※本記事は、クリアル株式会社の有価証券報告書(第15期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. クリアルってどんな会社?
不動産投資の民主化を目指し、ITと資産運用のノウハウを掛け合わせたプラットフォーム事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2011年5月、資産運用サービスの提供を目的にブリッジ・シーとして設立されました。2018年11月に「CREAL」ブランドで不動産ファンドオンラインマーケットサービスを開始し、2021年3月に現在のクリアルへ商号変更しています。2022年4月に東証グロース市場への上場を果たし、近年は証券会社の買収など事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で299名、単体で208名です。筆頭株主は事業会社のSBIホールディングスで、第2位は創業者の徳山明成氏(常任代理人はみずほ証券)、第3位はJICVGIオポチュニティファンド1号投資事業有限責任組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| SBIホールディングス | 20.64% |
| 徳山 明成(常任代理人 みずほ証券) | 20.08% |
| JICVGIオポチュニティファンド1号投資事業有限責任組合 | 7.42% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は横田大造氏が務めています。取締役11名のうち3名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 横田大造 | 代表取締役社長 | 2000年アンダーセンコンサルティング入社。ラサール不動産投資顧問等を経て2017年4月より現職。 |
| 金子好宏 | 取締役副社長 | 2000年中央青山監査法人入所。PwCトランザクションサービス等を経て2017年3月より現職。 |
| 太田智彬 | 取締役 | 2011年ユナイティア入社。アクセンチュア等を経て2018年7月同社入社。2019年3月より現職。 |
| 山中雄介 | 取締役 | 2008年パシフィックマネジメント入社。ジャパン・リート・アドバイザーズ等を経て2020年6月より現職。 |
| 徳山明成 | 取締役会長 | 2001年ゴールドマン・サックス証券入社。カーライル・ジャパン等を経て2011年5月同社設立。2019年7月より現職。 |
社外取締役は、村上未来(元KPMGヘルスケアジャパン・指名報酬委員長)、定形哲(元東京三菱銀行シンガポール支店長)、谷美由紀(元グランホテル・オペレーションズ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、資産運用プラットフォーム事業の単一セグメントにおいて、複数のサービスを展開しています。
■CREAL
不動産投資の門戸を広く個人に開放する不動産ファンドオンラインマーケットで、一口1万円から投資可能です。投資家はオンラインで手軽に資産運用ができ、ESG不動産など社会的意義の高い物件への投資も促進しています。
ファンド成立時に一定の手数料(アップフロント・フィー)を受け取るほか、運用時の管理手数料、売却時の手数料や利益の一部(プロフィットシェア)を獲得します。主に同社が運営しています。
■CREAL PRO
機関投資家や超富裕層を対象とした大型不動産への投資を通じた資産運用サービスです。同社が情報を入手した投資適格物件を基に、仲介業務や私募ファンドの組成・運用を中心に事業を展開しています。
投資家からのファンド出資や物件購入時に組成費用や仲介手数料を受け取るほか、運用期間中の管理手数料や売却時の手数料等で収益を上げます。主に同社が事業を展開しています。
■CREAL PB
個人投資家向けに、主に首都圏の中古区分レジデンスなど実物不動産への投資を通じた中長期的な資産運用サービスを提供しています。独自のシステムを活用し、不動産投資プロセス全般のDX化を推し進めています。
同社が投資用不動産を仕入れ、個人投資家へ販売することで売却利益を獲得する仕組みです。主に同社がサービスを提供し、顧客管理にもITを活用しています。
■その他
連結子会社が提供する不動産賃貸管理サービスやホテル運営サービスなどが含まれます。賃貸管理の一元化ツール等を用いて業務効率化を図り、安定した運用をサポートしています。
不動産オーナーから集金代行手数料などの賃貸管理収入を継続的に受け取るほか、ホテル宿泊者からの宿泊料や業務委託による運営手数料を獲得します。主にクリアルパートナーズやクリアルホテルズなどの子会社が運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は順調に拡大を続け、第14期には急成長を遂げましたが、当期は減収に転じました。一方で経常利益は一貫して右肩上がりで成長しており、利益率は当期に大きく改善し高い収益性を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 106億円 | 164億円 | 210億円 | 418億円 | 378億円 |
| 経常利益 | 2.6億円 | 5.0億円 | 9.4億円 | 18.3億円 | 27.8億円 |
| 利益率(%) | 2.4% | 3.0% | 4.5% | 4.4% | 7.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.6億円 | 3.6億円 | 6.4億円 | 12.7億円 | 19.2億円 |
■(2) 損益計算書
当期は売上高が減少したものの、売上総利益および営業利益は大幅に増加しました。これに伴い利益率も大きく改善し、高収益体質への転換が進んでいることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 418億円 | 378億円 |
| 売上総利益 | 57億円 | 78億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.5% | 20.6% |
| 営業利益 | 20億円 | 29億円 |
| 営業利益率(%) | 4.7% | 7.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比33%)、広告宣伝費が8億円(同17%)を占めています。また、単体ベースの売上原価のうち、不動産仕入高が273億円(構成比94%)、匿名組合配当金が12億円(同4%)となっています。
■(3) セグメント収益
「CREAL」サービスや「CREAL PB」が堅調に推移し増収となった一方、前期に大型物件の売却があった「CREAL PRO」の売上が大幅に減少したことが、全体の減収に影響しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| CREAL | 214億円 | 234億円 |
| CREAL PRO | 117億円 | 38億円 |
| CREAL PB | 83億円 | 91億円 |
| その他 | 5億円 | 15億円 |
| 連結(合計) | 418億円 | 378億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業CFはマイナスですが、将来成長のために借入等で投資を継続する「勝負型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 100億円 | -94億円 |
| 投資CF | -12億円 | -7億円 |
| 財務CF | -11億円 | 81億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は23.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は25.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「不動産投資を変え、社会を変える」というミッションを掲げています。魅力的な資産運用の手段である不動産投資への機会が限定されているという社会課題に対し、DXを推し進めることで課題を解決し、誰もが気軽に始められる資産運用の民主化を目指しています。
■(2) 企業文化
ミッション実現のため、役職員全員が守るべき価値観として、「Grit(課題達成)」「Imagination(創造性の発揮)」「Fairness(公平な判断)」「Team(組織力の最大化)」という4つのバリューを掲げています。個人の専門性と組織への貢献度を多面的に評価し、多様な専門職が活躍できる風土を構築しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、ECサイトのフィーモデルに近い体系を持つことから、流通取引総額であるGMV(Gross Merchandise Value)を最重要の経営指標(KPI)として重視しています。また、事業基盤の着実な拡大を把握するため、売上総利益も重要視しており、会員数や累計調達額、リピート投資率などを管理しています。
* 2026年3月期 連結売上総利益目標:78億円
* 2026年3月期 CREAL GMV目標:314億円
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略として、積極的なIT投資を継続し「CREAL」を資産運用の代表的なサービスとして確立させることを目指しています。差別化されたDX戦略により、効率的な業務運営と競争力の強化を図ります。今後の重点施策として、各種マーケティング活動を通じた認知度向上、提携先拡大による良質な不動産の安定的な仕入れなどを推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な企業価値の向上と事業拡大を支えるため、「人的資本の強化」を最重要課題の一つと位置づけています。多様な業界から専門スキルの高い人材を積極的に採用し、新たな発想をもとに従業員がいきいきと仕事を楽しみながら専門性を最大限に発揮できる環境づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.0歳 | 2.2年 | 8,554,000円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.9% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、正社員に占める女性労働者の割合(39.5%)、有給休暇取得率(70.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産市場の動向と価格変動リスク
景気動向や金利動向、地価の変動などにより、不動産価格が下落した場合には棚卸資産の評価損が発生する可能性があります。また、価格高騰による仕入の困難化や収益性の低下など、不動産市況の変化が業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) オペレーショナルアセットの運営と与信リスク
ホテルや老人ホームなどの特別な専門性が求められる物件は、運営事業者の能力や与信状況によって収益が変動します。事業者の運営体制に問題が生じた場合、未回収債権の発生や物件価値の下落を招き、業績に悪影響を与えるリスクが存在します。
■(3) クラウドファンディング事業における会員獲得と成立下限リスク
「CREAL」の成長には登録会員数とGMVの継続的な増加が不可欠です。会員数の伸びが鈍化した場合や、大型案件募集時に成立下限額を調達できずに売主への違約金が発生した場合には、事業運営や業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。



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