※本記事は、株式会社エクサウィザーズの有価証券報告書(第11期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. エクサウィザーズってどんな会社?
AIを用いた独自のソフトウエアやソリューションを提供し、企業の業務変革と社会課題の解決を支援しています。
■(1) 会社概要
2016年に設立され、2017年に「exaBase」の提供開始とともに現在の商号へ変更しました。2021年には東証マザーズ(現グロース市場)へ上場を果たしています。近年は特定の業界に特化したサービス展開を加速させており、2023年にExa Enterprise AI、2024年にExaMDを設立するなど、M&Aや戦略子会社の設立を通じた事業領域の拡大を積極的に進めています。
同社グループの従業員数は連結で624名、単体で270名です。筆頭株主は事業会社のベータカタリストで、第2位は役員の坂根裕氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ベータカタリスト | 9.53% |
| 坂根 裕 | 4.40% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 3.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長CEOは春田真氏が務めています。社外取締役は4名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 春田 真 | 代表取締役社長CEO | 1992年住友銀行入行、ディー・エヌ・エー取締役会長を経て2016年同社設立代表取締役。2025年4月より現職。 |
| 大植 択真 | 常務取締役COO | 2013年ボストンコンサルティンググループ入社。2018年同社入社、AIプラットフォーム事業部長等を経て2025年4月より現職。 |
| 坂根 裕 | 取締役CTO | 2002年静岡大学情報学部助手、デジタルセンセーション代表取締役を経て、2017年同社取締役。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、宗像直子(元特許庁長官)、佐藤学(元フジマック管理本部長)、杉田浩章(元ボストンコンサルティンググループ日本代表)、渡辺雅之(元Quipper Ltd.(UK) CEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「AIプロダクト事業」および「AIソリューションサービス事業」を展開しています。
■AIプロダクト事業
広範な顧客向けに、最小限の追加調整で即座に業務で活用可能なAIソフトウエアを提供し、社会課題の解決を目指しています。生成AIやAIエージェントを活用し、DX人材育成の「exaBase DXアセスメント&ラーニング」や「exaBase 生成AI」など、多くの企業に共通する業務課題に向けたサービスを展開しています。
顧客に対する知的財産のライセンス供与等を収益源とし、ライセンスの利用やアクセス権の付与期間に応じて収益を得ています。運営は主に同社およびエクサホームケア、Exa Enterprise AIなどの子会社が担っています。
■AIソリューションサービス事業
大企業を中心として、顧客の経営課題解決を通じて、様々な業界の産業・社会課題を発見し、その革新の実現を目指しています。同社グループのAIプラットフォーム「exaBase」に蓄積されたデータ基盤を用い、マルチセクターにおけるコンサルティングやアルゴリズム・ソフトウエア開発を提供しています。
顧客のデジタル・AI戦略やDX推進体制の立案・実行支援、ならびに営業支援やビジネスプロセスアウトソーシングサービスによる対価を収益源としています。運営は主に同社およびエクスウェア、スタジアムなどの子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して高い成長を続けており、直近5年間で大幅に規模を拡大しています。利益面では先行投資負担等により赤字が続いていましたが、直近の2026年3月期には売上の増加と利益体質の改善が寄与し、経常利益および当期利益ともに大幅な黒字転換を果たしました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 48億円 | 56億円 | 84億円 | 98億円 | 120億円 |
| 経常利益 | -1億円 | -4億円 | -3億円 | 200万円 | 16億円 |
| 利益率(%) | -2.0% | -6.7% | -3.9% | 0.0% | 13.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.5億円 | -0.3億円 | -10億円 | -15億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の順調な拡大に加え、売上総利益率も大きく改善しています。これにより、販売費及び一般管理費の増加を吸収し、営業利益は大幅な黒字へと転換しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 98億円 | 120億円 |
| 売上総利益 | 57億円 | 80億円 |
| 売上総利益率(%) | 57.8% | 66.7% |
| 営業利益 | 0.2億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 0.2% | 13.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が24億円(構成比37%)、業務委託費が9億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
AIプロダクト事業は、生成AI関連サービスの需要を取り込み、売上が急拡大するとともに利益も大きく伸長しました。AIソリューションサービス事業も、大企業のAI・DX支援ニーズを背景に堅調な売上成長を維持し、案件の精査による生産性向上で高い利益率を実現しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| AIプロダクト事業 | 30億円 | 49億円 | 8億円 | 19億円 | 38.0% |
| AIソリューションサービス事業 | 68億円 | 71億円 | 14億円 | 22億円 | 31.3% |
| 連結(合計) | 98億円 | 120億円 | 0.2億円 | 16億円 | 13.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは「積極型」です。営業活動で生み出した資金と、新たな資金調達を組み合わせて、将来の成長に向けた積極的な投資を行っている状態を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 6億円 | 17億円 |
| 投資CF | -9億円 | -10億円 |
| 財務CF | -2億円 | 3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は44.1%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も48.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」をミッションに掲げています。高いAI技術力とビジネス適用力を活かし、多様な領域における産業・社会課題を発見し、その革新を実現することを目指して事業を展開しています。
■(2) 企業文化
行動指針として「Move fast」「Wow Users」「Go Beyond」「AI First」「Grow and Grow」の5つの要素で構成される「Credo」を定めています。全役職員が共通の価値観を持ち、社会課題解決への強い想いと高度な能力を有する多様な人材がお互いを高め合う組織基盤を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
より高い成長性および収益性を確保する観点から、中長期的な経営指標を掲げています。
・連結売上高は最低30%成長を維持
・連結営業利益の継続的な黒字
■(4) 成長戦略と重点施策
顧客の課題を汎用的な課題に昇華させて解決する「AIぐるぐるモデル」を発展させ、「3P(人、プラットフォーム、プロダクト)」と「フロンティア」を軸に事業を推進します。人材体制の強化やAIプラットフォーム「exaBase」の深化、特定課題を解決するAIエージェントの開発に加え、機動的な事業特化型子会社の設立と戦略的パートナーシップの構築に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
AIを社会実装するために最も重要な経営資源を「人」と位置づけ、自社を「AXカンパニー」へと進化させる取り組みを進めています。採用・育成・評価までを一気通貫で運営する体制を整え、自社プロダクトを活用した定量的なスキル評価や、若手の早期登用、オープンな社内公募制度を通じて、AI実装を牽引できる人材の確保と育成を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 34.9歳 | 3.0年 | 8,550,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 92.9% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 69.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用従業員) | 78.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期雇用従業員) | 84.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(29.4%)、外国籍エンジニア比率(約40%)、Credo浸透率(3.9)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) AI関連市場の成長性と技術革新
AI技術の革新速度は極めて速く、市場の拡大機会となる一方で、技術革新のスピードや新たなビジネスモデルの出現、法規制の導入などによる市場環境の変化に同社グループが適応できない場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 情報管理とセキュリティ
AIの学習対象には、顧客の機密情報や個人情報が含まれる場合があります。サイバー攻撃や不正アクセス、AIエージェントの誤作動による情報漏洩が発生した場合、損害賠償責任の発生や信用の低下を招き、財務状況に重大な影響を与えるリスクがあります。
■(3) AI倫理・AIガバナンス
AIシステムの開発や運用において、意図せず社会規範や倫理を逸脱する結果を引き起こす可能性が完全には否定できません。AI倫理やAIガバナンスを巡る社会的な要請の変化に適応できない場合、企業の信用低下に繋がるおそれがあります。
■(4) 新規事業とM&Aの不確実性
積極的な新規事業展開や企業買収により追加投資が発生し、当初の予測通りに事業が成長しない場合や、買収に伴うのれんの減損損失が発生した場合には、同社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。