※本記事は、株式会社ispace の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
ispaceは「Expand our planet. Expand our future.」をビジョンに掲げ、人類の生活圏を宇宙に広げ持続的な世界を実現するべく、月面開発の事業化に取り組んでいる次世代の民間宇宙企業です。同社グループは、自社開発中のランダー及びローバーを用いて、ペイロードサービスとデータサービスを提供しています。
単体従業員数は183名、連結従業員数は333名です。
ispaceは2026年3月に日米で個別に進めていたランダー開発体制を統合し、新モデルULTRAランダーを導入しました。また、同年1月にはサウジアラビア王国での子会社設立手続きを開始し、グローバル展開を強化しています。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
ispaceは、月面開発という高度な専門性が求められる事業を展開しており、多様なバックグラウンドを持つ人材が世界中から集まるグローバルな環境が特徴です。専門性を重視した人材戦略と報酬制度を導入しており、従業員一人ひとりの成長と働きがいを支援する取り組みを進めています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社は、多様なバックグラウンドを持つ人材が集まる環境であり、平均勤続年数や平均年齢からは、専門性の高い分野でキャリアを築く人材の傾向がうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 10,758,484円 |
| 平均勤続年数 | 2.8年 |
| 平均年齢 | 40.2歳 |
| 単体従業員数 | 183人 |
| 連結従業員数 | 333人 |
| 単体のグループ内比率 | 55.0% |
退職給付制度に関する記載はありません。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、「Expand our planet. Expand our future.」をビジョンに掲げ、月面への輸送サービス及び月面インフラ事業の構築を通じて新たな経済圏の創出を目指しており、人材を最も重要な経営資本の一つと認識しています。高度な専門性を有する人材が事業を支え、優秀な人材の確保、育成、定着が持続的な企業価値向上の重要な要素であると考えています。
報酬制度については、職務及び責任の大きさに応じたJob Grade制度を基盤とし、市場競争力を考慮した報酬水準の設定及び成果・行動に基づく評価を実施しています。従業員と株主との価値共有を促進し、中長期的な企業価値向上への意識を高めることを目的として、一部の従業員に対して株式報酬制度を導入しています。
人材の多様性の確保を事業・人材戦略の根幹に位置付けており、世界33か国から人材が集結し、同社単体でも45%が日本以外の国籍を持つ人材で占められています。報酬制度を含む競争力のある各種人事制度の確立や、役職員の育成・成長を目的とした各種制度を導入しています。自主的な能力開発のサポートとしてe-learningコースの提供や自己研鑽補助制度の導入、キャリア開発の観点から360度フィードバックやキャリア・能力開発目標の設定を導入するなど、働きがいのある環境を整備しています。また、従業員がライフイベントと仕事を両立しながら継続的に活躍できる環境づくりにも取り組んでいます。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社及び連結子会社は、女性活躍推進法及び育児介護休業法の規定による公表義務の対象ではないため、法定開示データは記載されていません。
育児・介護支援
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 女性従業員の育児休業取得率 | 100% |
| 男性従業員の育児休業取得率 | 100% |
| 男性従業員の育児休業平均取得日数 | 53日 |
人材育成・エンゲージメント
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| エンゲージメントスコア(「私は、当社で働くことを誇りに思う」設問への肯定的な回答率) | 81% |
| インクルージョンスコア | 76% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
株式会社ispaceは、「Expand our planet. Expand our future.」をビジョンに掲げ、人類の生活圏を宇宙に広げ、持続的な世界を実現するために月面開発の事業化に取り組む民間宇宙企業です。同社グループは、ランダーやローバーを開発し、主にペイロードサービスとデータサービスを提供しています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、月面開発事業の単一セグメントで事業を展開しており、主に「ペイロードサービス」と「データサービス」を収益の柱としています。ペイロードサービスでは、顧客の荷物を同社グループのランダーやローバーに搭載し、月まで輸送するサービスを提供しています。これには、ロケットの打上げから月面への輸送、ペイロード搭載のための技術的なアドバイスと調整、月面到着後の実験支援、電力供給、データ通信などが含まれます。
ペイロードサービスは、ペイロード重量に応じて1kgあたりの価格を顧客に課金する料金体系を採用しています。ロケット打上げの1~3年前の本契約時から打上げまでの間に、全額が一括または複数回に分割されて入金される仕組みです。売上は、本契約以降、ランダーが月へ到着しミッションを完了させるまでの期間にわたって、履行義務充足に応じた形で計上されます。
データサービスは、顧客が同社のペイロードを利用してデータ収集を行い、地球へその結果をデータとして送り返し、解析・活用したいというニーズに応えるものです。当面はミッションごとに、同社グループが開発・購入するデータ計測機器やカメラ機器等を輸送し、月のデータ(マーケティングデータ、サイエンスデータ、R&Dデータ)を取得して顧客に提供します。将来的には、高頻度ミッションを通じて取得・蓄積した情報に既存データを加え、高付加価値な「大規模な月のデータベース」をクラウド上に構築し、サブスクリプションモデルで提供することを目指しています。
同社グループは、日本、欧州、米国、台湾などグローバルに事業を展開しており、特に米国からの売上高が大きな割合を占めています。特定の顧客への売上集中も見られ、当連結会計年度ではThe Charles Stark Draper Laboratory, Inc.が売上高の過半数を占め、European Space Agency、Taiwan Space Agencyがこれに続いています。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ペイロードサービス | 4兆355億円 | 2兆3,332億円 |
| パートナーシップサービス | 4,494億円 | 3,741億円 |
| 受託研究 | - | 3,533億円 |
| その他 | 2,584億円 | 2,465億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にありましたが、直近の当連結会計年度では減少に転じました。これは、ミッションの打上げ時期と顧客へのサービス提供機会の限定が主な要因とされています。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は、いずれの期も損失を計上しており、変動を伴いながらも損失が継続している状況です。
営業活動によるキャッシュ・フローも継続して資金の使用が続いており、本業でのキャッシュ創出には至っていません。当連結会計年度では、補助金収入の計上により営業外収益が増加し、経常損失の減少に寄与しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6.7億円 | 9.9億円 | 23.6億円 | 47.4億円 | 33.1億円 |
| 経常利益 | △40.4億円 | △114億円 | △61.0億円 | △113億円 | △81.4億円 |
| 経常利益率 | △599.2% | △1150.2% | △258.7% | △239.0% | △246.2% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | △40.6億円 | △114億円 | △23.7億円 | △119億円 | △81.5億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | △77.68 | △211.47 | △29.05 | △124.32 | △65.96 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は、前期から当期にかけて減少しました。また、従業員1人あたりの営業利益も、前期に引き続き当期も損失が拡大する結果となりました。これは、売上高の減少と営業損失の拡大が影響していると考えられます。
同社グループは、ランダー開発のための部材調達費用や事業拡大に伴う人件費、打上げ費用など、継続的な開発活動のための資金需要があります。これらの資金は自己資金、金融機関からの借入、エクイティファイナンスなどで調達していく方針です。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 15.0百万円 | 9.9百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | △30.9百万円 | △34.8百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
同社グループは、月面開発という成長市場で事業を展開しており、将来に向けた積極的な投資フェーズにあります。そのため、営業活動や投資活動による資金流出が継続している状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率が前期から増加し、手元資金も厚みを増しています。しかし、ROEはマイナスとなっており、収益性の改善が課題であると言えます。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 70.1億円 | 152億円 |
| 自己資本比率 | 25.4% | 31.6% |
| ROE(自己資本利益率) | - | △73.5% |
| 現金及び預金 | 131億円 | 297億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループの営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失の計上や長期前渡金の増加などにより、資金を使用する状況が続いています。投資活動によるキャッシュ・フローも、有形固定資産の取得による支出などにより、資金を使用しています。
一方、財務活動によるキャッシュ・フローは、株式の発行による収入などにより、大幅な資金獲得となっています。結果として、フリーキャッシュ・フローはマイナスであり、事業の成長に向けた資金調達を継続している状況です。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | △120.5億円 | △135.7億円 |
| 投資CF | △26.7億円 | △18.3億円 |
| 財務CF | 104.2億円 | 314.5億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △147.2億円 | △153.9億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
同社グループは、多額の先行研究開発投資と長期の開発期間を要する事業のため、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上しています。これにより、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しています。ただし、自己資本の充実を目的とした機動的な資金調達の可能性を検討しており、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しています。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループが属する宇宙産業は草創期であり、市場の将来的な成立や成長には不確実性が伴います。また、月面着陸の実績がまだないため、ミッション未達が継続した場合、技術的信用力の低下や顧客離反のリスクがあります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、事業拡大に伴い、多様かつ優秀な人材の採用が重要課題であると認識しています。必要な人材を十分に採用できない場合や、優秀な従業員が退職した場合には、事業拡大の制約となり、ミッションの遅延が生じる可能性があります。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
ispaceは、「Expand our planet. Expand our future.」というビジョンのもと、地球と月がひとつのエコシステムとなる経済圏の創出を目指す企業です。多様な人材と革新的な技術を通じて、新たな宇宙産業の未来を切り拓くことを目指しています。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループは、「Expand our planet. Expand our future.」をビジョンとして掲げています。地球と月が1つのエコシステムとなる世界を築き、月に新たな経済圏を創出することを目的としています。史上初の民間月面探査へ向けた研究・開発を推進し、持続的な成長と企業価値の最大化を目指すことを基本方針としています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、ダイバーシティ(多様性)、インテグリティ(誠実性)、リスペクト(尊重)をバリューとして掲げています。国籍や性別を問わず多様な知識と技能を持つ人材を世界中から採用しており、グループ全体で世界33か国、同社単体で世界25か国からの人材が集結しています。グループの66%、同社単体の45%が日本以外の国籍を持つ人材で構成されており、この多様性が技術革新の原動力となっています。最終的には、多様性を基礎とした「Moon Valley 2040」の実現を目指しています。従業員がライフイベントと仕事を両立できるよう、育児休業取得率は女性・男性ともに100%であり、男性従業員の育児休業平均取得日数は53日となっています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、宇宙関連ビジネスの拡大に対応するため、技術確立を急ぐ状況にあります。優先的に対処すべき課題として、ランダー及びローバーの研究開発の推進を掲げています。また、事業収益の安定化に向けて中長期的に持続可能な顧客市場を開拓することも重要な課題です。高度な専門性と能力を備えた人材を国内外から継続して雇用し、各人材が能力を最大限に発揮できる環境を整えるための人材確保にも取り組んでいます。さらに、事業運営及び業容拡大に対応するため、成長に応じた内部統制の構築と適切な運用を引き続き実施しています。継続的なミッション実現のための、中長期的な成長資金の確保も重要なテーマとしています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
ispaceは、経営の効率化、健全性、透明性を高め、中長期的かつ安定的な株主価値向上をコーポレート・ガバナンスの基本と認識しています。同社は監査役会設置会社を採用しており、取締役会が経営の基本方針や重要事項を決定し、監査役が独立した立場から職務執行を監査する体制を構築しています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社グループの筆頭株主は代表取締役CEOの袴田武史氏であり、事業会社や投資事業有限責任組合が上位株主として名を連ねています。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 袴田 武史 | 8.21% |
| 高砂熱学工業 | 4.79% |
| JICVGIオポチュニティファンド1号投資事業有限責任組合 | 4.38% |
| インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合 | 4.10% |
| 栗田工業 | 2.92% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は10名(男性8名・女性2名)で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役CEOは袴田武史氏が務めています。社外取締役比率は71.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 袴田 武史 | 代表取締役CEO | 2006年9月 マサイ・ジャパン入社。2010年9月 合同会社ホワイトレーベルスペース・ジャパン設立、代表社員。2013年5月 同社代表取締役CEO。2016年9月 ispace technologies U.S., inc. President。2021年7月 ispace Japan代表取締役より現職。 |
| 野﨑 順平 | 取締役CFO | 2005年4月 メリルリンチ日本証券入社。2015年1月 同社投資銀行部門ジェネラルインダストリー・グループ ディレクター。2017年4月 同社入社。2018年12月 同社取締役CFO。2024年11月 同社取締役CFO 事業統括エグゼクティブより現職。 |
社外取締役は、赤浦徹氏(インキュベイトファンド代表取締役)、川名浩一氏(ルブリスト代表取締役)、中田華寿子氏(アクチュアリ代表取締役)、畑田康二郎氏(将来宇宙輸送システム代表取締役)、牧野隆氏(IHIエアロスペース顧問)です。
同社は監査役会設置会社であり、取締役会は7名の取締役(うち5名が社外取締役)で構成されています。監査役3名も取締役会に出席し、取締役の職務執行を監督する体制です。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社では、取締役報酬は株主総会で決議された報酬総額の範囲内で、役員評価・報酬諮問委員会の助言・提言を踏まえ、取締役会で決定する方針です。監査役報酬は株主総会で決議された報酬総額の範囲内で監査役会が決定しています。報酬には固定報酬のほか、譲渡制限付株式ユニットによる非金銭報酬等も含まれています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 2名 | 58百万円 | 28.8百万円 |
| 監査役(社外除く) | 1名 | 10百万円 | 9.6百万円 |
| 社外取締役 | 4名 | 14百万円 | 3.6百万円 |
| 社外監査役 | 2名 | 7百万円 | 3.6百万円 |
なお、上表には無報酬の社外取締役1名は含んでおりません。また、上記の非金銭報酬等は譲渡制限付株式ユニットによる株式報酬であり、当事業年度における費用計上額を記載しています。当該株式ユニットは当事業年度末時点では権利確定しておりません。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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