サインド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サインド 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サインドは東京証券取引所グロース市場に上場しており、理美容店舗向けのクラウド型予約管理システム「BeautyMerit」や予約一元管理システム「かんざし」の提供を主力事業としています。直近の業績は、主力サービスの契約店舗数が順調に拡大したことで増収増益を達成しており、安定した成長を続けています。


※本記事は、株式会社サインドの有価証券報告書(第15期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サインドってどんな会社?


理美容業界に特化したSaaS型予約管理システムを提供し、店舗のDX化を支援する企業です。

(1) 会社概要


2011年に設立され、翌2012年に理美容店舗向けのクラウド型予約管理システム「BeautyMerit」の提供を開始しました。2021年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2023年には予約一元管理システム「かんざし」を展開するパシフィックポーターを子会社化するなど事業基盤を拡大しています。

現在の従業員数は連結で127名、単体で96名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業者の奥脇隆司氏で、第2位も創業メンバーで現副社長の高橋直也氏、第3位も取締役の亀井信吾氏となっており、経営陣が上位株主を占める体制となっています。

氏名 持株比率
奥脇 隆司 35.94%
高橋 直也 29.34%
亀井 信吾 5.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は奥脇隆司氏が務めており、社外取締役の比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
奥脇 隆司 代表取締役社長 手間いらず等を経て2011年にサインドを設立し代表取締役社長。パシフィックポーター取締役。
高橋 直也 代表取締役副社長兼管理部長 手間いらずを経て2011年にサインド設立と同時に取締役。2019年より代表取締役副社長兼管理部長。
亀井 信吾 取締役兼開発部長 アド・ホック、手間いらず等を経て2019年にサインド取締役。2023年より取締役兼開発部長。


社外取締役は、菅野隆(元ケンコーロジコム社長)、峰﨑揚右(パプレア社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「理美容ソリューション事業」の単一セグメントで事業を展開していますが、主に2つのサービスラインで構成されています。

(1) BeautyMerit(ビューティーメリット)


理美容店舗に対して、集客から予約、施術、会計、アフターフォローまで最適な顧客体験と働き方改革を支援するクラウド型予約管理システムを提供しています。店舗専用の公式スマートフォンアプリ作成機能や、複数の集客サイトの予約情報の一元管理、SNSからのネット予約誘導、決済機能などを備えています。

運営はサインドが担当しています。収益源は、理美容店舗から継続的に受領するシステム利用の月額費用(サブスクリプションモデル)が中心です。さらに、導入時の初期設定費用や、機能追加のオプション費用、決済・EC機能の利用に伴う決済手数料なども収益として獲得しています。

(2) かんざし


ヘアサロンやネイルサロンなどの理美容店舗を対象とした予約一元管理システムを提供しています。店舗が契約している複数の集客サイトや自社予約エンジンの空き時間や料金などを一元管理でき、一つの管理画面から情報を更新するだけで自動的に全サイトへ反映されるため、店舗の業務負担を大幅に削減できます。

運営はサインドの子会社であるパシフィックポーターが担当しています。店舗が継続して利用するシステムに対して、使用期間に応じた対価を受領するサブスクリプション(月額課金)モデルとなっており、安定して収益が積み上がるストック型の収益構造を構築しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績を見ると、売上高は主力サービスの契約店舗数拡大により毎期力強い増収を達成しています。経常利益については、子会社化に伴う費用等で一時的な減益が見られたものの、その後は収益基盤の強化により順調に回復し、増収増益のトレンドを維持しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 13億円 20億円 22億円 25億円
経常利益 3億円 2億円 2億円 3億円
利益率(%) 26.7% 7.9% 10.2% 10.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 0.4億円 1億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高は堅調に推移しており、売上総利益率も70%台後半の高い水準を維持しています。営業利益についてもコストコントロールが機能し、売上成長を上回るペースで増益を達成しており、利益率の改善が進んでいることが確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 22億円 25億円
売上総利益 17億円 20億円
売上総利益率(%) 77.8% 76.8%
営業利益 2億円 3億円
営業利益率(%) 10.6% 13.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4億円(構成比26%)、のれん償却額が3億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は理美容ソリューション事業の単一セグメントであるため、全社の売上高がそのまま同事業の売上高となっています。各主力サービスの契約店舗数が順調に純増したことにより、前期間と比較して大幅な増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
理美容ソリューション事業 22億円 25億円
連結(合計) 22億円 25億円


営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、本業で創出した資金で将来に向けた投資を行うとともに、借入金の返済等も進めている「健全型」のキャッシュ・フロー状態といえます。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も71.5%と市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「インターネットを通じて、心のつながりを提供する」というミッションを掲げています。インターネットとテクノロジーを駆使して、経済活動における「売り手」と「買い手」、そしてその関係をつなぐ「取引」において最適な顧客体験を構築する仕組みを提供し、事業者の経済成長を支えることを通じて企業価値の最大化を図ることを目指しています。

(2) 企業文化


ミッション実現のための行動指針として「目的でつながる」「データでつながる」「スピードでつながる」の3つを定めています。関わる全ての人をチームと捉えて当事者意識を持ち、データを信じて戦略を決定し、目的から逆算して失敗を恐れずスピード感を持って行動することで、チーム全体で成長し続ける文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は継続してサービス提供を行うサブスクリプション(月額課金)モデルを中心とした事業展開を行っているため、継続的に収益が積み上がる「ARR(年間定額収益)」の拡大を経営上の目標としています。この目標の達成状況を判断するための客観的な重要指標として、「契約店舗数」「ARPU(1店舗当たりの平均月額単価)」「カスタマーチャーンレート(解約率)」を定めています。

(4) 成長戦略と重点施策


顧客への提供価値と売上高の最大化を目指し、継続的な新規顧客の獲得、サービスの機能追加に向けたシステム開発への積極投資、手厚いサポートによる解約率の低減に取り組みます。また、既存の顧客・予約基盤を活用した理美容店舗向けのリテールメディアや美容業界特化型の決済サービスなど、収益基盤の多層化を図る新規事業の創出にも注力していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業基盤の拡大や新規サービスの開発を推進するため、多岐にわたるバックグラウンドを有する優秀な人材の獲得と定着を重視しています。求める成果責任に基づき「OKR」を用いた目標管理を行い、毎月の1on1でコミュニケーションを活性化させています。また、役割・成果・行動(バリュー体現)を有機的に処遇に反映する人事評価制度や、社内外の研修を活用した自律的な能力開発を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.2歳 4.4年 6,441,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 理美容領域の競争激化


同社グループは理美容領域におけるインターネットサービスの提供を行っていますが、同様の事業領域には競合企業が存在しています。今後、他社の新規参入等により競争がさらに激化し、自社サービスの効果的な差別化を図れず顧客獲得や維持が想定通りに進まない場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 外部プラットフォームへの依存


スマートフォン向けアプリ作成サービスを提供しているため、AppleやGoogleが運営するプラットフォームの動向や規約変更が事業に影響を与えます。また、外部事業者が提供する予約集客サイトやPOSシステムとの連携を前提とした機能も多く、これらの事業者の動向や関係変化が業績に影響するリスクがあります。

(3) 情報漏洩とシステム障害


多数の顧客や個人のデータを扱うクラウドサービスを提供しているため、サイバー攻撃や不正アクセスによる情報漏洩リスクが常に存在します。実際に過去にも不審なアクセスを検知した事案がありセキュリティ監視体制を強化していますが、万一重大な情報漏洩や大規模なシステム障害が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜につながる恐れがあります。

(4) サブスクリプションの解約増加


同社グループの収益基盤は、顧客がシステムを継続利用することで得られるサブスクリプション(月額課金)売上を中心に構成されています。市場環境の変化や自社サービスの競争力低下などによってカスタマーチャーンレート(解約率)が上昇し、継続利用店舗数が減少に転じた場合、将来の安定的な収益確保に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。