フレクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フレクト 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フレクトは東証グロース上場のマルチクラウド・インテグレーターです。Salesforce等の先端技術を活用した企業のDX支援を主力事業としています。2025年3月期は旺盛なDX需要を取り込み、売上高は前期比14.7%増、営業利益は同43.3%増と過去最高業績での増収増益を達成しました。


※本記事は、フレクト の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フレクトってどんな会社?


同社はクラウド先端テクノロジーとデザインで企業のDXを支援するマルチクラウド・インテグレーターです。

(1) 会社概要


同社は2005年に設立され、2009年にSalesforceとパートナー契約を締結しました。2016年には働き方改革クラウド「Cariot」の提供を開始し、クラウドインテグレーションとの両輪で成長。2021年12月に東証マザーズへ上場し、2022年の市場区分見直しに伴いグロース市場へ移行しました。2024年にはCariot事業を分社化しています。

2025年3月31日現在、従業員数は393名です。筆頭株主は創業者である黒川幸治氏の資産管理会社である合同会社クロ、第2位は信託銀行、第3位は米国Salesforce, Inc.となっています。

氏名 持株比率
合同会社クロ 59.20%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 5.53%
Salesforce, Inc. 4.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性0名の計5名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役CEOは黒川幸治氏です。社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
黒川 幸治 代表取締役CEOクラウドインテグレーション事業部事業部長 2000年フィアコミュニケーションズ設立・代表取締役。2005年同社設立・代表取締役CEOより現職。
大橋 正興 取締役技術戦略管掌 2004年ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ入社。2007年同社入社。2009年取締役COOなどを経て2025年より現職。


社外取締役は、銕川陽介(税理士法人インプルーブ代表社員)、藤原章一(元リクルートホールディングス常勤監査役)、小川周哉(TMI総合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「クラウドソリューション事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) クラウドソリューション事業


同社は、企業のDXを支援するプロフェッショナルサービス「クラウドインテグレーションサービス」を提供しています。Salesforceを中心にAmazon Web Services(AWS)等の複数のクラウドプラットフォームを活用し、IoT、AI、コミュニティサービス、ECサービスなどのデジタル変革を、企画からデザイン、開発、運用までワンストップで支援します。主な顧客はDXを推進する国内大手企業です。

収益は、顧客企業からのシステム開発や導入支援に対する対価(請負または準委任契約に基づく開発費・サービス料)によって得ています。また、Salesforce等のライセンス再販による収益も一部含まれます。運営は主にフレクトが行っています。なお、モビリティ業務最適化クラウド「Cariot」については2024年10月に分社化・譲渡されています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの5期間の推移を見ます。売上高は毎期順調に拡大しており、DX需要の拡大を背景に高成長を維持しています。利益面では、2021年3月期は赤字でしたが、翌期以降は黒字化し、利益率も改善傾向にあります。特に直近では売上高、各利益ともに過去最高を更新しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 26億円 36億円 53億円 69億円 79億円
経常利益 -1.9億円 2.4億円 2.6億円 7.5億円 10.8億円
利益率(%) -7.3% 6.6% 4.8% 10.9% 13.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -1.9億円 2.7億円 2.2億円 4.4億円 7.2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較します。売上高は14.7%増、営業利益は43.3%増と大幅な増益となりました。売上総利益率は43.3%から44.6%へ改善し、営業利益率も10.9%から13.7%へと向上しています。高付加価値サービスの提供や効率的な案件運営が進んでいることが窺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 69億円 79億円
売上総利益 30億円 35億円
売上総利益率(%) 43.3% 44.6%
営業利益 7.6億円 10.9億円
営業利益率(%) 10.9% 13.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が9.0億円(構成比37%)、採用教育費が2.8億円(同11%)を占めています。売上原価においては、外注費が25億円(構成比56%)、労務費が18億円(同40%)となっており、エンジニアの人件費やパートナー費用が主なコスト要因です。

(3) セグメント収益


同社は「クラウドソリューション事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略します。なお、旺盛なDX支援需要を背景に、クラウドインテグレーションサービスの売上が増加しました。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

フレクトのキャッシュ・フローの状況は、営業活動により資金を獲得し、投資活動や財務活動で資金を支出する健全な状態を示しています。

営業活動では、増収効果や売上債権の減少により、前年同期比で大幅に資金獲得額を伸ばしました。一方、投資活動では、事業分離や敷金・保証金の差入、固定資産の取得などで資金支出が増加しました。財務活動では、新株発行による収入があったものの、自己株式の取得や長期借入金の返済により、資金支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 6.0億円 9.0億円
投資CF -1.5億円 -2.9億円
財務CF -0.3億円 -0.5億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「インターネットを通じてみんなの人生満足を追求する」を企業理念とし、「あるべき未来をクラウドでカタチにする」というコーポレートビジョンを掲げています。クラウド先端テクノロジーとデザインで企業のDXを支援するマルチクラウド・インテグレーターとして、デジタルに最適化された新しい顧客体験を創造し、顧客中心型のビジネス変革を支援することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、先端技術への挑戦と顧客への価値提供を重視する文化を持っています。社内勉強会や事例紹介を通じたナレッジシェアが創業以来行われており、クラウド未経験者でも短期間で戦力化できる教育風土があります。また、従業員一人ひとりの働きがいを重視し、スキルアップやキャリアアップによる処遇向上、エンゲージメントスコアの測定などを通じて、働きやすい環境づくりを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は持続的な成長と中長期的な企業価値向上のため、以下の指標を重要な経営指標(KPI)として掲げています。

* 売上総利益率
* 四半期契約顧客数(大手企業を中心とした再販を除く顧客数)
* 顧客当たりの四半期平均売上高(ARPA)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は成長戦略として、クラウドエンジニアの採用・育成強化とマルチクラウド化の推進を掲げています。具体的には、Salesforceに加えAWSやMuleSoft等の周辺クラウド技術への対応領域を拡大し、顧客単価(ARPA)の向上を図ります。また、研究開発で得た先端技術をパッケージ化して横展開し、競争優位性を確立するサイクルを強化します。

* 2026年3月末のクラウドエンジニア等の専門職従業員数目標:424人(前年同期比18.1%増)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社はクラウドエンジニアの採用と教育を事業上の最重要テーマと位置づけています。入社者の約8割がクラウド未経験者ですが、教育専門チームによるオンボーディングや技術研修により、マルチな専門性を持つエンジニアへ育成する仕組みを構築しています。また、資格取得支援や報奨金制度により、Salesforce等の高度な専門資格保有者を多数輩出しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 36.5歳 2.9年 7,317,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 6.0%
男性労働者の育児休業取得率 118.2%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 75.4%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 75.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) -%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、クラウドエンジニア等の専門職従業員数(359人)、Salesforce認定資格保有数(997個)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営環境の変化および市場動向


同社の顧客は企業であり、経済情勢や景気動向により顧客のIT投資が減少した場合、受注に影響が出る可能性があります。また、クラウド市場の成長鈍化や技術革新への対応遅れ、競合との価格競争激化などが生じた場合、競争力が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) Salesforce等への依存


同社はSalesforceプロダクトを中心に複数のクラウドサービスを活用していますが、Salesforceジャパンとのパートナー契約や同社製品に一定程度依存しています。同社の戦略変更、日本撤退、サービス障害、利用料引き上げ等が発生した場合、同社の事業運営や業績に影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保および育成


事業成長には優秀なエンジニアの確保が不可欠ですが、IT人材不足の中で採用や育成が計画通り進まない場合や、人材流出が進んだ場合、サービス提供体制の維持や事業拡大が制約される可能性があります。また、外注先の確保困難やコスト高騰もリスク要因となります。

(4) システムトラブルおよび不具合


クラウドサービスという特性上、システム障害やセキュリティ事故、重大な不具合(バグ)の発生は、信用の失墜や損害賠償につながるリスクがあります。また、プロジェクトにおける予期せぬ工数増加による不採算化や、検収時期のズレによる売上計上時期の変動も業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。