長栄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

長栄 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

長栄は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、不動産管理と不動産賃貸を両輪に事業を展開しています。直近の業績は管理戸数および自社物件の増加により売上高が約110億円、営業利益が約20億円と増収増益を達成した一方、前年の固定資産売却益の反動等により純利益は約10億円と減益になりました。


※本記事は、株式会社長栄の有価証券報告書(第38期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 長栄ってどんな会社?


長栄は近畿地方を中心に不動産管理と自社物件の賃貸を主力として展開する不動産企業です。

(1) 会社概要


1980年に京都で不動産管理業として創業し、1988年に長栄を設立しました。1990年に賃貸管理センター1号店を開設して以降、2003年に「Bellevie(ベルヴィ)」ブランドを立ち上げるなど拠点を拡大しました。2021年には東京証券取引所に上場し、現在はスタンダード市場で取引されています。

従業員数は単体で261名となっています。大株主については、筆頭株主が創業者の長田修氏であり、第2位も同氏の親族とみられる個人が名を連ねています。また、第3位には資産管理会社とみられるOSAフィールドが保有しており、創業者一族やその関係先による安定した株式保有の傾向が見られます。

氏名 持株比率
長田 修 35.14%
長田 久美子 14.82%
OSAフィールド 8.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役 社長執行役員の舩井渉氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は33.3%(取締役6名中2名)です。

氏名 役職 主な経歴
舩井 渉 代表取締役 社長執行役員 1997年に同社入社後、管理部長、ヴィークル取締役などを経て、2019年に長栄ビルサービス代表取締役社長に就任。2022年に同社取締役専務執行役員を務め、2025年より現職。
長田 修 代表取締役 会長執行役員 1969年に松下電器産業に入社。1980年に長栄を創業し、1988年より代表取締役社長。関連会社社長や業界団体の要職を歴任し、2025年より現職。
中澤 和宏 取締役 上席執行役員 1997年に南十字社に入社し、1998年に同社へ入社。2019年に執行役員アセットマネジメント本部長、2021年に上席執行役員を経て、2023年より現職。
田中 直樹 取締役 上席執行役員 1989年に古今に入社後、テクノサービスを経て1993年に同社へ入社。2019年に執行役員統括本部長、2021年に上席執行役員を経て、2024年より現職。


社外取締役は、田中伸(田中・上羽法律事務所代表社員)、石畑成人(元ニッセンホールディングスCFO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「不動産管理事業」および「不動産賃貸事業」を展開しています。

不動産管理事業


同事業は、不動産オーナーの安定した賃貸経営を支援するため、入居者管理、ビルメンテナンス、リフォーム工事、賃貸仲介などのサービスを提供しています。主に関西・中部・関東・九州の各拠点において、入居者のトラブル対応やイベント企画などを通じて入居者満足度の向上に努めています。

主な収益源は、不動産オーナーから受け取る管理収入や工事売上、仲介収入などです。事業の運営は同社が主体となって行っており、賃貸管理本部やリフォーム事業本部などの専門部署が入退去の管理から物件のメンテナンスまでワンストップで対応しています。

不動産賃貸事業


同事業は、自社で取得した物件およびサブリース物件の賃貸を行っています。資産効率の高い築年数が経過した優良物件を中心に取得し、不動産管理事業で培ったノウハウを活用してリニューアルを行うことで、長期間にわたり高水準の入居率を維持し、高い収益性を実現しています。

主な収益源は、入居者から受け取る家賃収入やマンスリーマンションの売上などです。この事業も同社のアセットマネジメント本部が中心となって運営しており、自社物件の運用はオーナー向けサービスのテストの場としても活用されています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は右肩上がりで成長を続けており、約92億円から110億円へと堅調に拡大しています。一方、経常利益は一時的に約20億円を記録したものの、直近では金利上昇や修繕費の増加などにより約14億円へとやや低下しています。当期利益も前年の固定資産売却益の反動により減少しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 85億円 92億円 94億円 100億円 110億円
経常利益 16億円 20億円 15億円 15億円 14億円
利益率(%) 19.1% 21.9% 16.1% 14.6% 12.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 14億円 13億円 21億円 10億円

(2) 損益計算書


2025年3月期と2026年3月期の損益構成を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益および営業利益も堅調に伸びています。売上総利益率は約33%で安定しており、営業利益率も18%前後と高い収益水準を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 100億円 110億円
売上総利益 34億円 36億円
売上総利益率(%) 33.5% 32.8%
営業利益 18億円 20億円
営業利益率(%) 18.0% 17.9%


販売費及び一般管理費のうち、控除対象外消費税等が5億円(構成比30%)、役員報酬が2億円(同13%)を占めています。また、売上原価については経費が42億円(同57%)、外注費が16億円(同21%)を占めており、物件の管理やメンテナンスに関わる原価の比率が高くなっています。

(3) セグメント収益


両セグメントともに売上を伸ばしています。不動産賃貸事業は自社物件の新規取得が寄与し、売上を牽引しました。不動産管理事業も管理戸数の増加や工事売上の伸びにより堅調に推移しており、両事業が相乗効果を発揮しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
不動産管理事業 41億円 45億円
不動産賃貸事業 59億円 66億円
連結(合計) 100億円 110億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 19億円 26億円
投資CF -42億円 -78億円
財務CF 41億円 54億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は16.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「企業を通じて社会に役立つ『人』を育てる」という企業理念を掲げ、人材育成を重視しています。また、「人道を重んじ正義を持って経営を行う」という経営理念のもと、管理業を通じて社会に貢献し、仕事は厳しく人に優しく人間性豊かな企業を目指すことを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、借入金の返済原資が家賃であるという考えに基づき、「入居者ファースト」を徹底する文化が形成されています。また、事業環境や顧客ニーズが変化する中で、社員一人ひとりが「自ら創意工夫することができる人材」として主体的に行動し、改善や付加価値向上に取り組む風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、堅実な経営基盤を維持しつつ、営業基盤の拡大を図るため、「管理物件戸数(自社物件を含む)の増加」を重要な目標として掲げています。日々の管理業務を通じてオーナーからの信頼を得ることが新たな管理受託に繋がると考え、徐々に管理戸数を増やすことで事業発展と財務体質強化を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、管理物件の入居者満足度を向上させ、オーナーの賃貸経営を安定させる施策を強化します。また、金利上昇に備えて収益性の高い優良物件の厳選投資を進めるとともに、物価高騰に対しては適正な価格転嫁と賃料改定を実施し、変化を事業拡大の機会と捉えた戦略を展開します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、持続的な成長と企業価値向上の実現に向け、人材戦略を重要な経営課題と位置付けています。性別や国籍、新卒・中途を問わず多様な人材が活躍できる環境を提供し、コミュニケーション促進や資格取得支援、子育て・病気予防のサポートなど、働きやすい社内環境の整備に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.5歳 8.4年 5,051,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全従業員) 72.3%
男女賃金差異(正規雇用従業員) 65.8%
男女賃金差異(非正規従業員) 79.1%


※同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定による公表項目のうち、管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合を公表項目として選択していないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、賃貸不動産経営管理士(64人)、宅地建物取引士(36人)、育児休暇復帰率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 金利上昇リスク


自社物件の購入を主に変動金利の長期借入金で調達しているため、金利上昇の影響を受けます。これに対し、稼働率の向上や賃料設定の見直し、収益性の高い物件への厳選投資によりコスト吸収を図っています。

(2) 不動産市況動向等に係るリスク


景気後退やマンションの供給過剰により、不動産市況が停滞した場合、入居率や賃料水準が低下し、管理収入や家賃収入が減少する可能性があります。エリアごとの需要分析や競合優位性の高い改装等で対応しています。

(3) 少子高齢化リスク


保有・管理する不動産は単身者向けの比率が高く、特に学生の多い京都府に集中しています。少子化による学生の減少に伴う供給過剰懸念に対し、外国人留学生の積極的な誘致や、高齢化に対応したサービス展開を検討しています。

(4) 情報セキュリティに関するリスク


オーナーや入居者の個人情報、取引企業の営業情報を多数保持しており、サイバー攻撃等による情報漏洩やシステム障害が発生した場合、信用失墜や損害賠償を招く恐れがあります。クラウド化や24時間監視体制でリスクを抑えています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。