※本記事は、株式会社フレクトの有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フレクトってどんな会社?
クラウドとAIの先端技術を活用し、顧客体験の向上とビジネスモデルの変革を実現するDX支援企業です。
■(1) 会社概要
2005年8月に設立され、2009年にセールスフォース・ドットコム(現セールスフォース・ジャパン)とパートナー契約を締結しました。その後、Amazon Web Services、MuleSoft、Oktaなど複数のクラウドプラットフォームとの連携を拡大し、2021年12月に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場を果たしています。
従業員数は単体で445名です。筆頭株主は代表取締役CEOの資産管理会社であるクロで、第2位はクラウドプラットフォームを提供する事業会社のセールスフォース・ジャパン、第3位は金融機関となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| クロ | 53.34% |
| Salesforce, Inc. | 5.09% |
| CACEIS BANK/QUINTET LUXEMBOURG SUB AC / UCITS CUSTOMERS ACCOUNT | 3.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOクラウドインテグレーション事業部事業部長は黒川幸治氏が務めています。社外取締役比率は60.0%(3/5名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 黒川幸治 | 代表取締役CEOクラウドインテグレーション事業部事業部長 | 2000年フィアコミュニケーションズ設立、代表取締役。2005年フレクト設立、代表取締役CEO。2025年クラウドインテグレーション事業部事業部長に就任し現職。 |
| 大橋正興 | 取締役Identity&AI事業部 事業部長 | 2004年ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ入社。2007年フレクト入社。2009年取締役COO等を経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、銕川陽介氏(税理士法人インプルーブ代表社員)、藤原章一氏(元リクルートホールディングス常勤監査役)、小川周哉氏(TMI総合法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「クラウドソリューション事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■クラウドインテグレーションサービス
同社は、クラウドとAIの先端テクノロジーを活用し、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するプロフェッショナルサービスを提供しています。国内の大手企業を中心顧客とし、データ連携やID統合、データ統合プラットフォームの構築にAIを加えたトータルサービスを展開し、既存事業や新規事業の変革を支えています。
収益源は、顧客企業から受け取るシステムの設計や構築、アプリケーション開発等のプロジェクト受託開発費用およびプラットフォーム導入支援料です。顧客接点の変革からビジネスモデルの変革に至るまでのプロジェクトを請け負っており、本事業の運営は同社が単独で行っています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、企業の積極的なIT投資を背景に右肩上がりの増収が続いており、売上高は36億円から83億円へと大きく成長しています。経常利益も売上拡大と付加価値の向上に伴い増加傾向にあり、直近では利益率も15%台へと改善し、安定した収益基盤を確立しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 36.4億円 | 53.1億円 | 69.3億円 | 79.5億円 | 82.5億円 |
| 経常利益 | 2.4億円 | 2.6億円 | 7.5億円 | 10.8億円 | 12.5億円 |
| 利益率(%) | 6.6% | 4.8% | 10.9% | 13.6% | 15.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.7億円 | 2.2億円 | 4.4億円 | 7.2億円 | 6.8億円 |
■(2) 損益計算書
収益性の改善が進んでおり、売上総利益率は44%台から47%台へと上昇しています。これはマルチクラウドとAIを活用した高付加価値サービスの提供や、社内AI活用による生産性向上が寄与した結果です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 79.5億円 | 82.5億円 |
| 売上総利益 | 35.4億円 | 39.1億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.6% | 47.4% |
| 営業利益 | 10.9億円 | 12.4億円 |
| 営業利益率(%) | 13.7% | 15.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が12億円(構成比44%)、通信費が3億円(同12%)を占めています。また、売上原価の内訳では外注費が24億円(構成比54%)、労務費が18億円(同42%)を占めており、専門職人材と外部パートナーへの投資が原価の大部分を構成しています。
■(3) セグメント収益
同社はクラウドソリューション事業の単一セグメントです。旺盛なDX支援需要を背景に、金融業界を中心とした新規顧客の獲得や、既存顧客におけるプラットフォーム活用プロジェクトの拡大が牽引し、当期も堅調な増収を達成しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| クラウドソリューション事業 | 79.5億円 | 82.5億円 |
| 連結(合計) | 79.5億円 | 82.5億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 9.0億円 | 3.3億円 |
| 投資CF | -2.9億円 | -0.7億円 |
| 財務CF | -0.5億円 | -12.5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.5%となっており、いずれも市場平均を上回る高い水準で推移しています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「インターネットを通じてみんなの人生満足を追求する」の企業理念のもと、「あるべき未来をクラウドでカタチにする」というコーポレートビジョンを掲げています。あらゆるヒトやモノがデジタルでつながる社会において、企業やその先にいるユーザーのあるべき姿を自ら考え、デジタルに最適化された新しい顧客体験を創出することを使命としています。
■(2) 企業文化
専門性を育む人づくりを重視しており、継続的な学習と個人の知識をシェアする組織風土を持っています。社内ではクラウド未経験者を手厚くサポートするオンボーディングやメンター制度、独自のEラーニングを運用しています。勉強会や事例紹介を通じたナレッジ共有が創業以来行われており、チーム全体で技術力を高め合う実践的な文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は持続的な成長と企業価値向上のため、売上総利益率、四半期契約顧客数、顧客当たりの四半期平均売上高(ARPA)の3つを重要な経営指標と位置づけています。また、人的資本の拡大に向けた具体的な数値目標を設定しています。
* 2027年3月末のクラウドエンジニア等専門職従業員数:474人(前年比59人増)
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、データ連携やID統合、マルチAIを組み合わせた「AIトータルサービス」の提供を通じて、既存顧客へのクロスセルを推進しています。また、クラウドパートナー企業との連携強化による効率的な案件獲得体制の構築に注力しています。さらに、研究開発を起点にクラウドとAIの先端テクノロジーをパッケージ化し、他社に先駆けて特定領域での競争優位性を確立する事業サイクルを回していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
エンジニアの人材不足が深刻化する市場環境において、同社は「クラウドエンジニアの採用と教育」を成長戦略の最重要テーマに位置づけています。入社者の約8割がクラウド未経験者である中、専門組織によるオンボーディングやメンター制度、資格取得支援を通じて、短期間でマルチな専門性を持つエンジニアを育成・戦力化する仕組みを構築し、人材の安定的な確保と定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 36.5歳 | 3.2年 | 6,654,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.1% |
| 男性育児休業取得率 | 156.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 77.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 77.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用労働者) | - |
また、同社は「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、専門職従業員数(415人)、クラウド未経験者の比率(約80%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) セールスフォース・ジャパンへの依存リスク
同社は複数のクラウドサービスを扱っていますが、セールスフォース・ジャパンが提供するプロダクトを活用した開発に一定程度依存しています。同社の日本撤退やサービス停止、利用料の大幅な引き上げ、または経営戦略の変更等が生じた場合、同社の業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 優秀なエンジニアの確保と育成
事業の継続的な成長はエンジニアの高い技術力に立脚しています。労働市場の競争激化等により、計画通りの人材採用や育成が進まない場合や、既存従業員の社外流出が加速した場合には、サービスの提供体制や事業拡大が制約され、経営成績に影響を与えるリスクがあります。
■(3) プロジェクトの採算悪化とシステム障害
請負型プロジェクトでは事前の見積りに基づき利益率を確保していますが、開発過程での予期せぬ不具合等により工数が大幅に増加し、不採算となるリスクがあります。また、クラウド上で提供するサービスにおいて大規模なシステム障害や重大なバグが発生した場合、損害賠償や信用失墜に繋がる恐れがあります。



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