TORICO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TORICO 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TORICOは、東京証券取引所グロース市場に上場し、コミック全巻セットのECやイベントなどのマンガ事業、および暗号資産事業を展開する企業です。直近の業績は、出版市場の環境変化や構造改革により前年比で減収となったものの、コスト削減効果により営業赤字は縮小し、確実な利益体質の構築を進めています。


**※本記事は、TORICOの有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。**

1. TORICOってどんな会社?


同社は、マンガを軸としたECおよびイベントサービス、ならびに暗号資産の運用を展開しています。

(1) 会社概要


2005年に設立され、2006年にコミック全巻セットに特化したECサービス「漫画全巻ドットコム」を開始しました。その後、イベントサービス「マンガ展」やデジタルコミック配信サービスなどへと事業領域を広げ、2022年に東京証券取引所マザーズ(現グロース市場)へ上場しました。さらに2025年からは、新たな収益の柱として暗号資産事業を開始しています。

現在の従業員数は連結60名、単体60名です。大株主の状況としては、筆頭株主にファンドのShooting Star1号投資事業有限責任組合が名を連ね、第2位には創業者の安藤拓郎氏、第3位には石井昭氏が続いています。

氏名 持株比率
Shooting Star1号投資事業有限責任組合 22.06%
安藤 拓郎 12.18%
石井 昭 6.52%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は安藤拓郎氏が務めています。取締役5名のうち、社外取締役の比率は20.0%(1名)です。

氏名 役職 主な経歴
安藤拓郎 代表取締役社長 元三井物産入社、同社創業 代表取締役社長より現職。
鯉沼充 専務取締役管理本部長 元第一興商入社、同社取締役より現職。
濱田潤 取締役メディア本部長 元フルスピード入社、同社取締役より現職。
尾下順治 取締役 元アクセルマーク代表取締役社長、TORICO Ethereum代表取締役より現職。


社外取締役は、國光宏尚(Mint Town代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「マンガ事業」および「暗号資産事業」を展開しています。

(1) マンガ事業


コミック全巻セットに特化したネット書店「漫画全巻ドットコム」をはじめとするECサービスと、自社店舗等で展開するイベントサービス「マンガ展」を提供しています。国内外のマンガファンに向けて、紙・電子書籍の販売、関連グッズの企画・販売、原画展示やコラボカフェの開催など、マンガを読むだけで終わらない新たな体験を提供しています。

収益源は、自社ECサイトやショッピングECモールでの商品販売代金、およびイベントでの飲食・グッズ販売代金などです。事業の運営は主にTORICOが行っており、アプリの提供事業者として連結子会社の漫画全巻ドットコム、スキマ、ROLLが関わっています。

(2) 暗号資産事業


暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン技術、金融リテラシーに関する調査・研究・コンサルティング業務を行っています。戦略的な資金基盤のもとでイーサリアム(ETH)を取得・運用し、継続的かつ安定的なインカムゲイン(運用益)を生み出す「稼ぐトレジャリー(PER型金融モデル)」の確立を目指しています。

収益源は、保有する暗号資産のステーキングやレンディング等の運用によって得られるインカムゲインです。本事業における中核的な運営は、2026年1月に新たに設立された連結子会社のTORICO Ethereumが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、売上高は54億円から32億円へと減少傾向にあり、利益面でも直近3期間は赤字が続いています。これに対して同社は、売上規模の追求から確実な利益体質の構築へと舵を切り、既存事業の収益構造の抜本的な見直しを進めています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 54億円 50億円 39億円 37億円 32億円
経常利益 2.1億円 1.3億円 △2.2億円 △2.6億円 △3.4億円
利益率(%) 3.9% 2.6% -5.7% -7.2% -10.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.5億円 0.7億円 △2.5億円 △4.5億円 △3.6億円

(2) 損益計算書


売上高は前年比で減少しましたが、売上原価も同様に減少しており、売上総利益率は改善しています。また、各種費用の削減努力により、営業赤字の幅は大幅に縮小しました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 37億円 32億円
売上総利益 13億円 13億円
売上総利益率(%) 36.3% 39.5%
営業利益 △2.6億円 △0.7億円
営業利益率(%) -7.1% -2.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が2.3億円(構成比17%)、オンラインショップ運営費が1.8億円(同13%)、荷造運賃が1.5億円(同12%)を占めています。売上原価は19.3億円(売上原価合計に対する構成比100%)です。

(3) セグメント収益


当期より暗号資産事業を開始したため、2つの報告セグメントとなっています。マンガ事業は市場環境の変化で売上が減少しましたが、コスト構造の改善により営業赤字は縮小しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
マンガ事業 - 32億円 - △0.7億円 -2.1%
暗号資産事業 - 0.0億円 - △0.0億円 -146.7%
連結(合計) - 32億円 - △0.7億円 -2.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF △1.4億円 0.5億円
投資CF △0.3億円 △10.9億円
財務CF 2.0億円 10.6億円


財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.3%で市場平均を上回っています。一方、企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されていません。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「世界を虜にする」をビジョンに掲げ、「世界に“楽しみ”を増やす」というミッションの実現を目指しています。日本が世界に誇るカルチャーであるマンガを軸に、あらゆる生活シーンに楽しみを増やすことで社会に貢献することを基本理念として事業を展開しています。

(2) 企業文化


同グループでは、ミッションを実現するため、役員および従業員全員の共通価値観として5つの行動基準を定めています。具体的には、「1.『遊び』にマジメに」「2.とにかく速い」「3.自分ゴト化する」「4.日々挑戦、日々進化」「5.隣人を饗す」を掲げ、日々の活動を推進しています。

(3) 経営計画・目標


出版市場の環境が厳しさを増す中、同社は従来の「売上規模の追求」から「確実な利益体質の構築」へと方針を大きく転換しました。そのため、本業の収益力を適正に評価する観点から「営業利益」を最も重要な経営指標と位置づけ、既存事業の収益構造の抜本的な見直しを進めています。

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長に向けて、高収益なイベントサービスの店舗展開やアジア圏を中心とした海外展開に経営資源を集中させます。また、新たに開始した暗号資産事業においては、イーサリアム(ETH)のステーキングやレンディング等の運用手法を活用した「稼ぐトレジャリー」の確立を推進し、新たな収益基盤の構築を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、世界への事業拡大を推進するため、積極的な外国人従業員の採用や女性の活躍推進など、ダイバーシティ経営を進めています。正社員・非正規社員を含めた全ての従業員に対し、公平な成長機会を提供するとともに、年齢・性別・国籍に関わらない公平な賃金の支払いに努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.0歳 4.4年 4,262,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 66.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.4%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 96.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(54.2%)、外国人社員比率(1.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 紙コミック市場の縮小

同社の主力である紙コミックの「マンガ全巻売りビジネス」は、出版業界における紙コミック市場の縮小や電子コミックの成長鈍化の影響を受けやすくなっています。市場環境の厳しさが長引いた場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定事業への依存

同社の売上の大部分は、コミック全巻売りを中心としたECサービスに依存しています。経営資源を集中させているため、競合他社との競争激化や消費者ニーズの変化により、同事業が停滞した場合には、全体の業績に大きな影響を与えるリスクがあります。

(3) 暗号資産事業に関連するリスク

新たに開始した暗号資産事業では、イーサリアム(ETH)の保有・運用を行っています。暗号資産の価格は各国の規制動向やマクロ経済等により短期間で大きく変動する可能性があり、価格の急落等が発生した場合は、評価損の計上等により財務状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。