シーユーシー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

シーユーシー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場する企業です。医療機関への経営支援やホスピス、訪問看護事業等を主要事業として展開しています。直近の業績は、M&Aや新規拠点開設が寄与し、大幅な増収増益を達成しています。親会社はエムスリーです。


※本記事は、株式会社シーユーシー の有価証券報告書(第11期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. シーユーシーってどんな会社?


エムスリーグループの一員として、医療機関の経営支援やホスピス、訪問看護事業を展開するヘルスケア企業です。

(1) 会社概要


同社は2014年、エムスリーの子会社として設立され、医療機関支援事業を開始しました。2017年にはホスピス事業、2018年には居宅訪問看護事業へ参入し、事業領域を拡大しています。2019年に現商号へ変更した後、2023年6月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。2024年には米国での足病クリニック運営会社や、国内の有料老人ホーム運営会社を子会社化するなど、積極的なM&Aにより成長を続けています。

2025年3月末時点で、連結従業員数は5,145名、単体では467名です。筆頭株主は親会社であるエムスリーで、発行済株式の過半数を保有しています。第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は同社代表取締役の濵口慶太氏の株式が含まれる外国法人です。

氏名 持株比率
エムスリー 63.44%
日本カストディ銀行(信託口) 7.22%
NATIONAL FINANCIAL SERVICES LLC 6.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性2名(社外取締役含む)の計7名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役は濵口慶太氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
濵口 慶太 代表取締役 リクルート、ジェイ・ウィル・パートナーズを経て、2013年にエムスリー入社。2014年8月より同社代表取締役。
田邉 隆通 取締役 リクルート、日本福祉総合研究所等を経て、2015年に同社入社。2022年6月より取締役。
松浦 俊雄 取締役 平和、リクルート、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、2022年に同社入社。2025年6月より取締役。
大場 啓史 取締役 みずほ証券等を経て2013年にエムスリー入社。同社執行役員を経て2020年より取締役。
桶谷 主税 取締役(監査等委員) 三洋電機を経て2015年に同社入社。執行役員、取締役を経て2025年6月より取締役(監査等委員)。


社外取締役は、光原ゆき(特定非営利活動法人キープ・ママ・スマイリング理事長)、大澤玄(三浦法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「医療機関」「ホスピス」「居宅訪問看護」「メディカルケアレジデンス」および「その他」事業を展開しています。

(1) 医療機関セグメント


国内においては病院やクリニックに対し、経営戦略策定から人事・経理等のバックオフィス支援、M&A支援まで幅広い経営支援サービスを提供しています。海外では、米国での足病・下肢静脈疾患クリニックの運営や、東南アジアでの医療機関支援を行っています。

国内事業では、支援先の医療機関から経営支援サービスに対する対価を受け取ります。海外のクリニック運営では、患者や保険会社等から診療報酬等を受け取ります。運営は主に同社および海外連結子会社が行っています。

(2) ホスピスセグメント


がん末期や神経難病の方を主な対象としたホスピス型住宅(住宅型有料老人ホーム等)を運営し、入居者に対して訪問看護および訪問介護サービスを提供しています。24時間365日体制でケアを行い、看取り機能の提供にも注力しています。

入居者からは家賃等を、国民健康保険団体連合会等からは介護報酬および診療報酬を受け取ります。運営は主に株式会社シーユーシー・ホスピスが行っています。

(3) 居宅訪問看護セグメント


自宅で療養する利用者向けに、医師の指示に基づき看護師やセラピストが訪問し、医療的ケアやリハビリテーションを提供する訪問看護サービスを展開しています。大規模かつ24時間対応可能な訪問看護ステーションの展開を進めています。

国民健康保険団体連合会等から診療報酬および介護報酬を、利用者からは自己負担金を受け取ります。運営は主にソフィアメディ株式会社が行っています。

(4) メディカルケアレジデンスセグメント


住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、リハビリ強化型デイサービスの運営を行っています。また、施設入居者に対して定期巡回・随時対応型の訪問介護看護サービスを提供し、医療依存度や要介護度の高い入居者の受け入れを推進しています。

入居者からは家賃等を、国民健康保険団体連合会等からは介護報酬等を受け取ります。運営は主に株式会社ノアコンツェルが行っています。

(5) その他


上記セグメントに含まれない事業として、給食サービスや不動産賃貸、調剤薬局サービスなどを展開しています。

支援先医療機関や施設入居者等から対価を受け取ります。運営は同社グループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は右肩上がりで成長を続けており、特に直近では大幅な増収となっています。利益面でも、税引前利益および当期利益ともに増加傾向にあり、収益性を維持しながら事業規模を拡大させていることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 166億円 353億円 352億円 330億円 470億円
税引前利益 16億円 36億円 36億円 41億円 52億円
利益率(%) 9.5% 10.3% 10.3% 12.5% 11.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 27億円 24億円 26億円 31億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上収益の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に伸長しています。営業利益についても増加しており、事業拡大に伴うコスト増を吸収して利益を創出しています。営業利益率は高水準を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 330億円 470億円
売上総利益 159億円 232億円
売上総利益率(%) 48.2% 49.3%
営業利益 37億円 53億円
営業利益率(%) 11.3% 11.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が61億円(構成比33%)、減価償却費及び償却費が33億円(同18%)を占めています。売上原価においては、従業員給付費用が216億円(構成比90%)と大半を占めており、労働集約的なコスト構造となっています。

(3) セグメント収益


全ての報告セグメントで増収となっており、特に医療機関セグメントとホスピスセグメントが大きく成長しました。医療機関セグメントはM&A等の効果により売上が伸長しました。ホスピスセグメントは新規開設と稼働率向上により大幅な増益を達成しました。新規連結のメディカルケアレジデンスも収益に寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
医療機関 118億円 176億円 39億円 36億円 20.5%
ホスピス 104億円 138億円 4億円 10億円 7.3%
居宅訪問看護 109億円 123億円 6億円 12億円 9.8%
メディカルケアレジデンス - 36億円 - 3億円 8.4%
その他 2億円 1億円 0.2億円 0.6億円 45.8%
調整額 -3億円 -3億円 -12億円 -8億円 -
連結(合計) 330億円 470億円 37億円 53億円 11.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


改善型(営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面)

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 42億円 25億円
投資CF -147億円 45億円
財務CF 144億円 -76億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る親会社所有者帰属持分比率は34.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「医療という希望を創る。」をミッション(使命)として掲げています。このミッションに基づき、患者には「患者視点の医療を提供できる環境」、医療機関には「地域に求められ働きがいのある職場環境」、社会には「医療課題の解決による健全で持続可能な社会」を創ることを目指し、事業を展開しています。

(2) 企業文化


社名のシーユーシー(CUC)は、「変わるまで、変える(Change Until Change)」の頭文字から生まれました。これは、変化を恐れず医療課題に挑戦するという存在意義を表現しており、新しい挑戦に向かい続けるという強い意志が込められています。

(3) 経営計画・目標


同社は事業規模と収益性を測る指標として、売上収益、営業利益、EBITDAを重視しています。また、各セグメントにおいて、支援先主要拠点数、ホスピス型住宅の定員数および稼働率、居宅訪問看護の総ケア時間、メディカルケアレジデンスの定員数および稼働率を主要な経営指標として設定しています。財務安定性の指標としてEBITDA有利子負債倍率等も用いています。

(4) 成長戦略と重点施策


医療機関セグメントでは、国内での経営支援サービスの拡大に加え、米国や東南アジアでの事業拡大を目指しています。ホスピス、居宅訪問看護、メディカルケアレジデンスの各セグメントでは、サービスの質を最優先しつつ、新規拠点の開設やM&Aによる事業基盤の拡大、ドミナント戦略による効率化を推進します。また、医療と介護の連携強化によるプラットフォーム構築を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


医療・介護業界において事業の根幹となるのは優秀な人材の確保と育成であると考え、ミッション実現のために達成感ややりがいを実感できる社風の醸成に努めています。採用力強化やリテンション向上のため、継続的な教育制度や柔軟な労働体系を整備し、専門職がスキルを向上させつつ長く働ける環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.9歳 3.2年 6,433,000円


※平均年間給与は、賞与及びライフプラン手当等を含み、通勤手当は除いています。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.9%
男性育児休業取得率 46.2%
男女賃金差異(全労働者) 74.0%
男女賃金差異(正規) 74.2%
男女賃金差異(非正規) 141.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ホスピスセグメント離職率(22.0%)、居宅訪問看護セグメント離職率(15.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 医療・介護制度の改定


主力事業である医療機関支援やホスピス、訪問看護等は、診療報酬や介護報酬制度の影響を強く受けます。2年に1度の診療報酬改定や3年に1度の介護報酬改定において、大幅な減額改定や制度変更が行われた場合、同社グループの収益性が低下し、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 競合他社との競争激化


各事業領域において、上場企業を含む競合他社が存在します。競合他社が新規参入や事業拡大、M&A等により競争力を高めた場合、あるいは同社が新規展開する地域で競合他社が優位性を持っている場合、顧客獲得が進まず、同社グループの競争優位性や業績に悪影響が生じる可能性があります。

(3) インフレと人件費高騰


労働集約型の事業であるため、賃金水準の高騰は収益を圧迫します。また、ホスピス事業等の拡大には新規施設の建設が必要ですが、インフレによる建築資材の高騰や建設人材不足により調達コストが増加した場合、事業計画や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人材の確保・育成


事業拡大には医師、看護師、介護士等の専門職の採用と育成が不可欠です。労働人口の減少や業界の人材不足により、計画通りの採用が進まない場合や、適切な育成ができず離職が増加した場合、サービスの質が低下し、事業拡大や経営成績に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。