エクサウィザーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

エクサウィザーズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース市場に上場するエクサウィザーズは、AIプロダクトおよびプラットフォーム事業を展開しています。2025年3月期はAIプロダクト事業が牽引し、売上高は98億円と前期比17.0%の増収を達成しました。営業損益は黒字転換したものの、減損損失の計上等により最終赤字が拡大しています。


※本記事は、株式会社エクサウィザーズ の有価証券報告書(第10期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. エクサウィザーズってどんな会社?


同社は「AIを用いた社会課題解決」を掲げ、独自開発のAIアルゴリズムと産業知見を組み合わせたサービスを提供するAIベンチャーです。

(1) 会社概要


2016年にエクサインテリジェンスとして設立され、2017年にデジタルセンセーションと統合し現社名へ変更しました。2021年4月にエクスウェアを子会社化して開発体制を強化し、同年12月に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2023年にはスタジアムを子会社化し、事業領域を拡大しています。

連結従業員数は587名、単体では277名です。筆頭株主は代表取締役社長CEOが代表を務めるベータカタリストで、第2位は取締役CTOの坂根裕氏、第3位は個人株主の古屋俊和氏です。経営陣や創業メンバーが主要株主として名を連ね、経営へのコミットメントが高い資本構成となっています。

氏名 持株比率
ベータカタリスト 9.82%
坂根 裕 4.53%
古屋 俊和 4.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長CEOは春田真氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
春田 真 代表取締役社長CEO 住友銀行を経てディー・エヌ・エーに入社し、取締役会長兼執行役員などを歴任。2016年に同社(旧エクサインテリジェンス)を設立し代表取締役に就任。会長職を経て2025年4月より現職。
大植 択真 常務取締役COO ボストンコンサルティンググループを経て、2018年に同社入社。AIプラットフォーム事業部長、事業統括担当などを経て、2025年4月より現職。
坂根 裕 取締役CTO 静岡大学情報学部助手、デジタルセンセーション代表取締役を経て、2017年の経営統合に伴い同社取締役技術責任者に就任。2025年4月より現職。


社外取締役は、新貝康司(元日本たばこ産業代表取締役副社長)、火浦俊彦(元ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン会長)、宗像直子(元特許庁長官)です。

2. 事業内容


同社グループは、「AIプロダクト事業」、「AIプラットフォーム事業」および「その他サービス」事業を展開しています。

(1) AIプロダクト事業


多くの企業に共通する業務課題に対し、汎用的なAIソフトウエアを提供しています。主な製品にはDX人材発掘・育成の「exaBase DXアセスメント&ラーニング」や、介護記録AIアプリ「CareWiz トルト」などがあります。

収益は主に顧客からのライセンス料や利用料です。運営は同社のほか、子会社のエクサホームケアやExa Enterprise AIが行っています。

(2) AIプラットフォーム事業


大企業を中心に、顧客の経営課題解決に向けたAI導入支援やコンサルティングを行っています。独自のAI基盤「exaBase」を活用し、産業・社会課題の発見と解決を目指します。

収益は顧客との準委任契約や請負契約に基づくコンサルティングフィーや開発費です。運営は主に同社および子会社のエクスウェア、ExaMDが行っています。

(3) その他サービス事業


AIプロダクトやプラットフォーム以外の領域で、SaaS商材やIT商材の営業支援、人的リソースの提供などを行っています。AI技術を活用した営業活動の効率化も推進しています。

収益は営業支援サービス等の対価として顧客から受領します。運営は主に子会社のスタジアムが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大傾向にあり、直近5期間で約3.8倍に成長しています。利益面では先行投資により赤字が続いていましたが、当期は営業損益および経常損益が黒字化しました。一方で、当期は減損損失の計上等により最終赤字が拡大しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 26億円 48億円 56億円 84億円 98億円
経常利益 -5億円 -1億円 -4億円 -3億円 0.0億円
利益率(%) -17.3% -2.0% -6.7% -3.9% 0.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -6億円 -1億円 -0.3億円 -10億円 -26億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も増加し、利益率も改善傾向にあります。販管費も増加していますが、売上高の伸びが上回り、営業黒字化を達成しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 84億円 98億円
売上総利益 47億円 57億円
売上総利益率(%) 55.9% 57.8%
営業利益 -3億円 0.2億円
営業利益率(%) -3.6% 0.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が21億円(構成比37%)、業務委託費が8億円(同13%)を占めています。売上原価では、労務費や外注費などの人件費関連コストが主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


AIプロダクト事業が大きく伸長し、全体業績を牽引しました。AIプラットフォーム事業はビジネスモデル変革の影響で減収減益となりましたが、依然として最大の利益創出源です。その他サービス事業は増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
AIプロダクト事業 16億円 30億円 -0.3億円 6億円 21.7%
AIプラットフォーム事業 54億円 51億円 16億円 14億円 27.4%
その他サービス事業 14億円 17億円 0.5億円 1億円 5.6%
調整額 - - -19億円 -21億円 -
連結(合計) 84億円 98億円 -3億円 0.2億円 0.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期は本業による営業キャッシュ・フローがプラスに転じ、手元資金で投資を行う余裕が出始めています。一方で、投資活動や財務活動による支出があり、現預金残高は減少しました。自己資本比率は市場平均を下回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -2億円 6億円
投資CF -30億円 -9億円
財務CF 14億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」をミッションに掲げています。高いAI技術力とビジネス適用力を活かし、多様な領域における社会課題の解決を目指しています。

(2) 企業文化


社会課題に気づき(Cultivate Collective Awareness)、チームで挑み(Mission-Driven Teamwork)、その過程で自らも成長する(Elevate Your Craft)ことを重視しています。難易度の高い課題に挑み続け、期待を超える成果を生み出す姿勢を「Credo」として定めています。

(3) 経営計画・目標


より高い成長性と収益性を確保する観点から、以下の指標を重要な経営目標として掲げています。
* 連結売上高:最低20%成長を維持
* 連結営業利益:継続的な黒字化

(4) 成長戦略と重点施策


「AIぐるぐるモデル」を進化させ、顧客の業務自体を代行可能なAIエージェントを提供する「業務代行型AIエージェントサービスカンパニー」を目指します。具体的には以下の4つを戦略方針としています。
* exaBase 生成AIでAIエージェントを駆動・管理できる仕組みの構築
* AIプロダクト群のAIエージェント化
* exaBase Studioとのデータ連携におけるセキュリティ強化
* 戦略的パートナーシップの構築(業務提携・JV組成等)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社会課題解決への強い想いと高度な能力を持つ多様な人材(「10の18乗の魔法使い」)が集まり、互いに高め合う組織を目指しています。年次や職種にとらわれない挑戦的なアサインメントや社内公募制度を通じて成長機会を提供するとともに、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 35.0歳 2.7年 8,123,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 70.7%
男女賃金差異(正規雇用) 76.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 101.7%


※女性管理職比率については、有価証券報告書に具体的な数値の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(25.9%)、外国籍エンジニア比率(40%前後)、eNPS(+2.0%)、ワークエンゲージメント(4.5)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) AI関連市場の成長性と技術革新


AI市場は拡大傾向にありますが、法規制や景気変動により成長が鈍化する可能性があります。また、技術革新の速度が極めて速く、変化に対応できない場合は競争力を失う恐れがあります。

(2) 新規事業とM&Aによる事業拡大


積極的な新規事業開発やM&Aを推進していますが、これらに伴う追加支出やのれんの減損リスクがあります。計画通りに事業が進捗しない場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 情報管理とシステム障害


機密情報や個人情報を扱うため、情報漏洩や不正アクセスが発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜につながる可能性があります。また、クラウド環境の大規模障害やサイバー攻撃によるサービス停止のリスクもあります。

(4) 特定の人物への依存


創業者の春田真氏は経営戦略等において重要な役割を果たしており、同氏が退職した場合、事業や業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。