※本記事は、サクシードの有価証券報告書(第22期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. サクシードってどんな会社?
教育と福祉の社会課題解決を目指し、専門人材の紹介・派遣や学習教室の運営を展開する企業です。
■(1) 会社概要
2004年にサクシードを設立し、個別指導学院サクシードを開校しました。2007年に家庭教師事業および塾業界向け人材紹介・派遣事業を開始し、その後保育士や学校教員、介護職などへ人材支援の領域を広げています。2021年に東京証券取引所マザーズへ上場し、直近では教育関連AI事業や児童福祉事業をM&Aで取得しました。
現在の従業員数は連結で209名、単体で118名です。筆頭株主は創業者の高木毅氏で、第2位は佐藤幹雄氏、第3位は光通信KK投資事業有限責任組合無限責任組合員光通信となっており、事業会社や経営陣が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 高木毅 | 58.66% |
| 佐藤幹雄 | 6.98% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合無限責任組合員光通信 | 5.14% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は高木毅氏が務めており、社外取締役の比率は16.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 高木毅 | 代表取締役社長 | 1992年国際証券入社。タートルジヤパン取締役を経て、2004年に同社を設立し代表取締役社長に就任。以降、現職。 |
| 石川修一 | 取締役個別指導教室事業部長兼家庭教師事業部長 | 1993年タートルジヤパン入社。ノーバスを経て2004年に同社へ入社し、2006年より現職。 |
| 森峰志 | 取締役福祉人材支援事業部長兼人事広報部長兼マーケティング部長 | 2008年に同社へ入社。2017年に取締役へ就任し、現職。 |
| 泓田翔平 | 取締役教育人材支援事業部長 | 2012年に同社へ入社。2021年に取締役へ就任し、現職。 |
| 植田庸平 | 取締役管理部長 | 2007年あずさ監査法人入所。2011年公認会計士登録。2020年に同社へ入社し、2021年より現職。 |
社外取締役は、佐藤純氏(元監査法人トーマツ・公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「教育人材支援事業」「福祉人材支援事業」「個別指導教室事業」「家庭教師事業」「unico事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 教育人材支援事業
塾講師、学校教員、部活動指導員、ICT支援員、日本語教師等の教育に関わる人材を、民間学習塾、学校法人、地方自治体などに対して紹介および派遣、業務受託するサービスを提供しています。教員の過重労働や人材不足といった教育現場の課題解決に貢献しています。
収益源は、求人先の学校法人や学習塾等から受け取る人材紹介手数料や派遣料金、自治体等からの業務受託料です。運営は同社が行っており、自社媒体等を通じて求職者を集め、専任コーディネーターがマッチングを図っています。
■(2) 福祉人材支援事業
保育士、栄養士、学童保育スタッフ、児童発達支援管理責任者などの福祉関連人材を、全国の保育所、学童保育施設、放課後等デイサービス等を運営する法人や自治体に紹介・派遣しています。待機児童や小1の壁問題、人材不足の解消を目指しています。
収益は、保育施設や学童運営法人等から受け取る紹介手数料および派遣料金によって構成されています。運営は同社が行い、自社内のWebマーケティング専門部署を活用して機動的に求職者を集客し、きめ細やかなマッチングを実現しています。
■(3) 個別指導教室事業
一人ひとりに合わせた学習指導を行う「個別指導学院サクシード」と、学習塾付き学童クラブ「ペンタスキッズ」を運営しています。人材サービス事業の強みを活かして優秀な講師を低コストで確保し、質の高い教育を低価格で提供している点が特徴です。
収益源は、小学生から高校生までの児童・生徒の保護者から受け取る授業料や学童利用料などです。運営は同社が行っており、神奈川県および千葉県を中心としたドミナント戦略に加え、東海エリアなど人口増加地域への新規出店を進めています。
■(4) 家庭教師事業
対面式とオンラインの両方式で「家庭教師のサクシード」を展開しています。全国の生徒に首都圏や関西圏の高学歴な家庭教師を紹介するオンラインサービスを推進し、地域による教育格差の解消や、都市部での多様な学習ニーズに応えています。
収益源は、サービスの利用者である生徒の保護者から受け取る授業料や手数料です。同社が運営主体となり、全国規模での会員獲得に向けてWebコミュニケーションツールを活用したマーケティングや効率的な広告投資を行っています。
■(5) unico事業
児童福祉法に基づく児童発達支援事業および放課後等デイサービスの運営を行っています。発達障害のある子どもたちとその家族を支える地域密着型のサービスであり、専門家チームが開発した独自の療育メソッドに基づく支援を提供しています。
収益源は、国や自治体からの給付費および利用者からの利用料によって構成されています。2025年にグループ入りしたunicoが運営を担い、直営教室およびフランチャイズの双方で全国的な出店拡大を進めています。
■(6) その他
報告セグメントに含まれない事業として、教育向けAIプラットフォーム事業を展開しています。教育現場における教員の負担軽減や個別最適化された学習環境の実現を目指し、生成AIを安全かつ効果的に活用するサービスを提供しています。
収益源は、学校や学習塾などの教育機関から受け取るシステム利用料などです。2025年にグループへ参画したみんがくが運営しており、システム開発や営業活動への人的投資など今後の成長に向けた先行投資を積極的に行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
同社は当事業年度より連結決算へ移行しているため、連結ベースでの業績推移は当期のみとなります。教育現場や福祉業界における慢性的な人手不足を背景に、人材支援事業が順調に推移し、学習教室の新規開校や家庭教師の会員増も業績に寄与しました。また、新たにAI事業や児童福祉事業を行う企業をグループ化しており、積極的な事業領域の拡大を進めています。
| 項目 | 2026年3月期 |
|---|---|
| 売上高 | 43億円 |
| 経常利益 | 4億円 |
| 利益率(%) | 8.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 |
■(2) 損益計算書
同社の損益構造は、主力の人材紹介・派遣事業や学習塾事業などによるサービス提供を主体としています。当期から連結決算を開始しており、新規出店や教師募集、AIプラットフォーム事業の開発など、今後の成長に向けた人的・広告宣伝の先行投資を積極的に行っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | - | 43億円 |
| 売上総利益 | 6億円 | 8億円 |
| 売上総利益率(%) | - | 19.1% |
| 営業利益 | 4億円 | 4億円 |
| 営業利益率(%) | - | 8.3% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が1億円(構成比25%)、給与手当が0.8億円(同17%)を占めています。売上原価の内訳データはありません。
■(3) セグメント収益
教育人材支援や福祉人材支援事業は、慢性的な人手不足を背景に需要が拡大しています。個別指導教室はドミナント戦略による出店効果で順調に推移しました。一方、その他事業に分類されるAIプラットフォーム事業は、システム開発や人員強化などの先行投資が影響しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 教育人材支援事業 | - | 14億円 |
| 福祉人材支援事業 | - | 6億円 |
| 個別指導教室事業 | - | 15億円 |
| 家庭教師事業 | - | 5億円 |
| unico事業 | - | 3億円 |
| その他 | - | 0.9億円 |
| 調整額 | - | - |
| 連結(合計) | - | 43億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | - | 1億円 |
| 投資CF | - | -3億円 |
| 財務CF | - | -1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.9%となっており、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「教育と福祉の社会課題を解決し、より良い未来を創造する」を企業ミッションとして掲げています。主に「質の高い教育の提供」と「働きやすい環境づくり」を通じて、子どもたちや働く人々を取り巻く社会課題の解消に取り組み、より良い未来の実現に向けた価値提供を目指して事業を展開しています。
■(2) 企業文化
同社は、創業時から「すべての子どもたちに質の高い教育を」というポリシーを守り続けています。経済格差が教育格差になってはならないという起業当時の思いから、指導の質を落とさず低料金を実現するシステムを構築しました。また、顧客ニーズの変化に対応する柔軟性を持ち、教育現場や福祉施設の課題に寄り添う姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高および売上高対前年増減率、ならびに営業利益および営業利益対前年増減率を定めています。また、各事業部門における売上の前提となる生徒数、人材紹介人数、派遣人数、受託件数についても、目標達成を測るための重要な管理指標として活用しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、既存分野を含む成長領域への経営資源の投資により、収益力強化と事業領域の拡大を図ります。人材支援事業では公的案件への積極参加や営業・マーケティング部門への人的投資を強化し、学習教室事業では学齢人口の増加が見込まれる地域でのドミナント形成を進めます。さらに、AI開発等によるプロダクトの差別化に努めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、人材を最も重要な経営資本の一つと位置付け、「事業成長を牽引する人材の育成・獲得」「多様な人材が能力を発揮できる組織環境の整備」「従業員エンゲージメント及び生産性の向上」を基本方針としています。経営戦略と連動した人材ポートフォリオの構築を進め、研修制度や自己啓発支援を通じて従業員の能力開発を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 33.7歳 | 5.2年 | 4,841,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 87.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 89.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 126.6% |
※同社は公表義務の対象ではないため、女性管理職比率に関する記載はありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給取得率(67.8%)、平均勤続年数(5.2年)、資格取得支援制度の利用件数(3件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況と少子化の影響
同社は教育・福祉分野で事業を展開しており、景気後退による採用抑制や家計の教育費減少が人材紹介や学習塾事業の収益に影響する可能性があります。また、少子化による学齢人口や施設の減少により、新規出店や生徒確保が想定通りに進まないリスクがあります。
■(2) 法的規制や制度の変更
教育制度の変更や特区などの行政措置に対応できなかった場合、集客力の低下を招く恐れがあります。また、人材紹介や派遣、児童福祉に関する許認可の維持、労働関係法令に基づく従業員の労務管理において違反が生じれば、事業停止等の重大な影響を受けます。
■(3) 情報セキュリティとシステム障害
個人情報や業務上重要なデータを多数保有しているため、情報漏洩が発生した場合はブランド価値の毀損につながります。また、業務活動においてITシステムやクラウドサービスを多用しており、大規模なシステム障害が発生した際には事業運営に支障をきたします。
■(4) 競合激化と新規事業の不確実性
各事業の市場には多数の競合が存在し、低価格や斬新なサービスを提供する他社にシェアを奪われるリスクがあります。さらに、収益源の多様化に向けたAI開発等の新規事業において、想定以上の追加投資が発生した場合、財務状態に影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。