Finatextホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Finatextホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Finatextホールディングスは東京証券取引所グロース市場に上場し、金融基幹システムをクラウド上で提供する金融インフラ事業を軸に、デジタルトランスフォーメーション支援やビッグデータ解析を展開しています。直近の業績は、機能拡充やパートナー拡大により大幅な増収増益を達成し高成長を続けています。


※本記事は、Finatextホールディングスの有価証券報告書(第12期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. Finatextホールディングスってどんな会社?


クラウドベースの次世代金融基幹システムの提供を中心に、金融サービスの再発明を目指すテクノロジー企業です。

(1) 会社概要


2013年に設立され、投資教育アプリの開発等から事業を開始しました。2016年にナウキャストを完全子会社化してビッグデータ解析事業へ参入し、2017年にはスマートプラスを設立して証券プラットフォームの開発に乗り出しました。2018年に持株会社体制へ移行して現在の社名となり、2021年に上場を果たしています。

現在の同社グループは、連結従業員数414名、単体従業員数23名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業者で代表取締役社長CEOの林良太氏であり、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は資本業務提携などの関係がある金融持株会社のauフィナンシャルホールディングスとなっています。

氏名 持株比率
林良太 36.50%
日本カストディ銀行(信託口) 7.80%
auフィナンシャルホールディングス 6.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOの林良太氏がトップを務めており、取締役4名のうち1名が社外取締役(比率25.0%)となっています。

氏名 役職 主な経歴
林良太 代表取締役社長CEO 東京大学経済学部卒業後、ドイツ銀行ロンドン支店などを経て2013年に同社を創業し代表取締役に就任。その後グループ各社の取締役を歴任し、2018年より現職。
伊藤祐一郎 取締役CFO 東京大学経済学部卒業後、UBS証券を経て2016年に同社へ入社し取締役に就任。現在はナウキャストやスマートプラスなどグループ各社の取締役も務める。
田島悟史 取締役CTO/CISO 明治大学卒業後、VOYAGE GROUP(現CARTA HOLDINGS)を経て2019年にFinatextへ入社。2022年に同社の取締役に就任。


社外取締役は、山内英貴(元日本興業銀行入行・現GCIアセット・マネジメント代表取締役CEO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「金融インフラストラクチャ事業」「フィンテックシフト事業」「ビッグデータ解析事業」を展開しています。

金融インフラストラクチャ事業


金融サービスを運営するために必要となる複雑な基幹システムを、クラウド上でSaaS型のシステムとして提供しています。証券インフラストラクチャ「BaaS」、保険インフラストラクチャ「Inspire」、クレジットインフラストラクチャ「Crest」を展開し、低コストかつ短期間でのサービス導入を可能にしています。

収益は、初期導入時のシステム開発費によるフロー収益、月次の定額利用料によるストック収益、及び各金融サービスの取引量等に伴う従量課金収益から構成されます。証券領域はスマートプラス、保険領域はFinatextおよびスマートプラス少額短期保険、クレジット領域はFinatextおよびスマートプラスクレジットがそれぞれ運営しています。

フィンテックシフト事業


金融機関向けにデジタルトランスフォーメーションとデジタルマーケティングの支援を行っています。モジュール化されたソリューションを用いて、お客様のニーズに合わせてビジネス企画から開発、マーケティングまでエンドツーエンドでのソリューションを提供していることが特徴です。

収益は、金融機関からの開発委託費やサービス維持運営費を受け取るソリューションビジネスと、潜在層ユーザーへのアクセスを支援し、送客ユーザー数等に応じて広告掲載料を受け取るマーケティングビジネスで構成されています。運営は主にFinatextが担っています。

ビッグデータ解析事業


ビッグデータを保有する企業のデータ利活用の促進を支援しており、POSデータやクレジットカードデータなどを解析して外部に提供するほか、生成AIの活用を支援するデータAIソリューションも展開しています。官公庁や国内外の機関投資家、不動産会社、小売事業者などが主な提供先です。

収益は、ビッグデータを解析してその結果をライセンスとして販売しデータライセンス料を受領するデータサービスビジネスと、データウェアハウスや生成AI開発基盤の構築支援を行って開発委託費等を受領するデータAIソリューションビジネスから構成されます。運営は主にナウキャストおよびFinatextが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して高い成長率で拡大を続けており、直近2期で大幅な増収を達成しています。利益面では過去の先行投資期間における赤字から黒字転換を果たし、経常利益・当期利益ともに急激に拡大しており、ビジネスモデルの収益性の高さが鮮明に表れています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 27億円 38億円 54億円 77億円 111億円
経常利益 -6億円 -3億円 2億円 9億円 19億円
利益率(%) -21.6% -8.5% 3.6% 12.2% 16.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.4億円 -28億円 -0.1億円 0.0億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な成長に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は高い水準を維持しており、営業利益率についても増収効果によって前期の12.3%から17.2%へと大きく改善し、ビジネスの収益構造がより強固なものとなっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 77億円 111億円
売上総利益 51億円 77億円
売上総利益率(%) 66.6% 69.2%
営業利益 10億円 19億円
営業利益率(%) 12.3% 17.2%


販売費及び一般管理費のうち、支払手数料が14億円(構成比25%)、給与手当が12億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで売上高が拡大しており、特に主力の金融インフラストラクチャ事業とビッグデータ解析事業が大きく伸長しています。利益面でもビッグデータ解析事業を中心に収益性が大きく向上し、全体の業績拡大を力強く牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
金融インフラストラクチャ事業 45億円 66億円 5億円 9億円 14.0%
フィンテックシフト事業 13億円 15億円 1億円 0.1億円 0.4%
ビッグデータ解析事業 18億円 29億円 4億円 8億円 28.7%
連結(合計) 77億円 111億円 10億円 19億円 17.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業は赤字または資金流出が先行しているものの、将来成長のため借入等で投資を継続する「勝負型」の局面となっています。
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に営業貸付金の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -9億円 -3億円
投資CF -5億円 -4億円
財務CF 10億円 2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.2%となり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「金融をサービスとして再発明する」というミッションを掲げています。この理念のもと、金融サービス提供者向けの次世代クラウド基幹システムの提供等を通じ、パートナー企業とともに、人々にとって遠い存在である金融サービスを暮らしに寄り添ったものにすることを目指して事業活動を展開しています。

(2) 企業文化


同社は、個々の自律とチームへの信頼を基盤とするカルチャーを重視しています。行動指針として「Jibungoto(じぶんごとで進めよう)」「Beyond(役割を越えて、助け合おう)」「Anti-bias(専門性を敬い、当たり前を疑おう)」「TM(時間とお金にこだわろう)」「Update×∞(アップデートし続けよう)」「AI+(AIネイティブで動こう)」という6つのプリンシプルを定めています。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業の継続的かつ累積的な成長を実現するため、主力の金融インフラストラクチャ事業における「パートナー数」を重要指標として位置づけています。特定の金額や利益の数値目標よりも、インフラを導入する企業を拡大し、パートナー企業によるエンドユーザーへのサービス提供を広げることを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、既存金融機関の新規事業や異業種からの金融参入ニーズを捉え、金融インフラストラクチャの機能拡充と大企業向け事業開発チームの確立によるパートナー数の拡大を進めます。また、蓄積されたデータを活用したデータ解析の技術力向上や、将来的には送金・決済領域や海外への事業展開も視野に入れた事業領域の拡大に取り組んでいきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


競争力の源泉は人材であるとの認識のもと、テクノロジーと金融の双方に明るい優秀かつ多様な人材の獲得と定着を目指しています。多様なキャリアプランの構築や、生成AIなど最新技術の全社的な活用推進、結婚・出産等のライフイベント支援を通じ、社員一人ひとりが必要な能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.8歳 4.6年 7,988,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

同社は規定に基づく公表を行っていないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、定着率(92.4%)、管理職に占める女性労働者の割合(23.1%)、生成AI定着率(94.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 許認可の取消しや行政処分に関するリスク


同社グループは、第一種・第二種金融商品取引業、投資運用業、少額短期保険業、貸金業などの登録を受けて事業を行っています。法令違反等によりこれらの許認可の取消しや業務停止等の行政処分を受けた場合、社会的信用が損なわれ、事業や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) システム障害と情報漏洩リスク


同社の事業はインターネットを通じて提供されるクラウド基幹システムであるため、システムの安定稼働が極めて重要です。プログラムの不具合や不正アクセス、自然災害等によりシステム障害や個人情報の流出が発生した場合、企業イメージの低下や多額の対応費用が発生する可能性があります。

(3) 競合の出現や技術革新への対応遅れ


金融インフラ市場では、技術革新や顧客ニーズの変化が非常に速く進行しています。画期的なサービスを提供する競合他社の出現や、新しい技術動向への対応が遅れた場合、競争優位性が失われ、収益の低下や追加的なシステム投資・人件費の増加を余儀なくされるリスクがあります。

(4) 金融インフラストラクチャの導入遅延や契約解消


提供するシステムは大型のエンタープライズ向けSaaSビジネスであり、1件の導入が収益に大きく影響します。想定以上の開発工数による納期の遅れや、パートナー企業との契約が締結されない、あるいは取引が解消される事態が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。