Institution for a Global Society 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

Institution for a Global Society 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態


Institution for a Global Society転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、Institution for a Global Society株式会社の有価証券報告書(第16期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

0. まとめ

東京証券取引所グロース市場上場のInstitution for a Global Societyは、AIによるバイアス補正技術を活用した人事評価システムや教育機関向けのアセスメントツール、予測市場プラットフォームを展開しています。直近の業績はHR事業と教育事業が牽引して増収となり、コスト最適化により赤字幅も縮小しました。

1. Institution for a Global Societyってどんな会社?

同社は、AIを活用した人材評価・教育支援や人的資本データの可視化、予測市場を展開する企業です。

(1) 会社概要

同社は2010年に教育事業を主たる目的として設立されました。2016年に企業向け評価ツール、2019年に学校・教育機関向け評価ツールの提供を開始し事業を拡大しました。2021年に東京証券取引所マザーズへ上場し、2026年には予測市場プラットフォームをローンチするなど、新規事業も積極的に展開しています。

現在の従業員数は連結で38名、単体で38名体制です。大株主の状況としては、筆頭株主が創業者の福原正大氏であり、第2位がSBI証券となっています。

氏名 持株比率
福原正大 11.86%
SBI証券 11.33%
岩永泰典 6.81%


(2) 経営陣

同社の役員は男性5名、女性2名の計7名で構成され、女性役員比率は29.0%です。代表取締役会長CEOを福原正大氏、代表取締役社長COOを中里忍氏が務めており、社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
福原正大 代表取締役会長CEO 三菱UFJ銀行、ブラックロック・ジャパンを経て2010年に同社を設立し代表取締役社長に就任。慶應義塾大学や一橋大学等の特任教授等を歴任し、2024年より現職。
中里忍 代表取締役社長COO ジブラルタ生命保険やフライシュマン・ヒラード・ジャパン、オールアバウト等を経て2016年に同社入社。取締役COO等を経て2024年より現職。
中江史人 取締役 三菱UFJ銀行、スタンダードチャータード銀行等を経て、2021年に同社社外監査役に就任。WealthPark監査役等を兼任し、2022年より現職。


社外取締役は、幸田博人(元みずほ証券代表取締役副社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「HR事業」「教育事業」「グローバルプラットフォーム事業」を展開しています。

HR事業

AIを活用した人事評価システム「GROW360+」などを提供しています。社員や採用候補者のコンピテンシーやスキルを測定し、採用・育成・配置・組織開発といった人的資本経営を支援します。主に大企業を中心に、新卒採用から経営層との連携まで幅広いニーズに対応しています。

収益源は、システム利用料や人的資本投資の効果測定などを支援するコンサルティング報酬、DX研修などのサービス提供対価です。これらの事業運営は同社が主体となって行っています。

教育事業

生徒一人ひとりの能力や学びの成果を可視化する「Ai GROW」などの教育ソリューションを提供しています。非認知能力を測定し、個別最適な学びや教員の働き方改革を支援します。主な顧客は全国の学校法人、自治体、教育委員会などです。

収益源は、1年間利用可能なサブスクリプション型のシステム利用料や、動画コンテンツ、探究力測定パッケージなどの提供に対する対価です。事業の運営は同社が行っています。

グローバルプラットフォーム事業

企業の将来予測と意思決定を支援する予測市場プラットフォーム「Signals」や、日本企業によるインドGCC設立・活用支援などを提供しています。経営判断に必要な将来情報を集合知として可視化し、グローバル人材の調達・組織化を支援します。

収益源は、プラットフォームの利用料や、海外での拠点設立、人材採用・評価・育成に関わるコンサルティング報酬などです。これらの事業運営は、同社および特定子会社であるONGAESHI匿名組合などが展開しています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上高は主力サービスの伸長により直近で増収に転じています。利益面では構造改革や投資有価証券評価損等の計上により赤字が続いていますが、コスト構造の最適化を進めたことで経常損失および当期純損失の赤字幅は縮小傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 9億円 6億円 7億円
経常利益 -0.2億円 -3億円 -1.9億円
利益率(%) -2.3% -49.1% -28.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.0億円 -3.4億円 -2.8億円


(2) 損益計算書

売上高の増加に加え、売上原価の減少により売上総利益率が大幅に改善しています。営業利益は依然としてマイナスですが、収益性の向上と業務効率化の効果により、赤字幅は前年度から縮小しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6億円 7億円
売上総利益 2億円 4億円
売上総利益率(%) 32.7% 58.1%
営業利益 -3億円 -2.3億円
営業利益率(%) -50.3% -34.5%


販売費及び一般管理費のうち、貸倒引当金繰入額が1.5億円(構成比25%)、給料及び手当が1.2億円(同19%)を占めています。売上原価では、労務費が1.6億円(構成比57%)、経費が1.2億円(同43%)を占めています。

(3) セグメント収益

HR事業と教育事業は、既存サービスの拡販やパートナー連携により増収を達成し、黒字を確保しています。一方、グローバルプラットフォーム事業は、戦略的撤退に伴う貸倒引当金繰入額の計上などにより減収および赤字幅拡大となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
HR事業 2.4億円 2.8億円 -0.2億円 0.7億円 25.5%
教育事業 3.1億円 3.3億円 1.0億円 1.2億円 37.6%
プラットフォーム/Web3事業 0.6億円 0.5億円 -1.5億円 -1.8億円 -373.6%
連結(合計) 6億円 7億円 -3億円 -2.3億円 -34.5%


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は73.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

企業パーパスは「分断なき持続可能な社会を実現するための手段を提供する」ことです。また、ビジョンとして「人を幸せにする評価と教育で、幸せを作る人、をつくる。」を掲げ、AIエージェント全盛時代の人的資本パートナーとして、個人と組織のエンパワーメントを支援し、産業データ基盤へと発展することを目指しています。

(2) 企業文化

社員一人ひとりが自発的な行動や判断を行い、本来持っている能力を発揮させる「エンパワーメント」を重視しています。また、柔軟な働き方を支えるハイブリッドワークモデルや、多様性とインクルージョン(DEI)の推進により、すべての従業員が安心して能力を最大限に発揮できる企業文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標

2026年3月期までに構造改革を完了し、以降は「利益ある成長」のフェーズへ移行することを掲げています。中期経営計画(2027年3月期〜2029年3月期)において、3つの構造転換を通じた成長戦略を推進しています。

・2029年3月期 売上収益 22億円
・2029年3月期 営業利益率 約16%

(4) 成長戦略と重点施策

蓄積した評価データを起点とし、HR事業ではAIを前提とした人的資本経営支援への上流シフトを図ります。教育事業では、非認知能力の評価を標準化し、自治体連携によるエコシステム構築へ転換します。さらにグローバル事業では、予測市場プラットフォームの展開やインドGCC支援を通じ、人的資本領域における世界標準の構築を目指します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

経営戦略と人材戦略を連動させ、人的資本の最大化を最優先課題としています。スキルマップを活用したキャリア開発支援や、AIによる業務再設計を通じて、コア業務への集中と高度化を図ります。採用は専門人材に特化しつつ、既存社員のポテンシャルを引き出すリスキリング投資を重点的に行い、持続的な企業価値向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.4歳 4.5年 6,255,000円


※平均年間給与は基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 50.0%
正規雇用労働者の男女賃金差異 86.2%


※男性労働者の育児休業取得率、および全労働者・非正規雇用労働者の男女の賃金差異については、公表義務の対象ではないため有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(65.6)、ミドルレベル以上充足率(58.6%)、採用充足率(87.2%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) HR・教育関連市場における制度・ニーズ変化

人的資本開示の義務化や教育のICT化など、市場環境や政策的動向の変化に適切に対応できない場合、または新サービスの社会的受容が想定より進まない場合、事業成長に影響を及ぼす可能性があります。

(2) ブロックチェーン等グローバル新規事業の規制動向

予測市場等の新領域は法規制が各国で整備途上であり、規制の変更や新設がサービス提供に影響を与える可能性があります。また、高度な知見を持つ専門人材を確保できない場合、事業の成長が損なわれるリスクがあります。

(3) 競合他社の参入と個人情報保護への対応

HRテクノロジー分野への多様なプレイヤーの参入による競争激化が懸念されます。また、人材評価で個人データを取り扱うため、サイバー攻撃やヒューマンエラーによる情報漏洩が生じた場合、社会的信頼の低下を招くおそれがあります。

(4) 技術革新への対応とシステム障害

生成AI等の急速な技術革新に適時対応できない場合、競争力が低下するリスクがあります。また、事業基盤をインターネットに依存しているため、自然災害やアクセス集中等でシステムが停止した場合、サービス提供に支障が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。