サークレイス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サークレイス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サークレイスは東京証券取引所グロース市場に上場しており、Salesforceなど最先端ITを活用したコンサルティングと、ServiceNow領域のアオラナウ事業を展開しています。直近の業績は、コンサルティングや自社SaaS「AGAVE」の伸長により前年比で増収増益を達成し、堅調に成長を続けています。


※本記事は、サークレイスの有価証券報告書(第14期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サークレイスってどんな会社?


サークレイスは、クラウドテクノロジーを活用した業務変革支援や自社SaaSを展開する企業です。

(1) 会社概要


2012年にパソナグループ等の合弁で設立され、翌年よりSalesforceコンサルティングやカスタマーサクセス事業を開始しました。2018年には自社SaaS「AGAVE」をリリースし、2020年にサークレイスへ社名を変更しています。2022年には東京証券取引所グロース市場への上場を果たしました。

従業員数は連結で370名、単体で300名体制です。筆頭株主は金融業者のINTERACTIVE BROKERS LLC、第2位は設立時からの合弁元であるパソナグループ、第3位は代表取締役会長兼社長の佐藤司氏となっています。

氏名 持株比率
INTERACTIVE BROKERS LLC 35.04%
パソナグループ 32.89%
佐藤司 2.85%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役会長兼社長は佐藤司氏です。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤司 代表取締役会長兼社長 1997年Ernst & Young入社。パソナグループ副社長執行役員等を経て、2012年同社代表取締役に就任。2024年より現職。
古川光瑛 取締役 2008年ウィリスタワーズワトソン入社。アマゾンジャパン等を経て、2023年同社上席執行役員CFOに就任。2024年より現職。
大崎正嗣 取締役 1999年NTTデータ関西入社。日本オラクル、SAPジャパン等を経て、2023年同社上席執行役員CROに就任。2024年より現職。


社外取締役は、シェイマス・マッキュー(TQUILA LIMITED会長)、松永達也(元日本アイ・ビー・エム常務執行役員)、河村芳彦(元日立製作所執行役副社長CFO)、中田勝已(元NTTドコモ常勤監査役)、板橋光一(パソナグループ常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「コンサルティング事業」および「アオラナウ事業」の2つの報告セグメントを展開しています。

コンサルティング事業


Salesforce、Databricks、AWSなどのクラウドテクノロジーやAI・データ基盤を活用し、企業の業務設計からシステム構築、データ活用、組織変革までを総合的に支援しています。また、海外駐在員管理に特化した自社SaaS「AGAVE」も提供し、人事部門の業務効率化と内部統制の強化に貢献しています。

収益源は、クラウド導入支援や業務設計・開発・運用等のプロジェクト収益と、SaaS「AGAVE」の月額課金を中心とした継続的なストック収益です。運営は主にサークレイスが担い、海外子会社との連携体制も構築しています。

アオラナウ事業


企業のITサービスマネジメントの高度化を目的に、「ServiceNow」を活用したコンサルティングおよびシステム導入支援サービスを提供しています。ツール導入にとどまらず、バックオフィスからフロント部門までの一貫した業務標準化や可視化を伴走型で支援します。

収益源は、ServiceNow導入に向けた要件定義、設計・開発、社内連携、トレーニングといったプロジェクト収益です。本事業の運営は、パソナグループ等との共同出資により設立されたアオラナウが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は順調に拡大を続けており、直近の期間では45億円を突破しました。利益面では一時期赤字となる局面もありましたが、その後は黒字に転換して安定しており、経常利益率も改善傾向を示しながら収益基盤の強化が進んでいます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 - - 29億円 38億円 45億円
経常利益 - - -0.5億円 2.0億円 2.6億円
利益率(%) - - -1.8% 5.4% 5.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.8億円 0.1億円 -0.2億円 2.5億円 2.0億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い、売上総利益と営業利益のいずれも増加しています。将来の成長を見据えた体制強化により販売費及び一般管理費は増加したものの、増収効果で吸収し、営業利益率も5%台後半に改善するなど収益性の向上が進んでいます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 38億円 45億円
売上総利益 18億円 20億円
売上総利益率(%) 46.2% 43.3%
営業利益 2.0億円 2.7億円
営業利益率(%) 5.4% 5.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5.2億円(構成比30%)、IT関連・備品消耗品費が1.8億円(同10%)、業務委託費が1.7億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるコンサルティング事業は、AI&Data Innovation分野の好調等により増収となりましたが、投資先行の影響等で減益となりました。一方、アオラナウ事業はServiceNow導入需要を捉えて大幅な増収となり、営業黒字への転換を果たしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
コンサルティング事業 32億円 35億円 3.2億円 2.3億円 6.6%
アオラナウ事業 5.6億円 10億円 -1.2億円 0.3億円 3.3%
連結(合計) 38億円 45億円 2.0億円 2.7億円 5.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的となる末期型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 2.2億円 -0.6億円
投資CF -2.0億円 -2.3億円
財務CF 0.0億円 -0.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.3%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も68.3%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「Transforming Tomorrow thru Disruptive Technology!」を企業理念とし、グローバルの最先端テクノロジーを通じて顧客と共に経営変革を実現し、社会課題を解決することを目指しています。また、ミッションとして「データとグローバルの最先端テクノロジーを活用し、人と組織の変革を支援する」を掲げています。

(2) 企業文化


行動指針として3つのバリューを掲げています。「Beyond Borders, Beyond Limits(国境も限界も超えて挑戦する)」「Enjoy the Challenge(変革・成長を前向きに楽しむ)」「Co-create the Future(顧客・社会と未来を共創する)」を軸に、多様性を認め合いながら新たな技術革新に果敢に挑戦する風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


2030年3月期に向けた中長期的な経営目標を設定し、事業規模の拡大と高収益化を目指しています。AI・データ活用やSaaS製品の事業基盤化などの施策を通じて、持続的な成長と企業価値の向上を図ります。

* 2030年3月期売上高目標:100億円
* 2030年3月期営業利益率目標:20%
* 2027〜2030年3月期CAGR目標:20.6%

(4) 成長戦略と重点施策


マルチクラウド対応やAI・データ活用サービスの拡大を通じた新規収益源の創出を推進します。また、自社SaaS「AGAVE」の機能拡充やBPO連携を強化し事業基盤化を図るとともに、中途・新卒採用の強化や教育体系の拡充により、人的資本の強化と組織力の底上げを進めていきます。

* 100億円規模の成長投資(M&A、新規事業、AI活用など)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


AIやデータ活用の観点から経営改革を提案できる人材の育成を最重要課題としています。顧客現場で技術と経営の両面から課題解決を主導するFDE型人材の輩出を目指すとともに、「クライアントゼロ」の考え方で自社内にAIを適用し、社員のAIリテラシー向上と複数人分の価値を生み出せる組織への変革を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.0歳 4.4年 6,240,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 30.1%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.6%
男女賃金差異(正規雇用) 71.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 41.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者の平均年齢(37.8歳)、労働者の外国籍比率(12.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定分野への依存と競争激化


Salesforce等の特定技術領域に注力していますが、市場ニーズの変動や競合他社の参入拡大により競争優位性が低下するリスクがあります。これに対し、既存顧客の活用支援やデータ連携など自社主導の案件創出を強化し、マルチクラウド対応によって依存リスクの低減に努めています。

(2) AI等の技術革新に伴う環境変化


生成AIの急速な普及により、人の工数を基軸とする従来のビジネスモデルが構造的変化を受け、収益性が変動する可能性があります。同社はAI関連サービスの事業化や自社内でのAIエージェント実証を進めていますが、本番実装案件が限定的とされる市場の成熟度も注視しています。

(3) IT人材の獲得競争


高度な最先端技術の知識やビジネススキルを持つIT人材の獲得競争が激化しており、人材が枯渇または不足するリスクがあります。戦略的な採用活動に加え、資格取得支援や体系的な教育カリキュラムの更新を継続的に行い、市場ニーズに合致した人材の維持に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。