※本記事は、サークレイス株式会社 の有価証券報告書(第13期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サークレイスってどんな会社?
Salesforce等のクラウドプラットフォーム活用支援と、海外人事管理SaaS「AGAVE」を両軸に企業のDXを推進する会社です。
■(1) 会社概要
同社は2012年、パソナグループとTquila International PTE Ltd.の合弁により株式会社パソナテキーラとして設立されました。翌2013年にSalesforceコンサルティングを開始し、2018年には自社SaaS「AGAVE」の販売を開始しました。2020年に現社名へ変更し、2022年4月に東証グロース市場へ上場を果たしています。
連結従業員数は356名、単体では315名です。筆頭株主は人材サービス大手のパソナグループで、第2位は創業時の合弁パートナーでありアイルランドでグループ会社の経営指導を行うTQUILA LIMITEDです。第3位には同社代表取締役会長兼社長の佐藤司氏が名を連ねており、創業からのパートナーシップが資本構成に反映されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| パソナグループ | 33.14% |
| TQUILA LIMITED | 31.99% |
| 佐藤 司 | 2.87% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表者は代表取締役会長兼社長の佐藤司氏です。社外取締役比率は45.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐藤 司 | 代表取締役会長兼社長 | パソナグループ常務執行役員などを経て2012年パソナテキーラ(現同社)社長就任。2018年会長、2024年より現職。 |
| 古川 光瑛 | 取締役 | アクサ損害保険、アマゾンジャパンを経て2023年同社上席執行役員CFO。2024年より現職。 |
| 大崎 正嗣 | 取締役 | SAPジャパン、Blue Prism等を経て2023年同社上席執行役員CRO。2024年より現職。 |
社外取締役は、中尾慎太郎(パソナ代表取締役社長)、シェイマス・マッキュー(TQUILA LIMITED会長)、庄司哲也(元NTT Com社長)、松永達也(元IBM常務)、河村芳彦(元日立製作所副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「コンサルティング事業」および「アオラナウ事業」を展開しています。
■コンサルティング事業
Salesforce、Anaplan、AWS、Microsoft等を活用したクラウド導入支援や業務変革支援、および海外駐在員管理SaaS「AGAVE」の提供を行っています。クラウド環境での開発やAI活用支援、人材育成なども包括的に手掛けています。
収益は、顧客企業からのコンサルティング料やシステム開発費、およびSaaS製品の利用料(リカーリング収入)等から構成されます。運営は主に同社が行い、ベトナムの子会社Circlace HT Co., Ltd.も開発拠点として機能しています。
■アオラナウ事業
ITサービスマネジメント領域において、ServiceNowを活用した導入・設計・開発・定着支援を一貫して提供しています。企業のIT運用高度化や業務標準化を支援し、組織変革および継続的な業務改善を実現します。
収益は、顧客企業へのServiceNow導入支援やコンサルティングに伴う対価として受け取ります。運営は、同社の子会社であるアオラナウ株式会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近2期間の業績を見ると、売上高は大幅に増加し、事業規模が拡大しています。利益面では、前期の損失計上から当期は各利益段階で黒字転換を果たしました。特に当期純利益は明確なプラスとなり、収益性が改善傾向にあることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 29.0億円 | 38.0億円 |
| 経常利益 | -0.5億円 | 2.0億円 |
| 利益率(%) | -1.8% | 5.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.2億円 | 2.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も伸長しており、事業の拡大が順調に進んでいます。営業利益に関しては、前期の赤字から当期は黒字へと転換し、営業利益率も改善しました。売上総利益率は若干低下しているものの、増収効果により利益額全体を押し上げています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 29.0億円 | 38.0億円 |
| 売上総利益 | 14.5億円 | 17.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 50.0% | 46.2% |
| 営業利益 | -0.9億円 | 2.0億円 |
| 営業利益率(%) | -2.9% | 5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.3億円(構成比34%)、業務委託費が1.3億円(同8%)を占めています。売上原価については、労務費や外注費などが主な内訳となっています。
■(3) セグメント収益
主力のコンサルティング事業は増収となり、利益面でも大幅な黒字を達成して全社の業績を牽引しました。一方、アオラナウ事業は売上が急拡大していますが、先行投資等の影響により損失が継続しています。全体としてはコンサルティング事業の収益改善が大きく寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| コンサルティング事業 | 28.2億円 | 32.4億円 | -0.5億円 | 3.2億円 | 9.9% |
| アオラナウ事業 | 0.8億円 | 5.6億円 | -0.4億円 | -1.2億円 | -21.1% |
| 調整額 | -0.3億円 | -0.7億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 29.0億円 | 38.0億円 | -0.9億円 | 2.0億円 | 5.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
サークレイスは、SaaSサービス「AGAVE」の堅調な拡大と、海外人事労務に特化した専門性の高いサービス提供により、継続的な新規顧客獲得と導入支援サービスによる売上増加で事業を順調に成長させています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益や契約負債の増加などにより収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の取得や敷金及び保証金の差入による支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、新株予約権の行使や新株予約権付社債の発行による収入があった一方で、長期借入金の返済による支出がありました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.1億円 | 2.2億円 |
| 投資CF | -1.0億円 | -2.0億円 |
| 財務CF | 1.3億円 | 0.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「Transforming Tomorrow thru Disruptive Technology!」を企業理念に掲げ、データとグローバルの最先端テクノロジーを活用し、人と組織の変革を支援することをミッションとしています。誰もがデータとテクノロジーを使いこなし、未来に挑戦できる社会の創造を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「Beyond Borders, Beyond Limits(国境も限界も超えて挑戦する)」、「Enjoy the Challenge(変革・成長を前向きに楽しむ)」、「Co-create the Future(顧客・社会と未来を共創する)」という3つのバリューを軸に事業を展開しています。挑戦と共創を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高および営業利益を重視しています。これらを通じて持続的な成長と企業価値の向上に取り組み、併せてキャッシュ・フローの健全性も重要な管理指標として位置付けています。
■(4) 成長戦略と重点施策
コンサルティング領域では、SalesforceやServiceNowに加え、AWSやMicrosoft等のマルチクラウド対応を強化し、AI関連資格取得やプロジェクト生産性向上により付加価値を高めます。また、カスタマーサクセス領域ではリモート体制への転換とキャリアローテーションを進めます。
さらに、営業・マーケティング支援の「ConsulTech」を新規事業として育成するほか、採用力強化と単価向上、SaaS製品「AGAVE」のBPO連携や機能拡充による事業基盤化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、各種研修制度の確立、多様な人材の活用、働きやすい風土づくりの3本柱で人材育成を行っています。具体的には、長期研修プログラムや資格取得支援、女性管理職やキャリア採用の推進、ITを活用したテレワークや有給取得の奨励などを通じ、多様性を認め合う環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.6歳 | 3.9年 | 5,840,000円 |
※平均年間給与は、1年以上在籍したものの平均であり、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 31.7% |
| 男性育児休業取得率 | 25.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 36.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者の平均年齢(37.6歳)、労働者の外国籍比率(3.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定分野への依存
同社はSalesforce等の特定技術領域に注力して成長してきましたが、市場ニーズの変動や競合参入により優位性が低下する可能性があります。データドリブン経営によるトレンド把握や新規事業への投資、ブランド価値向上のための活動を通じてリスク低減を図っています。
■(2) 社会情勢及び顧客動向の変化
景気動向や顧客の方針変更によりIT投資需要が停滞し、案件の中止や縮小が発生するリスクがあります。これに対し、顧客への影響調査や関係強化、海外イベント参加による市場変化の早期察知を行い、機動的な対応が可能な体制を整備しています。
■(3) AI等の技術革新の影響
生成AI等の普及により、人の工数を基軸とするビジネスモデルが変化し、収益性が変動する可能性があります。AI技術と人材を組み合わせた新たなモデルへの転換や、顧客ニーズの把握、先進事例の社内共有などを通じて対応を進めています。
■(4) 人材獲得競争の激化
IT人材の獲得競争により、必要な知識やスキルを持つ人材が不足するリスクがあります。戦略的な採用活動に加え、体系的な教育・研修の実施やカリキュラムの更新により人材維持を図るとともに、外部パートナーとの安定的な関係構築にも努めています。



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