは減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
糖尿病マネジメント 1,016億円 987億円 160億円 139億円 14.1%
ヘルスケアソリューション 1,203億円 1,283億円 -94億円 93億円 7.2%
診断・ライフサイエンス 1,297億円 1,309億円 56億円 72億円 5.5%
連結(合計) 3,539億円 3,616億円 16億円 226億円 6.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

PHCホールディングスは、営業活動により堅調な収入を確保し、事業活動を支えています。投資活動では、主に設備投資等に資金を投じていますが、前年度に比べ支出は抑制されました。財務活動では、借入金の返済や配当金の支払い等により、資金の流出が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 413億円 419億円
投資CF -211億円 -85億円
財務CF -391億円 -391億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「わたしたちは、たゆみない努力で健康を願うすべての人々に新たな価値を創造し、豊かな社会づくりに貢献」することを経営理念としています。また、ビジョンとして「精緻な技術でヘルスケアの未来を切り拓くリーダーとなる」を掲げ、高品質な医療を誰もが身近に享受できる未来の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、多様性とチームワークを重要な価値観として設定しています。女性・外国人・中途採用者の管理職等への登用を含む多様性の確保を重視し、グループの企業価値向上を実現するために重要な要素であると考えています。

(3) 経営計画・目標


同社は2030年までのビジョン実現に向け、期間を2つのフェーズに分けた計画を策定しています。2027年度までをPhase1とする「中期経営計画2027」では、売上収益、営業利益、(調整後)EBITDA、親会社所有者帰属当期利益を重要な経営指標と位置づけ、事業規模の拡大と収益性の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画2027では、「成長に向けた基盤構築」をテーマに掲げています。重点施策として、「収益基盤強化のための構造改革」「ポートフォリオ管理強化」「診断・ライフサイエンス領域への注力」の3つを実行し、企業価値の向上に努めています。特に診断・ライフサイエンス領域を持続的な成長の核として位置づけています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「多様性の尊重」「連携の基盤づくり」「人財の活性化」を人財戦略の柱としています。国内外での人財交流や採用強化による多様性の確保、グローバル人事システムによる連携基盤の構築、エンゲージメントサーベイを通じた組織活性化や自律的なキャリア形成支援を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 48.8歳 18.8年 9,177,383円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 26.8%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 82.7%
男女賃金差異(正規雇用) 82.1%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※提出会社において該当者がいない項目については「-」と表示しています。なお、連結子会社(PHC、LSIメディエンス等)については数値が開示されています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、経営陣女性比率(30.0%)、経営陣外国人比率(30.0%)、従業員エンゲージメントサーベイスコア(67ポイント)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済環境について


同社グループは世界125以上の国と地域で事業を展開しており、各地域の経済状況の影響を受けます。主要市場の経済成長減速、為替変動、インフレ等は、顧客の購買力や設備投資意欲を減退させ、同社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。コスト削減やグローバルな事業基盤強化により、経済変動への耐性を高めています。

(2) 市場動向について


各国の医療制度改革や医療費抑制政策、新たな医療技術の開発等は、同社製品への需要に影響を与えます。また、主要顧客である研究機関の研究開発費予算は国の財政状況に依存するため、予算削減等は製品購入の延期や見送りにつながる可能性があります。同社は市場動向を注視し、買収や提携も含めた対応を図っています。

(3) 顧客動向/嗜好について


糖尿病患者のニーズ(高精度、低侵襲、長期間測定等)や医療機関のクラウド化要望、研究機関の効率化ニーズなど、顧客の要求は変化し続けています。これらに対応した新製品やサービスを提供できない場合、需要が低下するリスクがあります。同社は顧客ニーズの把握と技術開発に注力しています。

(4) 競合他社について


国際的な大企業から専門企業まで様々な競合が存在し、技術革新のスピードも速い業界です。競合他社が優れた技術や製品を開発した場合や、低価格製品がシェアを拡大した場合、同社製品の競争力が低下する恐れがあります。同社は技術開発や商品開発を通じて競争力強化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。