Finatextホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Finatextホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場し、証券・保険等の金融インフラストラクチャ事業、フィンテックソリューション事業、ビッグデータ解析事業を展開しています。第11期は金融インフラ事業のパートナー数増加等が寄与し、売上高は前年同期比43.3%増、経常利益・当期純利益ともに黒字化を達成する増収増益の決算となりました。


※本記事は、株式会社Finatextホールディングスの有価証券報告書(第11期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Finatextホールディングスってどんな会社?


金融サービスの基幹システムをクラウドで提供する「金融インフラストラクチャ事業」を主力とする企業です。

(1) 会社概要


同社は2013年に設立され、投資教育アプリ等の提供を開始しました。2016年に株式会社ナウキャストを子会社化しビッグデータ解析事業へ参入、2018年には証券インフラストラクチャ「BaaS」の提供を開始しました。2020年に保険インフラストラクチャ「Inspire」をリリースし、2021年に東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)へ上場を果たしました。

同グループの従業員数は連結341名、単体23名です。筆頭株主は創業者の林良太氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位はKDDIと資本業務提携関係にあるauフィナンシャルホールディングスです。

氏名 持株比率
林 良太 36.1%
日本カストディ銀行(信託口) 8.5%
auフィナンシャルホールディングス 6.2%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは林良太氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
林 良太 代表取締役社長CEO 2009年ドイツ銀行ロンドン入行、GCIアセット・マネジメントを経て2013年同社創業、代表取締役。2016年ナウキャスト代表取締役等を歴任し現職。
伊藤 祐一郎 取締役CFO 2010年UBS証券入社。2016年同社入社、取締役就任。ナウキャスト取締役、スマートプラス取締役等を兼任し現職。
田島 悟史 取締役CTO/CISO 2012年VOYAGE GROUP(現CARTA HOLDINGS)入社。2019年Finatext入社。2022年6月より現職。


社外取締役は、山内英貴(GCIキャピタル代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金融インフラストラクチャ事業」「フィンテックソリューション事業」および「ビッグデータ解析事業」を展開しています。

(1) 金融インフラストラクチャ事業


証券、保険、クレジット等の金融サービスを運営するために必要な複雑な基幹システムを、クラウド上でSaaS型のシステムとして提供しています。顧客は、自社サービスのユーザー向けに金融サービスを提供したい新規参入事業者や、デジタル特化の新サービスを立ち上げたい既存金融機関などです。

収益は、システム導入時の初期開発費(フロー収益)、月次の定額利用料(ストック収益)、および証券売買や保険料収入等に応じた従量課金収益から構成されます。運営は、証券領域を株式会社スマートプラス、保険領域を株式会社Finatextおよびスマートプラス少額短期保険株式会社、クレジット領域を株式会社Finatextおよび株式会社スマートプラスクレジットが行っています。

(2) フィンテックソリューション事業


金融機関向けにデジタルトランスフォーメーション(DX)およびデジタルマーケティングの支援を行っています。具体的には、フロントエンドサービスの企画・開発支援を行う「ソリューションビジネス」と、金融機関の販促活動を支援する「マーケティングビジネス」を展開しています。

ソリューションビジネスでは開発委託費やサービス維持運営費を、マーケティングビジネスでは送客ユーザー数等に応じた広告掲載料を金融機関等から受領しています。運営は主に株式会社Finatextや株式会社Teqnologicalが行っています。

(3) ビッグデータ解析事業


ビッグデータを保有する企業のデータ利活用を促進する事業です。データを解析・販売する「データライセンスビジネス」、データのマーケティング活用等を支援する「データ解析支援ビジネス」、生成AI活用基盤の構築を支援する「データAIソリューションビジネス」で構成されています。

データホルダーとレベニューシェア契約を結び解析データを機関投資家等に販売して得られるデータライセンス料や、開発委託費等を顧客企業から受領しています。運営は主に株式会社ナウキャストや株式会社Finatextが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模が拡大しています。利益面では、先行投資により損失計上が続いていましたが、直近の第11期において経常利益および当期利益が黒字化しました。特に第11期は利益率も大きく改善し、成長と収益性の向上が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 28億円 27億円 38億円 54億円 77億円
経常利益 -8億円 -6億円 -3億円 2億円 9億円
利益率(%) -27.5% -21.6% -8.5% 3.6% 12.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -4億円 -0.4億円 -28億円 -0.1億円 0.0億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で大幅に増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。増収効果により、営業利益は前期と比較して大きく伸長しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 54億円 77億円
売上総利益 32億円 51億円
売上総利益率(%) 60.0% 66.6%
営業利益 2億円 10億円
営業利益率(%) 3.8% 12.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が7億円(構成比17%)、支払手数料が7億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


金融インフラストラクチャ事業が売上・利益ともに全体を牽引し、大幅な増収増益となりました。フィンテックソリューション事業、ビッグデータ解析事業も増収増益で推移しており、全セグメントで黒字を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
金融インフラストラクチャ事業 30億円 45億円 -1億円 5億円 10.4%
フィンテックソリューション事業 11億円 13億円 0.6億円 1億円 10.4%
ビッグデータ解析事業 13億円 18億円 3億円 4億円 21.9%
調整額 - - -0.1億円 -0.6億円 -
連結(合計) 54億円 77億円 2億円 10億円 12.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスである一方、将来成長のための投資を継続し、財務活動で資金を調達している「勝負型(事業拡大に伴う資産増加)」です。

なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に証券業における信用取引資産及び信用取引負債の増減額の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -9億円 -9億円
投資CF -3億円 -5億円
財務CF 7億円 10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.7%で市場平均(グロース市場:2.9%)を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は47.0%で市場平均(グロース市場:63.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「金融をサービスとして再発明する」をミッションに掲げています。この理念のもと、金融サービス提供者向けの次世代クラウド基幹システムの提供等を通じて、パートナー企業とともに人々にとって遠い存在である金融サービスを暮らしに寄り添ったものにすることを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、証券業、保険業及び貸金業における社会的責任と公共的使命を深く認識し、正しい倫理的価値観を持った上で、多くのお客様に安心をお届けすることを目指して事業活動を行っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、金融インフラストラクチャ事業において、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、「パートナー数」を重要指標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、金融インフラストラクチャの機能拡充とパートナー数の拡大を推進し、特に大規模な顧客基盤を持つ異業種企業の金融参入や既存金融機関のDXニーズを取り込む方針です。また、インフラに蓄積されるデータを活用した解析技術の向上により競争優位性を強化し、将来的には海外展開や送金・決済等の新たな金融事業領域への参入も目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、継続的な事業成長に向けて、テクノロジーと金融の双方に明るい優秀な人材を採用し、強い組織体制を整備することを重視しています。エンジニア等のプロダクト開発に関わる人員がグループ全体の過半を占める中、積極的な採用活動に加え、社内勉強会の開催や人事制度の構築、カルチャーの推進等を通じて、従業員が中長期にわたって活躍しやすい環境の整備を進める方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.6歳 4.2年 7,033,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定着率(85.5%)、管理職に占める女性労働者の割合(30.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) サービスの信頼性低下リスク


同社グループのサービスにおいて、正確性や公平性に欠ける事象が発生した場合、事業や社会的信用に影響を与える可能性があります。これを防ぐため、法令遵守の徹底や、コンテンツ・広告内容の入念なチェック、専門家と連携した監修体制の導入を行っています。

(2) 金融インフラストラクチャの導入の遅延又は解消に関するリスク


大型のエンタープライズ向けSaaSビジネスであるため、1件の導入が収益に大きく影響します。プロジェクトの工数増による納期の遅延や、パートナー企業との契約未締結、取引解消などが発生した場合、同社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定の提携先・取引先への依存リスク


同社子会社のスマートプラスは、株式等の注文取次業務において大和証券と提携しています。提携先の事業方針変更等により当該提携が継続できず、速やかに代替先へ切り替えられない場合、同社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。