※本記事は、マイクロ波化学株式会社 の有価証券報告書(第18期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. マイクロ波化学ってどんな会社?
独自のマイクロ波化学技術プラットフォームを核に、化学産業の製造プロセス革新とカーボンニュートラル実現を目指す技術開発企業です。
■(1) 会社概要
2007年にマイクロ波化学プロセスの事業化を目的に設立され、2011年に現社名へ変更しました。2014年には大阪に製造工場を竣工し、2017年に三井化学と業務提携を行うなど事業基盤を強化しています。2022年6月に東証グロース市場へ上場を果たしました。
同社(単体)の従業員数は49名です。筆頭株主は代表取締役社長の吉野巌氏、第2位は代表取締役CSOの塚原保徳氏、第3位は事業会社の三井化学です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 吉野 巌 | 7.90% |
| 塚原 保徳 | 7.00% |
| 三井化学 | 4.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性5名、女性1名の計6名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長CEOは吉野巌氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉野 巌 | 代表取締役社長CEO | 三井物産を経て2007年に同社を設立し代表取締役社長に就任。2023年6月より現職。 |
| 塚原 保徳 | 代表取締役CSO | 大阪大学大学院理学研究科博士後期課程修了後、同大特任准教授等を経て、2011年同社取締役CSO。2024年6月より現職。 |
| 下條 智也 | 取締役(監査等委員) | 三菱UFJ銀行、監査法人トーマツを経て、2013年同社入社。管理部長等を歴任し、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、浦田興優(日本材料技研代表取締役社長)、髙橋祐子(元電通経理局局長)、齊藤修一(元Hamee取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「マイクロ波化学関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■マイクロ波化学関連事業
化学・エネルギー産業に対し、従来の「熱と圧力」による製造プロセスを「マイクロ波」に置き換えるソリューションを提供しています。顧客は化学メーカー等が中心です。研究開発から実機導入までを4つのフェーズ(ラボ開発、実証開発、実機導入、製造支援)に分け、顧客課題に応じた開発やエンジニアリングを行っています。
収益は主に、共同開発や実証機設計に伴う開発費、実機導入時のプロジェクトマネジメントフィーや設計費、ライセンス収入(一時金やロイヤリティ)から得ています。運営は主に同社が行っており、顧客との長期的な関係構築を通じて、フロー収益とストック収益の積み上げを目指しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は拡大傾向にありましたが、直近では大型案件の変動等により減収となりました。利益面では、先行投資による赤字期間を経て、当期は経常黒字および最終黒字を達成しています。利益率は改善傾向にあり、収益性の向上が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4.6億円 | 8.6億円 | 12.2億円 | 18.6億円 | 16.1億円 |
| 経常利益 | -3.6億円 | -1.0億円 | 0.3億円 | 1.3億円 | 1.8億円 |
| 利益率(%) | -77.6% | -11.5% | 2.1% | 7.0% | 11.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -10.4億円 | -1.1億円 | 0.8億円 | -9.4億円 | 1.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、売上原価の抑制等により売上総利益率は改善しました。営業利益は増益となり、営業利益率は上昇しています。コストコントロールが進み、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 18.6億円 | 16.1億円 |
| 売上総利益 | 11.2億円 | 10.8億円 |
| 売上総利益率(%) | 60.1% | 66.8% |
| 営業利益 | 1.3億円 | 1.9億円 |
| 営業利益率(%) | 7.2% | 11.7% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が4.4億円(構成比49%)、給与手当が1.3億円(同14%)を占めています。売上原価においては、材料費が3.3億円(構成比60%)、労務費が1.2億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は、フェーズ2(実証開発)案件が伸長し売上を牽引しましたが、フェーズ1(ラボ開発)案件の減少等により全体では減収となりました。利益に関するセグメント情報の記載がないため、売上高のみを表示します。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| マイクロ波化学関連事業 | 18.6億円 | 16.1億円 |
| 連結(合計) | 18.6億円 | 16.1億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは「勝負型」です。本業の営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスですが、財務活動によって資金を調達し、投資活動を行っています。将来の成長に向けた先行投資を借入や増資などで賄っている段階と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 2.1億円 | -0.7億円 |
| 投資CF | -8.0億円 | -1.5億円 |
| 財務CF | -1.2億円 | 2.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.1%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「Make Wave, Make World 世界が知らない世界をつくれ」をミッションとし、「100年以上変わらない化学産業を革新し、モノづくりの世界を変革する -マイクロ波プロセスをグローバルスタンダードに-」をビジョンとして掲げています。
■(2) 企業文化
同社は「自律的なプロフェッショナル集団の形成」を重視しています。化学、物理、エンジニアリングなど多様な専門家が集結し、それぞれの知識を融合させて課題解決にあたるチーム体制を構築しています。また、社員一人ひとりの能力やキャリア志向に応じたミッション設定を行い、自律的な成長を促す文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、製造プロセスを「熱と圧力」から「マイクロ波」へ置き換え、環境対応型プロセスのグローバルスタンダード化を目指しています。具体的な数値目標として、経営上の目標達成状況を判断するために以下の指標を重視しています。
* 新規契約獲得数
* 契約総数
* フェーズ別売上高
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、マイクロ波技術のソリューション提供(提携事業)の深化と新規事業の創出を両輪とした成長戦略を掲げています。具体的には、既存の開発案件の実機導入(社会実装)推進、技術・装置の標準化による収益性向上、発振器の内製化によるコストダウンに取り組んでいます。また、半導体材料領域など他分野への展開や、マイクロ波以外の新規ソリューションの提供も模索し、2030年までの継続収益獲得を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、化学・物理・エンジニアリングなど多様な専門家からなる開発体制構築のため、継続的な人材採用と育成を行っています。特に、事業開発を担うプロデューサー的人材や、プロジェクト全体をマネジメントできるリーダー級人材の確保・育成に注力しています。独自の人事制度「コンピタンス」を導入し、能力開発を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.3歳 | 4.6年 | 7,646,890円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術の応用領域の拡大
同社はマイクロ波プロセスを多様な分野へ拡大していますが、これは新しい技術領域であり不確実性が高いものです。市場への浸透が計画通りに進まない場合、事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 新規参入・技術革新
同社は独自技術により競争優位性を確保していますが、優れた研究開発能力を持つ新規参入や代替技術の出現の可能性があります。また、技術革新によりニーズが減退するなど業界環境が変化した場合、競争力が低下し経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 知的財産権に関するリスク
同社は知的財産権の侵害回避に努めていますが、第三者との法的紛争に巻き込まれるリスクや、同社の技術が侵害されるリスクは完全に排除できません。これらが発生した場合、解決に多額の費用や時間を要し、事業戦略及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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