サクシード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サクシード 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サクシードは東証グロース市場に上場し、教育・福祉分野の人材支援や個別指導教室、家庭教師事業を展開する企業です。2025年3月期の業績は、売上高35億円(前期比7.5%増)、経常利益3.8億円(同14.4%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社サクシード の有価証券報告書(第21期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サクシードってどんな会社?


教育と福祉の社会課題解決を掲げ、人材サービスと教育サービスの両軸で事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は2004年に設立され、横浜市で「個別指導学院サクシード」を開校しました。2007年には家庭教師事業および人材紹介・派遣事業を開始し、教育現場への人材支援を本格化させました。その後、2014年に保育士の人材サービスへ進出し、福祉分野へも事業領域を拡大しました。2017年には部活動指導の受託事業を開始するなどサービスの多様化を進め、2021年12月に東証マザーズ(現グロース市場)への上場を果たしました。

同社の従業員数は単体で98名です。大株主構成については、筆頭株主は創業社長の高木毅氏で発行済株式の半数以上を保有しており、第2位は個人株主、第3位は通信サービスや電力小売りなどを手掛ける事業会社となっています。

氏名 持株比率
高木 毅 58.68%
佐藤 幹雄 6.99%
光通信 6.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は高木毅氏が務めています。社外取締役比率は14.3%です。

氏名 役職 主な経歴
高木 毅 代表取締役社長 国際証券、タートルジヤパン取締役を経て、2004年に同社を設立し代表取締役社長に就任。創業以来、トップとして経営を牽引し、2021年の上場を実現。現在も現職。
石川 修一 取締役個別指導教室事業部長 タートルジヤパン、ノーバスを経て2004年に同社入社。2006年より取締役として個別指導教室事業を統括。現在も現職。
前原 裕明 取締役家庭教師事業部長 タートルジヤパンを経て2007年に同社入社。2008年より取締役として家庭教師事業を統括。現在も現職。
森 峰志 取締役福祉人材支援事業部長兼人事広報部長兼マーケティング部長 2008年に同社入社。2017年より取締役。福祉人材支援事業に加え、人事広報やマーケティング部門も管掌。現在も現職。
泓田 翔平 取締役教育人材支援事業部長 2012年に同社入社。2021年より取締役として教育人材支援事業を統括。現在も現職。
植田 庸平 取締役管理部長 あずさ監査法人にて公認会計士として勤務後、2020年に同社入社。2021年より取締役として管理部門を統括。現在も現職。


社外取締役は、佐藤純(公認会計士、フライヤー監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「教育人材支援事業」「福祉人材支援事業」「個別指導教室事業」「家庭教師事業」を展開しています。

(1) 教育人材支援事業


塾講師、学校教員、ICT支援員、部活動指導員、日本語教師などの教育関連人材を、民間学習塾、学校法人、地方自治体に対して紹介・派遣するほか、業務受託を行っています。教育現場での人材不足や働き方改革、DX推進といった課題に対し、専門的な人材ソリューションを提供しています。

収益は、クライアントである学習塾や学校、自治体から受け取る人材紹介手数料、派遣料、業務委託料から成り立っています。また、部活動運営受託や学内塾運営受託なども行っています。運営はサクシードが行っています。

(2) 福祉人材支援事業


保育士、栄養士、学童保育指導員、児童発達支援管理責任者などの福祉関連人材を、保育所、幼稚園、学童保育施設、放課後等デイサービスなどを運営する法人や自治体に対して紹介・派遣しています。待機児童問題や障がい児支援施設での人材不足解消に貢献しています。

収益は、施設運営事業者や自治体から受け取る人材紹介手数料および派遣料が主な柱です。自社媒体を通じた求職者集客と、Webマーケティングによる機動的なマッチングを強みとしています。運営はサクシードが行っています。

(3) 個別指導教室事業


神奈川県を中心に地域密着型の学習塾「個別指導学院サクシード」と、学習塾付き学童クラブ「ペンタスキッズ」を展開しています。講師1人に生徒3人の指導スタイルを採用し、低価格かつ質の高い教育サービスを提供しています。

収益は、生徒の保護者から受け取る授業料や入塾金、講習費などから成り立っています。人材サービス事業を行っている強みを活かし、低い募集コストで講師を確保できることが特徴です。運営はサクシードが行っています。

(4) 家庭教師事業


「家庭教師のサクシード」として、対面式およびオンラインでの家庭教師サービスを提供しています。首都圏・関西圏の講師を紹介する対面指導に加え、オンラインを活用することで全国の生徒に学習機会を提供し、教育の地域間格差の解消に取り組んでいます。

収益は、家庭教師サービスの利用者(生徒の保護者)から受け取る入会金や指導料などが主な源泉です。オンライン家庭教師サービスの拡大により、離島や海外へのサービス展開も目指しています。運営はサクシードが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は右肩上がりで成長を続けており、約20億円から約35億円へと拡大しています。経常利益は一時的な変動はあるものの、3億円から4億円前後の水準を維持しており、10%以上の高い利益率を確保しています。当期純利益も安定的に推移しており、堅実な成長軌道を描いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 20億円 26億円 29億円 32億円 35億円
経常利益 2.7億円 4.2億円 4.0億円 3.3億円 3.8億円
利益率(%) 13.3% 16.3% 13.6% 10.3% 11.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.7億円 2.8億円 2.7億円 2.2億円 2.6億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は約18%前後で推移しており、安定した収益性を維持しています。営業利益および営業利益率も前期と比較して改善傾向にあり、増収効果が利益面にしっかりと反映されていることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 32億円 35億円
売上総利益 5.8億円 6.4億円
売上総利益率(%) 17.9% 18.4%
営業利益 3.3億円 3.8億円
営業利益率(%) 10.3% 11.0%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が0.9億円(構成比35%)、支払手数料が0.4億円(同17%)を占めています。また、売上原価においては、労務費が18億円(構成比63%)、経費が11億円(同38%)となっており、人件費関連のコストが大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。教育人材支援事業は教員紹介や部活動受託の拡大により増収増益、個別指導教室事業も新規開校や生徒数増加で大幅な増益を達成しました。一方、福祉人材支援事業と家庭教師事業は、人材確保やプロモーションへの積極投資により、増収ながらもセグメント利益は減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
教育人材支援事業 11億円 11億円 1.4億円 1.7億円 15.3%
福祉人材支援事業 4.3億円 4.8億円 0.9億円 0.8億円 15.8%
個別指導教室事業 12億円 13億円 2.6億円 3.2億円 23.9%
家庭教師事業 5.1億円 5.1億円 0.5億円 0.3億円 5.1%
連結(合計) 32億円 35億円 3.3億円 3.8億円 11.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2.7億円 2.7億円
投資CF -0.5億円 -1.4億円
財務CF 0.1億円 -0.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は80.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「教育と福祉の社会課題を解決し、より良い未来を創造する」を理念として掲げています。具体的には、「質の高い教育の提供」と「働きやすい環境づくり」を通じて、社会課題に向き合い、より良い未来の実現を目指すことを経営の基本方針としています。

(2) 経営文化


同社は「質の高い教育の提供」という創業時からの理念を守りつつ、顧客ニーズの変化に対応する柔軟性を持つことを重視しています。また、従業員のスキルや専門性の獲得を促すための報奨制度や、自律的なキャリア構築を支援する資格取得支援制度を実施するなど、人材育成と働きやすい環境づくりを大切にする文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標として、売上高および売上高対前年増減率、営業利益および営業利益対前年増減率を重視しています。また、売上の前提となる生徒数、紹介人数、派遣人数、受託件数についても重要な指標として位置づけ、目標の達成状況を判断しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、教育・福祉分野での人材不足やDX化などの社会動向を捉え、既存事業の拡大と新規分野への参入を進めています。教育人材支援では教員の働き方改革支援や日本語教育サービスの拡大、福祉分野では求人サイトによるミスマッチ防止を推進します。個別指導教室ではドミナント戦略による出店加速、家庭教師事業ではオンライン化による全国展開を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は競争力の源泉を人材と捉え、従業員の能力最大化を目指しています。事業部ごとの専門知識習得研修や資格取得支援制度を通じて自律的なキャリア構築を支援するとともに、全社員を対象とした報奨制度を設け、スキル向上を促しています。また、職場満足度調査を実施し、健康で能力を発揮できる職場環境の改善に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 33.4歳 4.4年 4629000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 97.1%
男女賃金差異(正規) 89.0%
男女賃金差異(非正規) 125.5%


※女性管理職比率について:同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給取得率(71%)、資格取得支援制度の利用件数(1件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 少子化による市場への影響


同社の主要事業である教育・福祉分野は、少子化による対象人口の減少という構造的な課題に直面しています。児童・生徒数の減少により、学習塾や家庭教師の会員数、あるいは保育・学童施設の利用者が想定を下回った場合、同社の経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

(2) 法的規制や制度変更への対応


同社の人材サービスは職業安定法や労働者派遣法に基づく許可事業であり、法令違反等により許可の取り消しや業務停止命令を受けた場合、事業運営に重大な支障をきたします。また、教育制度や労働関係法令の変更に対し適切に対応できない場合、ビジネスチャンスの逸失やコスト増につながるリスクがあります。

(3) 教育・福祉人材の確保難


教育および福祉業界全体で人材不足が深刻化しており、同社の事業においても登録スタッフや講師の確保が重要課題です。有効求人倍率の変動や競合他社との人材獲得競争により、必要な人材を十分に確保できない場合、サービス提供能力が低下し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。