いよぎんホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

いよぎんホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、伊予銀行を中核とする持株会社です。銀行業を中心に、リース業や証券業などの金融サービス事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、貸出金利息や有価証券利息配当金の増加等により経常収益・経常利益ともに伸長し、増収増益となりました。


※本記事は、株式会社いよぎんホールディングス の有価証券報告書(第3期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. いよぎんホールディングスってどんな会社?


愛媛県を地盤とする地方銀行グループの持株会社です。銀行業務を中心に、リースや証券などの総合金融サービスを提供しています。

(1) 会社概要


2022年10月、伊予銀行の単独株式移転により持株会社として設立され、東証プライム市場に上場しました。中核となる伊予銀行は1941年に伊豫合同銀行として設立され、1971年に東証一部に上場した歴史を持ちます。グループとして銀行、リース、カード、証券、コンサルティング等の金融関連事業を展開しています。

連結従業員数は3,039人、単体では215人です。大株主は、資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行が筆頭株主(12.08%)であり、次いで日本カストディ銀行(6.81%)、日本生命保険(2.98%)が続きます。機関投資家や保険会社が上位を占める安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社 12.08%
株式会社日本カストディ銀行 6.81%
日本生命保険相互会社 2.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名、計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長は三好賢治氏です。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
三好賢治 取締役社長(代表取締役)(グループCEO) 1982年伊予銀行入行。総合企画部長、常務取締役、専務取締役を経て2020年頭取に就任。2022年よりいよぎんホールディングス社長を兼務。
大塚岩男 取締役会長 1976年伊予銀行入行。人事部長、本店営業部長、専務取締役を経て2012年頭取に就任。2020年会長となり、2022年よりいよぎんホールディングス会長を兼務。
長田浩 取締役専務執行役員(代表取締役)(グループCFO) 1987年伊予銀行入行。総合企画部長、常務取締役を経て2022年専務取締役。同年よりいよぎんホールディングス取締役専務執行役員を兼務。
仙波宏久 取締役常務執行役員 1988年伊予銀行入行。東京支店長、常務取締役営業本部長、法人営業部長を経て、2024年よりいよぎんホールディングス取締役常務執行役員。
伊藤眞道 取締役(監査等委員) 1985年伊予銀行入行。広島支店長、シップファイナンス部長、常務取締役を経て、2024年よりいよぎんホールディングス取締役監査等委員。


社外取締役は、上甲啓二(元愛媛県副知事)、野間自子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「銀行業」「リース業」および「その他」事業を展開しています。

銀行業


伊予銀行を中心に、預金、貸出、有価証券投資、為替業務等を行っています。また、連結子会社を通じて銀行事務代行、信用保証、クレジットカード、投資ファンド運営なども手掛け、地域に密着した金融サービスを提供しています。

収益は、顧客からの貸出金利息、有価証券の運用益、各種手数料等が主な源泉です。運営は中核子会社である株式会社伊予銀行に加え、いよぎん保証株式会社、株式会社いよぎんディーシーカードなどの連結子会社が行っています。

リース業


顧客に対して機械設備や情報関連機器などのリース業務を行っています。企業の設備投資ニーズに応える金融サービスの一環として機能しています。

収益は、顧客からのリース料収入が主体です。運営は連結子会社であるいよぎんリース株式会社が行っています。

その他


情報処理受託・ソフトウェア開発業務および証券業務などを行っています。銀行業と連携したITソリューションや資産運用サービスの提供を担っています。

収益は、システム開発等の受託料や証券取引に伴う手数料等です。運営は株式会社いよぎんコンピュータサービスや四国アライアンス証券株式会社などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

当期は増収増益となりました。これは、国内金利の上昇や貸出金残高の増加などにより資金運用収益が増加したこと、また政策保有株式等の有価証券売却によりその他業務収益およびその他経常収益が増加したことが主な要因です。一方、経常費用は国内金利上昇に伴う資金調達費用の増加や営業経費の増加などにより増加しました。過去からの趨勢としては、経常収益、経常利益、当期純利益ともに増加傾向で推移しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
経常収益(億円) 17,295 19,276 23,189
経常利益(億円) 4,242 5,858 7,503
当期純利益(億円) 2,790 3,946 5,332

(2) 損益計算書

当期は、国内金利の上昇や貸出金残高の増加などにより資金運用収益が増加したこと、および政策保有株式等の有価証券売却によりその他業務収益およびその他経常収益が増加したことなどから、経常収益は前期比で増加しました。一方、経常費用は国内金利の上昇などにより資金調達費用が増加したことや営業経費が増加したことなどから、前期比で増加しました。この結果、経常利益および当期純利益はともに前期を上回りました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
経常収益 19,276 23,189
経常費用 13,418 15,686
経常利益 5,858 7,503
当期純利益 3,946 5,332

(3) 役務取引等収益の内訳

同行の非金利収益である役務取引等収益合計は、当期において前期比で増加しました。特に、証券関連業務が大きく伸長しました。

区分 2024年3月期 2025年3月期
役務取引等収益 合計 16 18
証券関連業務 8 15

(4) キャッシュ・フローと財務指標

銀行業においては、貸出金の増加に伴い営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなることは一般的であり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。当期は、貸出金の増加などにより営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却などによりプラスとなりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い及び自己株式の取得などによりマイナスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー 29,637 △16,004
投資活動によるキャッシュ・フロー △48,144 13,486
財務活動によるキャッシュ・フロー △1,109 △2,398

当期はROEが前期から上昇し、収益効率が向上しました。純資産は、増減しながら推移しており、当期は前期末比で減少しました。なお、近年の純資産は減少傾向にあり、財務状況の動向を注視する必要があります。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「潤いと活力ある地域の明日を創る」を存在意義とし、「最適のサービスで信頼に応える」を経営姿勢としています。これらを基盤に、地域に根差した企業グループとして社会的責任を果たしつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図り、地域経済の発展に貢献することを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は行動規範として「感謝の心でベストをつくす」を掲げています。すべての役職員がこの規範に基づき活動し、株主、顧客、地域社会、従業員からの信頼確立を目指しています。誠実さと献身的な姿勢を重視する文化が根底にあります。

(3) 経営計画・目標


「2024年度中期経営計画」では、10年先を見据えた構造改革のフェーズ1「基礎構築」と位置づけ、以下の数値目標を掲げています。
* 連結ROE(純資産ベース):7.00%(2026年度)
* 親会社株主に帰属する当期純利益:580億円(2026年度)
* 連結コアOHR:50%程度(2026年度)
* 成長投資:100億円(2026年度)

(4) 成長戦略と重点施策


長期ビジョン「新たな価値を創造・提供し続ける企業グループ」の実現に向け、デジタル実装を基盤とした「DHDモデル」の「H(ヒューマン)」を強化します。「事業ポートフォリオ」と「人財ポートフォリオ」の再構築を中心とした「営業×人財」の構造改革を実行し、稼ぐ力の向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を競争優位の源泉と位置づけ、「専門性を高めた共創人財」や「領域ごとの専門人財」の育成を目指しています。各々の強みを伸ばし、適材適所で能力を発揮できるよう、研修や公募制度の拡充、キャリア採用の強化を進めています。また、働き方改革やダイバーシティ推進、健康経営を通じ、エンゲージメントの高い職場環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.2歳 19.5年 9,589,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.5%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 45.8%
男女賃金差異(正規) 51.1%
男女賃金差異(非正規) 59.3%


※女性に比べ男性の役席者・管理職の割合が高いことが賃金差異の要因となっています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役席者比率(19.1%)、従業員エンゲージメントスコア(71)、有給休暇取得率(79.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 信用リスク


国内外の景気動向、不動産価格、株価等の変動により、貸出先の経営状況が悪化した場合、不良債権や与信関係費用が増加する可能性があります。特定業種への集中リスクや、貸出先への支援に伴う追加貸出、担保価値の下落なども業績に悪影響を及ぼす要因となります。

(2) 市場リスク


金利、為替、株価の変動リスクがあります。金利上昇による保有債券の価値下落、円高による外貨建資産の価値減少、株価下落による保有株式の減損などが業績や自己資本比率に悪影響を与える可能性があります。これらはALM委員会等で管理されていますが、予期せぬ変動の影響を受ける可能性があります。

(3) オペレーショナル・リスク


事務ミスや不正、システム障害、サイバー攻撃、法令違反などのリスクです。これらが発生した場合、業務停止や損害賠償、行政処分、レピュテーションの毀損などを招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特にシステムリスクやコンプライアンス遵守は重要課題として管理されています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。