※本記事は、株式会社TORICO の有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. TORICOってどんな会社?
マンガを軸に、全巻セット販売のEC、電子コミック配信、イベント運営を展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は2005年に設立され、翌2006年にコミック全巻セット販売のECサイト「漫画全巻ドットコム」を開始しました。その後、2016年にイベントサービス「マンガ展」およびデジタルコミック配信サービス「スキマ」を立ち上げ、多角化を推進しています。2022年には東京証券取引所マザーズ(現グロース)へ株式を上場し、同年には台湾支社やシンガポール子会社を設立するなど、海外展開も進めています。
同社の従業員数は連結で64名、単体で63名です。筆頭株主は創業者であり代表取締役社長の安藤拓郎氏で、第2位は資本業務提携先であるリユース商材販売等のテイツー、第3位は個人株主の石井昭氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 安藤 拓郎 | 24.15% |
| テイツー | 19.07% |
| 石井 昭 | 12.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は安藤拓郎氏です。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 安藤拓郎 | 代表取締役社長 | 日本オラクル、三井物産、VIBEを経て2005年7月に同社を創業し代表取締役社長に就任。2020年より子会社代表や海外拠点役員も兼任。 |
| 鯉沼充 | 専務取締役管理本部長 | 第一興商を経て2007年8月に同社入社。同年10月に取締役に就任し、2018年7月より専務取締役管理本部長として管理部門を統括。 |
| 濱田潤 | 取締役メディア本部長 | フルスピードを経て2010年12月に同社入社。2018年6月に取締役に就任し、2021年4月よりメディア本部長として事業を牽引。 |
社外取締役は、廣木響平(図書館流通センター取締役)、藤原克治(テイツー代表取締役社長)、河手優美(タカキュー取締役)、仮屋裕一(グロースパートナーズ社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「マンガ事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ECサービス
「漫画全巻ドットコム」を中心に、「ホーリンラブブックス」「まんが王」「トレオタ」など、ターゲットやコンセプトの異なるECサイトを運営しています。コミック全巻セットや作品関連グッズを取り扱い、自社サイトのほか、楽天市場やYahoo!ショッピングなどのECモールや、越境ECサイトを通じた海外販売も行っています。
主な収益源は、一般消費者へのコミックやグッズの販売代金です。運営は主に同社が行っており、連結子会社の漫画全巻ドットコムは、電子コミック配信サービスのビューワーアプリの登録会社となっています。
■(2) デジタルコミック配信サービス
国内向けの「スキマ」および海外向けの「MANGA.CLUB」を運営し、ウェブやアプリを通じてデジタルコミックを配信しています。一部無料で閲覧できるモデルを採用し、ライトユーザーを取り込むことで、コアなECサービスやイベントへの誘導を図る入り口としての役割も担っています。
主な収益源は、ユーザーからの課金収入や広告収入です。サービスの主体的な運営は同社が行い、連結子会社のスキマはアプリ運営の登録会社として機能しています。
■(3) イベントサービス
「マンガ展」を通じて、コラボカフェや原画展示、サイン会などのリアルイベントを企画・開催しています。東京(池袋・渋谷)、大阪(谷六・天王寺)の常設店舗に加え、台湾やシンガポールでも展開し、マンガ作品の世界観を体験できる場を提供しています。
主な収益源は、イベント来場者への飲食提供や、会場およびECサイトでのオリジナルグッズ販売による代金です。運営は同社および海外拠点が担い、連結子会社のROLLがアプリ運営登録を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は減少傾向にあり、利益面では経常損失および当期純損失が続いています。直近の2025年3月期は、売上高が前期比で減少したことに加え、減損損失の計上などにより赤字幅が拡大しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 50億円 | 54億円 | 50億円 | 39億円 | 37億円 |
| 経常利益 | 3億円 | 2億円 | 1億円 | -2億円 | -3億円 |
| 利益率(%) | 5.5% | 3.9% | 2.6% | -5.7% | -7.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 2億円 | 0.7億円 | -2億円 | -5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少し、売上総利益率も低下傾向にあります。営業損失は拡大しており、収益性の改善が課題となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 39億円 | 37億円 |
| 売上総利益 | 14億円 | 13億円 |
| 売上総利益率(%) | 36.0% | 36.3% |
| 営業利益 | -2億円 | -3億円 |
| 営業利益率(%) | -5.7% | -7.1% |
販売費及び一般管理費のうち、オンラインショップ運営費が2.9億円(構成比18%)、給与手当が2.6億円(同16%)、荷造運賃が1.8億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はマンガ事業の単一セグメントですが、販売実績として全体の売上高を開示しています。売上高は前期比で減少しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| マンガ事業 | 39億円 | 37億円 |
| 連結(合計) | 39億円 | 37億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の収益力が低下しており、営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスです。投資活動も抑制傾向にありますが、財務活動では株式発行などにより資金を調達しており、「勝負型」の状態と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -2億円 | -1億円 |
| 投資CF | -1億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | -1億円 | 2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界を虜にする」をビジョンに掲げ、「世界に“楽しみ”を増やす」というミッションの実現を目指しています。日本が誇るカルチャーであるマンガを軸に、全巻一気読みやイベント体験など、あらゆる生活シーンに楽しみを提供することで社会貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、役員および従業員全員の共通価値観として5つの指針を定めています。「『遊び』にマジメに」「とにかく速い」「自分ゴト化する」「日々挑戦、日々進化」「隣人を饗す」を掲げ、日々の業務に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長と企業価値拡大のために「売上高」を重要な指標としています。また、効率的な営業活動の指標として「売上高経常利益率」を重視し、書店業界の平均水準を上回る利益率の実現を目指しています。KPIとして、販売者数、月間アクティブユーザー数、コンバージョンレート、顧客単価等の推移を確認しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
ECサービスでは、独自のデータベースと倉庫運営による「ロングテール戦略」で差別化を図り、広告宣伝強化やデータベース活用による効率化を推進します。イベントサービスでは、没入型の展示や自社製グッズの展開を強化し、成長ポテンシャルの高い事業として位置づけています。また、海外市場への積極的な拡大も進めていく方針です。
* アジア市場への本格展開に向けた戦略投資
* M&Aによる事業拡大
* 物流効率の見直しや人員配置最適化によるコスト構造改革
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、ビジョンとミッションに共感した人的資本を価値創造の源泉と捉え、ダイバーシティ経営を推進しています。性別や国籍に関わらない公平な賃金支払い、ジェンダー・ペイ・ギャップの解消、雇用形態にとらわれない公平な評価による成長機会の提供を重視し、海外展開に向けた外国人社員の採用も進める方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 34.5歳 | 4.4年 | 4,206,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 50.0% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.3% |
| 男女賃金差異(正規) | 78.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 101.2% |
※男性育児休業取得率は、算出対象となる該当者がいなかったため「-」と表示しています。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(50%)、外国人社員比率(1.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 継続企業の前提に関する重要事象
同社は2期連続で営業損失および営業キャッシュ・フローのマイナスを計上しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。これに対し、イベントや海外事業への集中による利益率向上、EC事業のコスト構造改革、資金調達の実施などの対応策を進め、早期の解消を目指しています。
■(2) 紙コミック市場について
主力ビジネスである紙コミック市場は縮小傾向にあり、同社の業績計画は市場トレンド予測に基づいています。予測しえない市場の急激な縮小やマンガ全巻買い需要の減退など不測の事態が発生した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 特定事業への依存について
同社は売上の多くをコミック全巻売りを中心としたECサービスに依存しており、経営資源も集中しています。事業環境の変化により主力ECサービスが停滞した場合、業績に影響を与える可能性があります。今後はイベント事業などを育成し収益構造の多様化を図る方針です。



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