シーユーシー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シーユーシー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場するシーユーシーは、国内外での医療機関の経営支援や、ホスピス型住宅の運営、居宅訪問看護などを展開しています。直近の業績は、売上収益が544億円と前期比で大幅な増収を達成した一方で、税引前利益は先行投資等の影響もあり51億円とわずかに減益のトレンドとなっています。


※本記事は、株式会社シーユーシーの有価証券報告書(第12期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. シーユーシーってどんな会社?


医療機関への経営支援からホスピスや訪問看護まで、医療・介護領域で幅広いサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


2014年にエムスリードクターサポートとして設立され、訪問診療クリニックや病院への経営支援を開始しました。2017年にはホスピス事業、2018年には居宅訪問看護事業に参入し領域を拡大しました。2019年に現在のシーユーシーへ商号変更し、2023年には東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしました。

現在の従業員数は連結で5,740名、単体で416名体制となっています。筆頭株主はインターネット医療関連サービスを提供するエムスリーで63.45%を保有しており、親会社となっています。第2位はNATIONAL FINANCIAL SERVICES LLC、第3位は日本カストディ銀行です。

氏名 持株比率
エムスリー 63.45%
NATIONAL FINANCIAL SERVICES LLC 6.21%
日本カストディ銀行(信託口) 3.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役は濵口慶太氏が務めており、社外取締役比率は28.6%となっています。

氏名 役職 主な経歴
濵口慶太 代表取締役 リクルート、ジェイ・ウィル・パートナーズ等を経て、2013年にエムスリーへ入社。2014年より現職。
田邉隆通 取締役 リクルート、日本福祉総合研究所等を経て、2015年に同社へ入社。2022年より現職。ノアコンツェル代表取締役を兼任。
松浦俊雄 取締役 リクルート、カルチュア・コンビニエンス・クラブ等を経て、2022年に同社へ入社。2025年より現職。
大場啓史 取締役 みずほ証券等を経て、エムスリーで執行役員を務める。2019年に同社監査役に就任し、2025年より現職。
桶谷主税 取締役(監査等委員) 三洋電機を経て、2015年に同社へ入社。2020年に執行役員、2022年に取締役に就任し、2025年より現職。


社外取締役は、芦澤千尋氏(弁護士)、加藤佑子氏(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療機関」「ホスピス」「居宅訪問看護」「メディカルケアレジデンス」および「その他」事業を展開しています。

医療機関

国内外の病院、訪問診療クリニック等の医療機関に対する経営戦略・管理、人事・採用等の支援や、海外におけるクリニック運営などのサービスを提供しています。
支援先医療機関からの月額報酬やワンタイム報酬、給食提供、不動産賃貸収入を収益源としています。運営は同社やシーユーシー・フーズなどが担っています。

ホスピス

がん末期や神経難病等の医療依存度が高い入居者を対象としたホスピス型住宅の運営や、訪問看護・訪問介護等のサービスを提供しています。
施設の入居者からの家賃収入や、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬等を収益源としています。運営はシーユーシー・ホスピスなどが担っています。

居宅訪問看護

居宅の利用者向けに24時間365日対応の訪問看護サービスや、居宅介護支援、在宅治験支援等のサービスを提供しています。
公的保険からの診療報酬・介護報酬や、製薬会社等からの治験業務受託収入を収益源としています。運営はソフィアメディなどが担っています。

メディカルケアレジデンス

住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅等の施設運営や、入居者への定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスを提供しています。
入居者からの家賃収入や公的保険からの介護報酬・診療報酬等を収益源としています。運営はノアコンツェルなどが担っています。

その他

眼科材料及び眼鏡用品の販売サービス、M&A仲介サービス等の報告セグメントに含まれない事業を展開しています。
各種サービス提供に伴う販売収入や仲介手数料を主な収益源としています。運営は同社グループ各社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は直近5年間で順調な拡大を続けており、特に直近2期で大幅な増収を達成しています。一方で、税引前利益や当期利益は堅調に推移しているものの、直近では先行投資や一時的な要因によりやや減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 353億円 352億円 330億円 470億円 544億円
税引前利益 36億円 36億円 41億円 52億円 51億円
利益率(%) 10.3% 10.3% 12.5% 11.2% 9.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 27億円 24億円 26億円 31億円 29億円

(2) 損益計算書


売上収益は前期比で増加したものの、事業拡大に伴う売上原価の増加等により売上総利益率は低下しています。しかし、その他の収益の計上などにより、営業利益は前期を上回る結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 470億円 544億円
売上総利益 66億円 61億円
売上総利益率(%) 13.9% 11.3%
営業利益 53億円 58億円
営業利益率(%) 11.4% 10.6%


販売費及び一般管理費(当期218億円)のうち、従業員給付費用が69億円(構成比32%)、減価償却費及び償却費が49億円(同22%)を占めています。売上原価(当期289億円)においても従業員給付費用が256億円(構成比88%)と大部分を占めており、労働集約型の事業構造であることがわかります。

(3) セグメント収益


ホスピスやメディカルケアレジデンスが施設の新規開設や企業結合等により大幅な増収を牽引しました。利益面では、医療機関が不動産売却益などにより大きく伸長した一方、メディカルケアレジデンスは先行投資により営業損失となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
医療機関 176億円 173億円 36億円 46億円 26.3%
ホスピス 138億円 167億円 10億円 10億円 5.9%
居宅訪問看護 123億円 129億円 12億円 14億円 10.9%
メディカルケアレジデンス 36億円 77億円 3億円 -3億円 -3.4%
その他 1億円 1億円 1億円 0.3億円 18.2%
調整額 -3億円 -5億円 -8億円 -9億円 -
連結(合計) 470億円 544億円 53億円 58億円 10.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは「積極型」に分類されます。本業で安定してキャッシュを生み出しつつ、新たな借入等の資金調達によって事業拡大や施設開設に向けた積極的な投資を行っている状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 25億円 57億円
投資CF 45億円 -34億円
財務CF -76億円 60億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は36.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


ミッションは「医療という希望を創る。」です。これに基づき、患者には「患者視点の医療をひとりでも多くの方へ提供できる環境を創る。」、医療機関には「地域に求められ、働きがいのある職場環境を創る。」、社会には「医療課題の解決によって健全で持続可能な社会を創る。」ことを目指しています。社名のCUCには「変わるまで、変える(Change Until Change)」という挑戦への強い意志が込められています。

(2) 企業文化


従業員が共通して貫く行動指針として「Way」を定めています。具体的には、「自分の立場ではなく、患者様の気持ちで考える」「できない理由ではなく、できる方法を探して実行する」「既成概念にとらわれず、理想を追求する」「専門性の前に、人間性を重視する」「上下ではなく、ひとつのチームとして手を重ねる」の5つを掲げ、職種の壁を越えた連携を強化しています。

(3) 経営計画・目標


事業規模と収益性を測る客観的な指標として、売上収益、営業利益、及びEBITDAを重視しています。これらの指標の着実な拡大を維持しつつ、中長期的な企業価値向上のために新規事業展開を継続する方針です。また、財務の安定性を判断する指標として、EBITDA有利子負債倍率や親会社所有者帰属持分比率等を用い、持続的な成長を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


国内の各セグメントが連携し、地域包括ケアシステムが効率的に運営されるプラットフォームの構築を推進します。医療機関セグメントでは支援先数の増加や海外での事業拡大を図り、ホスピスや訪問看護等では施設の新規開設や稼働率改善により、医療依存度が高い利用者の受け入れを強化します。また、優秀な人材の確保やDX推進による省人化と品質の向上に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


医療従事者が誇りと安心感を持って働ける環境づくりを重視し、「一人ひとりが働きがいを感じ、夢や理想に挑戦できる環境を実現する」ことを人材戦略の土台としています。医療職とビジネス職の専門性を融合させた変革リーダーの育成や、各種研修・奨学金制度によるキャリア自律の支援、柔軟な働き方を後押しする制度を整備し、人材の確保・定着とウェルビーイングの向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.7歳 3.5年 6,661,000円


※平均年間給与は賞与及びライフプラン手当等を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 16.7%
男性育児休業取得率 76.2%
男女賃金差異(全労働者) 71.8%
男女賃金差異(正規労働者) 73.2%
男女賃金差異(非正規労働者) 122.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループにおけるグローバル人材の離職率(2.3%)、2030年度末までの女性管理職比率の目標値(単体で30%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療ヘルスケア市場の環境変化

同社は高齢者医療市場を中心に事業を展開していますが、長期的な高齢者人口の減少や想定を超える医療保険制度等の見直しが発生する可能性があります。これらの事象により医療ヘルスケア市場が縮小した場合、同社グループの事業や業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 競合他社との競争激化

各事業領域において、他社との競争が存在します。資本力や営業力に優れた企業が参入し、より低価格で同等以上のサービスを提供した場合や、競合がM&A等により大規模に事業を展開した場合、同社の競争優位性が失われ、事業展開や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) インフレと人件費高騰

同社の事業は労働集約型であるため、賃金水準の急激な高騰は人件費負担の増加に直結します。また、ホスピス事業等においては、インフレの長期化に伴う建築資材や諸経費の高騰、建設人材の不足により施設の開設・維持コストが増加し、収益性に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。